2020/05/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にランバルディアさんが現れました。
■ランバルディア > 香ばしい焼き菓子やパンの匂いが鼻を擽る通り。
活気良く呼び込みする店も多い。
片腕にはもうパンパンの紙袋を抱えているのだが、その男はまだ買い足すつもりのようで。
「……んー、此方も美味そうだな」
口元に手を当て悩む姿と白衣を合わせ見ると深刻な病のカルテでも見ているようだが。
目の前にあるのは、菓子類のショーウィンドウである。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にユウリさんが現れました。
■ユウリ > 持ち合わせはほとんどないけれど、いい香りがする通りに引き寄せられてしまった。空腹感で尚、青白い顔。平民街にいるにはすこし貧相な見た目のこどもがふらふらと。
「パンもおいしそうだし、お菓子も食べたいなぁ」
パン屋さん、焼き菓子のお店、スコーン、マフィン、ケーキ。ショーウィンドウを見るだけみて、おいしそうだなぁと呟きながらの数軒目。お菓子類のショーウインドウの行き当たる。同じように菓子のショーウインドウを見ている男の近く。先客よりもお菓子に目が行き、男にぶつかりそうになって。
■ランバルディア > 大きな背を丸め、覗き込んでいた傍らにふらふらやってきた小さな子ども。
ちらりと視線を向けても、こちらに向き直る様子もない。
「……ちゃんと前見て歩かないと危ねぇぞ?」
もう少々魅力的な肉付き――というか、健康的であれば難癖つけるためぶつかるのを待つところであったが。
こちらが地に根を張って立ちはだかればぶつかっただけで倒れてしまいそうな青白い顔。
ぶつかる前に腕を伸ばして、掌で細い身体を受け止める。
■ユウリ > パン。お菓子。ケーキ。想像の中でのにこやかで暖かい食卓を楽しんでいたところ、前方不注意になっていて。気がついたときには既に、手遅れで。
「ひゃっ。」
驚き、見上げると眼前には大きな男。相手に受け止めてもらっていなければ、ぶつかっただけでこちらが地面に激突していただろう。
「も、もうしわけありません。お怪我はありませんか?お医者様」
即、詫びると少し距離を取って。相手の服装から職業を推察して、尋ねた。
■ランバルディア > 受け留めた感触は、見た目の細さと比べれば柔らかかった。
驚く声も耳に楽しかったが、それだけに勿体ない。磨けば光そうなものだ。
飛び退くように距離をとる元気があるなら、とりあえず医者としての手が必要な程ではないだろう。
そういう思考も巡る辺り、まだまだ自分は善良な医者なものだと思う。
「見ての通り。でも気をつけろよ、お前さんがもう少し元気そうなガキだったら実験台にでも攫ってたから」
限りなく貧民寄りの、平民。そんな印象。
風貌に合わせた軽い冗談を零しつつ、抱えた袋の中からひとつ、焼き菓子を取り出す。
目の前のショーウインドウに並べられているものとは違うが。食うか、と焼きたての香りをチラつかせて。
■ユウリ > こちらからぶつかったにも関わらず、特に暴言を吐かれるでもなく殴られるでもなく、
どうやら怖い相手ではなさそうだと、少し緊張がほぐれた。
「え…実験台?」
思いがけない言葉をかけられて、驚くともう一歩後ろへと身を引いて。
表情は緊張し、息をのんだ。何の実験台にされてしまうのかは、想像も及ばないが、医学の実験だろうか。
「ありがとうございます」
それでも食欲には勝てない。はにかむように笑うと、焼き菓子を受けとろうと手をのばす。
焼き菓子を手にすることが叶えば、見た目のおとなしさとは相反するスピードで食べてしまおうか。
■ランバルディア > 「ふらふらか弱そうに歩いて……こっちの腕一本でも抱えていけそうだぞ?
