2017/08/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にシズクさんが現れました。
シズク > 夜になっても、平民地区は賑やかだった。
祭りが終わったとはいえ、通りの店は夜の帳が下りても店は開けたままだし、
大道芸人たちの姿もあって、行きかう人々を楽しませている。

冒険者ギルドも、日中に依頼をこなし、その報告に来る冒険者たちでにぎわっていた。
その中の一人、「冒険者」ではあったが、受けた依頼は「迷子の犬探し」だった少女は、

「はいっ!ちゃんと依頼をこなしましたよ!」

依頼が何か、が周りにバレないように、依頼書を手にしては、報酬受け取りのカウンターで、
その…微々たる…報酬を心待ちにしているようで、ふんふんふ~ん、などと鼻歌混じりにカウンターに凭れている。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にエズラさんが現れました。
エズラ > にぎわう冒険者ギルドに、男が一人足を踏み入れる。
少女の隣のカウンターにやって来ると、ポケットからくしゃくしゃに丸まった依頼書を取り出し、丁寧に伸ばして――

「ほらよ、完了だぜ――」

そのまま係の者にそれを渡し、さらに手に提げていた布袋をカウンターに置いた。
袋の口が少し開いており、中が見える。
それは鋭く尖り、ねじれた角であった。
高山に生息する気性の荒い獣――希少な薬剤の材料となる――のものであると、冒険者なら気付くであろう。
そして、少女と同じく、報酬が支払われるのを待っている――ふと、隣に目を向けて。

「お嬢ちゃん、そっちの収穫は、どんなもんだったよ――」

世間話ついで――特に何も考えず、話題を振った。

シズク > カウンターに凭れ、わいわいと騒がしいギルドの喧騒の中、
隣りのカウンターにやってきた冒険者らしき人物に視線が映る。
報酬金が支払われるまで、暫く時間がかかるのは常のこと。
きちんと依頼が遂行されたのかどうかも、ギルド秘蔵の魔法だか使い魔だか何だかのシステムで確認できるらしい。
それが「迷子の犬探し」…であっても、だ。

だから、その手持無沙汰に、好奇心と興味が手伝って、隣のカウンターの上をひょい、と覗き見。
本人は、不躾なその行動がバレないように、こそっとしたつもりだったが、布袋の中身が見えて、

「わおっ、それって…な、な、ナントカの角?!おにーさん、すごい人?!」

一応それが何か、は知っているようだが、名称は知らず。
ついでに、思い切り心の声がダダ漏れ状態。

そして、こちらへと話をふられると、えっ、と思わず固まる。
愛想笑い全開にて、

「そ、そそそそりゃもう、アレです、その辺の獣を千切っては投げ、千切っては投げっていう…無双状態で―――」
『はい、迷子犬の報酬ですよ』

なんというタイミング、無双っぷりを(偽)アピールしていたところ、
カウンターの向こうから、報酬を持ってきたとの言葉が。

大見得というか、大法螺というか、それがバレたことで、
思い切りバツの悪い顔で、それを受け取り、ちらっ、と隣の冒険者を伺う。

エズラ > 「んん?いや、別にすげぇっつうモンでもねぇ――どこにでもいる中堅だぜ――」

何とはなしに話しかけたが、思いのほか食いつきが良くて逆に圧倒されかけてしまう。
そして、彼女が何やら大仰な声色で自身の冒険譚を語っていたが――係の者の言葉を聞いて、思わず少し、吹き出してしまう。

「フフッ……立派な仕事、こなしてるじゃねぇか」

苦笑してはいるが、男の声にさげすむような態度は見えず。
少し遅れて支払われた報酬を受け取りつつ、脇に退く。

「いや、バカにしてるわけじゃねぇ――マジで言ってんだ。失せ物探しはこういう仕事の基本だからよ」

シズク > 「ちゅーけん………あ、そうでしたっ!はははっ、私も見たことあります、それ!」

倒したことはあります、ではないから、言っていることは嘘ではないし、朗らかに頷いてみたものの、
アレで中堅なの?とちょっと表情が引き攣ってしまう。

そこに来て、ギルド職員のタイミングの悪い支払いである。
いそいそと小銭と言えるような、今日の夜食代程度のそれを受け取ってから、

「そ、そーですよ!だって、わんちゃんが居なくなって、おばーちゃん、寂しがってたんですもん!」

仕事の大小ではない、人助けが大事、とばかりに相手の言葉に頷いて応えてから、

「解ってます、馬鹿にしてないのは。けど…なんか、負けた気がします」

じー、と相手の立つカウンターに置かれた報酬と、己の、ポケットに入ってもポケットはすっかすかな報酬とに、
ちょっと肩を落としては、はぁ、とため息をつくのは、やはり冒険者としての練度の差を痛感してのこと。

