2019/03/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にハレスさんが現れました。
■ハレス > 男たちが賑やかに酒場の中を豪快に、それでいて楽しく騒がし…
また従業員の女が威勢よく注文を取ったり、あるいはセクハラ男を張り倒したりするなど…
酒場では日常となっている光景。
だからこそ、そんな酒場の片隅で気落ちしているかのような少女の姿が、ある男の目に留まった。
「よう、嬢ちゃん。
元気がなさそうだが…大丈夫かい?」
その男、ずいぶんガタイの良い男だが、近づいてきたのがわかったか。
男は少女の傍に近づけば、その強面な風貌とは異なり、柔らかな声色で彼女に声を掛けていく。
どこか心配するかのような面持ちだ。
「気晴らししたいなら、酒の一杯でも奢るぜ?」
■アリエル > 「ぇ―――わ、私、ですか?」
陽気な雰囲気の中にあって、己の物憂げな気配が誰かを呼んだらしい。
声を掛けられるとは思わなかったらしく、振り返って辺りを見回してからおずおずと男を見上げた。
体が大きく、見た目こそ強面だが、己に掛けられる声は柔らかく、どことなく優しい。
「…ぁ、あ、いえっ、あの―――え…っと……」
こんな風に声を掛けられたのは初めてだったから、こういう時どんな風に返せば良いのか分からなくて、瞳が右往左往する。
少なくとも男を拒絶しているわけではないと、相手には伝わるだろうか。
厚意を無碍にも出来ない少女は、漸う目を合わせ。
「……大したことじゃないんです。将来の不安とか、そんな漠然とした悩み、みたいなのを抱え込んでるってだけで…。
と、とにかく、あの………と、隣、どうぞ」
と、隣の席の椅子を軽く引いて彼に座るよう促す。
■ハレス > 「はっはっは、確かに顔のコワイおっさんかもしれないが、お縄になるようなことはしたことないからよ、まぁ落ち着きな」
男を見上げる少女の表情は、やはりどうしても驚きと、わずかでも恐怖が入ってしまうものか。
それも慣れたことだったらしい男は、屈託なく笑い、怪しい者ではないと素直なまでに言い切る。
やがて彼女が動揺が、人付き合いの少なさによるものと分かれば、改めてにっこりと笑おう。
「なるほどなぁ…どれ、おっさんが役に立つかわからんが、話せる範囲で相談には乗るぞ?
おう、隣、失礼するぜ」
少女が椅子を引いて座るよう促せば、好意に遠慮せず席に腰かける。
いくばくかの酒を飲んでいる男だが、酔っている様子はない。
将来の悩みを抱えていると聞いて、真面目に話を聞くつもりらしい。
■アリエル > 「そっ…そんな、コワイ………なんて―――そ、そんなことないです…」
もしや思っている事がバレていたのか、と言葉尻は小さく。
けれども少女に対して、相手も慣れているようだ。
気さくそうな御仁に対して、少女は少し尻すぼみ。
それは男の推察通り、普段からの人付き合いの無さによるもので。
「…………、………」
話せる範囲で―――と言っても、流石に初対面で自分の『呪い』に関して話すつもりはないが。
初対面であるからこそ、話を聞いてくれようとしている相手の姿勢に、己の中で僅かでも救われたところがあるらしく。
「…いえ、あの―――ちょっと素面では話せそうにない、と言うか……
そのお気持ちだけで、十分です。………ありがとうございます」
未だに声音はかたい儘だが、男に体ごと向けてぺこり、と深く頭を下げた。
他人に話したところで、『コレ』はどうにも出来ない、と言う思いもある。
顔をあげれば、ぎこちなくも口許を緩ませて笑い。
■ハレス > 「くくく、お嬢ちゃんに気を使われるなんて、俺もまだまだだな。
まずは自己紹介だ、俺はハレス…この街で整体師をやってる」
別に委縮させたわけではないが、人生経験の豊富さ故かどうにも見抜いてる…なんて思われがち。
余裕を見せすぎるのもまたよくはないわけであって、笑いながら男は頭を掻いた。
改めて、と言うわけではないが、ここで会ったのも何かの縁と、まずは互いの名乗りから始めよう。
「そうかぁ、なかなか…難しい悩みを抱えてるんだな。
そういうことなら、ただの話し相手くらいにはなるぜ。
夜だったら酒場にいるし、さっき言ったように整体師してるからな、店に雑談しに来てくれるだけでもよ」
彼女の悩みを酒の力で聞き出そうとは考えず、頭を下げてまで礼を言う彼女に、男のできる一通りの力添えを。
と言っても話し相手程度だが。
ぎこちないながらも笑みを見せてくれる彼女に、男もまたニカッと豪快に笑う。
■アリエル > 「整体師……ですか?あ、私は、えっと………アリエル、と言います」
ぺこり、とまた頭を下げる。
萎縮しているという訳ではないが、どうにもクセらしい。
自分には職業と呼べる仕事を何かしているわけではないので、とりあえず、名前だけでもと。
「…………なんだか、気を、遣わせてしまって。
私、そんなに幸薄そうな顔でもしてましたかね」
あははと今度は、苦笑い。
相手から見れば己は子供だろう。だから、こんな風に声を掛けてきてくれるのかもしれない。
お店、と小さく呟くと、少女は男を見上げて。
「お店、この近くにあるんですか?
