2020/12/10 のログ
■羅翔 門 > 夜 空気が肺から吐き出されると白く凍る程度には、外は冷える
しかしそんな気温に関係なく、不意にこんな時間に目が覚めてしまった退治屋がいた。
目が覚めてしまえばなんだか寝付けない
朝食が始まるまでは仕込みもあり、朝方まではまだ遠い
両足のあるはずの場所から鳴る硬質な音が細く鳴る中で、外へと走りに出ては広場にて柔軟や、何もない宙へと脚を振り出す。
両足が短い袴風の折り目がついたスカートから露出するものの、黒のスパッツがのぞけるのみ。
細く宙を斬りつける音が響く中で、舞うように空へ跳んでは真横に腰が廻り、水平に突き出した足先
まるでそこに頸でもあるかのようにスッと通り過ぎた。
キンッと音を立てて着地するのなら、体はほんのりと湯気を出し、体は熱を表す。
「ったく、朝までは日が遠いわね……、適当に娼婦でも買うべきだったかしら……?
いや、値打首がいるほうが高い女が買えるわね……。」
足先を宙で高く持ち上げるままブツブツと、物騒な独り言。
もてあます体は、食い気も色気も飢えているかのよう。
■羅翔 門 > 硬質な音の正体は黒いニーソと革の防護で包まれた膝下までの両足と、゛その先が剣という義足”に置き換わっているもの
両脚を宙で打ち出し、切りつけるような動きは生足と謙遜無き動きを見せながら、ある程度動かし終わった体。
まるで冷えを感じさせないような振る舞いでも、汗を拭おうと携えていたのか、手ぬぐいで首や額を拭っていく。
カチンッカチンッカチンッと小さく鳴る鉄の足音を鳴らしながら、適当な段差で腰を下ろす。
人気もない広場はいい運動場だった。
しかし、一人体を動かすだけでは虚しい気持ちが少しある。
適当な相手でもいればな……と、その感情は果たしてどちらに傾いているのか。
「ちょっとは凍えてくれれば、布団も恋しくなるのに。」
そう言って適当な折れた枝切れを手に持ち、宙へ。
「ふっ!」 斬っ!
上段への蹴りによる斬撃が木切れを二つにきれいに分けるのなら、二つがクルリと回って上へと上がる。
その二つを払い落とすように、両足が左右へ弾いた。
■羅翔 門 > 体をほぐし終わり、一人寝付けぬ鍛錬も過ぎる
体がようやくぬくもりを恋しく感じれば、小さな眠気に任せるように宿へと戻るだろうか
ご案内:「王都マグメール 平民地区 広場」から羅翔 門さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > ―――がやがやと賑わう宵の喧噪。飲み屋や食堂などの飲食店や賭場や娼館などの遊興施設が立ち並ぶ通りはまだまだ宵の口とばかりに人々が多く行き交い、点る灯りは皓々と夜の底を照らし出していた。
沢山の足音がそれぞれの場所へ向かう中。人の流れに逆らうでも混じるでもなく、止まって蹲り路傍の小石と同等と化していた一人のヒーラー。
「………うぅ……張り切り過ぎた……」
疲労感の滲んだ声で呻いていた。
――それはここ最近では我ながら珍しくもなかった夜の姿。術が使えなくなり、魔法を取り戻す為に奔走し並行して生活費稼ぎの下働きをいくつも請け負って一日が終わりかける頃にはくたくたに疲れ果てて道の片隅で力尽きてしまう、という。
それは、いつもの現象のようで、実は今夜は決定的に違っていた。
何故ならば、
「………ヒーラーの仕事が、楽しすぎるなんて……」
疲労困憊ではあるものの、充実した様子で呟くそのヒーラーの魔法は、回復していた。
原因不明とされていたが、もともと無茶な使い方をしてガタが来ていた魔力回路が耐え切れずに故障してしまったせいだと判明し、またそれを治せる人物に施術してもらったお蔭でめでたく、ヒーラーとして返り咲きを果たせたのだ。
およそ2か月は完全に魔法が使えなかったものだから、使えるようになったことが嬉しくて嬉しくて嬉しくて、ついつい、張り切り過ぎてしまって―――結果、やっぱ力尽きるという。
魔力的にというより、あちこち駆けずり回って体力的に。ぐったり。
しかし、どれだけ疲れても好きな仕事ができるというのは幸せで、今まで出来なかったことができるようになって。じっとしてはいられずにがんばりまくった一日は、疲れ果てたとしても充実して、道端で丸く小さく邪魔にならないように行き倒れながら、にやついているという不気味さ。新手の妖怪もかくやというような様相。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティエラさんが現れました。
