2019/02/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜の広場」にアンフィニさんが現れました。
■アンフィニ > 夜の月が茫洋と照らし出す平民地区の広場。
昼間は露店や、散策する人で賑わうのだろうけれども
深夜に近いこの時間ともあれば、通る人影も少ない。
貧民地区に近いこの場所をこんな時間に通るのならば
どんな目に遭っても文句は言えないだろう――そんな場所を歩いていた。
コツ、コツ、と底に滑り止めの打ってあるブーツが石畳を叩く。
「ああ、良い月だ――。」
そんな独り言が零れ落ちる。
低く、落ち着いた、どこか無機質にさえ感じてしまうような声だ。
表情は見えない。ただ、まろやかな月影がその貌に映るだけだった。
まるで、鏡のように滑らかに加工された漆黒の仮面。
人気のない広場の景色と、月を映し出すそれが、彼の顔を覆っていた。
そんな黒尽くめの男は、散歩する人間の気安さで、ゆっくりそこを歩いていた。
まだ来て間もない街の構造を把握するためか、あるいは単なる夜の散歩か。
■アンフィニ > そっと、広場の中央あたりでブーツの音が止まる。
鏡に映る月影を見上げるように顔を上に向ける。
冬から春に移りかけた風が淡く通り過ぎて、身にまとうコートの裾を揺らす。
立ち止まったのはちょうど、広場の中央辺り。水の止まった噴水の傍らだ。
黒い手袋に包まれた手指が、軽く握って、開かれる。
さながら、それは、絵物語に歌われる妖のような風景、だろうか。
「嗚呼、本当に良い街だな。ここは。」
まるで、誰かに語り掛けるような独り言がまた。
鏡の仮面の奥で、零れ落ちて奏でられた。
声に潜むのは緩やかな笑みにも似た色合い。
ささやかで、静かで、無機質で。
けれども、確かに笑んだ色合いを帯びた声だった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜の広場」にぼたんさんが現れました。
■ぼたん > 月影の照らす広場の石畳へ、ひたひたと小さな足音を立てて踏み込む人影がひとつ。背中に、唐草模様の風呂敷で包んだ大き目の、それでも軽い音を立てる荷物を背負って歩いて来る。
(あァ、すっかり遅くなっちまって……)
富裕地区への弁当配達と回収からの帰り。背中の荷物とバランスを取るように前かがみになって、ごくごく足元だけを見つめて歩みを進める。
時間帯も時間帯で、聞こえてくるのは犬の遠吠えくらい。人気がないと思い込んで、次に顔を上げるのはきっと、足元に思いもよらない影が落とされた時だろう。
(今日は店、お休みだね…)
実入りとしては、居酒屋の方が上がるのだけど…視線を落としたままそっとため息を落として、足取りがすこし、緩やかになる。
■アンフィニ > 声の残滓が消えた頃だっただろう。
ひとつ、犬の遠吠えが響いて――それに重なるように響いた音があった。
ひたひたと、小さな足音が響いてくるのが夜に混じった。
其方へと、視線――仮面に瞳があるのならば――が向いた。
鏡面のような貌に映るのは、荷物を背負った女の姿。
ゆらりと伸びた黒い影が、彼女の黒い瞳に映るのと、仮面の奥から声が響くのは
果たして、どちらが先だっただろうか。
「こんばんは。ずいぶん重そうな荷物だね。」
ちょうど緩やかになった女の足取り。
それに向けてかけられる声音。穏やかな色合いの落ち着いた声。
もし、視線をあげれば、夜に溶けそうだけれども、月明かりに切り取られた男の姿が見えるだろう。
■ぼたん > 「わッ」
物思いにふけっていた事もあり思いがけない事もあり。足元に落ちた黒い影と声に少し跳びあがって足が止まる。掴んでいた風呂敷の端が、同時にぎくりと強張った指から離れ、風呂敷包みは石畳にからからと軽い音を立てて――それでも夜の静寂によく響きながら転がった。
「あッ、えと……」
