2020/08/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/郊外「人形の花園」」にエリナさんが現れました。
エリナ > 「~~~~♪」

平民地区。
このマグ・メールのある意味正しい本質を表すような絢爛豪華な富裕地区と対照的な欲の掃き溜めの如き貧民区域の中間に位置する、どっちつかずでもありいつどっちに墜ちてもおかしくない狭間の地区。治安は良いが、それが絶対的安心などではないとこの国に住まう者は知っていることだ。

そして、そんな平民地区の郊外。
決して大きな店でこそないが、娼婦や娼夫が花を売るのでなくそのままの意味で店先に様々な種類の客寄せの見栄えが良い花を並べ、店内にも元は人形師の工房であったそこを改装し上品な大小様々な花を取り揃えた店。花々の発する香と華やかさに包まれたまごう事無き花屋。

掲げられた看板には「人形の花園」。

そして花だけでなく花を用い半ば趣味で作った花細工の極彩色のぬいぐるみや、花の香を閉じ込めた石鹸等といった商品を陳列し、花に小さめの如雨露を手に水を撒いたり剪定をしてと独りくるくると仕事をする仕草一つ一つ何処か舞台上の芝居じみていて踊っているようですらある小柄な少女。

住宅街や表通りからも離れた辺鄙な不便な場所にわざわざ店を構える等変人か訳アリが大半だが、事実としてこの店は訳アリの店に属する。

無論、見た通り普通の花屋としての仕事もしているがこちらは趣味の領域だ。
亡き創造主に手向ける花を育てているうちに始まった、本業の隠れ蓑。

女性専門の、本人曰く悩み相談所。

その手段が概ね性的なものである為に娼館に近いのかもしれないが、根底にあるのは金目当てや生きる為に止む無くといったものでなく自身の存在意義と他者の幸福。真っ当な商売とは言い難い。

昔からこの地区を知る者はこの少女が昔から姿形が変わらず、時折客を招いては長時間店を閉めておおよそ花屋らしからぬ事をしていることもバレているが、それこそ数百数千と年月を生きた魔族を始めとした人外が平然と街中で店を構えているような国だ。
生きた人形が道楽的に二重の意味での花屋を営んでいても不思議ではないと今日も平穏に店を開ける事ができているのは表立って何か不都合でも起きない限り放っておいても害はないその他大勢の枠組みだからであろう。

だから人形は外見だけなら人と判別のつかぬ少女然とした朗らかな笑顔で鼻歌交じりに花を愛でる事が出来、今日も来るかもしれぬ客を待つのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/郊外「人形の花園」」にリムリアさんが現れました。
リムリア > 石造りの建物が主な街中にあって、花の香りが溢れるばかりの此処はまさしく花園の名前に相応しく。
これが富裕地区であったなら、貴族の庭園かと見間違えたことだろう。
けれども、そこは平民地区の外れにひっそりと佇んでいて、およそ貴族の邸宅とは思えない場所。

甘やかな花の香りに誘われるようにして、裏通りを抜けた先に、その店はあった。
ちょっとした用事で街に出たけれど、思ったよりも早くに用事は終わって、時間を持て余していた矢先。
散策のつもりで普段は使わない裏通りへと足を踏み入れた小さな冒険の結果がこれだった。

掲げられた看板を見る限りは、花屋のようではあるけれど、その言葉がそのままを意味するかどうかは分からない。
それに一見すれば、何かの工房のような建物にも見えるから、少し足を踏み出すのに躊躇もしてしまう。
そんなわけで、そっと近づいて。背伸びをしたり、飛び跳ねたりして、窓から中の様子を覗いて見る光景は、
傍から見れば怪しい人物とも見れるかもしれない。

それでも、見咎められずに中を覗くことができたなら、店内と思しきフロアにも、色とりどりの花。
どうやら、本当の意味で花を扱っているらしいと理解すると、今度こそその扉に手を掛けようか。

「―――お邪魔します。」

控えめな、そんな声を掛けながら扉を開くと、より一層華やかな香りが少女を出迎えてくれる。
ぶわっと濃厚な香りに包まれ、そのまま足を踏み出すのも忘れて、瞳を瞬かせ。

エリナ > 「――まあ。いらっしゃいませ、野ウサギのように可愛いお客様。今日は何のご入り用かしら?」

ちりん、と軽やかに鈴の音が店内に鳴り響き来客を告げる。
花弄りをしていた手を止め、顔をあげる店主にして店員、独りで営業をしている少女人形は宝石の如き煌めきを閉じ込めた双眸と白い肌をした面貌を持ち上げ扉へと顔を向ければ、黙すれば外見通り人形のそれの怜悧な精緻なる造形が与える無機的印象を払拭するかの如く朗らかな笑顔と歓迎を表す調子をあげた軽やかな声音で出迎え。
先程、外からちょっと背が足りず窓を跳んで覗き込んでいた相手に気づき、その愛らしい仕草を野ウサギと例えてみてくすくす鈴の音を転がすように笑みを零すと店内の花々を一望。