もっとちゃんとモノ食わねえと」
見るに見かねて、というやつ。しかし差し出したお菓子にも無警戒だ。
それもその後の食い散らかすスピードを見ると納得する。見た目以上に余程腹が減っていたのか。
「……家に戻ったら茶でも淹れてゆっくり食え……って。言う暇もなかったな」
一応、一口サイズではなかった筈だが。
ぺろりと平らげた様子に小さく拍手すら送って。口元に残る食べかすを指す。
■ユウリ > 実際に目の前の大きな男にかかれば、腕一本でも持ち上げられてしまうだろう。背丈も体格も違いすぎる。子どもは食費を切り詰めているからか、最近は背の伸びもいまいちだ。
「ごちそうさまでした。ありがとうございます。おいしかったです。」
焼き菓子を食べきってしまうと、お礼を言って。勢いよく食べてしまった気恥ずかしさと、口元についた焼き菓子の粉を指摘された気恥ずかしさで、真っ赤になり。粉の付いた唇を舌で舐めた。丁寧な言葉づかいの中にも幼さが見え隠れし。
「ええと、お医者様はお買い物ですか?」
照れ隠しに世間話を始めて。
■ランバルディア > 元々孤児院への差し入れのために買い込んでいる菓子類であるから、道端で一人に一つ分け与えたところでどうということもない。
これが貧民地区の路地裏であれば、群がられたり少女が狙われたりとそう気軽に出来ることでもないけれど。
施しを狙って平民地区をふらついているのだとすれば大した役者だが、……そういうわけでもないらしい。
「そりゃ良かった、……まあ見てりゃ誰でも解る感じだったがな」
捲し立てる礼の言葉に耳を傾け、中々の見ものになった赤い顔に男は更に笑う。
指で拭わず舐めて拭う辺り、幼さを感じる。
唐突な世間話に首を傾げるものの、急ぎでもなし答えることとして。
「あぁ、流石にコレ全部自分で食うわけじゃないが。
お前さん程じゃないにせよ腹をすかせた実験台達への差し入れにね」
語りながら、視線は店の方へ。
少女へと渡した分、それに店先でさっきから立ち話をしている場所代も含め。
ショーウインドウから二つほど、と店員に注文を告げる。
■ユウリ > 施しを求めなければならないほど困窮しているわけではない、と本人は思っているけれど。実際、お腹は減るし、お金もない。辛うじて家があるから生き延びられている程度。
「お腹が減っていたので」
言い訳と言いながらも笑われると、さらに頬は赤く染まり。恥ずかしそうにうつむいて、下唇を小さくかんだ。
実験台。再び出てきた物騒な言葉。
「何の…何の実験をしているんですか?」
思わず尋ねてしまい。ねずみなどの実験動物はお菓子を食べないだろうから、やはりニンゲンだろうか。
相手が注文した焼き菓子にも思わず視線をやって。実は未だにお腹は満たされていない。
■ランバルディア > 腹が減っていたことも、『それも見ればわかる』とまた笑った。
今は赤みがかって、随分いい血色になっているが。
ごつごつとした手の甲で、痩せこけているという程でなくとも青白かった頬に触れる。てし、と。
「ん?んー……く、っ……」
実験内容を教えてやるべきか、秘するべきか。
店員から渡される新たな焼き菓子を袋に詰め込む最中にも視線を受け、思わず破顔までしてしまう。
「協力するっていうんなら……教えてやるし、もう一個くれてやってもいいぜ?」
子供相手にお菓子をちらつかせて、実に大人げない。
袋の中をもう一度漁り、取り出してくるのは大ぶりのマフィン。食べごたえは十分だろう。
■ユウリ > 「え…」
相手の手がこちらに伸びても、驚きこそするが、拒むことはしなかった。よく言えば、悪意を知らない子ども。人肌の恋しい子ども。
「協力…」
何に協力すればいいのかわからないから、戸惑って。それでも、どうしてもマフィンは食べたくて、しばらく押し黙った。
意を決したように手をのばすと、予防線をはる。
「マフィン代だけなら協力します」
■ランバルディア > 「そんな怯えなくても残念ながら命に関わるようなことはしてねえよ」
医者が実験台というのだから、少女の想定はとても妥当と言える。
しかし男の試みているそれはもっと爛れたもので。
「……それじゃ、いい加減ココで立ち食いも何だし。ちょっとこっち来な?」
掲げたマフィンで、手招き。
店先を離れて、通りを移る為の路地へと誘う。
誰が聞いているともわからない表で話すことでもないのだと。
■ユウリ > マフィン代分だけであれば、命を取られるようなことはないとふんでの答えだが、そもそも命に関わるような実験ではないらしい。少し安心したのも束の間。
「まって…」
マフィンに引き寄せられて、路地へとついて行って。空腹から些か、冷静さを欠いている子どもはのこのこと裏路地へ。
■ランバルディア > 左右の通りに多くの人が行き交うのが見えているし、見通しは決して悪くない。
ちょっと暗がりになっているだけで。
「……んじゃ、報酬を先払いで」
壁に背を預けて、少女を手招き。
向かい合うよう正面に立つよう誘って、位置についたなら。ちらつかせていたマフィンを差し出してやる。
■ユウリ > 慣れている平民街の通りだから、警戒心も低めになっていて、マフィンに惹かれて暗がりに。
「ありがとう」
おずおずとマフィンを受けとると、小さく微笑む。案の定、直ぐに食べ始めて。先ほどの焼き菓子よりも大きなマフィンに食べ終わるには少し時間がかかるけれど、じきに飲み込んでしまい。「実験」のことを思うと、気が重たくなって、命に関わるようなものではない、とはいえ。
■ランバルディア > いい食べっぷりを見れば、特に対価など必要無いと思わないでもない。
