2020/04/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地」にソルさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地」からソルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にセレーネさんが現れました。
セレーネ > ゆっくりと日が落ち、辺りに篝火と魔力灯の光が浮かび始めた頃、王都の広場はいつも以上に人が溢れていた。
広場の周囲にはズラリと屋台店が並び、各所に設置された簡素な椅子やテーブルでは観光客や冒険者達が肉を片手に酒を飲み干している。

「はい、こっちも焼き上がってるよー?お皿空いてる所はない?」
女は朗らかな笑みを浮かべながらテーブルの合間を縫うように歩き回っていた。

セレーネ > きっかけは数日前、王都近くの沖に巨大な海竜が現れたという報告だった。
直ちに複数のギルドに討伐依頼が受注され、王都近辺の街に大きな被害が発生する前に巨竜は討伐されたのがその後、思わぬ問題が発生した。

通常、討伐した魔物の遺体は討伐者と所属するギルドが所有権を得る。しかし今回のそれは余りに巨大である故、ギルドだけでは腐るまでに肉を処理しきる事が出来ない量であった。
保存食に加工するにも焼却してしまうにも膨大過ぎるその肉の処理に対して何か手段は無いか、とセレーネに声が掛けられ、何とか絞り出した策がこの、広場にて格安で売り捌くという手段だった。

セレーネ > すぐに商工ギルドに場所代の交渉を付け、許可が下りた後、急ピッチで設備が組まれ、肉が腐り始める前になんとか販売を開始する事が出来た、というのが現状である。

自体は急を要した為、肉と一緒に売る食材や必要な機材はそちらのギルドから仕入れる事、普段屋台を構えている物達への補填の為希望者には格安でその肉を売る事等、かなり商工ギルドに有利な条件を呑んだ為、儲けが出るどころか軽く足が出てしまう見積りとはなったがそれでも王都近くに異臭漂う腐肉の山を築き上げるよりは遥かにマシだろう。


「さぁさぁ、海竜の肉なんて中々食べれる物じゃないんだから食べていきなさい?」

自分の周囲に展開したゴーレムの腕に皿を載せながら、シェンヤン風のドレスを裾をヒラリとはためかせて声を上げた。
その後ろでは討伐を行ったギルドの者達が景気良く声を掛けながら短冊状に切った肉を串に打って焼いたり、尻尾の肉を柔らかく煮込んだスープを器に装う姿が見える。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にセレーネさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にセレーネさんが現れました。
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ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からセレーネさんが去りました。
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リス > 「―――――。」

 商工ギルドから声がかかり、少女はその場へと行くのだ。海竜が討伐され、その肉を振舞って居るという話、少女はそれを聞き、その炊き出しを行われている広場へとやって来ていた。
 海竜の肉を安く売っているらしい、その場所、ワイワイと騒ぐ冒険者、俺が狩ったとか、そういった事を言って居るのを少女は遠巻きに見ていた。
 思う所は無いわけでは無い、自分の母親がまさに海竜リヴァイアサンの種族だし、眷属も又そうなのである。
 此処に来た理由は別に悲しむために来たわけでは無く、さりとて商売に来たわけでもない。

「―――うん。違うわね。」

 只々、確認に来たのだ、ダイラス周辺の海竜は基本的に自分の母親の眷属でもあるので、何某か悪さをしたのではないか、と。
 其れであれば討伐も又致し方なく、討伐した人に文句を言う理由も、つもりもないし、文句を言って一銭の金にならない。


 それに何よりも。
 妹だったら嘲笑してるであろう、竜のくせに人如きに狩られるなんて、竜を辞めた方が良いわね、あ、もう辞めてるわねという形に。
 そう、竜だからこその弱肉強食の思考、少女にもあるのだ。
 故に、思った以上に海竜が捌かれる姿を眺めても、少女の心には漣ほどの揺れもなかった。
 確認はしたし、さあ、どうしましょうか、と、考える事さえ出来る位には、平静で。

リス > 「それにしても、なぜ呼ばれたのかしら。」

 少女は、首を傾いで考える、もしかしたら……商会のドラゴンだと思われたのだろうか?それとも、ドラゴン系の事件とかそういうのは私の管轄にするから宜しくという事なのだろうか。
 どちらにしろ、そういう場合は商人ギルドの上の方からお達しが来ても良いと思うのだ、唯呼ばれたとは思いたくはない。
 ドラゴンのウロコの綺麗な剥がし方とか、そういったのが聞きたいのだろうか、それはちょっとご遠慮願いたい質問ではある。

「しかし、それにしても、鱗も貧弱だし……あまり上等の竜ではなさそうね。」

 母親やその眷属の持つ鱗からすれば、紙のような薄い鱗、それでも竜麟として十分以上の価値のある其れ。
 この海竜は恐らく、別の場所から巣を追われてきたのではないか、とも考えられる、はぐれの竜なのだろう。
 ダイラスの方には住めないから此方に来たのね、と、そんな思いを馳せて見せて。

「あ。冒険者の皆様!竜のウロコの加工は、トゥルネソル商会に!丁寧迅速に対応させていただきますわ!」

 思いを馳せるよりも前にすることがあった。


  宣伝しないと。

 だって、ドラゴンですよ、トゥルネソル商会は人竜―――竜が行っている商会です。
 ドラゴン装備を売る事は無くても、加工してほしいなら、その加工できるドワーフの紹介などは出来るのです。
 此処は、商売するべき所ですね!
 少女はにこやかに冒険者の方々に宣伝するのです、どうぞ、どうぞ、うちのお客様になってくださいましね!

リス > 少女の言葉に、冒険者たちの数人は此方を見て気にしている様子、それはそうだ、ドラゴンと言うのは基本的には早々狩れるものでは無い、故に、その素材を上手く扱える存在も、少なくて、そういった人は基本名工。
 ギルドの斡旋があったとしても早々会えるものでもないし、依頼を受けてくれるとも限らない。その辺りは運ともいえるのだ。
 優秀な冒険者であれば名工の方からも頼んできたりもあるだろう、しかし、伝手が全くない人もいるわけで、そういう冒険者にとっては少女の言葉は天啓ともなろう。
 少なくとも、トゥルネソル商会にドラゴン素材を扱えないドワーフとは提携しない、というか、ドラゴンですから。自分のウロコ扱えないのと提携する意味がない。
 ドラゴンのウロコを扱いたいからと、提携するドワーフだっているのだ。なので、ドラゴンのウロコ加工はお手の物なのである。
 聞かれないから言わないだけで、然し、今は言えば効果は多大なはず。

「どうぞ、よろしくお願いしますね!」

 トゥルネソル商会の場所を伝えて、折角ですしと、少女は腕を組む。
 此処で、来てもらえるなら、将来の売り上げの見込みも立つだろうし―――それならば。
 ちょっと痛いけれど、腕のウロコを一枚ぺり、と剥がし、懐から羽ペンを取り出して名前を記入する。

「これを持ってきて商会にお尋ねいただければ、このウロコと引き換えに特別割引させてもらいますわ。」

 と、今日もを持っていたらしい冒険者にはい、と一枚、自分のウロコを渡す。
 ちゃんと回収はするけれど、之なら来てもらえるだろう、そして、品質に満足してくれるなら、と。
 少女、ちょっと涙目で言うのは、剥がした鱗がひりひりするから。