2019/03/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にサウラさんが現れました。
サウラ > 夕刻、食事を求めて込み合うには少し早い時刻。
折りたたみの簡易テーブル、がたつくスツールが名物の
晴天時にしか座る気の起きない露天席のひとつに腰掛ける外套を羽織った女の姿。
寒さが緩んだせいか、女以外にも露天席を選んで座る客の姿は多い。
ショートパンツからすんなりと伸びる長い足を組んで、
手にした羊皮紙に視線を落とし続けている。

「……予想より群れは進路を西にとったみたいね。
でも、移動速度は想定内だから焦ることはなさそうね」

満足げに呟く女の許に、店員が料理の載った皿をいくつか運んでくる。
豆と野菜を煮込んだスープ、鳥の香草焼き、そしてパンのかたまり。
この店が出す鳥の香草焼きは安くて絶品なのだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にマリアン・ブラックバーンさんが現れました。
マリアン・ブラックバーン > 露天席にはフードを纏った者が隣で座っていた。

目深にかぶったフードに隠れているが、色の悪い肌が見え、喋ると女であることが伺えるだろう。

木製の皿に盛られた豆と肉のスープや鳥の腿肉を味わうと、グラスに入った赤いワインで喉を潤す。

「やはり食器は木製に限るな。 銀はどうも苦手だ。」

フードの女は食事を楽しみながら、周囲の客の様子に視線を配る。
こうして人々の同行を眺めることも女の楽しみであり、外に出る機会の少ない女にとっては大事な情報収集でもある。

気になったのは隣に座る褐色の肌の女性。この辺りではエルフ、それもダークエルフを見かけることは珍しい。

サウラ > 大柄でかさばる護衛たちは己の座る席近くにはいないが、
呼べばものの数秒で来れる処にでも待機しているのだろう。
人間の耳よりも少し細長くて先尖りの両耳と褐色の肌を晒した侭、
手にしていた羊皮紙を折りたたみ直してテーブルに置く。
さて食事に取り掛かろうとパンのかたまりに手を伸ばし、
パンをひとかけ千切り取りながら、何気なく周囲に目を配る。
職人風の男たち、冒険者らしき数人に視線が移ろう中、ふと気を引く呟きが聞こえた。

「……銀?」

聞こえた呟きのひとかけらを思わず鸚鵡返しにしながら、視線を己の隣へと向ける。
隣に客が居るのは気づいていたものの、それ以上の意識を向けてはいなかった。今までは。

「銀が苦手なのは何故なのかしら?
黄金のほうがもっと魅力的で、好きでいらっしゃるから?」

戯れた声音で隣客へ向けて声を紡ぎながら、パンのかけらをスープの木椀へ落とす。

マリアン・ブラックバーン > ダークエルフは珍しいだけに場所によっては襲われ、バフートに送られることもある。
それゆえ、それなりの備えをしている者がいるとか。
とはいえフードの女はそこまで気を回すことは無かった。
女に害意などはなく、あくまで外の空気を吸いに来た程度であったから。

女の呟きが隣の女性の耳に届いたようだ。
聞き返すような独り言にフードの女は苦笑する。

「体質的に銀に触れると肌が赤くなったりするのだよ。
確かに黄金は魅力的だが、食器にするにしては自己主張が強くないだろうか。」

渋みのある声にフードの女は思わず聞き惚れる。
初対面の相手に私は吸血鬼ですとは流石に言えず、誤魔化す様にグラスに口を付けて。

「そういう君は商人かね。
その様子だと、黄金に日頃から縁があるようだが。」

羽振りのよい商人なのだろうか。
ダークエルフの商人と言う事もあり、フードの女は一際興味が湧いたようだ。

サウラ > 場所にもよるだろうが、人の命は黄金よりも軽く扱われる。それが現実だ。
容姿を含めて素性やら種族やら色々と隠すほうが賢いのだろうが、
己は一度堕ちるところにまで堕ちて此処にいる。過剰に怯えるほど若くもない。
匙を手にして、パンをつついてスープに浸す。
声からして女性と分かるが、その表情まではフードの陰に隠され伺えない。