私、地理には疎くて……この辺にあったかな…?」
もしくは、整体なんてあまり縁のないもの故に、単に少女が気付いていない場合もある。
ちょっとだけ申し訳無さそうに眉尻を下げて。
■ハレス > 「アリエル、良い名前だな、よろしく頼むぜ。
もっと気さくにしてくれていいぜ、もう俺らは友人同士なんだから」
互いに自己紹介し、酒場で相席している。
それだけでもう自分たちはただの顔見知りでなく、友人なのだと笑って。
それと、彼女が自分の職業を口にしなかったのが引っ掛かった。
「はっはっは…まぁ確かにがさつな俺でも心配になるくらいだったかもな。
それと、アリエルが別嬪さんだってこともあるな」
彼女の自虐的な苦笑いに、確かにその気配はあったと、少し乾いた笑いをしつつ頷く。
だからこそ声を掛けたのもあるが、どちらかというとその後の理由の方が大きかったかもしれない。
言い切ってから、誤魔化すようにビールのカップを傾けた。
「おうよ、小さい店だから気づかなくてもしょうがないな。
一人でやってるもんで、ちょっと人手が欲しいところなんだが」
確かに若ければ整体に興味を持つことはないだろうから、知らなかったとしても気にするところでなく。
それよりもし彼女が職に困っているのであればと、人手不足であることをさらりと口にしてみた。
■アリエル > 「…………ゆう……じん………」
それは、とても懐かしい響きだった。
呪いを受けて、家を追い出されてから、己には親しい友人と呼べる者はいないし、
作れないとも思っているから、相手の言葉はとても新鮮だった。
…ちょっと年が離れているが、友人と呼ぶものに年齢差は関係ない。
じーん、と感動したように一人でひっそりと噛み締めていたところに。
「べっ………別嬪だなんて……。
それに―――私、色々と、あの………『普通』じゃあ、ないから」
自分の容姿を褒められて、慣れてない少女は羞恥で赤くなった頬を片手で押さえる。
素直に受け止めるには、自虐癖が災いしてしまった。
呪いのせいで、普通の恋も出来やしないと、ソッチ方面は諦めているところがある。
「お一人で、お店を……?わぁ、それは―――凄いですね…!
人手が欲しいってことは、それくらい繁盛してるってことですよね。
整体師って聞くと、あんまり馴染みがないですけど……マッサージ?とは、違うんですか?」
無知であることを恥じつつ、そんな風に尋ねてみる。
少しずつ、本当に少しずつだが、段々と相手に慣れてきているようだ。
■ハレス > 「ほうら、可愛らしく赤くなるじゃないか。
ぐっとくるねぇ…年甲斐もねぇけどよ。
ま、その『普通』じゃねぇってのもよくわからんが、それなりに経験を積んだおっさんの友人は、そんじょそこらのことじゃ動じたりしねぇぜ」
友人という言葉を噛みしめるように口にする彼女。
気の許せる人間というのに、しばらく出会えていないようだった。
別嬪だと褒められて、頬を染めながらも、どこか諦めを感じさせる表情。
守ってやりたい、年甲斐もなく男がそう思ってしまったのも無理はなかったか。
彼女の言う『普通』じゃないという言葉にも、深く追求しなかったのはその優しさか。
「まぁこうして夜は飲み遊べるくらい、生活はできてるよ。
昼間は忙しいな、施術も大事だが、店の手入れや香草の採取とかやることがいろいろあってな。
そうだな、主に骨盤や関節の矯正をして、身体のバランスを整えるのが整体だ。
もちろんマッサージもやるし、エステだってやってるぞ。
試してみたいか?若い奴なら興味あるだろう?」
それなりに同業他社がいる王都。
いくらゴッドハンドと呼ばれようとも、手広くやる必要があるようで。
若ければ整体やマッサージに興味を示さなくても、エステとなれば気にはなってくるか。
■アリエル > 「あはは……まぁ、此処は―――色んな人が、いるから。
もしかしたら、ハレス…さん?には、私の『普通じゃない』とこ、
話しちゃっても本当に動じなかったりしそうだけど……」
友人と言われた手前、さん付けして良いものか悩んで一拍置いたが、
矢張り年上と言うこともあって、呼び捨ては憚られた。
決して深く追求しようとしない―――その優しさが純粋に嬉しい。
けれど多分…呪いに関しては、話さずともいずれ相手にも分かる事だろうと、そんな風に予感していたりもして。
