2020/06/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエリアさんが現れました。
エリア > 「まあぁ…! 本当に山のよう………」

共もつけずにただ一人でこの界隈をうろつくには少々浮いているかも知れない。けれど、お目付け役を連れてはこんな物を注文するときっと、窘められてしまう。
飲食店が多数軒を連ねる一角。この時間でも営業を続ける店は多く、目当ての店も皓々とした灯りを路上に零して、食欲をそそる薫りを振りまいていた。
そのとあるメニューが名物の店。その真ん中で。一人席に着く女の前には皿というか、鍋のような規格外の器に盛られたデカ盛パスタ。トマトソースのパスタだけではなく、焼いた肉や揚げ物ふかした芋まで無秩序に盛られるだけ盛られていて、その名も――

「マウンテンパスタ・地獄級……」

それは店内の他の客が見ているだけで胸やけを起こしそうなその総重量3キロの超デカ盛メニュー。その店の名物であり、女一人で食べられる量ではない。そう評判。
だが、その見た目に反した大食い令嬢は嬉しそうに眸を輝かせて上品な所作でフォークを手に取り。

「こんな品はこの地区でしかお目に掛かれませんわね。
 ――頂きます」

絶対入りきらないだろう……との周囲の目もまったくお構いなしに、パスタの山にフォークを差し込んでは一見優雅に食べ始めた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアルファさんが現れました。
アルファ > よく焼けたステーキから食欲そそる薫りが鼻先を擽っても、カトラリーを手につけずに一点を凝視していた。
その先は隣の席で山のように積み上げられたパスタを食べる一人の女性にだ。
その量に見合わぬ手付きとその見た目に暫し目を奪われて。

「俺、少食だったのかな?」

山のようなパスタを見た後では豪華なステーキも皿の上にちょこんと乗ったようなもの。
男の沽券に関わり食欲よりも情けなさに溜息がでた。
だから周囲の目が集める隣の女性客を見て。

「それ、全部自分一人で食べるの?
 後から待ち合わせの人の分もあるんだよね」

初めて言葉をかわす人になるべく不信感与えぬように明るい声で語りかける。

エリア > きっと、普段顔を出しているサロンの方々はこんな物を見れば犬の餌、などと酷評なさるだろう。食べもせずに。
こんなに雑多にごたごたに料理を盛るなんて品のない事だと仰られるに相違ない。
けれど、例え下層の方が口にするものでも美味しい物はあるし、これはこれで凝った料理にない味わいはある――し、貴族の割に味もまあ大事だが一番大事なのは量、と食い意地ポリシーを備えた女であるから、一皿に冗談みたいにてんこ盛りされた料理はそれだけで星を与えたい。

店のそこかしこでは、あれを完食できるかどうか、で賭けを始める者も出だしたし、残されて持ち帰る場合は別料金発生しますよ、と念を押す店員がいた。
余裕余裕、と店員の声に応じて、賭けを始める連中にはにっこりと笑顔を投げかけて愛想を振りまき。
そして、凝視している隣の席の男性客から声を掛けられれば、おっとりとした笑みを口元に刷き、ナプキンで口元を抑えてからそちらを向いて。

