2020/04/07 のログ
ランバルディア > ――紙袋を抱え、郊外へと姿を消した。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からランバルディアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/花街」にビョルンさんが現れました。
ビョルン > 送り出す声を背中に受けながら外へと出た。
矢鱈に目立つのは嫌で、外までの送りは要らぬと常からの約束だ。

路地を奥へ進んでからポッケから小瓶を取り出してハーブウォーターを首筋へ擦りつけると鼻奥から商売女の存在が退く。

ふと一息ついてきょろりと周囲を見渡す。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/花街」にネコさんが現れました。
ネコ > 『……あー、チキショウ。
 どこもかしこもお盛んなこって』

平民地区の一角を歩くミレー少女。
ぶちぶちと毒づきながら、当ても無く歩く。
本日の予定。見事に客は無し。つまり稼ぎも無し。

『……今からでも場所を変えるかぁ……?』

どこかに移動すれば、まだ可能性は、などと考える少女だが。
そも隻腕の女でミレー、なんてのに買い手がつくかは怪しく。
ため息を吐き立ち止まるのだが。

『……ん? 確かあれって……』

くるり、と踵を返そうとした時。視界に気になる人影。
元貧民地区出身の少女が、少しだけ知っている人物。
ビョルン・ビストカイン。雑に言うなら、貧民地区の顔役的ポジションの人間。その一人である。

『……ねぇそこのお兄さん。
 もうお楽しみは終わっちゃったの?』

少女は。何も考えずに声をかけた。
いや、考えまくった結果面倒になってとりあえず声をかけてみたのであった。

ビョルン > 路地の奥、立ち止まってポッケへ物を戻し襟周りなどちょいちょいと整えている。
今日の所は、見える距離に護衛はいないことだろう。

そうして、かけられる声。
視線を向ければそこには猫ミレーの女の姿が見える。

「──なんだ、お前は。
 客引きか、見ない顔だな」

知る店の客引きではないようだ。
そうすれば私娼か。もし、別のシマからの流れならば──本来のシマに送らねばならない。
訝しさを隠すことない声音なれど、不愛想に問いかけ。

ネコ > 声をかけてみたものの、態度はそっけない。
まぁ、それはそうだろう。
男相手に声をかけるなら、もう少し愛想よくしたほうが成功率も上がるというもので。

『客引き、ではないんだけど。
 まぁ娼婦の真似事もしてるんだけどさ』

冷たい声色に、思わず怖じそうになるが。
そこは少女もある程度荒事慣れしており。
近づかぬようにしつつ、相手に話しかけていく。

『いや、お兄さん。ビョルン・ビストカインで間違いないでしょ?
 もし良かったら、片腕なくして借金塗れの哀れなミレー。
 一晩買って、助けてもらえないかな、と思って』

にこー、と笑いつつ。相手を刺激しないように。
少女としては、できれば買ってもらって、とは思っているが。
貧民地区の有名人に顔を覚えてもらえるだけでも儲けものと考えてもいる。

ビョルン > 話す合間に視線はじっと相手を観察する。
年代は己と同じくらい、なのだろうか。
目を引くのは隻腕、である。
敢えてしげしげと無遠慮に本来腕のついているべき肩を見詰める。