「……こうそう?如何して……香草?」
整体と何の関係があるのか、不思議そうに少女は首を傾げる。
整体と言うのがどんなものかを、相手の説明にふんふんと聞き耳を立て。
そうして矢張り―――
「っ………え…エステ?」
若人なりに、その言葉は大いに少女の興味を引いた。
恐らく男から見てもきっと分かりやすい反応であっただろう。
少女の瞳が相手の手元を見る。その手が女の美容を施すのか。
「きっ…興味あります、勿論…!……あ、でも―――私、あんまりお高いのは……」
■ハレス > 「そう言ってもらえると嬉しいねぇ。
だが、気安く話すような内容じゃないなら、きちんと心の準備を整えてから話しな。
俺も話してもらえるよう、努力するからよ」
呼び捨てしかかったようだが、さすがに年齢差があってかそれはできなかったようだが、それでも良い傾向だ。
抱えている悩みについても話して良さそうな雰囲気にこそなっているかもしれない。
だからこそ彼女を思って、よく考えてから話すことを薦めよう。
「ああ、ウチの店はリラクゼーション効果と発汗作用のある香草を焚いて施術するんだ。
まぁそれ以外にもいろいろあるが…実際に体験してもらうのが早いか」
身体に触れる、というのはどうしても緊張し、筋肉が強張ってしまうもの。
それらを多少でも和らげるため、そして発汗効果ですっきりと汗を流してもらうためでもある。
こうしたものは他の整体師やマッサージ店でもそうやっているものではないが。
「ははは、正直な子は好きだぜ。
あー、金か?だがこの時間は営業時間外だからな…プライベートでってやつだ。
アリエルだけの特別だぞ?」
エステと聞いてわかりやすいくらい反応を見せてくれる彼女に、男も気分が良く。
男の手のひらは体格通り大きく太い指が並ぶもの。
その指先は潤いを持った清潔感を持っているが、よく見れば男の身体そのものも、そのガタイの良さと反比例するように、清涼感があったか。
その逞しい手のひらで行われる施術に、わずかでも淫らな想像をしてしまっただろうか。
もちろん、お金の心配は無用とばかりに、屁理屈めいた言葉を並べて、またニカッと笑ってみせた。
■アリエル > 「…ん…と―――はい、ありがとうございます」
気を遣わせたのは、此方も同じ。
その事に一抹の罪悪感を抱きつつも、また小さく頭を下げた。
香草に関しては、成る程、と納得したように頷く。
整体と言っても色々あるらしい。職人技かぁ、と思うと、どうしても相手の手に目が行く。
清涼感と清潔感があり、けれども己のものより余程野太い男の五指。
…正直に言おう。その手を見て、淫らな想像をしなかった訳じゃない。
けれど顔に出すわけにはいかなくて、曖昧に笑って濁し。
「………えへへ」
へにゃりと相好を崩す。それは、相手に対して打ち解けた証でもあった。
同時に「好き」だとか「特別」だとかの耳慣れない言葉に、
多少気恥ずかしい思いをしてしまったと言うのはある。
こういうのは―――笑って誤魔化すに限るのだ。
「…じゃあ、お言葉に甘えて―――
………でも、今日は遅いから。
また今度、良かったら、お店に行ってみてもいいですか?」
相手の店の名前と、所在と―――。
その後は、軽いものでも摘みながらに、他愛ない会話を続けた事だろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアリエルさんが去りました。
■ハレス > 「ありがとうなんて、他人行儀しなくていいぜ。
まぁまだまだ、勉強だな」
どこかまだ他人さを感じているのか、頭を下げてお礼を言う彼女。
友人同士、そういった気兼ねさを取り払うのにはまだまだ時間は掛かりそうだが、彼女が楽しそうならばそれでよし。
彼女が表情を崩して笑ってくれたのも、男にとっては嬉しくあり、それでいてなかなかにぐっとくるものがあったらしい。
気恥ずかしさを誤魔化すよう、またカップを呷って見せた。
「おうよ、店がわかんなくても、その辺ふらふらしてりゃあこっちから見つけるからよ。
来店、楽しみに待ってるぜ」
店の名前と所在を伝えて、それからはまた食事と酒を楽しみつつ、若者との会話を楽しんでいた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からハレスさんが去りました。