2020/09/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエリナさんが現れました。
■エリナ > 『人形の花園』。
そう看板が掲げられた平民地区の郊外に位置する、以前はとある人形師の工房であり今はその人形師の遺作となってしまった命ある人形が表向きは花屋、裏では女性の欲を満たし心を慰める為の秘めたる花園でもある店舗。
店前、店の周囲、店内迄色とりどりの季節や土地も、美醜すらも問わず等しく花だからと仕入れ、育て、飾られたそこ。
その店内、カウンターの向こうにある上品な座り心地が良い赤い絹で優しく重量を受け止めてくれる富裕層でも利用される事がある椅子に鎮座するのは他ならない店主たる人形。
行儀よく両手を膝の上に置き、頭は少々傾ぎ、両目を瞑り、開け放った入口扉から入り込む緩やかな風に菫色の前髪を遊ばせて。
つまり、寝ていた。
「――――。」
人形は眠らない。眠る必要がないからだ。
そう解釈する者もいるかもしれないが、この精緻な外見上は人間の娘と区別が困難な人形は眠る事が出来た。
人は記憶や物事の整理、疲労回復の為に睡眠をとるらしいが、この人形の場合は単に時間を潰す為であったり何と無く見様見真似であったり、事実として必要だから睡眠をとるのでなく娯楽的な意味合いで人のように休息をとるのだ。
今日の花の手入れを済ませ、外は昨晩の雨とは打って変わって穏やかな天候。
差しこむ日差しが温かくて、眠たくなるような心地よさとはこういう事だろうと自分も休息をとることにして。
勿論来客が来ればすぐに察する事ができるが、来客がなければこうしてさぼっても誰も文句は言わないであろう。
生憎と呼吸が必要ないため、寝息を立てる事がなく、自分が死んでいると客が勘違いしてしまわないかだけは懸念があったが。
■エリナ > 夕刻。
地平線の彼方に沈み始めた太陽が地平に墜ちて融けていく暖色を瞼の裏に感じた人形は目を覚ました。
幸い、寝ている間に来客はなかったようだ。
裏の仕事は夜間でも受け付けはしているが、表の花屋としての仕事は店仕舞いとしよう。
人形は席を立てば、人の真似をしうぅん、と細腕を頭上に伸ばして背伸びしてから閉店の準備に取り掛かって。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエリナさんが去りました。