結局は己を客と見ての、声かけのようであるが。

「──いかにも」

己の名前にはひとつ頷く、けれど。

「──愛想を撒いてくれて悪い、が、俺は片輪は好かん。
 だが、人の心はないわけじゃない」

抑揚なく語り、相手との距離を十分に保ちながら己のジャケットのポッケからクリップに挟まった裸金の束を取り出す。
その操作は見せつけて。

ネコ > 『……やっぱり。良かった良かった。
 有名人のお顔とお名前、間違えて覚えてたら大変だもんね』

ふぅっ、と安堵の息を吐く少女。
そもそもは貧民地区で活動している時に。
遠目に姿を見たことがある、くらいの話なので。
間違えて覚えてる可能性もあったのだ。

『あや……やっぱりそうなる?
 そうなんだよねぇ……おかげで、どこ行っても風が冷たくてさ。
 ……うん? 好かない相手にお金を見せつけて、どういった意味が?』

また空振りかぁ、などとがっかりする少女であったが。
相手が、金を取り出すのを見れば、ん? と首を傾げる。

『もしかして、哀れなミレーのメスに恵んでやる的な?
 あるいは、何かお困りごとがあるとか?
 一応、アタシ冒険者……の下っ端だから。
 情報収集とかくらいならできますけど』

あるいは、お金を見せるだけです、とかもありえるのかな? なんて。
少女は、相手と距離を取ったまま、率直に疑問を投げかける。

ビョルン > 己の顔と名前はそこそこに売れているんだろうという自覚はある。
話はそれだけでは済まぬようだった。
本来なら、他所の債務を抱えた女に目を掛ける義理はない──が。

取り出した札を指先で弾いて数え、またクリップで挟む。

「1000ゴルドある。
 ──偶然ではあるけれどお前の値段もこんなもんだろう。惨めだな」

ころり、とクリップごと自分の靴先へ落として転がす。

「欲しければ拾え。
 ……ただしこれは、孤児院の郵便受けにでも突っ込もうかと思っていた金だけどな。
 ──拾えるものなら拾ってみろ、売女」

ただ興味があった。
どれほど金に困っているのか、と。
見下ろす視線を女に向けて、口角は紙一枚の厚さほど上がった。

ネコ > 相手の有名さに対して、少女のほうはといえば……。
まぁ、ごく一部では有名かもしれない。
とはいえ、相手の知名度との差は天と地ほどもあるが。

『わお、大金だぁ。
 ……まぁ、そうだねぇ。大体それくらいで売ってますよ』

目星のつけ方が上手いなぁ、と感心しつつ。
相手の行動を観察する少女。
そうして、相手の言葉を聞いたのなら。
少女はゆっくりと相手に近づき、そして、金を拾って……。

『はい。お金は粗末にしちゃいけないよ』

そう言って。拾った金をそのまま相手に差し出すのだ。

『孤児院の郵便受けに、っていうなら。
 そうした方がいいよ。その方が世のため人のためだし。
 ……いやぁ、正直凄く欲しいんだけどさ。
 抱かれもしない、仕事も貰わない。それでお金だけもらうのはフェアじゃないでしょ』

というか、そんなことをしたら娼婦たちからにらまれる、ということを少女は知っている。
本音を言えば、お金は欲しい。そこに関して、プライドなんてないし。
もらえるなら貰う気満々だったのだ。だが……。

『それに、アタシも貧民地区のストリートチルドレンだったし。
 孤児院の子供たちがこのお金でちょっとでもお腹が膨れるなら。
 そっちのほうがいいかなぁ、とも思う』

っていうか、お兄さん。いい人なんだねぇ、なんて笑いつつ。
ほいほい、と。お金を差し出し続ける少女。
……微妙に表情は、残念そうである。

ビョルン > 冒険者や、また教育機関やらまたは武器商人やら怪しい薬やらにはアンタッチャブルな組織故に知らぬことは仕方がない。
ただ、相手をただの淫売と見ている目である。

ちゃんとした置屋や見世に属する女の値段なら最底辺クラスの値段。
故に惨めと出た言葉。
やっぱり拾うのかと、光の失せた目でため息つきかけた瞬間に己の元へ金が差し戻されると。

