2018/09/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」に光流さんが現れました。
■光流 > カウンターに座り、浮かない表情でエールを呷る鬼が1人。
昼間は平民地区を歩き、求人情報を集めて回った。
人が多ければ仕事も多いだろうと、めずらしく王都に滞在しているわけだが。
「苦手なんだよなぁ。真面目に働くっつーの…?」
情報を集めた結果、感想はろくでなし。
豪胆な男になるべしと育てられたせいだろうか。
1人で旅をするだとか、その日暮らしで食材を調達する生活はできても、日々稼ぐ為だけに動ける自信が無い。
今、ミレー族を護る生活をしているのだって、金の為ではないからやりがいを感じるのだ。
考えることが多く、酒のペースは普段より遅々として。
だがそれなのに酒には弱いものだから、瞳はとろんとしてくる。
店内の喧騒が遠くなっていく。
「――――女だったら、手っ取り早く娼館にでも行ったかもな。
……いや、無理。女だったとしても股を開く相手を選べねーのは……」
この体は男だったか女だったか。
呟く言葉は半ば寝言のようにふわふわと。
酒場に行くと毎回記憶が途切れがちなので、鬼にとっては毎度のことではあるのだが。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 今日の仕事は何ということはない貨物船からの荷卸し作業。
それでもその日暮らしの身にはそこそこの日当を貰い、その日のうちに使い切る――
大規模な戦でもない限りは、概ねそのような生活を続けている。
今日知り合った船員たちと一しきり飲み騒ぎ――彼らが引き揚げた後も飲み続け――今しがたまで、カウンターの隅で舟を漕いでいたわけである。
「……――ん~……ズズッ、おっ」
不意にその身が大きく揺れて――覚醒。
周囲を見回し、目の前の酒瓶を見て、状況を把握――どうやら独りになってしまっていることに気付き、ポケットをまさぐる――幸い金はまだいくらか残っていた。
さて、一泊の宿代に届くかどうか。
酒瓶片手に、酒場を後にしようと立ち上がって――
「……むおっ」
――その、特徴的な姿に目をとめた。
古くなった床板を鳴らしながら歩み寄り、隣の席へと豪快に腰を下ろし――
「ようっ、浮かねェ顔してるな~……ミツル」
――以前、どさくさに紛れて耳にした名を呼んだ。
■光流 > 王都に限らず、この国で知人はごくわずか。
そんな異国の鬼の名を呼んだ男の声に、顔を上げ――――
「げ………」
前回もこんな反応をしたような。
酔いも醒めると言いたいところだが、少々驚いたところで体内のアルコールは消えない。
むしろ、この悶々とした気持ちを含めてどうにかしたくなり、エールをグイッと飲み干し。
「もう1杯」
マスターに声を掛けてから、男に向き直る。
神出鬼没な男で、体を知ってはいても何を生業としているのかすら知らない関係だが。
「浮かねーよ。ぼーっとしてても金が降ってくんならいくらでも浮いてやるんだけどな」
普段金に無頓着な方ではあるのだが、今はそうも言ってられないらしい。
がめつい発言かましつつ、新たに注がれた酒を、また呷る。
褐色肌なのでわかりにくいが、大分肌は酒精による血色で彩られている。
■エズラ > そういえば――この鬼と初めて遭遇したのもこういうなんということのない酒場であった気がする。
あの時も互いに強かに酔っ払っていたっけ――などと思い返しながら、男も手近にあったどこの誰とも知らぬ客の使ったグラスを手元に引き寄せ、酒瓶の中身を注ぎ込む。
「そんな嫌そうな面されっと傷付くぜ――なんだ、素寒貧か――?」
男のグラスの中には濃いブラウンの液体。
それを三分の一ほど喉の奥へと流し込み、上手そうに酒臭い息を吐く――
「まとまった金が欲しいなら傭兵にでもなりゃいい――その腕ならいい稼ぎ手になれるぜ」
面と向かって手を合わせたことはなかったが、相手の戦闘能力の一端を経験済みの男は、素直に太鼓判を押す。
しかし、嘘か誠か、あんな山の中で寝起きしているのであれば――金に困っているのは確かなようである。
「そんなに入り用なのかよ――?」
■光流 > 「嫌そうな面されないように振る舞えよ」
どんな振る舞いが自分をこんな顔にさせたのか、考えてほしいものだ。
