2021/07/21 のログ
■ジャック >
「ジャック。ジャック・霧崎だ。先ほども言ったが、貧民地区で医者などやっている。モグリだがね」
ギザギザの歯を見せてニヤリ。
紙袋を支え直せば、大きな胸がだぷんと揺れる。
ノーブラだからね。
「酒は嫌いではないが、甘いモノの方がいいね。糖分は脳を働かせるのに必要不可欠だ。特定のタンパク質ならば尚良いが……君は無理そうだからね」
彼女の頭からつま先までを眺める。
男性だったら自宅にでも連れ込んで、と言うところだが、残念ながら女性だ。
まぁ女性とのアレコレも嫌いではないのだが、ここは糖分を選んでおくことにしよう。
「さぁそうと決まれば早速行こう。どこに行こうか、私の脳と舌は今糖分を欲している。ほら急ぎたまえ、糖分が逃げる」
糖分は逃げない。
■ティアフェル > 「ジャック……? 男の人の名前なのね? お医者さんね、同じような職業だし、よろしくね」
見た目は女性のように見えるが名前は女性的とは云えない。
ブラしとかないと形が崩れないかなーと胸を揺らす様子を見ながら暢気に考え。
「うんうん、じゃあ冷たくって甘いもの……アイスクリームなんてどう? いや、いっそパフェとか。
アイスクリームなら糖分にタンパク質も少しは摂れるわ」
牛乳はカルシウムタンパク質が豊富であることは云うまでもない。
相手が裏のある言葉を発していたが、読めないのか読まないのかそんな風にタンパク質補給、と決着させ。
「はいはい、そうね、今この瞬間にも人間の脳は糖分を使い込んでいるものね――この近くだったら……どこがまだ空いてたかなー……」
急かされてこくこくと首肯しながら、近くで遅くまで空いているカフェへと進路を取って。
やがて、少し入り組んだ路地の片隅で終夜営業のカフェバーに辿り着くと、
「どーぞ、ジャックさん」
と店の扉を開けて中へと促し。
■ジャック >
「そうだったかな。名前などわかれば何でもよかったからね」
などと宣いながら彼女と共に街を歩く。
そうして案内されたカフェバー。
その店を見れば口の端がにいと吊り上がる。
「やあ、ここは良い。ここは良いぞティアフェルくん。君、良い舌をしているね」
促されるままに店に入る。
出迎える店員を無視し、空いている席に座るなり、
「季節のスペシャルパフェを一つだ。ティアフェルくん、君はどうするね?」
びし、と人差し指を立てて注文。
明らかにメニューを把握している風。
まだ入り口あたりにいるであろう彼女へ視線を送り、早く座り給えと視線で訴える。
テーブルに身を乗り出し――ついでに胸をテーブルに乗せて――、身体をうきうきと揺らす姿はkまるで子供の様に映るだろう。
■ティアフェル > 「ふうん? そういえば話し方もそんな感じだもんね」
まるで自分で名前を決めたような云い方だと思いながら、名前だけではなく話し方もどちらかと云えば男性的であると改めて認識し。
こじんまりとしているが、酒と軽食、甘いものを提供してくれる店はこざっぱりとして気軽に入って寛げそうな雰囲気で。
店員は案内を口にする前に席に着く客に気忙しさでも感じたか肩を竦めていたが注文はきっちりと受けて復唱していた。
「うーん、うぅーん、そうきたらわたしもそれで! スペシャルパフェふたつお願いします!」
夜中にこってりたっぷりしたパフェは体重的な意味で少し気が引けたが――でも絶対前で食べているのを見ていたら羨ましくなると判断したので同じものを注文して彼女の正面の席に着き。
「季節のフルーツと云ったらやっぱり桃かしら、それとも南国の果物かしら……あー、こんな時間に罪悪感~」
と悩まし気にうねうねしながらも同じくわくわくと注文の品を待ちわび。
■ジャック >