「───そうか、」

相手の残念な表情に少しは気をよくしてその手から金を受け取る。

「もし、これがこれから賭場に流れる金だったとしてもお前は懐へ納めないのか?」

金は金、数字だろうに。
相手の話の意味はわかれど、共感を持って理解することはできず問うてみる。

ネコ > 少女としては、自身の身体のこともあるので。
あまり高値は付けられないのである。
そうでなくても最近買い手がつかないのだから。

『……え!? もしかして孤児院に贈る金とかウソだったの!?』

相手の言葉に、驚いたような顔になる少女。
だが、すぐに笑顔を見せ。

『もしそうだとしても。それが人から施された金だったら、受け取れないよ。
 まぁ、悪人からだったら盗むけどさ』

ぽりぽりと頬を掻きつつ、説明しづらいなぁ、と呟く少女。

『ん~とね……まぁ要するに。
 アタシとしては、自分が気持ちよくお金をもらいたいわけ。
 買われたり、仕事をした代価としてとかそういうやつ。
 もしくは、お兄さんみたいに施す形だっていうなら……。
 ……ん~……惨めな存在に施しをすることで充足感を得る、っていうやつからなら』

貧民地区出身。奴隷。隻腕。
いろいろと少女の事情はあれど。
ようするに、一言で言えば。ポリシーというものであった。

ビョルン > 「どうだろうな」

既に金は上着の中へ戻した後。
己が慈善をしているなど、話が出回れば当の孤児院が匿名の寄付を受け付けなくなるやもしれず。
故に話ははぐらかす。

それからも続く女からの話には。

「悪人、ってのは。
 やくざ者は違うのかい」

問いかけてから、続く話には頷いて。

「もし拾ったらその腹、肝が潰れるくらいに蹴り飛ばしてやろうと思ってた。
 だから、拾っても良かったんだぜ」

なんてな、と冗談めかした語尾は添えるが真顔のまま。

ネコ > 『でも、お兄さんあんまり孤児院とかに寄付とかするイメージじゃないしなぁ』

う~ん? などと首を傾げつつ。
見事に相手の思惑にハマっている。
本当かウソか。見当つかぬ状況。

『え? ……難しいなぁ。
 でも、血盟家はそこまであくどいことしてないって聞いてるよ。
 それに、お兄さんからはあんまり血の匂いとか、ドブの匂いがしないし』

そういった人たちが悪人か、というとこれは難しい話。
確かに正義の使徒ではないのかもしれないけれども。
地域の治安を守っていたりすることもあるので、悪ともいえないのである。

『うわぁ、怖っ。貰わなくて正解だったよ。
 ……なんていうか、お兄さん気難しい人っぽいねぇ』

うへ、と首をすくめつつ。
相手のことを真っ直ぐに見る少女。
見た目はそこまで怖くないけど。内面がかなり怖い人っぽいなぁ、と思う反面。
だけど、外道の類でもないのかなぁ、と勝手に評価。

ビョルン > 外に向けて明かすことはないが血で血を洗う内部抗争の過去すらある己の所属。
一口にはそうは言いきれまいが。

「少し賢い奴は武器を使う、ならば手は地に汚れない。
 もう少し賢い奴は人を使う、ならば返り血も浴びずに済んで快適だ。
 道具と人は捨てられる、証拠は消せる」

ぽつぽつと呟くように言う。
それから相手が渋面で首を竦めれば、く、と笑うような息をひとつついて。

「じゃあ蹴られないうちに帰った帰った。
 こっちも、今日のやくざ稼業は看板の時間だ」

野良猫でも追い払うような手つきをして歩き出そう。

ネコ > 『……ん~、匂いって言っても、そういうんじゃなくって……。
 やぁ、ゴメン。あくまでもアタシの印象での話だからさ』

説明できないなぁ、と。うぬうぬと呻く少女。
しかして、わざわざこういうことを言うのなら。
案外にこの相手は悪人で外道なのかも、などと思い始めている。

『ちぇー、はいはい、わかりましたよ。
 でもまぁ、もしも気が向いたらまた声かけてよ』

相手の手つきに、それこそ。猫のミレー少女は、くるりと踵を返して歩いていく。
時折、ちら、と相手を見ては。ひらひら、と手を振って。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/花街」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/花街」からネコさんが去りました。