2017/10/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアリエスさんが現れました。
■アリエス > 平民街の大通り、酒場が連なり人の往来もそれなりにまだある。
その往来から逸れるための細く暗い脇道の入り口に一人立っている。
見も知りもしない土地に流れ着いた直後、金もなければ土地勘もなく。
ただ一人、居所なく佇んでいた。
■アリエス > 小奇麗とも言い難い格好で突っ立っているので、貧民街の住人と思われても文句は言えない。
それでも、通りへ出た所で行く宛もない。
酒場の壁へと背中を預けると、そのままずるずると地面へと滑り落ちていって体育座りになった。
体力は少しでも温存しなければならない。
■アリエス > 冒険者という職業は知っていたので、冒険者として生きて行こうと決めたはいいものの肝心な冒険者の仕事の取り方などは全く知識がない。
仕事が取れなければ収入も無い。
真横に酒場があるのだから誰かに聞けばいいのだろうが、その考えには未だ至らない。
■アリエス > どれくらいそうしていただろうか。
突然立ち上がると、やっと酒場へと足を踏み入れた。
もうろくに残っていない金で心ばかりの食事を取ると、やっとのことで給仕に冒険者になるにはどうしたら良いかを尋ねた。
その給仕は特に嘘を教えることもなく数件の冒険者宿を教えたはずだ。
それを聞くと小さく礼を述べて店を出た。
―――目指すは、冒険者宿。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアリエスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 昼下がり、その小さなシルエットは王都にあった。
タナール砦への物資運搬という仕事が終わり、魔族領との境界付近をうろちょろしていたのも飽き、王都に戻ったのが一昨日のこと。
留守にしていた間の申し送りを聞くだけで一日を費やし、そこからまた顔繋ぎに奔走する日々が始まる筈だったのだが。
どういうことか、昼食の為に立ち寄った市場の店先で、しかめっ面を晒している。
「ふむ、ざっくりとした所しか分かりゃせぬが、お主…女関係は早々に清算しておいた方が良かろう。
逆恨みは誠に面倒な代物じゃ。
心当たりがないのなら、儂がとやかく言う話でも無いがのぅ?」
大通りのあちらこちらで見かける屋台の店先。
簡素な木製の長椅子に腰掛けて、対面に座る三十路手前と思しき人間種の青年に語りかける。
一刻前までは、リーズナブルで味も程々の食事が乗っかっていたテーブルの上には、銅貨が積み上げられ、所々銀貨まで見える始末。
■ホウセン > どうしてこんなことになったのか。
初めは、ちょっとしたものだった筈だ。
屋台の料理人に、”火難の相があるから気をつけるように”と告げただけだった筈だ。
その後、十分もしない内に、隣の屋台が油の壷を割ってしまい、流れ出たものに炉の火が引火して小火騒ぎが起きたのが、切欠といえば切欠か。
女難を予言された男は、乾いた笑いを漏らし、然し闊達さに欠ける声は途中で引き攣り、聊かばつの悪そうな表情への百面相を披露する。
”精々、気をつけることにしよう”と、どうにかこうにか体面だけは保って、謝礼とばかりに硬貨をトス。
足早に人の波に紛れていった。
「何ぞ、阿漕なことをしておったと見ゆる。
これで夜な夜な枕を涙で濡らす娘っ子が減ればよいのじゃがなぁ。」
星の巡りを告げ、対価を得る。
全くの占い師の経済活動であった。
自身の所業を省みぬ軽口を叩き、空になった対面の席へと視線を向ける。
■ホウセン > ロクデナシの放蕩邪仙とて、仙道の類である。
多少なりとも星の動きは読めたし、手相やら人相の判別法も心得ている。
勿論、そのジャンルを極めんと精進する者や、天賦の才を有する者に比べれば、精度は笊にも等しいが。
飯時で人が多かったこと。
そしてノリが良く、験を気にする者が間々含まれていたせいで、俄か作りの辻占いという役目を押し付けられてしまったという次第。
「然し、斯様に胡散臭い占いではなく、れっきとした神託でも聞きに行けばよかろうに。」
中身が八割方飲み干され、冷え切ってしまった茶が傍らに。
それを換えようとする、屋台の店主にボヤきを一つ。
”神殿に頼みごとをするのは、どうにも金がかかるもんだしなぁ”等という、もっともな意見に、そういうものかと頬杖を付く。
占い待ちの列は途切れた。
一服する間に呼び止められなければ、そろそろの引き上げの頃合かと目算する。
■ホウセン > おかわりの茶で喉を潤してから、長椅子を降りる。
「さて、馳走になったのぅ。」
予想よりも長い滞在となってしまったが、そこは致し方の無いところと割り切り、辻占いの報酬の内から代金を支払おう。
残りを懐から取り出した――ように見せかけた、”帳”にあった――革袋に詰め、元通りに仕舞い込む。
小幅ながらもせかせかとした歩みは、多少なりとも急ぐ心持の現われらしく、程なくして人の波に紛れて――
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリュシーさんが現れました。
■リュシー > (―――――酒は、飲んでも飲まれるな。
その言葉を、これほど深く心に刻む日が来るとは思わなかった。
発端は今日も、街中で昔の遊び友達と出逢ったこと。
己のこの姿のことは、さすがに最近はあちこちへ知れ渡りつつあるらしく、
街を歩けば呼び止められ、気安く話しかけられることも増えた。
それ自体は決して悪いことではなかったのだけれど、
―――あれほど、ノンアルコールでと言ったのに。)
……… ぁ、たま……ぐらぐら、する………。
(やたらとカラフルなジュースだとは思ったのだ、口に含んだ時、
ずいぶん甘ったるい、とも。
けれどすぐに、胃の腑がかっと燃えあがるような感覚に襲われて、
己が酒を、あるいはそれ以上の何かを、うっかり飲んでしまったと知る。
ニヤニヤとこちらの反応を窺っている男たちのむこうずねを、とりあえず、
全員思い切り蹴っ飛ばしておいて、ふらつく足で店から飛び出した。
平民地区である、宿も、そう遠くはないはずだと思う。
とにかく這いずってでも、辿り着けばいいのだ、と思うのだけれど―――)
…………あー、もぉ……ッ………。
(少女の姿の酔っ払いなんて、格好のカモにされてしまいそうだ。
けれどもう、足許がどうにもおぼつかない。
賑わう街の片隅、浮かれ過ぎた酔漢がそうするように。
ふら、とどこかの店の裏口近くへ立ち止まり、ずるずるとしゃがみこんで目を伏せる。)