2017/12/06 のログ
ハク > 店主と、おそらく奥の調理場くらいしか人気のない店。
一人であれば入らないような店であるのは間違いないが、こうして連れてこられたとなれば、まぁ店選びは少年の『塒』のようなものかと特に拒否をすることはない。
実際、温厚そうな店主との会話は気心がしれた様子であり、であればまぁ、逆に気が引けてしまうような『礼』をされる事もないだろうと内心安心し。

「まぁ、確かにおぬしも内面に何やら力を感じる。見た目相応の幼子ではあるまいて。であるからして、最初は声をかけるか少し迷いはしたのでござるがな……」

はっきりいって、霧にぼやけた者を見るかのように隣の少年を推し量る事はできない。できないが、逆にだからこそ『見た目相応』の子供ではないと理解はできる。
そのことをあえて口にした上で、差し出されたつまみと飲み物に視線を注ぎ。

「……む、いいにおいにござるな。好き嫌いはないでござるぞ、それがし口にしたものは何でも食べるにござるからな……と、自己紹介もせず、すまぬ。それがし、ハクと申す。まぁ今宵限りかもしれぬが、よろしく頼むぞ」

注がれた僅かに酒気を感じる大好物の柑橘物のにおい。
それに尾を嬉しそうにゆらしつつ、名前を伝えないのも失礼かと先に名乗り。

「うむ、乾杯にござる……しかし、本当に、支払いできぬでござるからな……?」

袖を掴みつつ、ちん、と器を差し出し乾杯として打ち付けてから酒をくい、っと傾ける。
――正直いうと、酒には弱い。あまり飲みすぎると意識が飛ぶ。主張の強い酒であれば一口飲んだ程度ですぐにもう茶の要求をする所だが、果たしてこの酒はどうであろうか。

ホウセン > つまみは、木製の小皿に数種類の炒った豆類が山盛りになっている。
其の侭口に放り込むものも、殻を剥く必要があるものも入り混じって。
己に対する観察への論評は先送りにし、自身と同様にこの国ではあまり使わぬ響の名を、口の中で幾度か。
乾杯後に湯気で顎先を擽るようにし、薄めの琥珀色をした液体の香気を楽しんでから一口。
コクリと喉が鳴るけれど、上下するような喉仏は見当たらない。

「是は失敬。名乗る前に、口をつけてしもうた。
 儂はホウセンじゃ。もっと大通り寄りになるが、異国の物を取り扱っておる店を持っておる。」

子供が店の主というのも妙な話ではあるが、店主の御曹司だとしたら己の物と言い切っても不思議はあるまい。
いい所のお坊ちゃん。それも、ドラ息子系統。
そんなイメージがへばりついても文句は言えない。

「然し心配性じゃな。
 儂が太鼓判を押したのじゃから、安んじて愉しむのが作法というものぞ。」

度数の高い酒を紅茶で割っているとはいえ温めた代物。
酒に弱ければ咽ることもあるそれを、さも旨そうに啜るお子様の図。
一方、女に供された酒はと言えば、土台となっている原酒そのものの酒精は決して少なくない。
が、風味付けとして漬け込まれていた数十に及ぶ香辛料の香気が、アルコールの尖った刺激を丸め、おまけに柑橘汁の酸味と仄かな甘みがバランスを整えている。
妖仙も、勿論店主にも悪気はなく、単に女子供にも飲み易い酒を用意したに過ぎないのだけれども、女の味覚と嗅覚は、含まれる酒精の強さを正確に推し量れただろうか。

「…尤も、酒よりも別の報酬が良いというのなら、聞いてやらんこともない。
 何しろ、”それ”は、中々に難儀そうじゃからのぅ。」

先刻の、女のした妖仙評への答えはさりげなく。
”それ”を示すのは、黒い瞳から生じる視線であり、テーブルに腰掛けた体勢からでも見える、右の二の腕と左肩、乳房の間を順繰りに巡る。

ハク > 盃を傾け酒を飲み、二口三口と更に喉を鳴らす。酒精の強さにはあまり気づいていない様子で、むしろ柑橘のすっぱい味に舌鼓を打っている。
それを飲めば今度は濃い味も欲しいと欲が疼き、テーブルに置かれた豆に手が伸びる。慣れた様子で皮を剥いて口に入れ、食べながら再び酒に口をつけ。

