2021/04/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアランさんが現れました。
■アラン > すっかり夜も更けた平民地区の広場の片隅。一人の少年がとある店舗の石畳の階段に腰かけていた。店自体はもう閉まっているらしく、少年がそこに腰かけていても営業妨害にはならない。
そのあたり、少年も弁えているらしく、閉店後の店先を選んで腰かけたのだ。
王都に来て、数日。
それはもう、賑やかで物珍しくて、少年は都会というものをたっぷり満喫できたのだった。美味しいものも食べたし、珍しいものもいろいろと見た。時には王都ならではのケンカ騒ぎやトラブルなどにもぶつかって、難なく腕っぷしでクリアして、王都までの旅でのレベルアップ(?)を実感したりもした。
だが…しかし!
…まだ目的の冒険者ギルドを見つけて、冒険者として登録するという、当初の目的をちーとも果たしていなかったのだった。
「はぁ…。都会はほんとに広いよ、じいちゃん…」
かつては冒険者として鳴らしたことがあるという祖父が、王都というところはおまえの想像をはるかにこえたところぢゃ、と言っていたのを思いだす。
それでも、意地を張って自分で見つけようとしていたのはもうやめて、今日などはきちんと人に尋ねてもみた。
けれど、説明を聞いたところで、目的の場所までなんて、まったく辿り着けなかったのだから、これはもうしょーがない。
旅慣れてしまったうえに、気候もよくなってきているものだから、野宿が気にならないのも、いまいち緊迫感に欠ける原因のひとつだ。
ああ、今夜もテキトーに野宿かなあ、と。少年は王都の四角く切り取られた夜空を見上げて溜息をつく…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 春が訪れても、日が落ちてからの空気はまだ冷たさが残るころ。夜風に吹かれる身を縮こまらせて、カーディガンの前をしっかりとあわせた。
不足していた生活用品を買いこんだ帰り道。商品を詰めこんだ紙袋を胸元に抱き、とっくに店じまいを終えた商店街を背に、今の時間となっては静かな広場へと足を踏み入れて…普段ならそのまま通りすぎるところ、一軒の店先に蹲るような人影が見えて足を止めた。
目をこらせば、自分よりもすこし年下だろうと思える少年の姿。こんな時間にどうしたんだろうと首をかしげてから、声をかけようかと考えこむ。
この王都で生まれ育って、うかつな行動からトラブルに巻きこまれた事は一度や二度ではない。苦い記憶が甦ると、つい二の足を踏みそうになったけれど。
「……あの、…どうか、されましたか…」
生来のおひとよしな性格と、自分が孤児院出身だった事もあって、夜中に子どもが一人でいるのを放っておけなかった。
店先に座りこんだ少年の方へ、警戒されないように、そろそろとした足取りで歩み寄り、小さな声をかけて反応を待つ。
その間にも、どこか怪我をしていないか、具合が悪そうじゃないかと、少年の様子を観察して。
■アラン > 少年は、それはもう、ぽけー、と夜空を見上げていた。
四角く切り取られた夜空に綺麗な月が浮かんでいた。ああ、あんな色のオムレツ…食ったら美味いだろうなあ、なんてことを考えていたものだから、もしかしたら口の端に涎が滲んでいたかもしれない。
そんな、この上もなくおマヌケなところをたっぷり晒してから、ようやく少年は自分に声が掛けられたことに気づいたのだ。
「は、はは、はひっ!?」
まるで寺子屋でよそ見をしていたところを見つかった子供。
そんな様子で視線を眼の前の娘へと向けつつ、唇の涎を手の甲で拭い…少年は、それはもうマヌケなことを少しばかり照れくさそうに告げたのだった。
「いやあ…、そのう、えっと…冒険者ギルドに登録に行きたいんだけど…見つかんなくて」
でもって、宿も見つかってなくて、と。悪びれもせずにえへへ、と笑ったのだった。
少年にしてみればもう十分に暖かい。今夜も野宿…といったところで、街中だ。森の中の野宿なんかより楽だなー、くらいにしか、考えていなかったのだった。
■ミンティ > 少年の口元には、周囲の灯を受けて光る涎。加えて、空を見上げて、虚ろな表情をしている彼を見て、嫌な予感がした。まるで悪い薬でも含まされたあとのような状態だったから、思わず身構えて、周囲に視線を走らせる。
