2020/02/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にロヴィーサさんが現れました。
ロヴィーサ > ひっく。

「いやー、今日は飲んだ飲んだ。
 もう一軒行くかー?」

大男を連れて夜の街を歩くのは、元聖騎士。
現冒険者………いや、今は単なる酔っ払いの女。
冒険者と呼ぶには全くの隣のねーちゃんでしかない恰好で飲み歩く。

「何? もう無理? 帰る? 付き合い悪くなーい?」

冒険者仲間のおっさんの腹に裏拳でぺちぺちとツッコミを入れてやりつつ。
酒豪の女はこの程度では足元もふらつかない。
はっはっは、と豪気に笑いながらオッサンと手を振って別れて。

「気を付けて帰んなさいよー、足元ふらついてんだからー。」

年齢的にはともかく、立場はほぼ同格なのだろう、遠慮のない声をその背中に投げかけて。
一人残る。

「一人で3軒目もあれねぇ。」

冒険を忘れてはや1週間。すっかり飲み歩いてばかりである。ダメ人間。

ロヴィーサ > 「まあいっか。」

るんるるららんら、らんららーん。

鼻歌交じりに歩き出す女。
こう見えて、重装甲の鎧を身に着け、ハルバードを振り回し、弓を引き絞り。
馬にも乗れて、術も使える。
………はず。 現状は確かにただの酔っ払いだーがー。

デカい依頼を受けてはお金を手に入れて、楽しく遊んで使い切ってはまたデカい依頼を受ける。
そんな古臭い冒険者らしさ全開。

酔っているといっても、足元はフラついていない。
一歩、二歩、しっかりとした足取りで歩きながらも。

「………宿は確か、目の前に武器屋があったはず。」

うむ。顎に手を当てて考える。
今日は新しい宿に泊まったのだ、そうそう、思い出してきた。
武器屋があればそこが目印………。

「…………あーそっか、閉まるか。」

全ての店が閉まっていた。ピンチ。

ロヴィーサ > 「ま、歩いていれば。」

「いつか。」

「着くわ!」

言い切った。能天気女。
呑気に足取り軽やかに。
普段は肩が凝るバカ重い鎧を着こんでるんだから、普段着だとどうしてもちょっと身体も心も軽くなるというもの。

え、もう鎧も武器も1週間以上ほったらかし?

視点を変えればそういう見方もあるよね、うん。
とりあえず今は長いお休みを満喫中なのだ。がはは。

「前の宿は、部屋で酒盛りしたら追い出されちゃったしねー。」

朝までどんちゃんやってたら超怒られた。
ほとぼりが冷めたころに謝りに行ってまた泊まろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリムリアさんが現れました。
リムリア > もう深夜と言って差し支えない時間帯
いくら平民地区の大通りとは言え、こんな時間には危なっかしい酔っ払いも出没する。
そんな時間だから、急な残業で遅くなってしまった少女は、戸締りを確認すると大通りの方をちらりと覗いてみる。

案の定というべきか。
戸締りを終えた店の前で大声で独り言を口にしている酔っ払いの姿を見つけ。

「―――絡まれたら大変そうだなぁ……」

そんな感想をポツリと漏らす。
ちなみに自分が酔っ払った時のことは棚の上。
裏通りから迂回して帰っても良いのだけれど、それだと余計に身の危険を感じてしまう。

そんな二者択一の選択に。
酔っ払いが女性だということで、ギルドの制服の上から着込んだコートの襟を立てて、そそくさと通りの方へと。

ロヴィーサ > 「ありゃ。」

深夜であっても目は効く。流石長時間深夜徘徊をしていない。
深夜徘徊のスペシャリスト。

「あれリムちゃんじゃなーい? やっほーぅ!」

片手をあげてぶんぶんと手を振る姿。
まるで昼間の太陽のような明るい笑顔。強いお酒の匂い。
遠くにいても絡まれた。

声と態度で、大体気が付くか。
身が竦むような大物依頼を本当に時々現れては持っていく冒険者の女。
がっちりとしたブレストプレート。
そして周囲を威圧する巨大なハルバード。
その女だということが分かるだろうか。

「久しぶりじゃーん。元気してた?」

依頼をサボりまくっているので、当然受付嬢とも会いません。

リムリア > さっさと帰ろうと思っていたのに、声を掛けられた。
しかも、何故か名前まで呼ばれているし。
というか、それはどこか聞き覚えのある声で…?