■ティエラ > 最近、酒場で噂を聞いた。知り合いの事なのだろうと直ぐに判った。判ってはいたのだけれど、冒険者としての依頼や、酒場での踊り子の仕事などが立て続いていたので、直ぐに会いには行けなかった。
それでも、仕事が終わった後に女は、彼女を探してみた。直ぐに会えるとは思えなかったが。しかし、足取りはちゃんとあり、判りやすかった。
「――――。」
そして、しばらく歩き、見つけた彼女は何やら凄い状態だった。
怪我をしているわけではなさそうなのだけれども、道の隅っこで座り込み、にやりにやにや笑っている姿は、ちょっと危険なお薬キメチャッタ系に見えなくもない。
ローブを身に纏っているフェイスヴェールを着けている女はゆるり、とそんな彼女にゆるり、と近づく。
しゃらん、しゃらん、とブレスレットが、アンクレットがこすれる音が心地よい金属音として、夜の街に響いて消えていく。
ある程度近づいてから、ふと、思い立ち、目の前から近づくのをやめて、道のわきへと移動し、壁沿いに、横から近づいていき、ローブの下にあるバックから、冷えているガラスの瓶を取り出す。
中には、スタミナドリンク―披露した体に染み渡る元気になるドリンク。
これはまあ、夜の営みに旦那さんが飲んで元気になる系のそれだけれど、女性が飲んでも元気になる。
媚薬ではないので、大丈夫なポーション。
それを、ティアフェルに近づいて、その頬にぴとり、とつけようと。
気配を隔してはないので、彼女が呆けてないなら気が付くことが出来るだろう。女自身、今日も甘い香水を身に纏っているので、その匂いもするから。
そっと、頬に近づくキンキンに冷えたドリンク。
■ティアフェル > 「――……ん…?」
一人「使える、使えるぞ、わたしは使える…」とぶつぶつ零してにやにやと悦に入る様子はかなりヤバそうだったが、それでも行き交う人々のある程度規則的な足音の中に混じる異音には、かなり迫っていた頃にぼんやりと察知した。
顰めた足音が、気配がこちらに近づいて来るような。
気絶するほどボロボロではなかったので、朧気に小瓶を手に近づく人影に反応するが、ちょっと遅かった――。
「ぅ、っひゃ…!?」
頬にぴた、と冷たーく冷えたつるりと硬質な感触が触れて、びく!と大きく肩を跳ねさせて小さく悲鳴を上げ。
驚愕に見開いた双眸でそちらを振り仰ぎ、
「び、っくりしたぁ……おねーさま! 脅かさないでよ~……」
双眸に映る鮮やかな紫の色。それだけで他と見間違えようもないローブ姿の踊り子の姿にほーと息を吐き出しながら、苦笑い気味に笑いかけて胸を撫で下ろし。
■ティエラ > 「お久しぶり、風の噂で聞いたわ?おめでとう。」
此方を見て、驚いている彼女、見てみるとそれなりに疲労困憊の状態になっていることが判る。何があったのだろうか、矢張りヒーラーと言うのは、激務なのかしら、と思う事もある。
それは其れとして、彼女の復帰を言祝いで、軽くぱちんとウインクをして見せる。
驚いている様子は、悪戯が成功したみたいで、ちょっと心が楽しく成るものね、なんて笑いながら。
「とりあえず、スタミナを回復するドリンクよ、本来は夜のお供、だけど……そんなに疲労困憊なら効果あると思うわ。
飲んじゃいなさいな。」
お疲れなあなたに、みたいなノリで瓶を手渡して、彼女の隣に立つ。
座ってもいいけれど、流石にこんな道の真ん中で、二人してベンチもない所で座るのはどうかしら、と思ったから。
とりあえずは、壁に背も垂れて、首を少し傾け、彼女を流し見ながらの会話。
「ごめんなさいね、余りにもぼうっとしてたから、ちょっと意地悪してみたくなったの。
こんな寒い所でずっといても仕方ないし、何処か、暖かな場所に移動しない?」
例えば、その辺の酒場、とか。
平民地区にも、色々と酒場は有るし、若しくはもっと落ち着いた場所。
バーとか、この間二人で行ったカフェ、とか。暖炉の日で温かい所で、寒くないところがいいわ、なんて。
■ティアフェル > 「え? あ……りがとう……すごい、早耳ね……」
一体この街にはどんな風が吹いているんだ。突風か?と術が回復して間もないのにすでに聞き及んでいたという言葉に目をぱちくりとさせて、それから、少し照れたように頬を掻いて。
「おねーさまにも随分お世話になっちゃって。これから、復帰してバリバリがんばるからお礼もしないとね!