「ふぅむ、ホウセン殿と言うのでござるな。ほほう、異国の物……それがしの故郷、というか東や北の国のものを取り扱ったり、しているでござるか?」

1杯目の酒、その2/3程をすす、っと飲んでしまう頃には顔に赤みを帯びている。
酒に慣れている人間からすると弱い、と断定されそうな程に赤ら顔になりつつも……しかし呂律が回らない、視線が落ち着かないというわかりやすい酔いのサインはない。
やがて1杯目を空にしてしまいつつ、ホウセン殿の店の話をすればふと、と問いかけ。
呪術についてはこの国以上に東が、そして魔族縁のものは北からの物が多く……そしてそれらを入手する手段は少ない。
一つ縁を結ぶのも手かもしれないという淡い期待を込めて少年の顔を見つめ。

「いや……何、飲んで食ってその後やはり払えと言われれば……ううむ、それがし、体で払う、としか今は言えぬでなぁ」

それは困る、とあまり困っていない様子で軽く笑い。
再び豆に手を伸ばした所で――

「……おぬし、何が見えておる?」

驚いた顔を見せ、少年の顔を見つめる。
その視線は明らかに、この黒い魔力皮膜の内側――魔族に刻まれた淫紋の位置をなぞっていた。

ホウセン > 炒った豆には、ほんのり…より、二歩踏み込んだ塩気。
柑橘風味の酒との相性は、さぞ良いことだろう。
女がこの小さな存在を観察するように、妖仙も女の存在を観察している。
酒に弱い、或いは呑み慣れていないという感想も、その産物だ。

「うむ、寧ろ其方が主たる仕入先じゃな。
 何分王国出身の商人では、買い付けも侭ならぬこともあろうし、其処が旨みの元なのじゃが…
 くははっ…己の身体で賄おうとは、気風が良いのか律儀なのか。」

女の手が止まったのを尻目に、小さな手がひょいっと松の実を拾い上げて口に運ぶ。
只丹精であれと造形された人形が如き顔に、複数の感情が入り混じった視線を向けられているのも感じる。
それでも憎らしい程に落ち着いた所作で、喉を潤す。

「嗚呼、一言で言うのなら、”見えてはならぬもの”が見えておる…と答えれば、得心がいくかのぅ?」

人外の”眼”は、舌に載せている以上の事柄を看取しているのだけれども、その全てを懇切丁寧に説明するつもりはない。
黒い黒い、澄み切り過ぎて不純物が一切ない深淵のような黒い瞳。
ここで詳らかに説明するには、店主達の耳目があったし、呪詛の組み立てから察せられる”効能”を鑑みると、口にすることで女の自尊心を傷つけてしまうという危惧もある。

「どうやら三つだけではなさそうじゃ。
 どれどれ…下半身に二つ…いや、三つか。
 お主が趣味でやっておるというなら、とやかく言うだけ野暮じゃがな。」

テーブルによって死角になっている部位についても、気の流れから察せるとでも言いたげに。
両手持ちしていた陶器のグラスを机の上に戻す。
緩く微笑未満の形に弧を描く口元が、”何か言うことはないか”と唆すかのよう。

ハク > 酒と一緒に豆に伸びていた手も、今は止まっている。
少し額に手をあてて悩むような仕草も見せると、むぅ、と唸る声を上げて。
2杯めに口をつけていたのがあまり良くなかったのか、少しばかり頭の周りが遅くなっていることを自覚しつつ……

「それがしの体に刻まれた魔族の刻印……見えているのであれば、この姿もまた仮の姿であること、ホウセン殿には見破られている……のであろうな」

落ち着いた声色で、しっかりとした断定の言葉にこちらから何があるかをついぞ口にだす。
これもまた酔いのせいか。普段より警戒心を薄くしてしまいながらも続く言葉に再び言葉をつまらせ。