が、くれるというのだから頂かない手も無い。
追加で茶でも出してやって更にふんだくりたいところだが、残念ながら。
「……実験ってのは、俺好みの可愛らしいガキをどう育ててやったらもっと俺好みに育つのか……って実験でね。
体裁としてはまあ……孤児院って形で」
少女が咀嚼を終える頃を見計らい、男が先程の問いの答えを語り始めた。
壁に預けていた背中を起こし、少女に迫って。
「だからマフィンひとつのお代でどうこうってのは難しいんだが……今日は機嫌がいい」
再び不躾に手を伸ばし、少女の頬に触れる。
たっぷりのバターとお砂糖で下拵えの済んだ唇に指を添えて、『キスで』と、支払いを求める。
■ユウリ > 「え…?孤児院?」
思っていた実験と違いすぎて、目を丸くした。とはいえ「孤児院」と「自分好みに子どもを育てる実験」があまりにも結びつかない。
続く要求は、マフィン代としては恐らく妥当な、
それでいて無垢な少女には想像の範疇を超えた出来事だった。
路地は細く、後ろに下がる余裕は殆ど無い。それでもギリギリまで後ろに下がり
「やっ、やめ…」
青ざめた顔。恐怖から、頬に伸びる手を振り払おうと、手をのばす。願わくば、路地から抜け出そうともがいて。
■ランバルディア > 男がどういう存在であるのか、知っていなければ怪訝に思えることだろう。
普通に生きるニンゲンであったなら、育った頃には自分が精気を失ってしまう歳頃になってしまう。
そもそも、少女がそこまで無垢な存在であると思い至っていない。
壁に追い詰めるまでは良かった。
手を伸ばして、強引に迫るのも特に珍しくはない。
ただそこから、なんとなく気乗りしなかったから。
「――ん、ごちそうさま」
大きな身体を被せて左右への逃げ場を狭め、脚を絡ませる距離まで密着。
振り払いに伸びてきた手首を逆に掴み取って、少女の頭の上に引き上げる。
強引にひとくち。路地裏にありがちな光景には似合わないあまったるい音を響かせて。
もがく少女のくちびるを食んで、淡く口付け、取り立てた。
「メシははらいっぱい喰わせてやるし、……もう少し顔色良くなるまで手は出さねぇから
まぁ興味があったら、街外れの新しいデカい家を訪ねて来な」
こうして密着していても、感じるのはひたすらに『細い』という感触。
二桁にもならない子供にする気分で腰ではなくて背中を抱いて、袋を抱えたままの腕でとても緩く、ぽん、と叩き。
耳元にもおまけでキスをする。それを最後に、あっけなく男は離れる。
「マフィン代払いに来ました、って言ったら世話するように言っとくから。
――じゃあな」
少女が駆け出して逃げるのでなければ、最後にもうひとつ菓子を差し出そう。
男は元来た通りへと踵を返し、本来の道程へと戻って消えていく。
■ユウリ > 純粋に育ってきたニンゲンのしかも、平民の子どもは相手が魔族だなんて思いも至らないから。
「やめ…」
子どもにしては大きな声。伸ばした腕はあえなく頭上に止められてしまい、大きな体格の相手に逃げることは叶わない。身をよじろうとしても、あえなく口づけをされてしまい。それでも、優しいそれはなぜか思っていたほど嫌ではなくて。
「え?」
「手は出さないから」の意味はわからなかったけど。落ちてきた言葉も優しく、思わず相手の顔を見上げた。
久々に感じた人の温もりは、なんだかなくしてしまった大切なものを思い起こさせて。あっけなく離れてしまったのを少し寂しくまで思った。
「ありがとう…」
名前も告げずに去って行く相手が差し出したお菓子を受けとると。しばらく去って行った相手の方を見やっているが、じきにお菓子を握りしめて、一人の家に帰ろうか。
「マフィン代を支払いに行く」ことは同時に、親に見捨てられたことを認めることにもなる。明日はお菓子で食いつなげるだろうが、直にどうなるかはわからないままで。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からランバルディアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からユウリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にクライシュさんが現れました。
■クライシュ > 夜のとばりが完全に落ちきって、そこに集う冒険者や仕事終わりの大の男の姿が多数見受けられる酒場。
平民地区の一角にあるその場所は、知る人ぞ知る店というわけでもない。
本当に、何の変哲もないただの、酒を飲めるだけの場所である。
そこに、傭兵は一人カウンターの一席を陣取っていた。
その手にはここ最近、巷を騒がせている盗賊崩れの旅団の討伐依頼が書かれている髪が何枚か。
溜息をつきながら、ジョッキになみなみと注がれたエールを片手に、その男は口の端をジョッキにつけた。
そして、自分の喉へと注ぎ込んでいく。
「あんまり、興味があるわけじゃねえんだよな…。」
その日暮らしが出来れば、今日の酒が飲めればいい。
ついでに隣に、ちょっとかわいい娘が一人でもいてくれるだけの金が稼げればそれでいい。
この国のためにどうたら、なんて考えはない。
これで一攫千金を狙う冒険者にしてみたら、『何考えてんだこいつ』という言葉が出てくるであろう独り言。
男は、その独り言をつぶやきながら、エールが入ったジョッキをカウンターテーブルの、自分の目の前に置いた。
こういう仕事よりも、そんじょそこらの盗賊を狩るか、遺跡探索で財宝を見つけるほうが面白そうだ。