「パフェに入っているのはクリーム、アイス、季節の果物――今の時期ならマンゴーか桃あたりかな? それにフレークと、おっと忘れていた、チョコソースもケチらずかけてくれよ!」
パフェの中身を指折り数える。
そして途中で思い出し、キッチンに向かって叫び。
「ええとなんだったかな。そうそう、とにかく入っているのは主に脂質、糖質だね。これらは身体の中でエネルギーとして使われるものだ。人体は使い切らなかったエネルギーを脂肪として貯蓄するので、貯蓄しないようにするには使い切ればいい。つまり運動すれば何の問題もないよ」
結局のところは食べた分は動け、と言うことだ。
至極簡単な話。
「運動は嫌いだと言うのであれば、うちで太らない身体にしてあげてもいい。この間までちょうどそれについての研究をしていたところでね。運動せずとも身体に脂肪が付きにくくする、と言うものなんだが、あとは実験して実証するだけなんだ」
女性であればだれもが夢見る理想の身体である。
「まぁ、代償として身体にエネルギーを溜め込むことが出来なくなるので、エネルギーとして使いきれなかった分は全部未消化で出て来てしまうし、エネルギーを溜め込めないから酷く燃費の悪い身体になってしまうのがたまに傷だが、まぁ些細な問題でもあるまい」
そんな欠点さえなければ、だが。
■ティアフェル > 「あー。ほんと、パフェっておいしいものの集合体よねえ。ケーキも大好きだけどパフェはお店でぐらいしか食べれないからついつい頼んじゃう。――んー。果物のパフェならわたしはフルーツソースがいいなあ」
頬杖をついて甘酸っぱい果物にチョコソースも悪くないのだが、なにせ暑いので口のさっぱりするソースがよいと厨房に聞えよがしに口にし。
「大体パフェが400~600カロリーとしてそれを消費するとなると15分今日走って90~100キロカロリーくらいだから、1時間半走り込まないと、だけど……食べた後で睡眠に入るとダイレクトに身体に吸収されることになるから、もっと運動が必要と思われるわ。夜中にそこまで動くのは無理だろうから、あとは頭脳労働だけど、食べたあとそんなことしたら寝オチ案件ね」
そう計算すると問題なしとも云えない。ふむ、と真顔で首を傾げ。
あとは今日食べた分、明日からの摂取カロリーで調整という手もある。
「うーん……実験体になるのはちょっとねえ……。痩せやすい体質として褐色細胞を増やすってのはひとつ手だけれども……」
それともまた違う手での痩身法らしい。けれども、代償と示された内容には問題を感じたもので悩まし気にアホ毛を左右に揺らしながら。
「やー……せっかくだけど、わたし冒険者としての活動もしているから燃費が悪いとそれはそれで困るので、遠慮しておくわ。
でも吐き壺用意してまで饗宴する貴族には打ってつけだと思うからそちらに売り込んでみたら良さそう」
食費や燃費などまったく気にすることのない富裕層であれば喉から手が出る程欲する者あるだろう。
食費の節約を時に考えなくてはならない平民よりもそちらに勧めれば大枚はたいてくれると笑って。
――そんな話をしている内にパフェが二人分、運ばれてくれば目を輝かせ。
「わーっ、やっぱりパフェはあがるわあ~。ちょうおいしそー! どこから食べようか悩んじゃーう」
声を弾ませながら、ガラスの器に綺麗に盛られた果物やクリーム、アイスの層をうっとりと眺め。
■ジャック >
「流石ヒーラー、人体に詳しい。これは実験体にスカウトするのはもったいないな。いつか助手でもやってもらえないかな。バイト代は弾むよ」
思ったよりも話が通じた。
半分世間話程度で、バイトに誘ってみて。
「お貴族様なら払いは良さそうだがね。ただ常に少量ずつ食べ続けていないと死んでしまう身体になるからクレームが多そうだ。遠慮しておくよ」
肩を竦める。
お貴族様に売り付けるなら実験ではなく完成品を持ち込まないといけない。
一度それで痛い目を見た。