「え? もしかしてロヴィーサさん??
 何してる………は、訊かなくても分かりますけど、何してたんですか?」

お酒臭い相手が近づいてくれば、やや逃げ腰で待ち構える。
近づいてきて、ようやくそれが見知った相手だと分かると、警戒は解くものの。
普段の、明るいながらのしっかりした様子とはかけ離れた姿に唖然としてしまう。
いつもの鎧姿でないのも違和感のひとつかもしれない。

そんな彼女の現在進行形は、訊くまでもなく。
しばらく見なかった間に何かあったんだろうかと、思わず心配してしまうレベル。
やけ酒でも飲んでいたにしては、いつも通りの明るさで。

「まぁ……私の方はぼちぼちですけど。
 たまにはギルドの方にも顔を出してください。心配するじゃないですか。」

ロヴィーサ > 「何って。お酒。」

相手の言葉に首を傾げて、軽く説明。
あっはっは、と明るく笑ってウィンク一つ。
こう見ると、街のただのお姉さんだ。

「ロヴィでいいよ、知らない仲でもないでしょ。
 お仕事終わりー? 大丈夫? めっちゃ暗いけど。」

相手の心配そうな、それでいて訝し気な視線には気が付かず。
いつも通りの明るい笑顔。

「あ、そっか、あんまり教えてなかったっけ。
 デカい仕事が終わったら自分へのご褒美で、しばらく休み取ることにしてるんだよねー。
 お酒飲んだりー、賭け事したりー。」

指折り数える内容はイマイチ真っ当では無いが、それをいう彼女の態度はあまりにも堂々と。

「なーに、心配してくれたの? ふふ、大丈夫大丈夫。
 デカい仕事でなかなかさばけないものがあったら教えてよ。そういうの好みなんだよね。」

デカい自信とデカい胸。肩をぽんぽんと叩きながらリムリアの隣にやってきて。

「で、宿はどこ? 送るわよ、夜に女の子の一人歩きは危なっかしいわ?」

リムリア > まぁ、こちらの心配もどこ吹く風といった感じではあるけれど、
元気なことは決して悪いことではないはず。
ちょっとばかり、釈然としないものは感じるけれど。

「それは見れば分かります。
 じゃあ、ロヴィさんって呼ばせてもらいますね。」

酔っ払いとはまともにやり合っても疲れるだけ。
ただでさえ残業疲れでぐったりなので、いつもの営業スマイルも今日ばかりは品切れで。

「仕事上がりで、お疲れなんですよぅー
 自分へのご褒美いいですね……私も、温泉でゆっくりしたいなぁー」

冒険者の何が良いと言えば、そういう自由があるところ。
自己責任ではあるけれど、自由を満喫しているらしい相手の姿は眩しいもので。
だからと言って、賭け事はどうかと思うけれど。

「最近は、大きい依頼が少なくて……
 だからロヴィさんも、別の街に行っちゃったのかなぁーって心配してたんです。」

残念ながら彼女が好んで受けるような依頼は滅多とない。
そのうえ、ここ最近はそういう依頼が入って来ておらず。
他の街へと拠点を移した冒険者もいるものだから、心配の種にはなっていた。
明るい相手とは真逆に、どんよりと影を背負い。
決してスタイルの良い彼女が羨ましいとか、そういうわけではない。ないったらないのだ。

