2020/11/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 商店街」にスバルさんが現れました。
スバル > 平民地区の商店街は、今日もにぎやかな喧騒に包まれている。行き交う人々は楽しそうで、商人たちは大きな声を上げて客を呼び込んでいる。
そんな商店街のなか、バックパックを背負った少年が、八百屋の前にいる。
その少年は、未だ大人とは言えない年齢の子で、服装としては、他の子供と同じような、市民の服、身長は小さい。
身を守る為だろう、腰には重そうに脇差を差していて、右腕には、籠手を嵌めている。
前髪を伸ばして、目元を隔している少年は、その手に、リンゴを二つ手に取って、見比べていた。

「うーん……今日のご飯のデザートに……アップルパイ、とか。」

今日の夜ご飯の献立と、その後のお楽しみのデザートを、真剣に考えていた。
家に家族が帰ってこないというのは、こういう所は良いかも、と思ってしまう、甘くておいしいデザートを独り占めできる。
自分作るのは一寸手間だけど、甘い幸せを独り占めできるなら、それはそれで必要な犠牲なのだ、と。
こっちがいいかな、あっちがいいかな。
少しでも同じお値段で、良いリンゴを手にしたいな、と、必死に目利きをしていた。

スバル > 「こっち、にしようかな。」

暫くの間、矯めつ眇めつしながら、リンゴを一つ、二つ選んでそれを、八百屋のおじさんに手渡す。
買い物はそれで終わりではなく、野菜も買わなければならない、作るものは決めているので、ジャガイモと、ニンジン、玉ねぎ、キノコを買い込むことにする。
それらも、ちゃんと一つ一つを真剣に眺めて、選んで買うので時間が掛かってしまう。
それらを買い終えたら、代金を支払って、バックパックに入れてもらう。
八百屋のおじちゃんがお使いえらいな、と言ってくれるので、ありがと、とうつむきながら言うのだ。
慣れた人ならば、少しは会話できるが……まだまだ、知らない人は怖い。これでも、かなり慣れてきている、といって良い。

次は、何を買おうか。
買うべきもののメモをカバンから取り出して、てこてこ、と道の端を歩いていく。

スバル > てこてこ、と歩いて見つけた先は、肉屋さんだった。

「えと、これを……ください。」

豚肉を、600g家族分の肉を買って、それを包んでもらって、バックパックに入れていく。
序に、ラードを少し分けてもらい、お金を支払う。
他に何かないだろうか、とメモを眺めてから、あ、と小さくつぶやいた。
大事な物を買うのを忘れていた。

雑貨屋さんに行かなきゃ、と少年は少しばかり駆け足になる。
早くしないと、雑貨屋さんが終わってしまうかもしれないから。
少年は、駆け足で、雑貨屋さんに向かう。

は、は、と白い吐息が冬の空気によって白く吐き出されて、もう、冬なんだな、なんて、思う。

スバル > 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。」

背中のバックパックが重い、大人用であり、買い物を一杯買ったからこそ、重くなっている。
だから、少年は体力が少ないので、直ぐにばてたり疲れたりしてしまう。
呼吸を整えながら、到着した雑貨屋の入り口を見る、まだ、明かりがついていて終わっていないようだ。
良かった、と安堵しながら少年は店の扉を開く。
からん、ころんと、ドアベルが鳴り、少年の来客を店員に知らせる。
この店の主人は確か、温厚そうなおばあさんで、ゆっくりと奥から出てきてくれる。

「あの……こんにちは、チーズと、ミルクを下さい。」

今日の食事に必要な、チーズとミルクを買い、少年は雑貨屋から出る。
よかった、と買えたことに安堵してから、少年は店を出て。

買い忘れは無いか、と最後の確認をする。
無ければ、もう帰ろう、と考えながら。

スバル > 「……よし。」

買い忘れはなさそうだ、荷物を確認して、買い物メモも確認したが、大丈夫だった。
家に帰って、ご飯を作ろうと、少年はうなづいた。

「でも。」

何時もの事だけれども、家に帰って、誰もいない。ご飯を作っても、食べてくれる人がいない。
両親は生きているし、お金は入ってきているけれど。
姉も遊びに出ていて、家にいないし。
時折、寂しくなる。

「―――――。」

大人だったら、もっと強ければ、悲しくないのかな、声に出せずに少年は泣く。
一人で生きてるわけではないけど、とても、とても、寂しい。
帰って、ご飯を作らなきゃ。
とぼ、とぼ、足が重いけれど、動かさなければならなくて。
走った時の疲労が、全身に重く感じつつ、少年は家路に戻った―――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 商店街」からスバルさんが去りました。