「それはお気の毒に。あら、私は主張が強くても平気よ。
食べ終わってその黄金の食器を持って帰ってもいいなら、なおいいわ」

少しふやけたパンを匙で掬って口に運びながら、ちら、とグラスに口をつける相手に探る視線を向ける。
どんな相手なのか、好奇心を刺激されてのこと。

マリアン・ブラックバーン > 「おや、君は黄金の方が好みなタイプかね。
私は食事の背景になってくれる方が好きでね。
このような大人しい食器の方が助かる。」

持ちやすい木製の匙でスープを掬っては口元へ。
豆をもごもごと食べている間、女性からの視線が気になる。

…まあ、この女性なら教えても問題ないだろう。
そう判断したフードの女。
他の客からは見えない角度で女性にのみ、フードで隠れた顔を曝け出す。

病的に色白い肌は精気を感じさせず、赤い瞳と魔力の波長から人でないと感づかれるかもしれない。

「こんな顔だが、いかがかね。」

フードの女は口の端を伸ばし、にんまりと笑みを浮かべる。

サウラ > 「黄金だったら、手に取れるサイズが好みだわ。それこそ人の手をつぎつぎ渡ってゆくような、ね。」

テーブルに置かれたランプの角度のせいだろうか。
僅かに見える相手の口許などの肌の色合いが、なぜか気に掛かる。
人間相手と思って話しかけていたけれど、己はとんだ思い違いをしていたのでは。
そんな思いが浮んだところで、ふわ、とフードが引き上げられて――

「……っ」

赤い双眸と目が合う。その瞬間、息を飲んだ。魔力の感応力は種族柄、高い。
人などではない。この紅は、人のものではありえない。
笑う相手の唇は、まるで三日月のようだ。

「……ええと、そう、何の話をしていたかしら。
うちで取り扱うのは、主に牛や馬以外の騎獣よ。
大型の鎧鹿だったり、騎乗用の走る鳥だとか、いろいろね」

綺麗だけれど魅力的すぎて怖い赤い双眸から逃れるよう、
不自然に瞬きをしながら、視線をスープ皿に落とす。
内心の動揺のあまり、話も露骨に逸らしながらだ。

マリアン・ブラックバーン > 「そういう類は曰くつきと言われるものではないのか?
私はその手の物は苦手だな。」

慎重と言うか臆病と言うか。
フードの女はリスクを恐れる性質であった。
勇ましい商人とはその点で違いがある。

フードの女は顔を曝け出した一瞬、笑みを浮かべていたが
すぐにそそくさとフードを被った。

「ほう、騎獣とな。
どれも希少な上に調教に腕が居ると聴いている。
君が剛毅なのは己の腕に自信があるからだろうな。」

動揺が見て取れる女性をそれ以上怖がらせないよう、
視線を外しながら会話する。
話題が切り替わると、面白い内容だったこともありやたらと食いつく女。

「君の都合が良ければ是非とも騎獣を見せてもらえないか?
勿論、周囲に護衛をふんだんにつけてくれて構わない。
何なら両手を縛ってくれてもかまわないぞ。」

女は己が恐れられていることを理解している故に交換条件を出す。

サウラ > 「ええ、大抵はそう呼ばれるみたいね。
人は訳ありの品で身を滅ぼし、破滅した人生の数だけ膨らむ財布がある。
苦手だという人に限って曰くつきの品のほうが集まりたがるの。不思議ね」

匙で豆のスープを混ぜて、ひと匙掬って嚥下する。
そうして動揺していた心を落ち着かせる間、
再び相手がフードを被って容貌を隠してしまうのを視界の端で捉える。
なぜだか残念だとすぐに思って、だがそんなふうに思った己が可笑しくて。
ふっと吐息を零して細く笑う。

「勿論腕にも自信はあるけれど、腕が悪い奴は蹴り殺されたり、
噛み付かれたり踏み潰されたりして死んでしまうの。
だから腕の良い獣使い、調教師たちだけが残っていく。分かり易いでしょう?」

隠れてしまえば惜しいもので、下げていた視線をゆるりと上げて相手を見る。
話す間、相手とは視線が合わない。
嗚呼気遣われているのだと気づき、表情が和らいだものになる。

「ご覧になりたいのであれば、いつなりと。
直ぐにと仰せならこの食事のあとにでも如何かしら?」

縛ってもいいと申し出る相手をまじまじと見詰めて、
ふっと大きく息を吐き出すように噴き出して、笑う。

「それなら……銀の縄で縛ってもよろしくて?」

ひとりしきり笑ってから、冗談めかした口調で問う。

マリアン・ブラックバーン > 「そういう恐ろしいシーンはこれまで何度か見てきた。
あまり面白い場面ではないと思うが。
…止めてくれ、縁起が悪い。」

己が何者か分かっているのだろう。
フードで顔を隠せば先程と同じ剛毅なセリフが耳に届く。
強気な彼女に興味を持つも、最後の言葉に渋面を浮かべていた。

「厳しい世界だな。
ならば君は余程腕が良いと言う訳か。
どうみても五体満足そうだ。」

まるで戦場のような生業と知り、口が開きっぱなしになる女。
となると、そんな仕事を長く続けることができるこの女性は相当の腕利きと言う事だろう。
女性の表情の変化は女の位置からは見えないが、声色が元の調子になっていることは感じ取れて。