「ここから、ちょっと歩いた住宅街の下宿です。
 送ってもらえるのは嬉しいですけど、ロヴィさんこそどこにお泊りなんですか?」

ロヴィーサ > 「いいよいいよ、お姉さんカンタンなことでは怒ったりしないからさ。」

にひ、と笑っていつも通りの笑顔。
もうちょっとしっかりしていたけれど、笑顔だけはいつも通り。

「あー、なるほどね。
 温泉もいいかもしれないな。 今度いこっかなー。
 リムリアちゃんは行かない? 街中にもあるんでしょ。」

自由そのものといった様子の女は、気軽にそんなことを言う。

「ああ、なるほどねー。
 いいよ、別に中くらいの依頼でも。 パーティで前衛がいないとかそういうんでもいいからさ。

 あー、私は実はちょいとこの国に用があるからね。
 そうそう出てったりしないから安心してよ、何、寂しくなっちゃった?
 お姉さんそういうこと言ってくれるときゅんとしちゃうなー?」

なんて、からからと笑いながらぎゅ、と抱きしめてくる。
柔らかい胸とお酒臭いにおいがした。

「あ、そうなんだ。 じゃあいこいこ。
 んー、………いや、どっかに宿を取ったんだけどさ。
 目印の店が閉まってるからねー、そのうち歩いてれば見つかるかなーって。」

頭をぽりぽり、てきとーなことばかりを言う女。

リムリア > 「ここの温泉は疲れも取れていい感じですよ。
 ただ色々と黒い噂もあるので、まだ泊まったことはないんですけどねー」

そんな噂がなかろうとも高ランクの部屋に泊まろうと思うと、少女のお給金が軽く吹っ飛んでしまう。
それこそ彼女のように、どかんと稼がないと豪遊は無理だろう。
何となく案内チックな説明になってしまうのは、もはや職業病なのかもしれない。
おかしい。確か冒険者を目指していたはずなのに……?

「ロヴィさん、お酒臭いですよー?
 でも、あったかいから、許してあげます。」

ついでに柔らかい。
何をどうしたら、そんなに大きくなるんだろうか。
いつもならがっちりとしたプレートアーマーに包まれているそれをちょっとばかり突いてみたくなる。
思うだけで、実際にそんなことはしないけれど。

「前衛かぁ……それだと遺跡調査とかが中心になっちゃいますね。
 調査の護衛とか含めるともうちょっと幅が増えるかも。
 それで依頼をたくさん受けてくれるなら、どうぞ、きゅんきゅんしちゃってください。」

ちょっとばかり恥ずかしいところを見せてしまったかもしれない。
身長差のある相手にすっぽり抱き締められると、温かくて。
ちょっとばかり顔を見られたくなくて、そっぽ向いてそんなつれない言葉を紡ぎ。

「――それって見つからなかったら、宿代無駄になっちゃうんじゃ…
 宿の名前は分かります? 知ってるお店なら良いんですけど。」

見つからなければ、空いている宿を探すか。
それともうちに泊まってもらうか。
ギルドの仮眠室という手もあるけれど、今更戻るのは面倒だし……
お気楽そうな彼女の隣で、あれこれとこの後の行動を考えて。

ロヴィーサ > 「そうなん? あー、まあ、そういうのもあるのかもね。
 自衛手段が無いとどこ行っても危ないってのはあるかも。」

んー、と顎を撫でて温泉宿を見上げて。
今度いこっかなー、なんて呟く。

「あ、じゃあ一緒する? 黒い噂っつっても、数人でわいわい行けば大丈夫でしょ。」

なんて。
よしよしと抱きついて撫でて。お酒臭いと言われればからからと笑ってごめんごめん、と謝りつつ。

「たくさんはー、いいかなー。
 ほら、真面目に毎日毎日、ってやると疲れちゃうじゃん?
 護衛もいいけど、私クラスを護衛につけるとなるとそれこそ犯罪者か貴族かじゃない?」

自分で自分のことを「自分クラス」と言ってしまう圧倒的自信。
そっぽを向いた少女の頭をぐしり、と撫でて。

「だいじょーぶだいじょーぶ。
 まだ夜は始まったばかりなんだし、歩けば見つかるわよ。
 名前ねえ、目の前にいい武器を売ってる武器屋があったことしか覚えてないわ。」