作業するには不向きな靴に着飾った華やかな衣装のアンバランスさは違和感があるかもしれないが、今は未だ来店の意図が読めないうちはあくまで花屋として応対する事に決めれば相手の素朴な可愛しさに見合った花は、と淡い青色に星型の花弁を持ち、花を育てた経験がない初心者向けの宿根草を一輪手に取り、とてて、と何処か芝居がかって相手の許へ近づいて。

「はい、どうぞ。これは私から、新規のお客様へのプレゼントよ。お水をやらなくても育つから、もし良かったら。」

リムリア > ドアベルが軽やかな音を奏でて来店を歓迎してくれる。
けれども、その涼やかな音色よりも、向けられた少女の声音の方に意識を奪われてしまう。
可憐という言葉がこれほどまでに似あう相手を、これまでには見たことはなく。

人形のような美しい姿―――にもかかわらず、小さな唇から紡がれる声音は鈴の音よりも軽やかで、
表情を彩る笑みは店内に咲き誇るいずれの花よりも、彩り鮮やかなもので。
おもわず、ぼんやりと見惚れてしまうのも、無理からぬことではあったかもしれない。

「えっと――……ここって、花屋…で、よろしいんでしょうか?」

決して短くはない間、そんな間の抜けた姿を晒してしまってから。
目の前の少女に問いかけられているということを、ようやくにして理解する。
慌てる――にしても、まだ思考が呆けたまま。
野ウサギと称された、その理由もよく分からないままに、緩く首を傾げて見せる。

「え? いいんですか? ありがとうございます。
 可愛らしい……って、水を遣らなくても…? そんな花があるんですね……」

花屋と思しきお店に来ただけで、売り物の花をただで貰ってしまって良いのだろうかと、逡巡してしまう。
けれど差し出された花は、店員らしい少女のそれに及ばないにしても、可愛らしいもので。
淡い青色の星が涼し気で、気に入ってしまう。
ほんの少し迷う素振りを見せたものの、素直に受け取ることにして。

ただ花を渡すというその仕草だけを見ても、絵になる少女。
黙って佇んでいたとしても、当然絵にはなるのだけれど、にこりと微笑まれたならば、何故だか顔を赤くしてしまいそうで。

「ごめんなさい、偶然通りかかったら、とてもいい香りがしたもので……
 よろしければ色々見せていただいても?」

花屋だと信じて疑わないままに、改めて店内をぐるりと見渡し。

エリナ > 「あら?お客様ー?ーー嗚呼、良かった。外は暑いからフラフラしたのかと心配してしまったわ?」

野ウサギに喩えた来客。愛らしい仕草もそうであったがこの退廃に沈む国において未だーー少なからずその退廃の毒に蝕まれてはいるとしてもーーそのような反応は逆に何かとおマセな子が多いものだからかえって希少であり、微笑ましく感じて仕方ない。

けれどもそんな相手が一瞬、よりもやや長めに何か心在らずな様子だったものだから今度はきょとんと目を丸くし長い睫毛をぱちり。それから不安げに眉根を寄せ、自分より背丈は高い来客の少女を見上げ様子を伺って声をかけてみたが幸いその放心は長く続かず反応が返ってくれば、ほう、と息を吐き胸元に矢張り花や土を扱うには適さぬ上質な仕立ての白手袋を嵌めた手を添え今度は安堵のそれであるが笑顔を取り戻して。

最近めっきり暑くなり、人間が倒れるという話もちらほら聞いていたから心配したが杞憂で済んだようだ。
何せ人形の己には、一応花の管理の為冷房は効かせているが人間がそれでも暑いと感じるかどうかは本人の反応を見て確かめないと判別がつかないのだ。

質問に対しては、相手が花を受け取ってくれた事で空いた手を宙に滑らせ食指を自分の唇に添え。
少女然とした笑みにほんのり蠱惑の艶を混ぜ、双眸を細め表情を作り。

「ええ、ええ。勿論よ、お客様。だって此処に居る子たちは皆誰かの日常に彩りを与えたり、誰かの幸福の為に捧げられたりを待つ子ばかりですもの。だから、貴方が大事に愛してくれるなら、貴方が幸せになれるならこの子も幸せなのよ?……ーーふふ。ええ、花屋さんよ、野ウサギさん。でもね、此処は人に言えない悩みを打ち明けて、気持ちを軽くしたり、慰めたり、身と心を満たす場所でもあるのよ?」

とん、と一歩前に更に歩み寄る。
相手に似合うと信じて選んだ青星の花を受け取ってくれた事に対して素直に喜んだのに反した艶を孕んだまま、相手の内に秘めた悩み、欲は無いかを覗き込むように片方だけ隠された琥珀色の綺麗な瞳の底を見据えようとしながら小首を傾げ、一字一句に甘い吐息を絡めて囁くように、唄うように、誘うように、直接的にどのような場所でもあるかとは言わずに答えを返し。