先ず男を見上げて数度瞬いて、それから転がった荷物と、男を交互に見やる。軽い荷物だったのは、音で解っただろう…そのことにすこし、気まずげに曖昧に笑って
「こんばんは…あはは、実は軽かッたんだ。気ィ、つかわせちまった?」
改めて見て、不思議な様相の男だ…とは思ったものの、親切な言葉を掛けられたこともあって、とくに警戒心を持たずに頬を掻く。
「えッと…何か邪魔しちまったかねえ?」
周囲に誰もいないことを考えれば、一人の散歩を楽しんでいたのだろうと小首を傾げた。
■アンフィニ > 「わッ」と驚いた声が夜の空気を震わせる。
重なるのは風呂敷包みが石畳に転がっていく軽やかな音。
二つ重なる音が夜の静寂に飲み込まれる前に、コツ、と足音が重なった。
ゆっくりと、男が歩き出す足音だ。向かうのは、転がった荷物の先。
言葉を返す前に、それを拾い上げよう。
軽いのならば、片手で包みをもって、空いた手を添えてから。
「いや、此方こそすまなかったね。驚かせてしまったようだ。」
頬をかく彼女に最初にかけるのは謝罪。
表情のうかがえない鏡の仮面の下で描いたそれがどう映るか。
兎も角、拾った風呂敷包みを差し出してやりながら。
「別に邪魔されたつもりはないよ。
それよりも、中身が壊れていないといいのだが。
高価なものだったりしたら大変だ。」
生憎、触れただけでは中身が無事かどうかは判別がつかなかった。
故に、そんな言葉を添えて。
■ぼたん > 怪しげな風体――とはいっても、そもそも外国人である自分に本当にこの国の『怪しげ』が判定できるかは怪しいものだが――の割に、かなり親切な言葉と対応。
なんだかその事にくすりと笑みが零れる。少しだけ疲れて居た気分が晴れて、機嫌よさげに下がり気味の目尻が更に下がった。
「大丈夫だよ。丈夫だし、高価なモンでもないから…お弁当箱だよ」
そう言って男から包みを両手で受け取る。それを両手に下げて、また少し首を傾げる。
「にィさん…前どうやって見てンの?」
言ってしまってから、失礼だったかしら、と気まずげに上目になった。
■アンフィニ > 「それはよかった」と、高価なものではないという言葉に頷いてみせよう。
目尻を下げる女の顔を映し出す鏡の仮面。
その中で、黒い手指が差し出した風呂敷包みを女の手が受け取った。
と、次いで首を傾げる仕草と、向けられる質問。
「ああ、よく言われるよ。」
気まずげに上目遣いになる視線さえも月明かりと一緒に余すところなく映し出す鏡。
返した言葉に気を悪くした色はない。
一度、言葉を切ってから少しだけ、苦笑めいた色合いを言葉に乗せて。
「魔法のようなもの、といえば納得してもらえるかな?
いずれにせよ、きちんと見えているよ。異国のレディ。」
ゆるりと風呂敷包みから離した指先を一本立てて告げる。
まるで生徒に向けて講義をする講師のような所作。
■ぼたん > 魔法という言葉にふうん、と吐息を漏らして、レディと言う言葉と男の仕草にくすくすと笑った。身体が揺れると、風呂敷の中身もかたりと音を漏らす。
「見えてンなら、よかったよ。お面付けてないアタシのほうが、余程前見て無かったねえ」
お騒がせさせちゃったね、と紳士的な言動の男を再び見上げる。鏡に映った自分に話しかけている様で、少し、面白い。
「にィさんは、富裕地区へ帰る途中かい?アタシは丁度、富裕地区からの帰りなンだけど」
また首を傾げると、男の仮面の中の自分も首を傾げる…
■アンフィニ > 笑う女の姿を映し出す鏡。
その奥で、男の笑い声がそっと響いて、女の声に混じった。
ささやかな談笑の風景が月明かりに照らされる中、映し出されていって。
「そうだな。足元ばかり見ていたからな。
私が暴漢なら襲ってくださいと言わんばかりの姿だった。」
お騒がせ、という言葉に僅かに首を振ってみせる。
返した言葉は少し冗談めいた風情の色合いを乗せる。
そうして、次いだ問いかけには、「いや。」と添えてから
「私は今夜の宿を探しに行こうと思っていたところだよ。」
そう答えてから、少し思案するような時間を置く。