「今日は連れはおりませんの。
わたくし一人で頂きますわ」

すでにパスタは3分の1以上削られていた。隣席の注文の品に目をやると。それだけでは足りないのではないか……と心配したような視線を投げかけて。

「良ければ少し召し上がられるかしら…?」

まだフォークをつけていない箇所は多くあったので、初見の相手にも関わらず忌憚ない様子で己の皿を掌で示しながら尋ねかけた。

アルファ > 「お連れ……やっぱりどこぞのお嬢様か」

腑に落ちた表情で行儀良いその人に正対に卓に肘を付きながら小さく頷く。
相手の表情がどこか此方に気遣うように向けられて。

「見られて迷惑だった?悪いね。君みたいなお嬢様がそんな大食いメニューを食べるのは
 レアモンスターくらい貴重だから……ってもう、そんなに食べたの?」

少し目を離した隙にまるで異空間に飲まれたように削られるパスタの山に驚き。

「これ、俺に……?どうしようか。」

まだ熱々のステーキに手つかずの癖に、美味しそうに食べる姿に食指がそそられる。
耳を済ませばどこからか賭博に盛り上がる声も聞こえたが。

「俺も食べていいなら少しくれるかな?」

掌に乗る取皿を相手にさしだした。

エリア > 「そう見えますかしら……?」

欠片も忍んでいないが、当人はお忍びのつもりではある。
少々はぐらかす様に曖昧に返答して頬に指先を触れさせてゆるり、顔を傾かせ。

「いいえ、余りじっくりご覧になられるので……空腹でいらっしゃるのかしら、と思いましたけれど。
 れあ、モンスター……?」

迷惑かと問う声には緩やかに首を振って、レアモンスター大食い令嬢はその意味が呑み込めなかったかのようにきょとり、と睫毛を上下させた。
勧めた料理――本当は美味しい料理だが通称犬の餌――に対して取り皿を差し出されては、料理を取り分ける、という事を自らの手で行った事がない女は、一瞬不思議そうに見やったが。
給仕が他の客に料理をサーブしている様子を見て、成る程求められているのはあれか、と察し。
少々間を措いてののちに皿を受け取ると、未使用のカトラリを使い、己が口をつけたのとは逆、まだ手の付けられていない箇所を選んで取り分けていき。
気前よく皿に乗るだけ盛って笑みとともに手渡した。

「些少ですが……どうぞお召し上がりになって」

アルファ > 「アー、お嬢様になると料理を小分けするのもお連れの人がやるのか。
 一度やってみなよ。そのパスタをここに乗せればいいんだ。
 そうすれば一人分の量でいろんなものが食べれるから。
 庶民の知恵だよ」

周りを見て理解したお嬢様が慣れないだろうに笑みを向けて差し出してくれて。
少し熱くなった目頭を指で掻きつつ。

「ありがと」

小さく礼をいって自分のテーブルに置く。カトラリで巻き付ければ一口サイズにして口に放り込み。

「……意外と上手いな。確かこの店じゃ犬の餌だから豚の餌だか言われてた気がしたのに
 いや、食べてる君の前で言うことじゃなかったね」

相手に笑みを向けて料理を称賛する。そうして食欲が戻ったからステーキを切り分けて口に運んで。

「ん、もしかしてこのパスタが食べたくてここに来たの?」

隣の彼女に話しかけながら食べてゆく。時々、どれくらいのペースで食べるのかを覗いて。

エリア > 「お嬢様、とお呼びになるのはお控えになって。
給仕をするものは、普通決まっておりますでしょう…?
でも、本当ですわね。分け合えば沢山食べた気にもなれますわ」

あからさまに不慣れそうな手つきではあったが、一応落としもせずに軽く一人前は盛りつけた皿を、相手が食べ始めればにっこりとやはり温和な笑みを浮かべて。自分も少し削れた山をまた崩しにかかる。

「まあ……確かにこの盛り方では、そう評されても不思議ではありませんわね……。
人様に供する盛り方としては少々野卑な感じを受けますわ。
ですが、量も味も見た目よりもずっと素晴らしいことは食べて見れば判る事です」

犬の餌、との言葉に深く同意して、パスタを一口ずつ運んでいくが、その速度は異常。
会話を挟みながらマイペースな様子ではあるが、山が山でなくなってきていた。トッピングされた肉や揚げ物も小さく切り分けて、ぐんぐん消化されてゆき。

「ええ。聳え立つ山の様に盛られたお料理があると伺いまして、脚を運ばせて頂きましたの。
貴方は、このお店には良くいらっしゃるの?」

途中飲み物を注文し、届いたワインを傾けながらゆったりと応じ。

アルファ > 「身分で見られるのが嫌いなのかな?
 それじゃ名前を教えてよ。俺はアルファ」

あらかじめ注文していたエールを唇に傾けて咀嚼したものを胃に流し込む。
相手と比べればペースは遅くあるが皿の中のステーキと付け沿いの野菜は半妖の口の中に消えてゆき。

