2021/10/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にひよりさんが現れました。
■ひより > 近頃の朝はお気に入りになったパン屋へ足を運ぶのがお約束みたいになっていた。この時間は仕事に出る人たちが多く来店していて自分のような小さい子どもは時に難儀をするのだけれど、それでも焼き立てパンの香ばしい誘惑には逆らえない。
王都を見て回って見分を広げ、ついでにしばらくの活動費を得るための仕事も探さなければならない身。今日も一日がんばるために、商品棚に並ぶパンを選ぶのも真剣な表情で。
「こちらのものは先日いただいて美味しゅうございましたし…ううん、でも、こちらのものも気になって…」
すでに口にしていて美味しさを知ったものがいいか、それともまだ手をつけていないものがいいか、悩みに悩みながら、ぶつくさと独り言。悩むあまり、ついつい前のめりになっていると頭の位置はさらに低くなり、こちらの存在に気がつかなかった労働者らしい人が、たまにぶつかりそうになってくる。
そのたびに頭を下げては背筋を伸ばしているけれど、またすぐに姿勢は前傾がちになってしまう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にネイスさんが現れました。
■ネイス > 人の動き始めた活気と、パン屋を始めとした胃袋を掴む匂いに煽られて寝ても居られなくなってきたこの時間。
裏路地の塒から起きてきて、朝飯は何にしようかと通りを歩きながら決めるのが鉄板だ。
昨夜大仕事を終えて戻ってきたばかりだから、もう少しゆっくりと眠りたいのだが寒さで逆に起きてしまった。
「……そっちのそいつと、こっちのが最近のオススメだな」
蹴飛ばすか、触ってくれとでも言わんばかりの無防備に突き出した下半身。
何なら背後からそのまま引っ掴んで捉えてしまいたい衝動にかられる華奢さだけれど、此処は一応朝の通り。
少女の後ろに並ぶように立って、突き出した尻を緩くはたいて、緩く鷲掴みにする、程度に留めておく。
ついでに、シンプルながら拘りを感じる塩パンと甘く香る芋のパンの二種類を勧めておいた。
■ひより > パン屋にやってきてから何十分と悩んでいたわけではないものの、それでも結構な時間が経っていたかもしれない。おいしそうな匂いばかり嗅いでいて、そろそろ空腹感が募ってくるころ。
いい加減、どれかに決めようと考えたところで、不意に身体に誰かの手が当たって、臀部を叩くような触れられ方に、あわててその場から飛びのいた。
「ふわっ…!っとと…お邪魔でしたか、申し訳ありませぬ。えと…これと、こっち…
さようですか、では、本日はこちらをいただく事にいたします」
驚きの声をあげて目を丸くしながらも、自分が動かないせいで邪魔になっていたんだろうと考えて頭を下げる。
あらためて姿勢を正すと、男性が指差したパンを交互に眺めて、片方はまだ食べていないもの、もう一つは以前も口にしたものだと見て。どうせ決めあぐねていたのだから、慣れていると思わしき人のおすすめに従っておこうと頷いた。
トングで二つのパンをトレイに移動させると、支払いを済ませるために、とことことカウンターへと向かって。
■ネイス > 尻を叩けば突き刺す眼差しを寄越されるか一目散に逃げ出すかが多いこの街において、物珍しい反応。
それだけでも新顔だというのがわかって、装いも含めて興味をひかれるものである、
なんなら身につけた装いだけでも、物好きに売り払えば金になりそうに見えた。
「見ない顔だが、これから仕事か?
