2021/08/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 裏路地」にエリゼさんが現れました。
エリゼ > 冒険者の仕事場は、町の外だけではない。街中にも仕事の種が転がっている。
例えば、歓楽街や路地裏等の比較的治安が安定していない場所の見回り。
或いは、街中で怪しげな活動をしている存在の調査と監視等もそうだ。
フットワークの軽さを生かして調査をするのが冒険者。結果を活用するのが兵士。
それが事実かは一先ず置くとして、役割分担はそんな感じになっているらしい。

「……面倒な事に巻き込まれなきゃ良いんだけど」

ポツリと呟く。今、少女は酒場の裏口に転がっている酒樽の影に身を隠し、路地を見張っていた。
曰く、平民地区の裏路地で時折見かける怪しげな黒いフードの人影を調査せよ、とのこと。
軽く探れば、目標はすぐに見つかった。気配を殺して尾行すれば、数軒先の店の裏口で止まる。
店主とは何やら取引をしているようだが、遠目では良く分からない。周囲に他の遮蔽物はない。
今のままでは目撃証言に毛が生えた程度。もう少し有力な情報が欲しい所だが――。
それには、彼らが隙を見せるかどうか。少女は辛抱強く、やり取りを注視していた。

エリゼ > 店の軒先で何やら交渉していた様子だが、その内フードの人影は店に入っていく。
ジリジリと夏の日差しが降り注ぐ中では、ただ酒樽の裏に隠れているだけでも汗が湧く。
麻のシャツもショートパンツも色濃く濡れて、鎧の内側は蒸れた感覚が心地悪い。
仕事を切り上げて、水浴びでもすればきっと最高に気持ち良いのだろうけど。

「……だからってサボるわけにはいかないわけで」

そういう考えはだめだぞエリゼ、等と小さく呟いて自分を激励。
エチケットと言わんばかりに用意していたハンカチも、絞れば水が滴りそうだ。
茹だる。この暑さでフードを取らずに行動している相手に敬意すら感じそうになる。

――それから少し待っていると、再びフードの人影が店から出てくる。
その懐から覗いているのは赤い果実。りんごの一種だろうか。
人影は果実を大切に抱えたまま、いそいそと裏路地を歩き出す。
結果、人影は貧民地区の片隅にある粗末な家へと消えていった。
情報としてはこれで十分だろうが、あれが悪い存在かというと微妙なところ。
何れにせよ、真実のみをきっちり報告するとしよう。何とも徒労な調査だった――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 裏路地」からエリゼさんが去りました。