――はは、ご丁寧にありがとう。精力つかないかしらー。発情したら恥っずいなぁ……」
などと返礼と軽口を云いながら受け取った瓶の蓋を開け、くいーと躊躇なく一気に飲み干し。ぷっはぁぁーと派手に息づいて。
「んくーっ、キくぅー……
……まったく、悪戯好きなんだから。ドリンクもらったから許しましょ。
――うん、そだね。元気出てきたし行こっか。おねーさまも今日はお仕事終わり?」
効き目抜群のドリンク剤は早々に効果を発揮して疲労感もなかなかに払拭してくれた。すく、と裾を払って立ち上がっては、おう、とお誘いに元気よく肯いて。
どこがいいかなと小首を傾げ。
「久々バーとか行きたいかな。ここら辺だとどの店がいいだろ」
ゆっくり落ち着いてお酒を呑む、という優雅な時間からは遠ざかって久しかった。折角余裕も出来てくるところだから、奮発しちゃおうと飲み屋が軒を連ねる通りを物色して。
■ティエラ > 「ふふ、冒険者は色々と情報収集が必要だし、酒場と言えば、情報が集まる場所でしょ?
腕のいい治療師の噂は、直ぐに広がるでしょう?だって、誰だって助かりたいもの。」
悪い噂と、良い噂、どれもこれもすぐに広がるものだ、もともと冒険者をしている彼女だ、同じ冒険者仲間から、彼女の復帰が流れるのはあきれるほどに速い。
多分、治療した人が、『わしが治療した』とか言いふらしているのかもしれない。
噂の出所に関しては、内緒ね?と人差し指を自分の前に置いておくことにする。
だって、情報は魔女にとっても死活問題だ、情報源をばらすなんてできナイナイ。
「ええ、ええ。頑張ってね?目標の鞄も、ちゃぁんと準備しておくから。
精力は付くわ、ええ。殿方用だもの、でも、媚薬とかはないから安心しなさいな、普通に疲れた時用の物よ。
―――お目当ての人に使う媚薬とか、欲しいなら作るけれど?」
そういった人は居るのかしら?飲み干した後に問いかけるのは、噴出されないように注意した結果でもある。
彼女の元気さは、時にそういう仕草に出てくるのだと思う物だから。
そういうコイバナも、興味あるわぁ?なんて。
「ふふ、今から冒険に出ても気持ちよく寝れるぐらいには元気になるはずよ。
ありがと、許してくれないっていうなら、体で払うとか、言い出すところだったわ?
仕事に関しては、そうね。基本的には、自由業だから、私の肢体と気にして、したくないときにはしないの。
乞われてという時は別、だけど、ね?」
元気出た、と言う彼女、もともと元気な彼女、普段の様子に戻ってよかったわ、と蒼く彩る唇フェイスヴェールの下で笑みの形に釣り上げ、目を細めて笑う。
問いかけには、時間はあるわ、と。そもそも、時間は作るものだし、彼女の為に作るのは吝かではないどころか、進んで作る積りよ、と。
「ここいらだと……そうね、この裏のBARとか、良いんじゃないかしら、静かで落ち着いているわ。」
今いる道、裏路地を通った反対側にあるBARが一番近しい所だろう、と。
確か、静かな店だったはずね、と、顎に指を置いて思い出しつつ。
■ティアフェル > 「っふ……預かり知らぬところで、わたしの優秀過ぎる能力の回復を見守られていたという訳か――やむを得ないことね!
