2021/08/17 のログ
ルヴナン > やがて、川辺を歩く道がようやく橋に差し掛かる。
いささか、ゆっくり歩きすぎたというのだろうか。
柔らかく舗装された土道を歩く足音が、そこで止まる。
右手に曲がれば平民地区。橋を渡って左手に曲がれば貧民地区。

「いや、残念残念。
 ここまで来れば誰か通りかかると思ったのに。」

とっぷりと落ちた日。夜の帳の中で何をいわんや、な台詞。
真面目な市民はとうに寝床か自分の家か、果ては酒場に引っ込んでいる刻限。
出会うとすれば、事情の市民か、不真面目な市民や冒険者、或いは人ならざるものか。
そのどれもが、好奇心を擽るのだけれども――残念、と言って帰るか。
それとも、先日の地震で被害があったという場所の復旧具合でも見にいくか。
そんな思案をしながら、指先で虚空に文字を書く仕草。

黒手袋の指先が光の線を描いた。蒼白い温度を感じさせない仕草。
そのまま、線は文字となり、文字は灯りとなって浮かび上がる。
ちょうど、周囲2mほどを照らすのにちょうどいい魔術の灯り。

ルヴナン > やがて、決断できたのか。
ふわりと、闇に包まれる夜の中、魔術の灯りが動く。
それはまるで、人魂のように水に映って、ゆらりゆらりと動いていって―――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2/河川敷」からルヴナンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 朝。あちこちで開店の準備をしている人の姿が見受けられる時間。桜色の髪を風に揺られながら、古物商の店主は店先の細かなごみを箒で掃いて一ヵ所に集めていた。
頬を撫でる風は湿っぽく、空を仰げば遠くに黒雲が広がっているのが見えた。このままだとお店を開く時間には雨になるだろうか。そんな風に考えながら小さく溜息。
気温が高くなりすぎないのは助かるけれど、天気が悪い日の店内はやたらじめじめしていて居心地が悪い。商品棚の陳列を、もうすこし風通しがよくなるように配置し直すべきだろうかと思案して。

「……あっ…!」

手を止めて考え事をしていたら、遠くから転がってきたボールがせっかう集めたごみを散らかしていった。とっさに顔を上げてみたら、すこし離れたところに近所の子どもたちが数人。
謝罪より先にボールを蹴り返してとお願いする声が届いて、そろそろきつく叱ったりした方がいいんだろうかと眉を寄せる。ただでさえ、日ごろからなにかと悪戯の対象にされているのだから、小言を言う権利くらいはあるはずだと思いたい。

「……いきますよー…」

けれど今は、朝からがみがみと言うのも憚られ。そもそも相手が子どもであっても、人にお説教をするのが得意な性格でもないから、渋々ボールを追いかけて。
大きな声を出しているつもりだけれど、離れたところにいる子どもたちに届いているかは不安が残るから、あわせて手を振る合図を送る。
それから、足元をしっかりと確認してボールを蹴る。そのつもりだった。しかし、しっかりと当てるつもりだった爪先にはなんの感触もなく、靴底でボールを撫でるような結果に。当然、その瞬間に身体のバランスが崩れて。

ミンティ > そのまま勢いよく尻餅をつく。強く打ちつけたおしりの痛みに涙目になった表情を歪めたとたん、当の子どもたちからは、わっと歓声があがった。
口々になにかの色を言い合っているのがこちらまで聞こえてきて、今さらすぎるけれど、あわててスカートを押さえた。
今すぐにでも追いかけていって叱りつけたい気持ちでいっぱいながら、痛みのせいですぐには立ち上がれず。そうしているうちに、ボールを諦めたのか、子どもたちはどこかへ駆け出していってしまった。
ちょうど近くにいた商人仲間に慰められ、引き起こしてもらって、それからまた掃除を再開したから結構な時間がすぎてしまった。

「……没収」

あとに残ったボールを抱えると、ぼそ、と低い声で恨み言をこぼす。さすがにこのまま道に転がしておくわけにもいかないし、回収しておけば、あとで子どもたちが取りにやってくるだろう。その時には、今日こそしっかり言ってやるんだと心に決めながら、のろのろとした動きでお店の中へと消えていって…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にソルさんが現れました。
ソル > 少年は、人けの絶えた路地裏で頭を抱えていた。

「あー、またやっちゃった」

その手の上には、膨らんだ財布が乗っかっている。
少年のものではなく、先程通りの人込みでぶつかった酔漢の懐から抜き取ったものだ。

「これじゃ僕、まるでシーフだよ。そろろろ、この癖もなおさないとね」

向こうからぶつかってきたのに頭ごなしに怒鳴りつけられ、こいつ、と思ったその時にはもう手が空中を走っていた。
まだ旅に慣れていない頃、この手の技で食つないでいたのだが……
昔取った杵柄というより、単なる悪い癖だ。
ちょっとした仕返し自体は反省するつもりはないが、昨夜も似たようなことがあったので、流石に反省する点もあり。

「ん。まあ、いっか!」

なんにせよ、反省すべき点は反省したので、ころっと気分を入れ替えて、
この臨時収入をどう活かすか考え始めた。とりあえずは、夕食か。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からソルさんが去りました。