時間があんなら、目覚ましにちょいと話し相手になってくれよ。甘い菓子もつけとくぜ」
勧めた二つのパンにもう一つをトレイに載せて、少女の後を追いカウンターへ向かう。
小柄だが粗末ではない見た目。ただし戦おうという雰囲気でもないと感じられて。
どこぞから旅に来た貴人の下働きかなにかだろうか、とあたりをつけて声をかける。
お使いか、と子供扱いも仕掛けたものの、それは喉奥に呑み込んでおいて。
パン屋の中にあって甘く香りそうな少女を、塒へと誘い込もうとする。
■ひより > 支払いを済ませて、トレイの上に温かいお茶が入ったカップを置いてもらう。急いでいる時は持ち帰り用に紙袋に入れてもらうところだけれど、そんな風に毎日あわただしく朝食を取るのも落ち着かない。
今日は店内のカフェスペースで食事をしようと空いた席を探していると、先程の男性から続けて話しかけられた。
仕事前に朝食を買いにくる人が多いお店だったから、こんな風に声をかけられる経験も今までなく、おどろいたように目をぱちくりさせて。
「はぇ。あ、はっ、はい、お仕事…というか、お仕事を探しに行く予定にございました。
ええと…わたくしめでは、面白いお話もできるかわかりませぬが
あ、お菓子は結構でございますよ。これ以上口にしては、おなかが一杯で動けなくなってしまいますゆえ」
自分のような子どもと話がしたいという大人の男性。少々不思議に思いながらも、訝しがるところまではいかず。考えこむ時間は短く、こくんと首を縦に振った。
餌のように提案されたお菓子に対しては、パンを二つのせたトレイを掲げるようにしながら、にっこりと笑って遠慮して。ちょうどよく空いている席が見つかったから、とりあえずそちらに向かおうと歩きはじめる。
■ネイス > そそくさと店外に出てしまわれたなら面倒――いや、その方が話は早かったか。
店内のスペースを探る様子を見て、偶にはのんびりと言葉を交わしていくのもいいかと方針を切り替えた。
誘いの言葉にのれんに腕押しということもなく、成果は上々。
「見慣れない顔と顔を繋ぐだけで十分こっちにとっちゃ話題の種だよ。
職業柄、目新しいのには声をかけとくのがクセなんだ。
……んじゃ、菓子の代わりにお近づきのしるしってことで」
パン三つ、それとコーヒーをセットにしたトレイを抱えた巨躯の男が少女の後ろに続いた。
少女を奥の席に勧め、男が向かいに座る。通り抜けるには男の脇を通らねばならない配置で、都合がいい。
腰掛けてみても、大人と子供以上の体格差が目立つ。
パンに手をつけるより先に、胸ポケットへ手を突っ込んで。するりと引っ張り出すのは、一輪の花。
淡く蜜のような香りを漂わせる、小振りな花。たった今、忍ばせていた種から魔力で育て上げた花である。
そもそも色を知らなそうな子供相手だからと、催淫の効果を目いっぱいに仕込んで。
帯のところに挿しておくといいと、差し出す。
■ひより > 誘導されるがまま奥の席へと向かって、壁側の席の椅子を引く。店員に尋ねたら子どもようの椅子を出してもらえたりするのかもしれないけれど、朝の忙しい時間に、そんな事で手間をかけてしまうのも躊躇われる。
だから、先にテーブルの上へトレイを置いて、両手で支えを取りながらの着席。座ってみると足が床につかないけれど、それ以外はあまり不便もない。
自分にとっては高い椅子のおかげで、テーブルを使用するのに不自由もなく。食事を始める前に、胸の前で両手をあわせて、静かに目を閉じる。口の中で小さく、いただきます、と唱えて。
「目新しいものに…というと、なにか商いでもされているのでございましょうか。
と、と、ありがとうございます。っ…ふふ、殿方からお花をいただいてしまうなんて、なんだか照れてしまいますね」
小首をかしげながら話にあわせて言葉を選び、聞いていいものか迷いながらも、相手の職業を推察してみる。
買ったパンはどれもあまり大きなものではないけれど、それでも両手でしっかりと持ち、口を丸く開けたところ。それより先に差し出された花に目を丸くして、きょときょとまばたきを繰り返しつつも、パンを置いて丁寧に受け取り。
頬を染めたりはしなかったけれど、照れくさそうにはにかみながら、言われたように花の茎を腰帯に挟んでおいた。
それから、あらためてパンを持ち、食事をはじめる。小さな口ではあまり大きく齧りつけないものの、それでももくもくと食べ進めるペースは、あまり遅いものでもなく。
■ネイス > この辺りではあまりみない食前の習慣に、やはり旅の者か何かだと確信する。
出稼ぎか、お供か、見聞か。いずれにしても自分に持っていない文化や知識を持っているだろうというだけでも時間を割くのに十分。
ここで子供だからと侮るようだと、遺跡のちょっと深くに潜りでもすれば簡単に命を落とすのが宝探しだ。
投資を含めた準備を惜しまず、目をつけた財宝に期待する。それが二束三文かはたまた秘宝なのか、それもこの職の楽しいところ。
「如何にちいさくても女は女だ、そういう顔をしてくれれば男は冥利につきる。
ん……俺はネイス、しがないトレジャーハンターだよ。
何から新しいお宝の匂いがするか、さっさと嗅ぎつけないと持っていかれちまうんでね」