少年をこんな状態にした者がまだ近くに潜んでいるかもしれないと思ったから、とっさに警戒する。けれど聞こえてきたのは慌てたような返事だったから、予想外に元気そうな反応に、声をかけた自分までびくっと跳ね上がりそうになってしまう。
「っ…!…あ、あぁ…よかった。だいじょうぶ?…そうで」
なにかの事件に巻きこまれている最中ではなかったらしいと察して、ほっと胸を撫でおろしたい気持ち。
ただぼーっとしていただけなんだろうと判断すると、そろそろと、もうすこしだけ少年との距離を詰める。近づいてみると、やっぱり自分よりも年下だろうと思われる、男の子の顔。
「えと…、それで、野宿を……?…このあたりはまだ治安もいい方だけれど……夜は危ない、ですよ。
……宿をお探しでしたら、案内くらい……できます、けど」
事情を聞いて、王都の外からやってきた旅人なのだと理解する。慣れない土地にやってきたのなら迷いもするだろうと納得しつつ、心配そうに眉を下げる。
翌日になって、彼が本当になにかしらの事件に巻きこまれた話なんか耳にでもしたら後味も悪いから、お節介かとは思いつつも案内の役を申し出てみる。
■アラン > 「ほんとっ!?」
案内を。
その申し出に、少年の表情はそれはもう、わかりやすく明るくなった。
ぴょん、と勢いよく立ち上がると、少年はぺこりと素直なお辞儀をしてみせる。人様の親切には、きちんと謝意を示すこと。それはもう、厳しくじーちゃんに仕込まれていた。
けれど、少年はそこで何かに気づいたように言い淀むと、困ったようにぼりぼりと髪をかいて、こんなことをのたもうた。
「ああえっと…、その、もしよかったら先に…ギルドに連れてってくれるとその…ありがたいんだけど…」
曰く。
あまりに物珍しくて、それはもう色々と買い食いをしたり。
王都に来るまでの間の旅で消費してしまった薬草を補充したり。
見かけた武具屋に早速新調したい武器が見つかったりと…。
要は、宿賃をあまり使いたくない、というのだ。
「先にさ、ギルドに登録して…稼げるあてを見つけときたいんだ、おれ」
よっこいしょ、と。立てかけていた小さな丸盾をバックパックの上に背負いなおして。少年はそんなのんきなことを言う。
そして…。
「あ、おれ、アラン。アランていうんだ。おねえさんは?」
と、キラキラとした瞳で問いかけて…。
■ミンティ > 思いのほか勢いよく立ち上がる少年の元気のよさに、思わず気圧されたように、自分も行儀よく頭を下げていた。
これだけわかりやすく表情の変化を見せるくらいだから、平気そうに見えていて、実は相当困っていたのだろうか、なんて思い…その予想が次の少年の言葉で確信に変わったから、小さく苦笑する。
「……だめですよ。無駄づかいは、ほどほどにしないと。
ええと、それじゃあ…ギルドの方に。…夜も、開いてるんでしょうか」
自分だって見知らぬ土地に行けば、きっといろんなものを買ってしまったりするだろう。気持ちはよくわかるけれど、すこしだけお姉さんぶって注意をして。
それじゃあ、と歩き出そうとしてから小首をかしげる。ギルドと併設の酒場が夜まで賑わっているのはよく見かけるけれど、事務仕事の受付の方はどうなんだろう。
考えている間に、変わらず元気のいい声での自己紹介を受ける。自分はまだ名乗りもしていなかった事を思い出して、はっとして。
「……わたしは、ミンティ、といいます」
ぺこりと頭を下げて、自分の名を告げる。そして、とりあえずギルドに行ってみない事には始まらないから、まずは広場を後にしようと歩きはじめて。
■アラン > 「ありがとーっ!」
いやほんとにありがとう、助かりましたーっ!と少年は嬉々として礼を告げた。
さあ行くぞ、とばかりに歩き出しかけて、自分が案内を乞う立場であったことを思いだした。いかんいかん、自分が先に行ってどーするというのだ。
ここはおとなしくついていかねば、と少年はそそくさとミンティと名乗った娘の横…からやや後ろについた。
きちんとついていきます的な姿勢を前面に出し、それでもいよいよ目的地に着けると信じているようで、その足取りは軽い軽い。
■ミンティ > 夜空に響き渡るようなはつらつとした声に小さく笑ってしまいながら、少年が後から追いかけてくるのを確かめて、ゆっくりと歩きはじめる。そして小さな人影二つは、夜の広場から姿を消して…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアランさんが去りました。