2018/02/21 のログ
マイ > 「こんな時間までご苦労だね」

暗がりの中で彼女の訓練を眺めていた一人の少年。
彼もまた身体を徹底的に動かすときにこの場所を使っている人間の一人。
といっても彼女のような戦闘訓練ではなく、回避や逃げといった身のこなしの技を鍛えるために使っているのだが。
一連の動きを止めてぽつりと呟いている彼女に声を掛けて姿を見せるが、今の今までその存在感すら感じさせることはなかったかもしれない。
同じギルドに所属する者としては彼女のことも良く知っている。
特にトレジャーハンターをやっていれば、ダンジョンなどから発掘品を持ち帰ってくる同業者、あるいはライバルとも呼べる存在だからだ。

アルマ > ふと、後ろから声をかけられ振り向くと小柄な少年らしき人影が見える。

「こんな時間だからやってるのよ、生憎見世物でも見世物に出来る力量でもないからね」

大分長い間訓練をしていたが人が入って来た覚えはない。いつからいたのだろうかなどと頭の片隅で考えながらその人影の方にゆっくりと歩み寄って。

「そちらこそわざわざこんな時間に訓練かしら?」

しっかり眠るのも冒険者の仕事よ?などと冗談を言いながら、傍らの訓練用人形にかけてあった布で汗を拭って。

マイ > 「真面目にやってるのを見世物だとか思ってないよ」

彼女を動きを見ればどういった想定を考えた訓練を、いかに真剣に行っているかよくわかる。
だからこそ冗談は言っても決して馬鹿にすることはない。

「まぁ…僕のも見世物にできるくらいだけど、見世物にするつもりはないからね。
さっきのも、どれだけ気づかれないかって訓練だったりして」

お互い同じ理由があってここに来たのだと思うとくすくす笑い。
彼女の前に姿を見せるまでの間も、気づかれぬよう隠れ潜んでいたかもと。
マイはトレジャーハンターとしてギルド内で一定の名声があるものの、戦闘についてはからっきりなため、潜入と逃走に長けた冒険者でもあった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアルマさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフィル=クォーレンスさんが現れました。
フィル=クォーレンス > 夜風の音も地面を叩く足音も、響かぬくらいには夜更けにも人気は有る通り。
酒場と宿屋が点々と並び、それなりに娯楽が提供される店も点在し、客引きをしているのがチラホラと伺え。
それでも一番賑わう時間を過ぎていれば、路地を歩く人自体は疎らであり。
深夜まで営業をしていないお店は、所々明かりを落とし扉をしっかりと閉じているのも見受けられる。

「ありがとうございました。」

そんな中のまだ明かりが灯っている、比較的静かな酒場から出てくれば頭を下げる人影一つ。
夜風にローブを揺られ、その寒さに少し身を竦めながらも、その手に見える紙袋はしっかりと腕で抱き直す少年。
左腕に抱えながらも、その紙袋を右手で漁り。紙袋の中のさらに小さな袋から取り出すのは、未だ湯気が零れる肉の刺さった串。
酒場で買ったものの一つであろう。鼻を擽り食欲をあおるそれを一つ、噛みつくようにして頬張れば口元は緩み。

「はぁ…おいしい。やっぱり温かいうちが一番だよね。」

溢れる肉汁、咥内に広がる肉とスパイスの混ざった香り。
丁度小腹もすいてくる時間だったのもあり。一気に食べ尽くしそうになる気持ちを抑えるように、ゆっくりと口は動かされ。
何度もちゃんと噛んでから、また一つと串に刺さった肉を横から抜き取る様にしていけば、その度に緩ませる表情。
一応人にぶつかったりしないように気を付けてはいるのであろうが、食べ物に意識が言っているようで少々気は緩んでおり。

フィル=クォーレンス > 「これならもう少し本数買っても良かったかも。」

空腹時に食べるものは美味しさが増す。空腹は最高のスパイスとはよく言ったものか。
比較的ゆっくりと味わっていたものの、食べる手を止めることなく食べ進めていたのだから着実に数は減り。
空腹が満たされてない段階では、もう少し買っておけばよかったと思うのは良くあること。
それで大量に買いすぎると、空腹が満たされるにつれて買いすぎたと後悔することも往々にしてあるわけであるが。

「あれ…怒鳴り声?」

そんな様子で歩を進めていれば、路地の先。
店の間にある横にそれる細道から聞こえる、少々荒い声。
酒場などがある通りである、元々治安も万全でなければ小競り合いだって珍しくはない。
巻き込まれたら大抵良い事なんてない事がほとんどであれば、基本は静かに通り過ぎるのが常套手段である。
けれども、少しだけ気になったのか。こっそりと息をひそめるようにして、耳を澄ませれば小道を覗きこむ少年。
薄暗い中、少し先で人影が幾つかうごめいているのが見えるが、それ以上はわからず。

フィル=クォーレンス > 「喧嘩?…それにしては動きが。」

距離はそこそこあり、こちらが気づかれるような様子はない。
響く声は近くの酒場の声に被り、内容までは聞き取るには少々不明瞭である。
けれども、派手に殴り合いといった様子には見えなければ、じっと目を凝らし。
何をしているのか、という興味心が擽られるままに、串を口で咥えたまま意識を向けてしまう少年。
背後の道を通る人がいれば、小道を覗きこんだままじっと息をひそめ。何を見ているのかと思われそうな様であるが。

「奥に…行った?」

じっと耳を澄ませ目を凝らし、その様子をうかがっていれば、人影が小さくなっていくことに細める瞳。
一瞬こちらへと視線が来たと感じれば、小道の外に身を引き。
少しの間をおいてから覗きこみ直せば、更に小さくなっていく人影。
明らかに離れていっている、細道の更に奥へ奥へと向かっている。そう見て取れれば、誰に言うでもなくぽつりと零れる声。
そのせいで落ちそうになった串を、慌てて手でキャッチすれば紙袋へとしまい直し。
このまま興味のままに見えなくなる前に、小道をこの距離を保ったまま進んでみるか。それともやめるか。
どちらにしようか迷うように小道と、小道の外へと何度か視線を走らせ。

フィル=クォーレンス > 「あ…」

迷いながらも数歩踏み出すものの、闇に溶けるように消えていく人影。
確かに徐々に道の奥に向かって進んでいた。
けれども、そこから走り出したかのように、一気に見えなくなってしまえば丸くなる瞳。
耳を澄ませても駆け出したような、荒れて大きく響く足音の気配もしなければ、残るのは不気味な静けさ。
背後から再び響く、酒場からの喧騒に現実へと引き戻されるようにびくりと身を震わせ。

「…戻ったほうがいい…よね。」

奥へと、人影が見えなくなった辺りへと進むか。
一つゴクリと息をのみ込み、迷いながらも興味心のままにそこまで踏み込むことはなく。
紙袋から取り出し直した串を手に持ち。かじれば広がるその香りと味は気付けの様に感じられるものとなり。
気を取り直すままに、そのまま進む予定だったちゃんとした路地を歩み帰っていったか―。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からフィル=クォーレンスさんが去りました。