………なーんちゃって」
調子コイて宣言してから、おどけて小さく舌を出した。そんな訳はない。治療してくれた術師が軽々に吹聴した訳ではないことは良く分かるのでそれ以外の出どころか……。そもそも施術氏は街にはあんまり出没もしていないから疑う余地はない。
一体どこの誰に注目されているのやらーと肩を竦め。
考えられるのは治療しまくった患者の誰かだろうと見当はついた。
「わー。そうね、それが楽しみ! これから冒険の日々に戻るに当たって資金を稼いで素敵な鞄、作ってもらわなきゃ。
いやー。薬がなきゃ惚れた相手一人煽れないよーじゃ19歳女子失格っしょ?
おやおやー、わたしの恋の遍歴のご興味が? その情報高くつきますわよ!」
コイバナ振られては、とても恋する乙女にゃ見えないツラでニヤつきながら相変わらずふざけた口調。
それなら初恋から滔々と一晩かけて、と余計な闘志を燃やすが――無論下らない冗談である。
「ん? それはいいのかな? 今からとか逆に目が冴えないかしら??
え? それなら許さないって云っとくべきじゃん、あー惜しいことしたぁー。
んー? そうなんだ。自由業の強みだね。安定とは引換えになりそうだけど」
時間の制約がない分、不安定さとの兼ね合いな自由業。自由に仕事ができるからと云っていつでも仕事があるとは限らないところがネックだなとしみじみ感じて。
しかし今夜はそれでちょうどいいと云えた。わたしの為にお時間ありがとうと殊勝な態度だが、にやつきがちなので緊張感はない。
「あー。いーね、じゃあそこにしよ。乙女二人、静かにグラスを傾けてやろう。絵になるぞー」
ならない。主にコイツのせいで絵がぶち壊しだ。間違いない。
フフフと可笑しな笑い声を零しては、彼女の云う店へ向かう。
表通りの喧騒の裏側は少しばかり森閑さを感じるほど落ち着いていて、女性客同士で入るにはちょうどいい雰囲気のバーの小さな入口が見えて。バーの入口って小さく作られてるのが好きだ、とその扉を開け。
バーテンにカウンターへ迎えられて、何飲もうーと弾んだ声を漏らした。
■ティエラ > 「少なくとも、貴女の能力の復帰を悦ぶ人が此処に一人いるわ。あと……そういえば、貴女の回復能力は、まだ見たことないのよね?
今度、見せてもらわないといけないわね。
フフ―――。」
調子のいい言葉に、彼女らしさが感じられるので、思わず笑みを零して見せ、なーんちゃってという姿を、目を細める。
こう、可愛らしい妹がいればこんな感じなのね、と思ってしまう、頭なでたいわ。
そっと手を伸ばして、頭をなでこなでこ、そういえば久しぶりね、アホ毛ちゃん。ちょっとアホ毛ちゃんを梳くようになでてみた。
「ええ。とりあえず、要望は覚えているから、追加注文ある時は何時でも言ってね。
薬に関しては、私は作って売る方だから、否定はできないわ?その人の性格次第だと思うの。
異性とちゃんと喋れない引っ込み思案な人には、そういう風にする必要もあるし。
薬を使ってでも、自分に振り向かせたいという執念……思いに手を差し伸べるのが、魔女だと思うわ。
それなら、その分鞄のお値段総裁で聞かせて貰っちゃおうかしら?」
彼女の過去を切り取るのだし、お伝えするなら、カバンのお値段を安くしてでも聞きましょう。
ね?どうかしら?と首をかしげて見せよう、25歳女、年下の女の子の恋の遍歴に興味津々。
「大丈夫、一時的な物だから、ちゃんと眠る事が出来るから。
許して、くれないの……?だったら、仕方がないわ……ティアちゃんに奉仕、するわ……。あの、連れ込み宿で。大丈夫よ、同性でも、忘れられないくらいに……ご奉仕するわ。
そうね、その辺りのバランスは、慣れてるけど、注意しないといけないわね。」
そもそも、冒険者と言うのは自由業の筆頭である。だから、女は二つ三つの仕事を持っている。どれも絡まり、今の状態。
