2020/03/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都の路地裏」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の平民地区…最低限の治安が保証されているはずの商店街で、自治区の許可を得て、疲労回復の薬の売り歩きをしていた薬師の少年。

「はぁ…は、っふ… こっち、きてない? …こっわぁ…」

しかし、少年の力作の薬を手にとった客が少年にとってはなかなかの曲者で、
幾多の戦場を練り歩き、蹂躙と陵辱を繰り返して膨れ上がった、強く烈しい女傑の傭兵団であった。

並の体格の男よりも遥かに恵まれた体躯と筋力、粗暴さをもって、
一見すると少女のような。薬の扱いに長けた魔族の少年という個体は、
搾り取るなり、飼い殺すなり、それなりの筋に売り飛ばすなりが薬よりも益が出ると値踏みされてしまった様子で、
美しくも屈強な蹂躙者達との壮絶な追いかけっ子に発展していた。

『おォイ、下手に逃げんなって、今なら一人2~3発で済ませてやっからさぁ、ハハッ』

と、今現在、平民地区の路地に逃げ込んだ少年が伺う街角の遠くで、
10人ほどの女傑の粗野な声。

「―――じょーだんじゃ、ないってば」

一人2~3発の意味など、殴打か、張り手か、それとも…深く考えたくもない。
そろり、そろりと物音を立てずに、声の主からさらに遠ざかろうと逃避行を探って…。

タン・フィール > 廃屋から廃屋へ、路地から路地へと小さな影が、別段優れてもいない運動神経を振り絞って野ネズミのように逃げ回る。

その努力は、幾人もでここ一帯を創作する鋭敏な女傑傭兵たちに、確定的に居場所を悟らせはしないが、
紛れもなく遠くはない間合いにいると知らせてしまってもいて、
徐々に包囲網は狭まっていく。

察しの良い路地を往来していた市民はそそくさと逃げ去り、このあたりが住まいの者は、
標的が自分たちではないぶん、我関せずと素通りしたり、見世物のように遠巻きに見守ったりしている。

そんな折、廃屋の朽ちて飛び出した木材に、ワンピースのように羽織っていたシャツの端が引っかかり、
ぐい、ぐい、と食虫植物や蜘蛛にかかった幼虫のように、少年はあがいて

「わわ、わ!? …うそ、ちょっ! はずれて…!」

無理に引きちぎれば物音を立ててしまいそうな己の薄布を哀れに手繰り、引きながら、
一歩一歩と屈強な女傑の足音が近づくのを鼓膜が捉える。
一団の中には両性のものも多数いるのか、男性器とそれが分泌する濃密な性臭すら臭うほど包囲網は狭まりつつあって、
ここに居合わせる往来のものももはやごく僅か。

タン・フィール > 「~~~っ…えっと…手持ちはー…」

ある種の観念に似た心持ちに移行した少年は、薄手の服の内ポケットや、
袖に仕込んだ小袋をごそごそとまさぐり始める。
窮地の離脱に使える金品や…闘争のための戦闘や威嚇につかえるものを探そうと。

内ポケットには、子供にしては暖かめの「もしも金」ではあるが、
トラブル回避を見逃してもらえそうなほどの小遣いとはいえない。

袖には爪楊枝ほどのサイズの薬瓶が、3種類×4種類ほど。
死には至らぬ麻痺毒、睡眠毒、催眠剤に媚薬。
せいぜい3人分ほどの分量な上、どれも屈強な戦士たちにどれほど効果があるか疑問で、
最後の媚薬に限ってはいまここで使用したところで事態が好転の逆に転ぶのは明らかな代物。

魔術での攻撃や幻惑は、基礎は一通り掴んではいるが、
仮に傭兵団で生き残れるだけの、本職の魔術師や魔術を駆使する戦士がいれば、
その下位互換にすぎない程度の腕前だった。

「~~~…透明ニンゲンになれるお薬でも、作っておくんだった…。」