2017/12/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にハクさんが現れました。
■ハク > ふらり、と角から足を踏み出し通りを歩く。髪と同じ銀色の狐尾を揺らしつつ、特に何の目的もない様子で。
夜であるが故に人気も少なく――しかし、夜であるが故にのみ開かれる店もある。
そんな店の前を通りながら、女であるが故に店には入らず通り過ぎる。
時折魔法薬の店に入るも、今日は財布を持ってきている訳ではない。
なので、少し品を見た後に店から出ていけば、店主からはあまりいい顔をされないだろうが……
ふらふらと、胸を揺らしながらそのまま道を歩いていく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 日が落ちると、或いは日が落ちずとも人肌恋しい季節。
これもまた、冬だろうが夏だろうが誰彼かの褥に潜り込むことを好む人外の姿が裏通りに。
これから娼館にしけこもうという風情ではなく、どちらかといえば一遊びしてきた様子。
北方帝国辺境に由来する民族衣装の上に、防寒用の羽織を一枚。
それが夜風に吹かれる度に、甘い石鹸の匂いが漂うものだから。
”泊まり”にしなかった理由は定かではないが、この時間、この界隈では悪目立ちすること請け合いで。
「えぇい、難癖をつけるにしても、今一つ知性の存在を感じさせるような物言いはできぬのか。
目が合った等という理由にもならぬ戯言で、儂の邪魔をするでない。」
キンキン声とまではいかないが、まだ少年期の響きを残した高い声が、夜の辻に舞う。
一目で素性の宜しくないと分かるゴロツキと、年の頃、精々十かそこらの子供の取り合わせは目を引くか。
小さな存在が袖を通した衣服は、この辺りではあまり見かけぬものの上等な設えであるとは知れよう。
言の葉で火に油を注いでいる現状は、金持ちのボンボン故、世間知らずで物怖じしないから…等と、感想を抱かれても不思議ではないかもしれない。
■ハク > 「ふむ?」
特にあてのない散歩道。向かいからやってきた少年には何か違和感を覚える。
見た目こそ自分の普段の姿と同じくらいの幼子のようである、というのに――その気配は一人の男性。
それも若さではなく老練に近い雰囲気をしているならば、流石に視線をついぞ奪われてしまうのも仕方ないか。
「そこな少年、こんな夜更けにこのような場所を出歩くのは不用心にござるぞ?」
とはいえ、見える姿は少年。一つ説教とまでは行かずとも表通りまで案内するのも人の道かと思って声をかけ近づいていく。
特に用事もなかったのだ、であればこれを用事として散歩を切り上げるのも一つの道だろうという、軽い考え。
■ホウセン > 少なくとも上っ面は屈強そうに見えるゴロツキとを前に、横合いからかけられた声に、怪訝そうに視線を向ける。
小ぢんまりとした体躯の視点の高さなどたかが知れており、斜め下から見上げる形で。
「うむ…?嗚呼、いや、無用心というほどでもなかろうよ。
世の中に有象無象が溢れておるのは常のことじゃし、故に何処におっても多かれ少なかれ遭遇してしまうものじゃ。」
ヘラリと軽く頬を緩める。
当事者たる少年と、声を掛けた銀髪の存在とに等しく共通しているものがあるとしたら、傍らで止め処なく凄みを利かせようとしているゴロツキに、一欠片の脅威も感じていなさそうだという点か。
凡そ、声の大きさと、唾の飛び散り具合で全てが決まるというような物言いに、薄っぺらい肩をひょいっと竦める。
「とはいえ、迂闊の謗りは免れんのぅ。
折角、良い気分で宿に帰ろうとしておったら是じゃ。
ふむ、丁度良い。お主、儂の呑み直しに付き合うがよいっ。」
声を掛けられたのも何かの縁と、思い付きだけで誘う声。
小さな人外の見立てたところ、女には腕に覚えがあるように思える。
そろそろ沸点の低い暴漢が痺れを切らす頃合かとの目算に相違なく、荒っぽい声と同時に、無駄に大きなモーションで腕を振り上げた。
男を御するなり、子供を抱えて遁走するなりできてしまいそうな迂闊さで。
■ハク > 「不用心であるが故に、斯様な者に難癖つけられているのではござらんか……?」
喧々囂々という様子で少年?に声をあげるゴロツキにも視線を向けて、はぁ、とため息。ゴロツキの視線がこちらに向き、それで勘気が少しでも晴れてくれればよいのだけれど……
よほど怒り心頭であるのか、こちらに目をむける事もない。
ううむ、こまった、と腕を乳房の下で組み、普段にはない膨らみを腕で支えるようなポーズをとって見つつ……
「ぬ、呑み直しなどと、子供であろうに……」
誘われた事には少し面くらいながら、少し面白いかもしれないと尾を揺らして。