最初こそ嫌悪感を露わにしたが、共に酒を飲み
言葉を交わしていれば、傍目にはまるで友人のように見えるのだろう。
「傭兵ってのは、すぐ稼げんのか?」
聞き慣れない職業に男の顔を覗き込む。
この国に関しても無知だが、自国でも島育ちなので知識に偏りが有り。
興味を示しながら、また貌に影が差す。
「まぁな。多額の金が必要なんだ。高額な奴隷が1人買える値段が」
ミレー族の知人を買い戻すとは口にしないが、訳有りだということは察しのいい男なら理解してくれる気がした。
真面目な話をしながら頬杖つく仕草は気だるげで、やはりアルコールが回っていることを示している。
■エズラ > グラスの中身を空ける頃には、おおよその事情を聞くことができた。
「なんだ――あれだけ闘えるってのに傭兵稼業を知らねぇのかよ――」
手っ取り早く説明する――つまるところは、自分の本来の仕事の話。
特にこの国が、一見平和そうに見えても――その実、国境地帯で常に小競り合いを続けており、特に異種族、魔族との戦は絶えたことがない、ということも。
この鬼の素性は未だにほとんど知らないのであるが、何となく訳ありであることは理解できた。
また少し、酒瓶の中身をグラスの中へ――
「奴隷ってのは安くねぇからな――おまけに高額……戦で稼いだ金で賄うにゃ、大物を仕留めねぇとな。タナールの砦に行けよ――年中魔族とやりあってるぜ」
よほど思い詰めているのか、それとも普段からこうなのか――相手はまたも、酒に呑まれている様子である。
生憎と、男の脳もそれなりに酒に侵されているので――その真意まで読み取ることは到底叶わないことであったが。
■光流 > 感心する。
自分の身を守る為に戦うことは有っても、仕事として他国と戦う経験は無い。
厳しい仕事だろうことは想像できるが、どこぞでチマチマしているよりは魅力的に聞こえた。
「生きてくにはいい仕事だな。一気に稼ぐには向いてるか……よくわかんねぇけど」
その仕事が男をここまで鍛えたのかと、ようやく合点がいく。
改めて男の体格を眺めた。―――戦う男のそれ。
肉体が女で在る鬼には、どれだけ鍛えたとしても届き難い。
「この辺の仕事もピンとこねぇしなぁ…1度そっちに行ってみるか。
買い戻すのに何年もかかるんじゃ、その間にどんだけ傷物になってるかわかんねーし」
自分で言っておいて、身震いする。
あまり時間が無い。それならば、相手の情報は実に有益だった。
故に、浮かない表情は一転して男の肩を小突き。
「オマエたまには役に立つじゃねーか!飲め飲め!奢ってやるよ!金はねーけど!」
こんな性格だから尚更遠い、目標額。
マスターに瓶での酒の追加を注文し、またもやエールを飲み干す。
陽気に笑う鬼の肌は火照り、揺らめく視界が気持ちがよかった。
■エズラ > 「お前な~……奴隷を買い戻すっつう話をしたとこだぞ……まっ、景気付けっつぅことにしとくか!」
すっかり陽気になった相手に対し、一度は正論を吐こうとした男も――次の瞬間には、波長を噛み合わせてしまう。
他愛もない話や己の戦場譚やちょっとした生き残るための知恵など聞かせ――その後も酒量はかさみ、いよいよ視界は揺れ。
「う~んむっ、ぷ、ふぅ~……よぉ――ここォ奢ってくれるってンだから――ひっく、今日の宿はオレがどうにかしてやるぜ――」
いつの間にやら相手の肩へと寄っかかり、ちゃっかりとその腰を片腕に抱いている――
■光流 > どちらか一方が止める真面目な性格であったならよかったのだが。
種族の違う男2人は会話に花を咲かせ、酒を飲み進める。
元々騒がしい酒場だったから、それを迷惑に思う者はいないだろう。
どこにでもいる友人同士が酒を酌み交わす光景。
――――その、数時間後。
何も可笑しくないのに、けたけたと笑う鬼がいた。
酔いつぶれる寸前の男の背中を叩くも、腰に回された腕を気にする様子は無く。
「おっ、頼りになんじゃねーかぁ…!んじゃ、マスター、金は置いとくぜ。
………んぁ? いーのいーの、料理美味かったからとっとけって」
勘定より大分多い額を渡し、金が無いのに太っ腹アピールする酔っぱらい。
男の二の腕を掴み、立ち上がろうとする足はふらついて、唇も上手く動かない。
「宿でも飲むぞー! うぁ~……床、すげぇ回ってんじゃねーか」
それがまた可笑しいらしく、高らかに笑う。