「……それがしの体に刻まれた呪い、解呪できるでござるか?」

弧を描く口元。その様子に、かすかな希望を感じ取って漏らすように言葉を放ち。

「――頼む、それがしにできる事なら何でもしよう。……あ、いや、すまぬ、他者に害を及ぼす事以外であれば何でもしよう。この刻印、消してもらえぬでござるか……?」

ぐ、っと揺れる瞳を少年に向けて。一度口から勢いで出た言葉を一度止めてしまってから、それでもなお身を呈するような代償を支払う覚悟で少年に乞う言葉をかける。

ホウセン > 手が止まっている女を他所に、妖仙は次の一杯を注文する。
今度は蒸留酒の原酒そのものを、チビチビと舐めるように。
不意に重くなった空気であっても、この手の酒場の人間からしたら日常茶飯事のようで、物言わず風景と同化してくれる。
そんな気遣いを受けつつ、女の告白に耳を傾ける。
言語での情報に、己が見て取った以上の追加情報は見出せなかったが、さして問題とはなるまい。

「さぁのぅ、儂とて全能という概念からは程遠い存在じゃ。
 全てが全てお見通しとはいかぬが… 
 嗚呼、只、お主の願いを少しばかり叶えてやれんこともなかろうよ。」

対象が”呪い”ならば。
存在の根源の一端が、人々の呪詛であるこの妖仙ならば。
が、問題は、この小さな存在が、慈善事業家ではないという一点だ。
それが唯一といってよい問題であり、最大の難題でもある。

「ともあれ、まだ初見じゃ。
 しかも斯様に遠目では、事細かに全ての筋道が見通せよう筈もない。
 少しばかりの検分と、解析と、準備が必要になるじゃろう。
 儂の店の工房が都合が良いのじゃが、お主としては一刻も早く…なのじゃろう。
 なれば――」

幸か不幸か、この界隈には簡単に手配できる密室が数多くある。
その何れかの場所でなら、早速取り掛かれるだろうと。
大半を占める好奇心と少しばかりの悪戯心に、微かな善意を一滴二滴。
そんな感情の配合比率に基づき、手近な連れ込み宿へ案内しようとするが――

ハク > 新しい酒を舐めるように再び飲む様子に、焦れるような気配を露骨に漏らす。
対人の交渉にしては明らかに下手な様子ではあるものの、これもまた酒の効果だろうか。

「願いを、少し、でござるか……?」

こちらの願いはただ一つ、この身に刻まれた呪いの解呪。
6つのうち1つでも、1つが無理でも効果を弱めるでも出来さえするならば、ここ10年止まっていた足が進む事ができる。
その糸に、すがらないはずも無かった。

「いや、ホウセン殿が見立てて頂けるのであれば何処でも構いませぬ。工房がよい、というのであれば足を運ばせていただくにござる」

一刻程度、既に何度も過ごしてきた。
ここで万全を期す事ができない場所で失敗するよりは、より確実性が高い場所での施術を望みたい。
だからこそ、その善意を全て信じ切るような切羽詰まった顔をしながら深く頭を下げる。

ホウセン > 一も二もなく。
裏も表も勘案した気配さえなく。
目の前に餌をぶら下げられた馬でも、こうは飛びつくまいという位に。
女にとってそれだけの渇望であり悲願なのだと、何よりも如実な証左。

「うむ、その気概は善しとしようかのぅ。
 なれば、酒盃を空けよ。
 景気付けには丁度良かろう。」

濃い酒を舐めるように摂取していたはずなのに、既に妖仙の器は底を晒している。
小さな身体を宙に躍らせて床に降り立つと、カウンターまで歩いて幾枚かの銀貨で支払いを。
女が追いつくのを待って、扉を開け――

ハク > 酒盃を開けよ、と言われてみれば隣の少年のような男性は自分の酒を空にしている。
方やこちらは2杯めの、先程と同じ柑橘の強い、濃いめの酒がまだ器に残っている。
体に残った酔いに、普段であれば諦める所であるが――

「む、おお、では、うむ……っ!」

ぐいい、っと盃を傾け一気にその酒を流し込む。
更に顔を赤くし、くらりと頭を揺らしてしまいながらも立ち上がって支払いをするホウセン殿の背中に強い視線を向けて立ち上がり。

「っま、待って、ほしい、でござる……ッッ!」

酔いで吐く事はない。が、酔いで前後不覚になるタイプの酔い方をしてしまう。
その兆候が出ており、若干足元をふらつかせてしまいながら急ぎ、その扉に向けて駆け込んで……