あっはっは、と笑いながら歩いて。
最悪寝ないで朝まで遊んでりゃ大丈夫でしょ、なんてことを当然のようにのたまう。

リムリア > 「ロヴィさんとなら何かあっても大丈夫そうな気がします。
 お泊りされるときは、誘ってください。
 お金に余裕があったら、ご一緒させてもらいますから。」

なんだかちょっとばかり真面目な表情が垣間見えた気がする。
けれども、こちらもそっぽ向いていたために、あまり自信はない。
髪が乱れる感じに頭を撫でられると、思わずむぅーっ!っと唸り声をあげ。

「はいはい。
 そんな上級冒険者様に、護衛いただいてるなんて光栄です。」

自信満々ではあるけれど、傲慢に聞こえないのは彼女の美徳だろう。
髪は乱れてしまうけれども、手を払いのけるようなことはせずにそのままで。

「んぅー……向かいに武器屋ですか?
 それだったら、ふたつ向こうの……鴎の看板のお店とか。
 それか反対側になっちゃうけど、スキンヘッドのマスターがやってるところかな…」

王都に来たばかりの冒険者に宿の紹介もしていたりするから、それなりに詳しい。
けれどもこの街には武器屋も宿屋も多いものだから、それだけでは特定しきれない。
該当しそうなお店の特徴を挙げてみるけれど、果たして彼女の記憶に合うかどうか。

「どこで遊ぶ気ですか…?
 いくらロヴィさんでも、危ないことはしないでくださいね?」

ロヴィーサ > 「もちろん。一人より二人よね。
 あ、でもお酒付き合ってくれるならねー?」

肩をぽん、っと叩きながら大きく笑って歩いて。
堂々とした立ち振る舞い過ぎて、嫌味な雰囲気はそんなにない、かもしれない。

「………………。

 あーあーあー、そうそう、ハゲチョビ髭のおっさんがいたいた。そこだわ。
 え、なに、反対側? どっちに歩いていけばいいかな?」

さっすがリムちゃんよく知ってるー、なんてほめながら、掌をぱちんと合わせて。
マスターに対してとても失礼だった。

「んー? いやほら、酒場とか?
 朝までやってるとこ、よくあるからさ。
 そこでもういっぱーい、とかしてたら朝になるかなー、って。
 でもリムちゃんのおかげでたどり着くことはできそうだけどね。」

リムリア > 「温泉でお酒って、セットじゃないんですか?
 もちろん、お付き合いさせてもらいます。」

禁酒令? それは仕事絡みの時だけ。
さすがにオフの時にまでそんなものは守っていられない。
それに温泉に行くとなったら、お酒なしでは楽しさ半減だろう。
とはいえ、行くのは言ってみれば地元の温泉宿で。

同じく地元の名物宿屋の情報は、役に立ったらしい。
ハゲちょび髭のおっさん、もといマスターがいる宿屋なら、間違いないだろう。
ちょうど少女の家とは逆方向。同じ平民地区とは言え、結構な距離があるはずで。

「道は簡単なんですけど、距離が……。
 ここまでで良いですよ、もうすぐそこなので。」

そう言って、身体を離すとぺこりと頭を下げる。
せっかく暖かかったのだけれど、あまり好意に甘えてばかりいるのも駄目だろう。
酒場で夜を明かすつもりだったという相手に、呆れてしまい。