ふ、とまた表情を柔らかく子供らしいものに戻すと一歩下がり、くるり、スカートの裾を翻して廻ってからつい、と裾を摘んで半歩足を下げ軽く背を傾け。

「ーーなんて、ゴメンなさい、お客様?ちょっとだけ、可愛いお客様だからついからかってみたくなったの。ええ、勿論好きなだけ見て行って頂戴?皆私が大事にだいじに育てた子なのっ。」

決して嘘はついていないが、偶然立ち寄った相手にその欲が無いならあえて店の裏へ案内することはすまい。
からかっただけ、と保険の前置きはしてから人形はもし相手が花を買わずとも、これもまた嘘ではなく自分が育てた自慢の花達を見てもらえるだけでも嬉しいからと両手を広げ一々やや大袈裟な仕草で歓迎して。

リムリア > 「えと―――……」

じっと見つめられると、まるで金縛りにでもあったかのように身体が動かせなくなってしまう。
無垢で可愛らしい少女と、そう見えていたのに、ほんの少し仕草が変わるだけで、雰囲気が一変する。
その容姿に似つかわしくない艶めいた表情。
嫣然とした笑みに、思わず気圧されてしまい。少女がこちらへと一歩距離を詰めると、無意識に息を呑んでしまう。

「―――ひ、人に言えない…悩みを……?」

碧玉のごとき瞳に覗き込まれると、そこから心の中までもが見透かされてしまいそうな、そんな感覚に陥ってしまう。
耳朶を擽るような、甘く優しい少女の声。まるで歌うようなその旋律に身を委ねてしまいたくなる。
その声で囁かれるのならば、出会ってまだ数分の相手ではあっても、普段は隠している心の中でさえ、知られてしまっても構わない。
そんな誘惑に駆られてしまいそうで―――

「あ……えと、揶揄われちゃった……?
 そ、そうなんだ……」

先ほどの艶めいた仕草は見間違いだったのかと、そう思ってしまうほどにあどけない表情。
ぱちぱちと瞳を瞬かせながらも、もじ、と小さく身体を揺らす。
こんな可愛らしい子を相手に、はしたないことを考えてしまったなんて言い出せるはずもなく。

「えぇ、と……じゃあ、見せて貰っても良いかな。
 あと、その……ここって、カウンセリングみたいこともしているの…?」

先ほどの甘い蕩けるような声音をもう一度聞きたい。
そんな期待を込めて、有耶無耶になってしまった先ほどの話題を再度口にしてみて。

エリナ > うふふ。だって反応が面白くて、つい。花をプレゼントしたお代と思って、どうか許してくださいな?」

琥珀の揺らぎ。
奥に孕む欲。
それは何に起因するものかは未だ分からないが、相手には心に秘めたものがあるのは確かに見て取れた。

冗談だと前置きした際の相手の反応は安堵というよりもーー羞恥を感じさせる身動ぐ相手が今や店内の花ではなく、この花屋の本当の花、店主であり店員であり、商品でもある己への興味、或いは期待から尋ねる問いに一瞬の沈黙。

「ーーええ、そうよ。私、人の助けになる事が好きなの。だからもしお客様が私に打ち明けてしまいたい悩みがあるなら、堪えて生きるのが苦しいのであれば。どうぞ花に囲まれて、癒されて、心落ち着かせながらお話を聞かせて頂戴な?私に貴女の心を開いて、何もかも曝け出して。ね?」

自分は人形でしかないが、だからこそ人間が人間同士には吐露できぬものを露わに出来る事もあろう。

甘く、優しく、決して相手が抱いた想いを否定せず、それを浅ましいともはしたないとも云わずに柔らかく相手に語りかける。

相手がこの店を訪れたのは偶然であってもこの店、己と出会う事で相手の心が軽く出来る手伝いができるなら喜ばしい事だ。

相手の答えを待つ間に背を向け、奥に備え付けられた扉の前に立ち、きぃ、とドアノブを廻し半分開く。

相手の願望次第ではこの部屋から更に地下へと案内することとなるのだが、先ずはこの花園の本当の入り口である相手がカウンセリングのようなものと称した通りに相手の望みを聞き出し、解決する為の机や来客用のソファーがあるが来客室には本来置かれない寝台が備え付けられたその部屋へ通そうとして。

もし相手が望むなら、甘く、脳を、心を蕩けさせるような声で囀ろう。
求めるなら、その身を慰めよう。
畏れなくても良い、と相手に声には出さず促しながら相手はこのまま店を出る道と、心に従い奥へと進むどちらかの選択肢を選ばせーー

ご案内:「王都マグメール 平民地区/郊外「人形の花園」」からエリナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/郊外「人形の花園」」からリムリアさんが去りました。