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からハクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフラストさんが現れました。
フラスト > 昼下がりの午後。
満天の青空の下。
公園にやってきたのは、素肌の上に革鎧を着こんだ一人の青年。
たどり着くと、軽くその場でジャンプしながら腕を上下に動かして見せて。
「最近さぼり気味だったからな……
 とりあえず、重点的に足を鍛えるぞっと」
そして、つま先が地面についた瞬間、地を這うように地面を蹴る。
限界まで膝を上げ、前に足を出し、さらに前へ。
奇麗なスタートダッシュ、と思いきや。
「よっと!」
膝を曲げ地面に手をつくと、くるりと振り返り再びダッシュ。3~4歩しか走っていないが、前来た道を再びダッシュで戻る。
「はっ!」
同じく3~4歩走っただけで、再びくるりと振り返り、休む間もなくダッシュ。
短い距離を往復するたびにかかる足の反動、そしてスタートダッシュ時の負荷により、ダッシュ力を鍛える高負荷のトレーニング。
男は休む間もなく、何度もその往復を繰り返す。

フラスト > 男が走るたびに脈動する全身の筋肉。
太い太ももが、ふくらはぎが、地面を蹴るたびに主張するように筋肉が膨張する。
走るたびに男の汗が体中からほとばしっていって。
「はぁぁ……くっ!」
スタートダッシュを役3分。インターバルを役1分。
これをセットで5回繰り返すと、男は立ったまま足首やかかとを入念にストレッチで伸ばして。
「よしっと。続きをちゃっちゃとやっちまおう」
そして飛び跳ねるように地面をけると、今度は後ろ向きに走りながら、2歩、3歩で止まり。
膝を曲げ、地面につき、くるりと振り返りながら再びバックダッシュを始める。

フラスト > バックダッシュとは言え、その辛さは減るものではない。
太ももの全面が筋肉痛というシグナルを与える。
全面を鍛えれば背面。
すべてはバランス。
ダッシュと同様。3分間5セットを繰り返せば、再び体をじっくりとほぐして。
「さてと。ダッシュラストかな?」
そして男が行ったのは、俗にいう反復横跳び。
左、真ん中、右、真ん中、左と交互に飛び跳ね、より早く切り返しを行い側面の筋肉を鍛える。

フラスト > 「ふぅ……意外と鈍ってたなもう……」
流れ落ちる汗を手で拭いながら、髪をかき上げる。
次のトレーニングは、両足を大きく開き、そのまま膝を曲げつつ、180度に広げる。
俗にいう四股の体制。
腰の位置と膝の位置が水平になるぐらいに膝を大きく曲げると。
「どすこいどすこいっと」
そのまますり足で腰の位置を固定したまま前へ進む。
すり足、というトレーニング。
スクワットが膝に負担がかかるため嫌いなフラストが取り入れた、トレーニング。
この不安定な体制を維持することで、臀部とハムストリング。太ももの裏と尻肉を鍛え上げ、安定感が増す。
ただまっすぐ進むのではなく、8の字を書くようにゆっくりと進みながら、両手を頭に乗せ、腰から頭をゆっくりと円を描くように回す。
太ももに上体の重みが、負荷がかかる。
「地味なのとかっこ悪いのが、難点だけど……ね!」
男は吐き捨てるように独り言をつぶやきながら、黙々とそのトレーニングを続けた。

フラスト > 「ふぅぅ……いい汗かいた」
すり足を後ろ、左歩き、左歩きと繰り返し、じんわりと汗をかき終わると、
ストレッチを入念にした後その場を後にする。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からフラストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシャルレさんが現れました。
シャルレ > お使いで夕方から外にでたので、今夜の防寒はちゃんとしてたつもり、
平民地区の市場に続く道を歩く小柄な人のシルエット。

今日は手袋もしてるけど、やっぱりさむい。
肩から斜めにかけてるカバンの中は、お使いを済ませた後で、自分用のお財布が入ってるだけ、
仕事も終わって、帰り道、フードをかぶり手袋はしてても、頬が外気に触れて、
冷たくなって白い息を吐きながら歩いてる。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシャルレさんが去りました。