それなりに、安定して稼げるようになっているのだ。
あと、連れ込み宿の件に関しては、完全な冗談、彼女はその趣味は無いと知っている。乗らないと判ってて誘惑はするし、乗って来るなら、本気で連れ込む。
「ええ。ええ。回帰祝いだもの、私が持ってあげる。」
彼女を誘ったBARは、とても静かな所で、髪の毛に白い色の混じった老齢のバーテン……恐らく彼が、マスターなのだろう、鮮やかな手つきでシェイカーを振っている。
店自体は大きくはなく、給仕や、ウエイトレスの姿が無く、老マスターが一人でやっているお店だった。
此処に来る客は、誰もかれも、静かに酒を飲み、談話をしている。
大衆酒場にはない静けさがその店に在る。
女は、さっとメニューを開いて、ティアフェルに渡す。
お好きなものをどうぞ?と。
■ティアフェル > 「ふふ、そだね、ありがと。――ああ、うん。ご披露するのはいーんだけど……ってことは傷病を負ってるってことだからねえ……こればっかりはなんとも……」
身体の不調がなければ発揮できないが、それはなるべく避けたいものだ。悩ましいなあ、と刻む表情に連動して揺らめくアホ毛が撫でる柔らかな掌に反応して、ぴこ、ぴこ、と弾むように揺れた。
「うんうん、お金貯めるよ。すぐに注文!とはいかないけど……。
ダメよ、好きな人には恥ずかしくってもちゃんと自分の口で話さなきゃぜーったい後悔する。
ズルは良くない。わたしが媚薬を使われた立場だとしたら、薬が切れた時にきっと大嫌いになる……。
だめだめ、それとこれとは別個よ」
その値引きは駄目だ、とまあまあお堅い脳の持ち主は立てた人差し指を横に振って見せてNOを示す。
媚薬に関しては、きっとその結末まで魔女の責任下ではないのだろうから、かなり余計なお節介だから、あー、ウザイかもとは云ってから少しバツが悪そうになったが。
「おっと、なんてオイシイんでしょ。じゃあ絶対絶対、ぜーったい許しませーん!ゲヘヘ。がっつり付き合ってもらうぜー。
明日のお仕事に支障がでるかもだぜー」
ドリンクが一時的とは聞いてそうかと肯いた後、超悪乗り。別に同性異性問わない方だが、揶揄には乗らないと廃るってもので。エロオヤジ化してみせた。
百年の恋だとて絶対零度に覚めるような下世話さで。
「えぇー…? い、やあ、でも、そんな悪いなあ……――やったあ祝いだ宴ー」
遠慮の素振りを見せるが、完全に素振りだけだった。快気祝いと聞けば、わーいわーいと無邪気に喜んだ。渋いおっちゃんバーテンだ。もうそこで絵になってる。
ダンディだーと密かに静かに盛り上がり。
メニューを渡されてしまったところが、もう、バーではおのぼりだと感じられたということで、若干照れくさそうに、ありがとうと頬を掻いて。
「ん、じゃあ……コアントローが飲みたいな。それを使った爽やか系のカクテルとか、お願いできますか?」
オレンジで作ったリキュール、薫り高く甘いお酒が欲しくて、熟達した雰囲気のマスターに注文し。
楽しみーとわくわく待つのだ。
■ティエラ > 「大丈夫、もし、傷ついたとしても、ティアちゃんが綺麗に、後も残らず消してくれる、そう信じてるわ。」
彼女の実力は知らないけれど、彼女の知識は、薬などに関する腕などは、信頼していい物だと思って居るから、女は悩まし気にしている彼女の頭をなでて見せる。
現に、最初であった時の解説書は、初心者用のものではなかった、それを理解する知識があったのならば、魔力が戻るなら。
それに、自分の渡した治療用の符を見て、その効果も把握していたはずだから。彼女ならきっと大丈夫だと、信じられる。
「貴女のペースで良いのよ、ええ。必要な額が溜まったら、何時でもドウゾ?
ティアちゃんのご予算に合わせて、いっぱい、素材取り揃えておくから。
媚薬の是非に関しては、それは、お話、として聞いておくわ?ティアちゃんの正義は其処に有るという事だから。
―――ね?