「うむ、では早速――うん、甘い」
こちらは見た目には一切興味を示さない。
がっとスプーンを掴み、ずぼっとパフェに突っ込み、ごそっとすくって口に放り込む。
鯵に満足したのか頷いて、ばくばくと食べ進める。
■ティアフェル > 「んー。お医者さんからそう云われると嬉しいなあ。
いーよいーよ、困った時はお互い様。手が足りない時は声かけて。出来ることがあったら手伝うわ」
本業医者からすれば然程の知識はないけれど、それでも役に立つことがあれば喜んで、とにこにこと気安く請け合って。ひらあ、と手を振った。
「そーねえ、ただの金持ちならともかく。貴族のクレームは最終形態打ち首にまで発展しちゃうものねえ……」
金銭を得ることよりも安全第一である。どれだけリスクの説明をしてもトラブルが起きると理不尽なまでの苦情が捩じ込まれてしまう。
うむうむ、得心顔で首肯を繰り返しては、運ばれたパフェに躊躇なくスプーンを突き刺す様子に男前な食べ方やわぁ。と一瞬見守り。
「あ、融けちゃう融けちゃう……いただきまーすっ。んんぅ~本当。甘くて冷たくておいしい~。口角が自然と持ち上がる~」
くいくいと幸せに呼応して目元が緩み口角が上がる。幸せそうにアイスを掬っては舌で融かして冷たさを堪能し、滴りそうなソースを急いですくって舐め。
「やっぱり夏は氷菓に限るわね~」
■ジャック >
「お貴族様の独り占めも困るんだよね。そんなことをされたら救える命も救えないじゃないか」
何よりも人の命が一番大事だ。
いくら金を積まれようとも名声を得ようとも、たとえ正規の医者として認められたとしても、それがなされないのであれば興味はない。
「ところで君はパフェを食べる時に混ぜる派かい。それとも混ぜない派かい」
言いながら自分はぐしゃぐしゃにかき混ぜていく。
「混ぜない事による利点は味や触感の変化を楽しめると言うことだ。食べ進めるたびに違う味や触感が楽しめ、飽きることがない」
クリームとアイスとフレークと果物がぐしゃぐしゃに混ざったものを掬い、口へ運ぶ。
「一方で混ぜることによる利点は――利点はなんなんだろうね。改めて考えてみると特に利点はないような気がしてきた。全ての味が一度に楽しめる、とは言え、それなら全てを少しずつ口に入れればいい訳だし」
しかも見た目が汚い。
掬ったそれをまじまじと観察。
白っぽい茶色に桃とマンゴーの黄色が少しだけ見え、ところどころにフレークの薄茶色が見えている。
「――人間の腹の中を開いてしばらく放置した様な色だね」
■ティアフェル > 「そーね。そりゃまったく正論だけど……階級社会である限りは地位やお金がある人が何事も優先されるのよね……。
だけど、それが気にくわなきゃ助けたい人をわたしたちは助ければいいと思うの」
人命は尊ばれるものだが、金のある病人金のない病人では受けられる治療が変わるのが世の理のひとつ。
薬も知識も技能も相応に金銭の掛かるものであることは間違いないのだからやむを得ないが。
そこに異を唱えるのならば、平等に救うことだってできるのだと口元を綻ばせ。
「混ぜない派! 理由! ジャックさんの云っていることプラス溶けやすくなっちゃってゆっくり堪能できないから!」
素材の味を楽しみたいこともさることながら彼女の器の中のように融けて本当に見た目も悪くなってしまう。せっかく綺麗に盛られたパフェがもったいない。
作った人はがっかりするかも知れない。
「混ぜた方がおいしい物は混ぜるけどそうじゃなきゃねえ……。混ぜて食べるの癖なの?」
なんでも混ぜて食べたがる人は確かにいる。そしてそういうタイプは往々にしてせっかちだ。
混ぜてかっこめば早く食事が済む。
「今ハラワタの話とかしないで!」
■ジャック >
