2020/04/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地」にソルさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地」からソルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシュバルトさんが現れました。
■シュバルト > 今夜は仕事……であって、仕事でない。
此処最近の趣味の一つであるお客様をもてなす際の菓子の仕入れと探索である。
此処は栄えある王都マグメール。
菓子一つをとっても果実を使ったものから乳製品を使ったものまで幅広く、珍しい物から有り触れた物まで色々揃っている、その中でどれがこの時期お客様をもてなすのにふさわしい菓子かを探し、場合によってはその場で交渉を行い仕入れようと考えていた。
実際今宵は既にその仕事の半分は終わっている。
つまり、ある程度お店に目星をつけ終えて少数ではあるが購入した帰り道なのだ。
丁寧になめした獣の革で作られた小さな皮袋。
其処には粉砂糖と共に果実から抽出して煮詰めた液体と粗く潰した果実を閉じ込めた飴玉が複数入ったものを腰にぶら下げて、先程から一つ取り出しては口に放り込んで、その味を『味見』している。
飴玉。
これがまた施術中にも口寂しくないと好まれている菓子なのだが、今宵選んだお店の飴玉はその中でも中々によろしく、琥珀に似た色の飴玉も好評だった覚えがあるので、この味と見た目なら貴族の奥方も喜ぶだろう、と。
「……しかし、当たり前だが口の中がね酷く甘いんだ……。」
まあ口からなくなったら直ぐに口に新しい飴を放り込んでいるのだから、仕方ないよねって感じである。
表情なんて多少引き攣ってる笑顔になりつつあるし、誰か知り合いでも、知り合いでなくても飴玉を押し付けて感想を聞きたいものだ。
少なくとも自分はそろそろ口の中の甘さに耐えられそうも無かった。
――…ああ柑橘類、レモンの味の時は甘さがなくて救われた。
しかして普段から着続けている白衣に肩から提げた革鞄。
口の中のあれこれで小難しい顔をしていれば、見てみぬ不利をする人間が大半で……。
今現在歩いているのは大通り、其処から何処かベンチのあるところにでも移動しようか、それとも酒でも愉しもうか、と考えながらの帰り道であった。
■シュバルト > ――…深呼吸を一つ。
夜の冷たい空気を大きく吸い込んで、静かに吐き出すと鼻腔を先程まで口に詰め込んだ林檎だのメロンだのオレンジだのの香りが抜けて、口の中に再び甘い香りと味が甦る。
うへぇ、と眉間に皺を寄せて口元に苦笑いを浮かべると、多少小走りで視線の先に見つけた大通りの中央にある噴水へと足を進め、あーっと情けない声をあげながら、噴水の前にあるベンチにぽすんっと腰をかけて、夜空を見上げてぽかーんっと口をあける。
真っ直ぐに帰宅して寝るにはまだ早い。
かと言って何処か立ち寄りたい場所は此処くらい。
どこか酒場でも入れば良かったなんてぐったりとベンチに座り込んでからふと思うのであった。
しかしだ。
この甘味地獄も商売とはきってもきれない。
結局は八方美人で媚び諂って、偽りの甘い言葉を吐き出してでも気に入られないと、売り上げには繋がらず魔導調律の道も楽じゃないなって、今更ながら思うわけで。
(……助手とか欲しいな。誰か雇う方がいいかな……。)
まあ縁が有ればとなる。
ぼんやりとそんな事を考えながら見上げる夜空はまぁまぁ綺麗で。
先程までの耳障りとも思える人の喧騒とは違った真夜中だと言うのに動き続ける噴水が奏でる水音が妙に心地良く感じるのだった。