あと、ふふ、ざんねん。じゃあ、お高いお金払って、ちゃんと聞かないとだめね。」
薬に関しては、話を切ってしまおう。色々な人がいる。彼女のように、使うのも、使われるのもだめだという人がいれば。
逆に、薬などで自分を発破しなければ、まともに会話もできない人もいる。色々な感情、色々な考えがあるものだからこそ。
彼女の考えは、そういう物だ、と言う理解を行う。彼女は薬での―――媚薬での愛は、嘘と考える。そう捉えるだけ。
否定も、肯定もしない、受け入れて、飲み込んで、理解するだけの事。
だから、ばつの悪そうな表情をする彼女に、大丈夫よ、と。笑って見せる。
そして、カバン値引きでお聞かせ願えないのは、残念だった。しょんもりとする、25歳児。形のいい眉をㇵの字にして、心底残念を伝えた。
「仕方ありませんわね?そう仰られるなら。お酒を飲んだ後は、一緒にお宿に行きましょうね。
いっぱいご奉仕いたしますから、踊り子の腰振りを、堪能くださいませね?」
悪ノリするなら、更に乗っかってしまおう女。彼女のような元気な子は好みだし、本気で連れ込んでしまいましょう。
目は補足、舌なめずりする様は、獲物を前にした肉食獣。
良いのね?なんて優しい問いかけはしませんよ?
それに、下世話な言い方程度で、引くような、軽い女でもありません。今までの彼女との交流で、判ってますから。
「もう、可愛いんだから。」
くす。思わず笑みが零れてしまう、そんなに喜んでもらえると、奢る方としても、とても嬉しい。
一番お高い物でも、良いのよ?なんて。
しずかに、グラスを磨く老マスターは、低く静かにいらっしゃいませ、とこちらに伝えてくれる。
カウンターに座る彼女、その隣に腰を掛けて、ヴェールと、フェイスヴェールを外す女。
ちゃんと今日も、紫薔薇の髪飾りは、頭に付いていた。
「マスター。コアントロー系のカクテル……サイレントサードなんてどうかしら、私は、ヴァイオレットフィズを。」
彼女はオレンジ系のカクテルで、此方は紫の色。完璧な愛と言う意味のパルフェタムールをベースにしたフィズ系のカクテル。
マスターはコアントロー系のカクテル、スコッチの風味と、爽やかさのあるあじ、そして、最後にオレンジ系の甘い香りのある物で、それを提案してみる。
■ティアフェル > 「そりゃー、お姉さまの怪我ならば痛いと感じる間もなく意地でも全快させるけどぉー。痛そうなの見るのは嫌だなー」
負傷の現場には進んで立ち会いたくない。信用してくれているのは嬉しかったがやはり少し複雑そうな顔をした。
ほんとの姉のように頭を撫でる所作に少しくすぐったげな表情を浮かべ。
「うん、じゃあそれを励みにガンガン稼ぐ!
うふふ、素敵な鞄ーいっぱい入る魔法の鞄ー。
売るなとは云わないわ。商売だからね。だけど、使う奴はやっぱり『このズル!』って思う。
わたしのコイバナ、売れるのか」
今しがた初めて知った。ふむ、と訳知り顔で顎に手を当てて肯くが。戯けているだけではある。
媚薬に関しては流通している限りはそういうものだと放っておくが、使用者がこちらに矛先が向いたら敵意剥き出しにはする。
「ふぉふぉふぉ。わしに奉仕したいとは酔狂なおなごじゃー。
……わたしゃどこの悪代官なんでしょねー……」
かなりな勢いでアホなノリを見せて悪代官さながらのいやらしさと下世話さを演出したが、そろそろ突っ込みが欲しかった。
不在なようなので仕方がないのでセルフ突っ込みした。
地雷を勢いよく踏んでいるが、ほぼほぼ気づいていない。
「でへ。恐縮でーす。
やあぁ、タカるようで申し訳ないねえ、お・さ・け・お・さ・けー」
奢ると云ったら何も考えず一番高い物、なんて注文して自分の好みに合わない物が出て来て、ざまあな目に遭った人を知っているから、高い物よりも飲みたいものにします、と慎重にオーダー。
お金を出してもらうからには一緒においしく楽しく、飲まなければと。
彼女の髪を飾る薔薇は今日も誇らしに見えて、気づくと知らずに笑みが零れた。こういうところに優しい人間性を感じてほっこりし。
「わー。それ飲んだことない、んーとメニューにもあるね……これか。
おいしそー。ぜひぜひそれで」
適当にオーダーすると的確な品を選んでもらってメニューで確認し、嬉し気に目を細め。楽しみ!とわくわく待つ。
彼女のオーダーもメニューで確かめては、ほほう、と感心。イイ女は似あう酒を熟知しているのねと。
それから注文を待ちながら歌うように口ずさんだ。
「えへへ。今日はいい夜ー。魔法は使えてしっかり働けたし、おねーさまと素敵なお店でお酒は飲めるし」