素直に受け取る少女に、にいっと大きな笑顔をみせる。
一度カップを口に運んでから、男もパンにかじりつき始めた。こちらは大きな口で、ようく噛んで喉仏をこれまた大きく上下させて。
腹にパンを放り込んだところで、名乗りついでに少女の推察に答え合わせを始めた。商い人というには些かラフな格好を指し、残念、と笑い。
そうして食事を進める間にも、少女の周りには花の香りが満ちていく。
食事のために口を開いて取り込めば、身体の芯に行き渡るまでそうは掛からないだろう。
「それで、そっちは?」
相手にも自己紹介を促して、テーブルの下で、ちょい、と少女の足を探る。
■ひより > 両手で持った植物の種をさくさく齧る小動物みたいなペースで、ちょっとずつながらも着実にパンを小さくしていく。焼き立ての風味が口の中に広がると、幸せそうに顔を綻ばせ。
ときどきお茶に手を伸ばして喉を潤しながら、仕事について話してくれる相手の声に耳を傾け、聞き慣れない単語には、またぱちりとまばたいて。
「とれ、じゃあ、あ、ええっと…お宝を探す人たちの事を、そうお呼びするのでございましたね。
旅をしてわかった事にございますが、この世界にはまだまだ、知らないお仕事がたくさんあるようで…」
会話だけなら流暢にできるものの、一部の単語や文字には、そこまで明るくない。トレジャーハンターという言葉が以前聞き及んだものである事だけは、なんとか思い出して。
故郷の村ならば、古いお宝を掘り起こすなんて罰当たりだと老人たちがお怒りになった事だろう。それでも広い世界の中には、そういった仕事もあるのだと関心しきり。
「は…っ、申し遅れました。わたくしめは、ひよりと申します。
遠いところから見聞を広げるために、学びの旅をしているところでして…」
そんな話をしている間に、二つ目のパンを食べ終えた。手のひらについたパン粉をぱたぱたとはたいてトレイの上に落とすと、また胸の前で両手をあわせて、ごちそうさまでした、と小さな声で唱え。
残ったお茶にふうふうと息を吹きかけながら、音を立てないよう静かに飲み干した。
花から漂うなにかには気がついているのかいないのか、にこやかな表情のままで食事を終えると一息ついて。
■ネイス > 自分の勧めたパンを実に美味そうに食べる様子を見ていると、毒気も飛んでいってしまいそうになる。
異国人らしく、会話の節々で動きが止まるのを察して、悪かったと笑って加えるその補足もまた会話の種となった。
これが夕飯時であれば寧ろ暗がりに連れ込む気分を煽られたのだろうが、朝の空気は清々しく胸を満たしてしまって。
「なるほど、見聞目的か……この国は何でもあるっつーか、文化的にごちゃごちゃしてるからなあ。
それじゃ、何か面白そうな話を聞いたらまた見かけた時にでも教えてくれ。
いい情報だったら……ギルドの採取依頼なんかより、礼ははずんでやるからよ」
三つ並べたパンも男の大口では先に平らげてしまっていた。
催淫を煽る魔力は、この場ではあまり効果がなかったようだ。
いつか芽吹く時を待ち、少女に似合いの愛らしい花の形だけを残し息を潜める。
終始のんびりとした様子の幼い雌にひとつ溜息を吐くと、無骨な手のひらを黒髪に伸ばす。
ぐしゃりと幼子の頭を撫でて、幼いなりにも自分の力で生計を立てているらしい少女に情報提供の依頼だけして。
少女の手元に手付金だと一握りを置き、席を立って店を出ていく――。
■ひより > カップの中も空になると、これからお昼時までの活力は十分満たされたように感じられた。あまり大きくなかったパンでも、二つも食べるとおなかも一杯になって、はふ、と満足そうな吐息をこぼし。
店内を混雑させていた客足も、ようやく落ち着きかけたところ。トレイを返しにいくのにもちょうどいいタイミングだろうと見て、椅子を揺らさないよう慎重に、床に足をつけようとして。
「ええ。こちらでしたら、さまざまな事が学べるだろうとは聞いていたのでございますが…
広いうえに、見るものも珍しいものばかりで、毎日退屈いたしませぬ。
ええ、街の中でお宝が見つかったりするのかは、わかりませぬが…その時には是非に」
もうすこしで足がつきそうな状態になると、あとは元気よく、ぴょんと飛び降りて。揺れた髪を片手で整えたあと、食事の時間をともにしてくれた相手へ、頭を深く垂れて行儀よくお辞儀をする。
そのまま先にカウンターへと向かうつもりだったけれど、不意に頭を撫でられて、きょとんとした顔。ぼけっとしている間に、テーブルの上にお金を置いていかれ、あわあわとしている間に立ち去られてしまう。
遠慮するタイミングを逃した事に反省しつつも、だからといってこのお金をそのまま放っておくわけにもいかない。せっかくだから、ありがたくちょうだいする事にして、小さな手に硬貨を握ると、自らもトレイを返却するため、とことこと歩きだして…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からひよりさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からネイスさんが去りました。