2021/10/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリゼラさんが現れました。
リゼラ > 月のない新月闇の宵の事。
平民が家屋を構える住宅街の片隅に建つ邸宅は早々と家人が寝静まり、微かな寝息のみが寝室に響いているばかりであった。
が、その静寂を打ち毀すような、あらゆる叫び声を幾重にも重ね合わせたような叫び声が夜気を貫くように鳴った。

――それは、宅に住まうバンシーの嘆きに値する人物が近々亡くなるという合図である。

ほんのひと時、邸内の庭先で泣き叫んだ妖は嗚咽の余韻が収まらぬまま、家人が跳び起きた気配を察するとひくひくとしゃくり上げながら邸宅を後にし、ぺた、ぺた、と素足で石畳を踏み、星のみの瞬く弱い夜光が薄っすらと照らす住宅地を当て所なく彷徨い出した。

「っふ、く……ひ……」

何がどう哀しいのか自分でもよく判らない、本能的な嘆きに緋い瞳を腫らして濡らし、さめざめと顔を覆いながら宵を往く。

暗がりの中、涙しながらふらふらと進む女の様相は近しいものが亡くなったか、悪いものにでも出遭った後か。
そんなようにも見受けられるかも知れず。

何にせよ幽鬼さながらではあったし、それに近しいものでもあった。

リゼラ > そうして暫し響く女の啜り泣きと、どこか覚束ない足音。
それもやがて夜気に融けるように消え失せ――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリゼラさんが去りました。