「私の場合は見付けた患者は全て助ける、だがね。見たところティアフェルくんは冒険者だろう。君の手に負えないような怪我人がいたら連れてきたまえ。死んでいなければ助けてあげよう」
どんな手を使ってでも。
文字通りどんな手段でも使うが、それはそれ。
「なるほど。出来るだけ長く味を楽しめる、と言うことか」
確かに混ぜることで余計な熱が加わったり高い外気と混ざることで溶けやすくなる。
溶けると甘味は強くなるが、食事としての質は落ちるだろう。
「いや? 混ぜて食べるとどうなるのか試してみた」
普段は混ぜずに上から掘り進めていく。
が、混ぜて食べる人もいると聞いて、そうするとどうなるのか気になったから試してみたのだ。
「しかしほら、このチョコソースとホイップクリームとアイスが混ざった色なんか、放置して酸化した血液と腸の中の宿便が混ざった色にそっくりだし、ところどころに見えるフルーツの黄色は――」
見てごらんよ、なんて言いながら彼女の方へスプーンを近付ける。
どこまでもデリカシーがない。
■ティアフェル > 「そっか、わたしはそこまでできないわ。これから人を殺す人とかは助けられない。
――うん、じゃあそうさせてもらうわ。ま、そんな重傷者には出くわさないのが一番なんだけどね」
肩を竦めて小さく笑いながら肯き。
四肢欠損、など欠損箇所が大きい場合は対応できないケースもある。
冒険者ならば時折そういう憂き目に遭う者も出てくるだろう。請け負ってくれるなら流そうと。
「そうっ、あと単純になんかもったいないしちょっとお行儀悪い」
弟相手ならやめろ、と小突くくらいはしているだろうが、初対面の相手の食べ方にとやかく云う筋合いではないことは弁えているので静観してはいた。
実験目的で混ぜたと聞いて、えぇ、と眉を寄せて。
「そしたら最後の方だけ混ぜるとかさあ……いや手遅れだけど……」
少々脱力気味に唸っていたが、
「ちょっとぉぉぉ!! そんな汚い話しながら食べるとかやめてくれる?! もぉ、やだこの人―ッ」
通りすがりに失せ物探しを手伝ってくれていい人であることは評価しているけれど、食べながらの会話が最悪だと露骨に嫌そうな表情を浮かべて近づいてくるスプーンを身を引いて除け。
■ジャック >
助けた人物が何をするかは、知ったことではない。
ただ自分の目の前で命が失われるのが我慢ならないだけだ。
「とにかくパフェは混ぜない方がいいと言うことが分かった。なんでもやってみなければわからないからね」
予測と結果が食い違うと言うことはしばしば起きる。
なんでも試してみることが大事なのだ。
たぶん。
「ふむ。冒険者のヒーラーなのだから死体や怪我の見た目には慣れていると思ったが。人を治すのならばもう少しそのあたりに慣れておいた方がいいと思うよ?」
彼女のリアクションにズレた感想を抱き、スプーンを引っ込めて口の中へ。
なるほど、彼女の言う通りドロドロに溶けて口当たりは悪いし、なんだか妙に生ぬるい。
パフェを混ぜるのはナシだな、と呟いてそれを次々と口へ放り込んでいく。
■ティアフェル > 「やる前から薄々見当はついてたんじゃないかと思うんだけどね……わたしもパフェはぜーったいに混ぜない」
その主義は今後も揺るがないと強く思う。
真剣な顔で口にすると、順序良く上からフルーツ、クリーム、アイス、と崩していき、味の違いを堪能しては、大分底が見えてきたところで、はふ、と満足げな息を吐き出した。
「それとこれが今何の関係があるの? 食事中にわざわざする必要がどこにあるの? 一緒に食事する相手に気を配るのは行儀で礼儀よ? それ以上したらフツーに怒るわよ?」
む、と眉をしかめて、さくさくしたフレークが水分を吸ってしなしなし始めているパフェの底をつつく手をとめて真顔で窘め始めた。
■ジャック >
「何事も経験してみないとわからないことはあるのだよ」
空になった器にカランとスプーンを入れて。