エズラ > 「そーさ……お嬢ちゃんは今日、少なくともその婆さんを救ったってことだぜ、そりゃ立派なことさ――」

彼女のこなしたほのぼのとした仕事は、しかしそれをこなすことができなければ、少なくとも一人の人間が悲しむという仕事。
そして、なんだかんだ、やはり冒険者としての矜持を傷つけられたらしく、しょんぼりとうなだれる姿を見るに忍びない――
自身の報酬の詰まった小さな袋を手の中で二度、三度と弄び――

「なに、勝ち負けじゃねぇ――今日はたまたま、オレの仕事が上手くいったっつーだけだ」

そんなに気を落とすなよ、と付け加えると、ムフフ、と打って変わった笑みを浮かべる。

「そんな顔してっと美人が台無しだぜ――飯でも奢るよ、お嬢ちゃん――っと、これじゃ、具合がわりぃな」

オレはエズラってんだ――と自己紹介しつつ、相手の名を問うた。

シズク > 救った、立派なコト………。
多分、脳裏でエコーを伴って響いたのだろう、相手の言葉を聞くと、
ですよねっ!と思わず身を乗り出すようにして、相手の方へと向き直る。

「おにーさん、優しいっ!……じゃあ、私もお返しです。
おにーさんのおかげで、きっと、たぶん、ええと…さっきのが誰かの役に立ちますねっ!」

気分が持ち直したことのお礼として、褒め返す、ということを実行。
だが、あのねじれた角が何の役に立つのか、はたまたどのような効果があるのかは知識にないため、
なんだかとってつけたみたいな褒め方になる。

「ふわっ!び、び、美人だなんてっ!…カワイイではなく、び、美人っ!」

何たる響き!サイコー!とオツムの出来がかなり易いのか、社交辞令でもすっかり喜んでは、
シズクですっ!と嬉しげな表情はそのままに、明るい声で名を告げて。

「わおっ、ごちそーしてくれるんですか!やったっ!」

そこは遠慮なく頭を下げて、お相伴に預かる気で。
何食べますか?と早速食い気全開で相手に問いかける姿は、先ほどまでしょんぼりしていたとは思えぬもの。

エズラ > 「シズクちゃんね、ま、ひとつよろしくな」

お互い冒険者――場合によっては、組んで仕事をする可能性もなくはない。
この業界、良きにつけ悪しきにつけ、人脈は広ければ広いだけ有利であるから。

「そぉさ、美人だぜ――あ、もちろんカワイイも入ってるけどな」

そして、そのポジティブな性格も気に入った、と言わんばかりに、男も笑みを深める。

「オレがよくいく酒場があるからよ――とりあえずそこ行くとしようぜ?」

うるせぇとこだが、飯はうまいんだ――そんなことを言いながら、連れ立って冒険者ギルドを後にするのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からエズラさんが去りました。
シズク > 「はいっ、よろしくお願いしますね、エズラさん!
ぐふっ、美人、そしてカワイイとか…っ、エズラさん、褒めても何も出ませんよぅ」

報酬の額からして、言わずもがな、無い袖は振れないが、きゃっきゃとはしゃいで、相手の腕をぱしり。
照れ隠しの行動が若干古典的だが、嬉しいのは嬉しいわけで。

「わお、酒場ですか。甘いのとかありますかね?甘くて冷たいやつが食べたいです」

季節柄、というのか、そんな要望を口にしつつ、
ごちそうになりますっ!と先手を打って礼を言うちゃっかりしたところを覗かせながら、共にギルドを後にしていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からシズクさんが去りました。