「ロヴィさん、お酒だけじゃなくて、ちゃんとご飯食べてます? 野菜とか。
 じゃないと、冒険者なんて身体が資本なんですからね?」

ちょっとばかり小言っぽくなってしまったかもしれない。
それでも冒険者のサポートが仕事なのだから、これは言わずに居れず。

ロヴィーサ > 「わーい! じゃ、温泉宿は今度いきましょーね。」

あっはっは、と笑いながら手を振って、ついでに小指を絡めてお約束。
相手の情報でようやく自分の宿を確認すれば、ほ、っと胸を押さえて一息。

「あ、そーう? ………んじゃ、私も帰って寝よっかな。
 いやー、今日もすっかり遊んじゃったわ。」

んー、っと伸びをしながら相手の言葉を聞けば、ぴくりと身体が固まって。

「………………。
 よい夢を。」

おほほほ、と口元に手を当てながら見送ろうとする。すすすす、っと離れていって。

お酒だけで終わる日とかあったわ。

リムリア > すすっと身体を離して、笑ってごまかす相手。
仕方がないなぁーと腰に手をやり、ため息ひとつ。

「もう、ほんとに病気になっても知りませんからね。
 さすがに看病まではしないですから。」

早々風邪も引きそうにはない彼女だけれど、
それでも普段の生活がこれだけ崩れていればどうなるか分からない。
小言ついでに、もうひとつ注意を重ね。

「はい、おやすみなさい。
 お休みはお休みでも良いので、またギルドの方に顔出してくださいね。」

送ってもらってありがとうございました、と頭を下げて。
とててっと住宅街の奥へと消えていく。
一緒にお酒を飲むような日が来れば、少女を誘ったことを後悔するかもしれず。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリムリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からロヴィーサさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の平民地区…最低限の治安が保証されているはずの商店街で、自治区の許可を得て、疲労回復の薬の売り歩きをしていた薬師の少年。

「はぁ…は、っふ… こっち、きてない? …こっわぁ…」

しかし、少年の力作の薬を手にとった客が少年にとってはなかなかの曲者で、
幾多の戦場を練り歩き、蹂躙と陵辱を繰り返して膨れ上がった、強く烈しい女傑の傭兵団であった。

並の体格の男よりも遥かに恵まれた体躯と筋力、粗暴さをもって、
一見すると少女のような。薬の扱いに長けた魔族の少年という個体は、
搾り取るなり、飼い殺すなり、それなりの筋に売り飛ばすなりが薬よりも益が出ると値踏みされてしまった様子で、
美しくも屈強な蹂躙者達との壮絶な追いかけっ子に発展していた。

『おォイ、下手に逃げんなって、今なら一人2~3発で済ませてやっからさぁ、ハハッ』

と、今現在、平民地区の路地に逃げ込んだ少年が伺う街角の遠くで、
10人ほどの女傑の粗野な声。

「―――じょーだんじゃ、ないってば」

一人2~3発の意味など、殴打か、張り手か、それとも…深く考えたくもない。
そろり、そろりと物音を立てずに、声の主からさらに遠ざかろうと逃避行を探って…。

タン・フィール > 廃屋から廃屋へ、路地から路地へと小さな影が、別段優れてもいない運動神経を振り絞って野ネズミのように逃げ回る。

その努力は、幾人もでここ一帯を創作する鋭敏な女傑傭兵たちに、確定的に居場所を悟らせはしないが、
紛れもなく遠くはない間合いにいると知らせてしまってもいて、
徐々に包囲網は狭まっていく。

察しの良い路地を往来していた市民はそそくさと逃げ去り、このあたりが住まいの者は、
標的が自分たちではないぶん、我関せずと素通りしたり、見世物のように遠巻きに見守ったりしている。

そんな折、廃屋の朽ちて飛び出した木材に、ワンピースのように羽織っていたシャツの橋が引っかかり、
ぐい、ぐい、と食虫植物や蜘蛛にかかった幼虫のように、少年はあがいて

「わわ、わ!? …うそ、ちょっ! はずれて…!」

無理に引きちぎれば物音を立ててしまいそうな己の薄布を哀れに手繰り、引きながら、
一歩一歩と屈強な女傑の足音が近づくのを鼓膜が捉える。
一団の中には両性のものも多数いるのか、男性器とそれが分泌する濃密な性臭すら臭うほど包囲網は狭まりつつあって、
ここに居合わせる往来のものももはやごく僅か。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフェリさんが現れました。
フェリ > その顛末を、少女は眺めていた。
辺りの他の物より一回り大きな廃屋、恐らくは貧民街がまだ活気のあった時代の商業組合か何かであっただろうその廃屋の屋根から。

「やっと見つけた…けど。」

彼女にとっては何よりも大切で愛おしい彼の前に姿を見せることを躊躇っていた。

生きるための意味を、生きるための【名】をくれた彼に、自分は嫌われていないだろうか?