そこでゴロツキがついに手を振り上げたならば……
「残念でござるが、先に手を出そうとした主が悪いでござるぞ?」
つい、と振り下ろされる腕をとん、と取るとそのまま合気の要領で力を受け流し。そのまま少年の真上をぽーん、と放物線を描くようにゴロツキが飛んでいく。
そしてそのまま鈍い音をたてて民家の壁にぶつかれば、それでゴロツキも静かになった事だろう。
■ホウセン > 至極真っ当な指摘であっても、分厚い妖仙の面の皮は揺るがない。
事態が動かなければ、如何に用心をしても手の届かぬ災難もあるのだし、諦めが肝心だとでも囀っただろう。
その戯言は未発に終わる。
嚇怒をぶつける為だけに振り下ろされた拳は、速度も鋭さも持ち合わせぬ技量の概念が怪しい鈍ら。
目算どおりに女が対処し終えたのなら、羽織の袖からちょこんと覗いている小さな手をパチパチと打ち鳴らす。
「呵々!見事なものじゃな。
是でお主は儂の恩人となった訳じゃ。
なれば、礼の一つでもせねば沽券にかかろうというもの。
無碍にしてくれるでないぞ?」
放り投げられた障害物を一顧だにせず、女の腕を引いて路地の先に歩を進める。
主に娼館や、非公式な文物を取り扱っている店が主たるものではあるが、飲食店がない訳でもない。
先刻はゴロツキと子供の対峙で目を引いていたが、今は子供と女の組み合わせが衆目を集める。
こんな時間に、こんな界隈での取り合わせは、想像力が豊か過ぎる輩には逢引きにでも映るのかもしれない。
「頼もうっ。
くははっ、相変わらず閑古鳥が大量発生中のようじゃな。
えぇい、閉店間際と渋い顔をするでない。
儂以外にも客を引っ張ってきてやったのじゃ。」
道行は数分ほど。
通りに面している割に、酷く目立たない一軒の店の扉を押し開ける。
ほの暗い程度に抑えられた照明と、狭い店内。
カウンター席が五つ六つと、四人掛けのテーブル席が二つ。
我が物顔でフロアを横切り、女にテーブル席を勧め、己は対面ではなくその左隣に腰掛けようとする。
■ハク > ゴロツキが起き上がる様子もない事を確認して、ふぅ、と手を下ろす。
あれで起き上がってくるような気概があるならそれはそれでまぁ……などと今の気分的には思う所があるが、流石にそれはなかったようで安心9割、といった吐息をつく。
そこで拍手に少年に視線を向けて。
「恩人などと……そもそもおぬしが、こやつを誂わねば喧嘩を売られる事もなかったのではないか?大体、こんな時間に……っとぉ、なかなかに強引でござるな!?」
はぁ、と次は違う意味の、呆れのまじったため息をついて説教でもしようかと口を開いた所で腕を捕まれ路地道へ。
しかし抵抗はせずに素直に引っ張られてそのまま少年の誘うままに奥へ奥へと進んでいく。
まるで勝手知ったる庭を進むかのような歩き方に、やはりこの界隈の人間?かと思いながらやがて一つの店へとたどり着いて。
「あぁもう……言っておくが少年、それがし、今日は持ち合わせは無いでござるぞ?後で払えと言われても、無一文にござるからな?」
店主に軽く頭を下げて、少年に誘われるままにテーブルにつく。
そこで羽織の袖を振って無一文であることを示しながら、隣に座った少年に軽くジト目を向けて。
■ホウセン > ”閑古鳥が大量発生”の表現どおりに、落ち着いた…というより、落ち着き過ぎた店内には、お子様と女以外の客の姿はない。
店長と思しき五十路ほどに見える男は、頭頂部がツルリ禿げ上がり、眠たそうな目をした丸顔と、それに背反しない丸い身体。
憎まれ口を叩き合う程度には気心が知れているらしく、『適当に』の一言で、最初の注文が終わってしまう。
「ふふんっ、お主こそ儂を見くびるでないぞ。
あの手のウツケが路傍の小石程度の障害だったとはいえ、其れを退けた恩は恩。
斯様な者に支払わせるなんぞ、子々孫々の末代まで笑い話にされてしまうというものじゃ。」
薄っぺらい胸板を、心持ち反らせて、ふんすっと鼻腔を丸くする。
事実、懐は重いのが常であるし、金銭的な負担を強いるつもりは微塵もないようだ。
そうこうしている内に、店員が二人の前に飲み物とつまみを運んでくる。
「して、お主。
見たところ狐の様相を持ち合わせておるようじゃが、何ぞ苦手な食物があったりはせんかのぅ?」
仮にミレー族だったとしてもとやかく言わぬ異邦人のことだ。
異相だとしても嫌悪や蔑みを向ける筈もなく、寧ろ興味が先行する。
コースターの上に置かれたのは、女の側が薬草を漬け込んだ透明な酒と酸味の強い柑橘の果汁を混ぜたもの。
翻って、小さなホスト役の前に置かれたのは、湯気の立つ紅茶にたっぷりと葡萄の蒸留酒を注いだもの。
「ともあれ、乾杯じゃ。」
陶器の器を両手で抱え、前に出す仕草。