尤も、彼女からすれば表情も見えない鏡が少し首を傾げたようにしか見えないだろうが。
「君さえよければ、こんな怪しい風体の者でいいならば送っていこう。
何、最悪弾除けの代わりくらいにはなる。」
そして、そんな申し出をひとつ。
この迂闊な女性を送っていくのを夜の散歩の締めくくりにするのも悪くないというのか。
■ぼたん > 「襲われても、逃げられるくらいの備えはあるよ…」
ふふふ、と少し謎めいた笑いを漏らして、鏡の仮面を見透かすように上目に見る。
宿を探している、と言われると、男につられるようにかくんと、反対側へと首を傾げて
「おやまあ、宿なしなのかい?」
そお…と漏らした後ゆっくりと首を戻しながら、口を尖らせ瞬きを繰り返して考える風。
「…にィさんさえ構わなけりゃ、店の2階に泊ってくかい?酔っ払い用に、ベッドだけ置いてある所だケド…」
アタシの住まいは別だから安心してよ、と付け足してくすくすと笑う。
自分が物の怪の類だから、何となく不思議な風体の男に親近感がある…かなり迂闊な提案だが、化かして逃げる自信もある事だし、との心持ち。
■アンフィニ > 「おや?そうなのかい?
いや、そうだろうな…それくらいでなければこの時間に出歩ける筈もないか。」
意味ありげな笑声に首を傾げたのも一瞬、すぐに頷いてみせよう。
「失礼したね。」と謝罪めいた言葉を添えて、束の間
思案する様子の彼女をゆっくりと鏡の中に写していたが、次いだ言葉に。
「それは、流石に不用心ではないかね?
だが、ありがたい申し出でもあるから。お言葉に甘えよう。
紳士的な客であることと、宿代程度は保証しようか。今夜は。」
もし、出会いが今夜ここでなければどうなっていたかはわからない。
けれども、そんな仮定は無意味。くすくすと笑う彼女に請け負ってみせよう。
そして交渉がまとまったのならば「行こうか」と言葉を添えて歩き出そうか。
「申し遅れたが、名前を名乗っていなかったね。
アンフィニ。そういう風に名乗っているし、呼ばれている。」
その狭間にそんな曖昧な名乗りを添えて。
■ぼたん > 「まあ、歴代酔っ払いを泊めてきた碌な部屋じゃァないから、期待しないでよ」
宿代とか言われちまうと恐縮しちまう、とくるりと目を回して肩を竦め、よっこいしょと軽い荷物を背負いなおす。
行こうか、の言葉に男のすぐ先を歩き出して、名乗りには歩みを泊めず、少しだけ振り返る。
「アタシは『ぼたん』てえの。
…あんふぃに。」
言いづらいね、との言葉は流石に飲み込んで前に向き直る。コチラの名前はそもそも自分には覚えづらいし言いづらいのが多い…
こっそりそんな事を思いながら、ごはんも食べてく?何て問いを投げかけつつ、のんびりした足取りで広場を後にする…
ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜の広場」からぼたんさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/夜の広場」からアンフィニさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にイグナスさんが現れました。
■イグナス > 夜は冷える、身体が少し冷たい。ほうと息を吐いたが、白くはなかった。
冷えるといってもその程度のよう。
空を見上げれば星空、夜の平民地区。ほう、っと男は息を吐いた。
「……いやあ、それでも、マシになったもンだ。」
あの冬の冷え込みに比べて、今どきはかなりマシになってきていた。
ほう、ともう一度息を吐いて、ずず、と手に持っていたカップ…中に珈琲の入ってるやつを啜る。
いわゆる、夜の散歩に近い。近場のまだやってる店屋から珈琲を購入して。
広場でどっかりとベンチに座り、ぼけ、と空を眺めている。
――傍から見ればまあ、大男がどっかり座っているもんだから、散歩なんて空気にはみえないかもだが。