突然に忽然と姿を消したことを怨まれてはいないだろうかと。


会いたい。

「……だけど。」

会いたくない、拒絶されたく無い。

「………でも。」

このまま静観して、彼に危害が及ぶのを見て見ぬふりをするくらいならば。
遠巻きに見守る事も赦されなくなるのであれば。

「私は嫌われたって構わない。」

立ち上がり、ゆらりと倒れ込む。
重力に身を任せ落ちて行く。
獲物を見定めた猛禽類が急降下していくように真っ直ぐに。

追われる少年が風切り音に気付きこちらを見れば分かるだろう。
音は伝わらずとも、少女の口が微かに動いたことに。

“掴まって”

と投げ掛けられたその言葉に。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフェリさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフェリさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフェリさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からフェリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフェリさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフェリさんが現れました。
タン・フィール > 「―――…!」

聞こえた風切り音と、高速の影。
眼前をかすめた真白のシルエットに、はっとした表情を浮かべて、
拒絶どころか、全霊で両腕を広げ、伸ばし、しがみつく。

その白い影は、またたく間に危険地帯から、
じりじりと自分を包囲していた相手を見下ろせる高所の屋根まで、
少年を逃れさせて…

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からフェリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」にアルマさんが現れました。
アルマ > 仕事のある日は花束運び、お休みの日は冒険者の夢諦めきれず冒険者の集う冒険者ギルドに。

新人冒険者であっても冒険者なら受けられるようなランクの低いクエストを探し、その中でもっとも冒険者らしいクエストを選び自己満足に浸る、そんな日々。

「ハァ…ハァー……予算があればもう少しまともなショウカンマホウ使えるのに、結局はお金か時間なんだよねー……。」

憂鬱そうに眉を顰め、眉間に皺を寄せ、腕を組み、唸るし愚痴る。

ショウカンマホウ
今現在使えるメインの唱喚魔法は発動までに時間が掛かるのと目立つ、物凄い目立つので不意打ちのエンカウントが多い探索型クエストでもゴブリン燃やすべしな討伐クエストでも役に立てない。

本当の切り札である商喚魔法は硬貨に見合った効果がでるが、お財布に優しくない本当に優しくない、銅貨一枚だとスライムにも勝てない使い魔しか呼べない、最悪である。

――…と、そんな感じで結局冒険者に向いていないが冒険者の夢をあきらめ切れない少年はクエストボードと今夜は睨めっこであった。

2~3人用のクエスト、かなり危険度の高いモンスターの討伐、遺跡の探索、など等……ランクの低いクエストは今のところ見受けられない、寧ろ張られる気配も無い。

アルマ > 今夜も良いクエストが見つからない。
ソロでは限界があるのか、ソロでも動けるような技術を学んだ方がいいのか、頭の中をぐるぐると色々な物が駆け巡る。

――最後に大きな溜息を吐き出すと冒険者ギルドより立ち去るのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」からアルマさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にイグナスさんが現れました。
イグナス > 風邪がつめたい、実に寒い。ああ、と呻いて、軽く身体を抱いた。

「くそう、どうしたもンか、これ。」

行きつけの店屋の前で呆然と立ち尽くす。
飯時、この時期でも暖炉をやってる店だったし、いつもの流れでやってきたまではいいんだが――。
閉まっているものは仕方がない。んん、と頭を振るが。

「他ァ、つってもなァ。」

大男がずびと鼻をすすりながらまた呻く。
いくらだって店はあろうが、知ってる店はちと遠い。
この寒い中歩き回るのは、面倒くさいのだ。そんなわけで、わりかし困ってしまった様子で。

イグナス > ま、仕方もねえと歩き出す。どっかまあ、なにかあろうか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイグナスさんが去りました。