完食。
これはこれで良い経験になった。
「――あぁ、なるほど、そう言うことか。いや失礼。どうも私は人に気を配ると言うことが下手でね」
そう言われて初めて彼女が何を嫌がっていたのかに気付いた。
普通の人は食事中にグロテスクな話題などはしたがらないのだ。
頭を下げる。
「しかしそうなるとお詫びをしなければな。今日買ったものの中に何かあったかな……」
ごそごそと紙袋を漁る。
一応グロテスクなものが飛び出さないように気を遣いつつ探って、
「――あぁそうだ、これなんかどうだろう」
最終的に紙袋ではなく、ブラウスの胸元をガッと開く。
谷間に手を突っ込み、取り出すのは小さな小瓶。
「傷に塗ると固まって傷口を保護するものだ。固まっても伸縮性があるので邪魔にならないし、菌の繁殖も防げる」
それをテーブルの上に置いた。
■ティアフェル > 「一理あるけど、判らなくていいこともある」
それはぐちゃぐちゃに混ぜた後のパフェの味。
一生知らなくていいと思った。出来るだけ崩さずおいしくいただいたし今後も変わらない。
「どーも、そのよーね。ごはんの時は気を付けてくれればいいから――いや、そんなお詫びなんていーよ……」
もしも次に似たような機会があったら留意していただければそれで済む話。
お詫び、と紙袋を漁る音ががさごそと聞こえてくると慌てて首を振って。
「あー…うん、それはすごくいい品物だと思うし、お気持ちは嬉しいけど、本当に大丈夫だよ?
だってほら、悪気があった訳じゃないんだし…言葉でのことは言葉で補ってもらえば充分よ。
もらっちゃったら、気持ちで許すんじゃなくって物で許すみたいじゃない? だから、もっと困っている人にあげて?」
なんで胸の間になんてわざわざ入れているのかはさておき。なんだか人肌で生暖かそうな小瓶を見て、お気持ちだけいただきます、と。
■ジャック >
「ふむ」
良い、と言われた。
顎に手を当てて思案。
「――ならばだね。こいつは一応完成品ではあるのだが、まだ誰かに使ってもらったことはないんだ。自分で使って効果は間違いないのだけれどね。ただ使い勝手と言うか、自分以外の者が使ってどう思うかを知りたい」
トントン、と机の上に置いた小瓶の蓋を叩きながら。
「そこで君に使って貰って感想を聞かせてもらいたいんだよ。硬化後の肌への追従性とか、塗布する際の伸びとか、ダンジョンで使った際の耐久性だとか。気が引けると言うのならモニター代も出す。どうだろうか?」
両手を軽く広げて。
お詫びとしてではなく、試供品として、と言うこと。
こちらとしても感想が聞きたいのは間違いないのだ。
■ティアフェル > 「んー……。
うん、そういうことなら。ただ、わたしはヒーラーだからやっぱり治療には術優先になっちゃう部分も大きいから全部の結果を報告するのにはちょっと時間がかかるかも知れないけど……」
急に暑くなってくると暑気あたりをして街でもヒーラーとしての需要が増えて来て冒険に出ることが減ることもあり、すぐには報告を出せないかもしれないが、と前置きして。
「確かに、こういうものってどんな場面で誰がどう使ったかっていうデータは数欲しいものね。
わたしで良ければ使わせてもらうね」
ただ大した理由もなくいただく訳にもいかないが、使用感を報告することで相手にとっても利益になることであれば。
また、モニターはできるだけ多い方がいいというのも判るので了承して受け取ることにした。
■ジャック >
「では、よろしく頼むよ」
す、とテーブルの上で小瓶を滑らせて彼女の方へ。
ずっと胸元に入れていたにも関わらず、生ぬるくはなく、むしろひんやり少し冷たいぐらい。
「いや、これでも結構悪いことをしたと思っていてね。こういう時に受け取ってもらえないと言うのもそれはそれで結構気にするものなんだよ」