「構わないかね。
私の方はもうじき食べ終わる所でね。」

気前の良い返事に顔には出さないが花のようなオーラが漂う。

「なら、先に厚手の手袋を着けさせてもらえるかな。」

なので、相手の冗談にも気分よくのっかていた。

「先に自己紹介をしておこう。
私はマリアン・ブラックバーン。
顔色の悪いしがない女だ。」

サウラ > 「私もよ。見るのも、破滅する側になるのも……愉快じゃないわね。
あら、だって本当のことだもの。特に貴方、なんだか好かれそう。
だって怖いくらい綺麗だったわ、貴方は。
さっきなんて、私、目が逸らせないと焦ってしまったくらいだもの」

僅かに恥らう響きを含んで、だが正直に口にする。
食べ終わる、という相手に対して己の皿には料理が随分と残っている。
軽く手をあげて店員を呼びつけ、皿の料理を持ち帰り用に包んでくれるよう頼んだところで、
ふんわりとした嬉しそうなオーラだ。その反応が可笑しくって、笑みが深くなる。

「今は、ね。次にお会いするときには腕だか足だか、ないかもしれない。
だから今夜の私を覚えていて。私が一番綺麗な姿をしていたときだから」

戯れた響きで言葉を紡げたのは、そこまで。
相手のあまりな名乗りというのか、自己紹介だ。
笑いを堪え切れず、手を咄嗟に口許に当てるけれど、笑いで肩が震えて止まらない。

「そんな自己紹介って、あんまりだわ。
私はサウラ。鋼鉄の口輪でサウラと呼ばれてるのは私だけよ。
以後お見知りおきを、マリアン・ブラックバーン様」

マリアン・ブラックバーン > 「おいおい、そんな風に褒められても反応に困るではないか。
君が見たいのなら幾らでも見てくれて構わない。
視線が合った所で襲いかかる様な野蛮なことはするまいよ。」

己がどういう種族か知れてしまっているだけに微妙な表情の女。
お眼鏡にかなったことと思えば喜んでしまえるし、怖いと言われればフードを目深に被りなおしてしまう。

持ち帰りを頼んでいる所を見れば、急かしてしまっただろうかと良心が痛む。

「覚えておくとも。先のことは分からないが今日の君は確かに綺麗だ。」

想像よりもシビアな世界に身を置く彼女を軽々しく案じるようなことは口に出来ず。
フードの下より彼女の身体を注視するに留めておいた。

「その割には笑っているようではないか…。
宜しくな、サウラ君。」

震えている肩と声を指摘するが、女の口元にも笑みが浮かんでいる。
店員が彼女の料理を包み終えると、会計を済ませ共に店を後にするだろうか。

サウラ > 「褒められ慣れてないなんて不思議ね。そんなに綺麗なのに」

野蛮どころか、寧ろずっと物腰穏やかで紳士的な言動だ、彼女は。ふふ、と小さく笑ってから、

「気にしないで。もともとあまりお腹が空いていなかったの。
ここの香草焼きなら少しは食べられるかと思って来たぐらいだから」

戯言ででもいい。己の軽口に調子を合わせてくれて、
己のことを綺麗だと請け合ってくれる彼女に、ありがとう、と花のように表情を綻ばせる。

そろそろ夜行性の獣たちが起きて活動する時間でもあるし、
夜の眷属たる彼女にとっても、太陽に邪魔されることなく出歩けて、
己たちが手掛けた「商品」を売り込むには最適のタイミングといえる。

持ち帰り用の料理はあとから店へ届けてくれるよう多めに代価を支払って、
ほどなく彼女を先導するよう連れ立って露店を後にするだろう。

席を立ってすぐに護衛たちとも合流し、ひとまず裕福地区の店舗に居る大人しい鎧鹿をお目にかけよう。
彼女がそれを見るだけで満足するならよし、満足しないのであれば郊外の獣舎まで案内することと――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からサウラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマリアン・ブラックバーンさんが去りました。