2019/02/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にカーレルさんが現れました。
■カーレル > 大通りから程近い広場の中央
旅芸人の一行が英雄譚の劇を披露している。楽団…とまでは行かないが、楽器を手にした芸人なんかもいて、
周囲をぐるりと囲んだ人々も近所のスタンドや屋台で買った軽食や酒やらを手にしつつ、
野次やら歓声やらを飛ばしながら思い思いに楽しんでいるらしかった
中には家が近いのか椅子やテーブル、薪ストーブまで持ち込んでいる観客もいるから、
余程日々の娯楽に飢えているのだと思う
そんな旅芸人が奏でる音楽に懐かしさを覚えて足を止める
その昔、自分も他国に潜り込むためにあんな旅芸人たちに紛れこんでは
雑用したり簡単な楽器を演奏したり役者や芸人の食事を作ったりしたものだった
「ごめんよっと…」
なんとなく楽器の調べと懐かしさに誘われて人の波をかき分けてフラフラと近寄っていく
最前列で商人風の夫妻の隣に陣取るとよっこらせ、と腰を下ろす
肩掛けカバンから王都中を這いずり回って見つけ出したお貴族様の愛猫を取り出すと
暖房代わりに膝の上に抱く…こう見えても猫の扱いには慣れている
さすが、良いもの食っている猫はふくふくもっさりとしていて大人しくひざ掛けの変わりくらいにはなりそうだ
そんな猫のでっぷりとした背中を撫でながら簡易舞台の上に視線を向ければ、
戦争に引き裂かれた2人の男女が抱き合っているシーン…どうしてみんなこういうのに弱いんだろうねえ、
なんて思いながらも熱演する役者に視線を話せなくなっていた
■カーレル > 劇の内容としては騎士の男が戦争の最中、仲間の同僚を次々と失っていくが
中盤、実は騎士が王の落胤という事が発覚し、最終的に愛した敵国の姫と結ばれ2つの国が1つになるという具合である
史実を脚色して作った英雄譚であるが、まあ、この国、成立から二世代で内紛で消滅しているのが物悲しい
まあ、現実とはそんなもんであるけれども、今、観客達は劇に夢中であるのでどうだって良いことである
「…騎士は良いけど姫は若すぎるな」
騎士役の男に対して少々姫役の女が見劣りする
そんなふうに思っているとざりざり、と膝の上の猫がコートを引っ掻くので鞄からカビの生えかかった
干し肉を取り出しては丁寧にカビを取り除いて、ほれ、と暮れてやる
普段、良いものを食っているハズなのに妙に庶民的なものを欲しがるお猫さまであった
「…愛だの戦争だので腹は膨れないからなあ
愛より一欠けの干し肉、剣より薄汚いひざ掛けが恋しいものさ」
石畳の地面に直に座っているからまあ、ケツが冷える
お前はどうおもう?と干し肉まっしぐらの猫を撫でつつ問いかければ良いシーンだったらしく
隣で観劇していた夫婦が穏やかな笑顔で人差し指を口元に添えながらこちらへ視線を向けている
…これは、失礼。と詫びを入れると再び舞台に視線を戻す。この先、どうなるか知っている、
というのもあるが、如何に騎士役の男が熱演しようと有り体に言えば飽きてきた
■カーレル > いよいよ、クライマックス近づく
――――という所で、くしゃみが漏れた。如何にでっぷりとした猫を膝に抱えていても冷えるものは冷える
自宅には娘、息子のように可愛がっている愛猫がいるため、この膝の上の猫は今夜中に貴族のお屋敷に連れていきたい
そんな事情もあって、懐から幾らかの銀貨を演じている役者の邪魔にならないようひょいと投銭すれば、
膝の上の猫を鞄の中へ丁寧大事に入れて、肩から掛けるようにして立ち上がる
コートに落ちた毛をぱたぱたと叩いて落とせば、観客の輪から離れていき
家出したお猫さまを依頼主へと届けに向かうのであった
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカーレルさんが去りました。