若干ホッとした様な顔。
形はどうあれ、受け取って貰えたのでヨシ。
「ちなみに報告はどのタイミングでもいいよ。しばらく使って気になったところをまとめてでもいいし、その都度教えてくれてもいい。直接あった時でもいいし、キリサキ医院に手紙など送ってくれてもいい」
■ティアフェル > 「う、うん、わたしなりにがんばるよ……」
と受け取ったはいいが瓶が冷たいことに逆に妙な顔をした。
変温動物か、この人は、と疑ったような視線を向け。
「こう、やるだけやってから、「やっちまったなあ…」ってなるタイプなのかな。
悪気はないって分かってるからそんな気にしなくていいんだけど……できれば、はらわたの話やめてって云った最初の方でやめてくれると今後は助かります」
本当に物とかはまったく要らないので避けたい話を畳み掛けてこないでくれるとそれで充分です、と何故か神妙な顔になって零していた。
気づけば器の底に少しだけ残ったフレークに遅ればせながらスプーンを入れて食べ切り、ごちそうさまでした、と満足したように食器を置いて。
「あーうん、わたしもなんやかんやあると、いついつこうして報告します!って云ってもできないことがあるから、また会った時でも良ければその時報告させてもらうね。
やっぱり手紙とかより直接伝えた方がいいだろうし」
試しに小瓶の蓋を取って中を覗きこんだり照明に透かしてみたりしつつ。それでいいか確認して。
■ジャック >
「今後は気を付けるよ。出来る限りね」
正直苦手な事ではあるが、彼女に嫌な思いをさせるのも本意ではない。
確約は出来ないが出来る限り努力する、と言う様なセリフ。
「それで構わないよ。今日みたいに街中で会うこともあるだろうし、たまにフィールドワークもしているから街の外で会うこともあるだろう」
会えなければそれはそれで別にいいし、なんならそれこそアポを取り合って会えばいい。
そこまで急ぐことでもないし、のんびりいこう、と。
「ちなみに使い方は普通に指で塗ればオーケーだ。あまり厚すぎない方がいいけれど、厚くても乾くのに時間がかかるだけで効果は変わらない。乾かすときは風を当てるより温めた方がより早く硬化する」
簡単に使い方を説明し、紙袋を持って立ち上がる。
「さて。私はそろそろ戻るとするよ。ありがとう、パフェ美味しかった――とは、うん、ちょっと言い切れないが、とにかくご馳走してくれてありがとう。申し訳ないがお先に失礼するよ」
ぐちゃぐちゃに混ぜてしまったから。
よく考えたらお礼にご馳走して貰ったものでやることではなかったな、と。
とにかくお礼を言って。
店員の言葉を背に、手を振りながら店を後にしよう。
――胸元を開いて谷間をバッチリガッツリ露出させたまま。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からジャックさんが去りました。
■ティアフェル > 簡単に使用法を聞いてなるほどと肯き。
できるだけ早く報告できるようにしたいが、余り期待はしないで、と眉を軽く下げて伝え。
お別れの科白に立ち上がって見送り。
「――うん、こちらこそ探し物見つけてくれてありがとう! 気を付けてね。おやすみなさい」
もう遅いしパフェもすっかり食べ終わった。頃合いだということは間違いない。
お礼の言葉にご丁寧にどうもと笑って手を振り、またねと告げて帰っていく背中を見送るとこちらも少し落ち着いてから、支払いを済ませごちそうさまでしたと店員に告げて帰途に着く。
深夜というよりも明け方に近づいて来た時間の夜風は程よく冷えていて、ほっと息を吐きながら大分灯りの消えた街を早足で過ぎ行くのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からティアフェルさんが去りました。