「見た目で判断しちゃダメってことだね。
 その料理も、君も」

躾の良さが見える作法で食べていくのに、犬のように食らう大食いよりも早く食していくのに少し笑みが溢れる。
そうこうすると半妖の皿も空になって。

「食べるのが好きなんだ。あえて平民街のものを食べるために一人でくるくらいに。
 俺は、たまたまだよ。仕事帰りで今日はいつになく疲れたから」

ワインを飲む姿にエールのグラスを向ける。もちろん届かないが乾杯の真似事で少し傾けて微笑む。

「でも立ち寄ってよかったよ。面白いものが見れた」

エリア > 「と申しますか……ここで食事をしている事が知られてしまったら叱られてしまいますの。
アルファ様。わたくしの事はエリア、とお呼び下さいませ」

隣席の食事とは量の点で天と地ほどの差があるパスタを半分を切っても難なく口に運びながら。
美味しそうに目を細め時折口でも美味しい…と呟いて非常に満足そうで。
そして、一人前をすぐに召し上がられてしまう隣に気づくと、それだけではやはり足りないのでは…と目線を注いだが、さすがにもうあげない。

「見た目に惑わされると損をすることもありますわね。
けれど、見た目で判断しないでどこで判断をすればいいのか判らない事もありますから」

グラスワインをお代わりしながら、山を着実に減らしていき、味に飽きる事も顎が疲れる事もなくペースを落とさず、食器のぶつかる音もさせず食する女。
マジで食い切りそう…とどこかから響く声をしり目に。

「食べ歩くのは趣味ですの。――可笑しいですか?
ここででしたら普段と同じ値段で普段の何倍の量も提供していただけますの。
これは驚異的な事ですわ。こんなにお安くなさって経営が心配になってしまう程に。
いつもいらっしゃる訳ではありませんのね。他に美味しいお料理があれば伺いたかったのですが」

お勧めを聞きたかった、と言い出す女はまだ食べる気なのか。お代わりしたワインが届くと、エールを傾ける所作に気づいて、こちらも軽く持ち上げて乾杯に応じて笑みを返し。

「……面白い……? アルファ様は不思議な事を仰いますね?」

その感想には無自覚大食漢は不可思議そうに、疑問符を浮かべていた。

アルファ > 「エリアがどんな人かわからないが良家のお嬢様だったら周りのお嬢様が反対するだろう。
 俺もお忍びで君が来たことは見なかったことにするよ
 ……もしかして俺が足りないって心配してる?もうお腹いっぱいさ」

こちらを見る目に自分のお腹を擦って答える。
お連れだったら困惑する大食いのお嬢様も自分から見れば気持ちよく食事をする女性にすぎない。
食事を終えて肩肘ついて見るのは片時も休むこと無く動く女性の唇。

「おかしくなんかないさ。ただ見ていて気持ちいいってこと。
 でも、平民街の食事が安すぎるという言葉は控えたほうがいいよ。
 俺達にとってはこっちが普通の金額で、君が普段食べてるものが高級すぎるんだ」

皿もグラスも空にした男は姿勢を正して相手を改めて見て。

「もうすぐ食べ終わりそうだね。よかったら腹ごなしに遊びにいかない?」

エリア > 「お友達よりも……家人に咎められる確率が高いですわね。
ええ、どうかご内密にお願いいたしますわ。
まあ……もう満腹でいらっしゃるの……?」

足りなさそう…と注いだ視線を察しての返答にどこか感心した態で呟いた。
そして、そちらは食事が終わった様なのに席を立たないご様子。本当はもう少し召し上がりたかったのかしら、と考え。

「気持ちいい……? そういうものでしょうか…?
このお値段で沢山提供して頂いて嬉しかったのですが……。ご不快になられたなら失礼致しました。
――遊びに、ですか? この後デザートを頂こうと思っていたのですが……そちらで何か甘い物はいただけますかしら?」

ごちそうさまでした、と美味しいく完食してフォークを置いたが、まだ食べる気だった女は甘いものが食べたいと言い出した。
甘味があるならそちらに向かおう、と妙な応じ方をして、遊ぶのはデザートを食べるのに付き合ってから、になってしまったかも知れない。
そんな大食女は、その食堂で激盛パスタを食べ切れない方に賭けていた客たちに悲鳴を上げさせたのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアルファさんが去りました。