2017/03/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/案内所」にティエンファさんが現れました。
ティエンファ > 「…なんか、知らんところ結構あるなあ…あんなトコにでっかい旅館があるたあなあ…
 九頭龍の水浴び場…ふぅん、温泉?ってのもあるのか …つまりでっかい銭湯って事か」

棒を肩に立てかけたまま、壁一面の地図を眺める少年。
ギルドの近くの案内所に時々こうして立ち寄り、街の施設を調べるのが、最近の趣味の一つになっていた。
美味い酒場や珍しい施設など、暇な時に寄ってみるのも楽しい。

ティエンファ > 「最初は依頼の時の場所確認とかで使ってたけど、来る度に新しい物が見つかって良いなあ、案内所
 流石は王都、とにかく広いな …しかし、温泉、温泉かァ…今度行ってみるかな、入った事ないし」

水浴びは好きだが、温泉と言う文化があまり馴染みのない物であるのか、子供のように目を輝かせる。
自分の宿からの行き方を指でなぞって、意外と近いな、なんて頷く。

「言うても、今の宿も気に入ってるから、泊ってわけにもいかんだろうけど、温泉だけはいるのとかできんのかなあ」

ティエンファ > 「あ、この辺りならー…ロゼッタ爺さんの店番依頼を受けた帰りとか寄り易そうだな
 あの爺さんの店は汗かくからなあ…帰りにざぶっと良い湯に浸かってー…」

指で地図をなぞり、富裕地区から平民地区をなぞり、大通りを上がって…

「で、この酒場で一杯ひっかけてから、宿に戻ってぐっすり…ってのも良いな 良いルートだ」

にま、と笑う。 友人の住む宿も確認すれば、誘いやすいな、と一人頷いて。

ティエンファ > 「あー、でも冒険者ギルドからはちょっと離れるなあ
 あの運河の橋が壊れてから、ちょっと遠回りだな…」

地図の上に押されたピン、そこにあった橋は今は復旧工事中。
大きな橋だったので、周りに他の橋が無い。 ぐるっと指で道をなぞってみるが…歩いて20分ぐらいかな、と目算。

「風呂の後にギルドに寄るのはちょっとなあ…湯冷えしちまう
 ああでも、この橋が治ったら一気に近くなるのかな? …いつ直るんだ橋、頑張れ職人さん」

ご案内:「王都マグメール 平民地区/案内所」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > 王城を抜け出していつもの通り貧民地区へ奉仕の仕事に出かけたはいいものの
平民地区を抜けて王城へ帰ろうといつもの道を通ろうとしたら橋が工事中だったり
慣れぬ道に迷って結局地図のある案内所へ来てしまった。

「困ったなぁ、早く王城へ戻らないとまた叱られちゃう……」

そんな独り言を呟きながら人々の間から壁一面に張り出された地図を見て
ああでもないこうでもないと道を確かめてみる。
普段は馬車で通る道も一人で出歩くと視点が変わってわからなくなるものだ。
そうやっている内に人々に揉まれて押されてティエンファの隣に出てきては肩が少しぶつかってしまう。
慌てて相手に謝った。

「あ、ごめんなさい……すみません」

ティエンファ > 「うん? ああ、なんもさ 気にすんなお嬢ちゃん…ん?」

眉を上げてツァリエルを見下ろすのは、逞しい身体の帝国顔の少年。
ツァリエルがぶつかった左肩には、鮮やかな入れ墨があった。
王族に関わる者としては、異国人×帝国人×刺青×武器携帯で危険役満ドンな無頼。
そんな相手が、言葉を止め、まじまじとツァリエルの顔を見つめる。
ちょっときつい感じの釣り目が細められ、半ば睨んでいるような…と、途端ににっこり笑って。

「なんだ、男か 悪い悪い、細っこくて綺麗な顔だから、女かと思った!
 どうした、そんな不安そうな顔して、道にでも迷ったのか?」

意外と気さくに声をかけけてくるのだ。

ツァリエル > 「あ、いえ……ええっと……」

慣れぬ異国の風貌と武器を持つ逞しい少年、歳も明らかに自分より上のようで
急にかけられた声にびっくりして言葉を濁してしまう。
だが元々は貧しい教会の出なのだ、荒くれ者の一人や二人生活の中で見慣れてきている。
小さな勇気を振り絞って相手の言葉に言葉を返した。

「あ、あの、ええそうなんです。王城に戻る道がわからなくて困ってしまって
 だけど地図の上のほうが見づらくてちょっと前にでてこないとわからなくて……」

話している内に相手の言葉や態度が見目よりも随分と穏やかで気さくな雰囲気に溢れていることに気づき
徐々に落ち着きを取り戻していく。

ティエンファ > 言い淀むツァリエルの勇気が奮い立つまで、少年は急かしもせずにのんびりと待つ。
その様子だけでも、少年の性根がどういうものか、少しわかるかもしれない。
逃げ出しもせずに会話を続ける相手に、にか、と歯を見せて笑う。

「王城に? へえ、教会のほうかと思ったけど、なんだ、王室神官のー…見習いと見た!
 あー、でも確かにそうだな、王城をトップにして貼りだしてるし、見難いやな」

思いっきり外した推測をぶつけつつ、ツァリエルの言葉に頷いて見上げる壁の地図。
王城に住む者はこんな場末の案内所で地図を見ない、と言う事で、王城辺りの地図は見えづらい上の方。
ふぅん、と鼻を鳴らして、

「俺、一昨日王城に行ったし、道は覚えてるぜ? 教えてやろうか
 …しかし、道が分かんなくって、どうやってここまで来たんだ?」

いぶかし気に眉を寄せ、首を傾げる。

ツァリエル > 貧弱な見た目の自分を相手にしても決して馬鹿にしたり急かしたりせず
きちんと言葉を聞いてくれる相手に段々と平素の態度に戻ることが出来た。
相手の的を外した推測には苦笑を浮かべつつ適当に話を合わせた。

「は、はい……見習いなんです。ちょっと用事で貧民街までお使いに行ったのですけれど
 いつも使っている道が工事で封鎖されていたりして迷ってしまって……」

嘘と本当を交えつつ、話をするも神様に対して嘘をついてごめんなさいと胸の内で謝った。
ティエンファが一昨日王城へ行ったというと目を丸くして驚いた。
そう言えばあの日、丁度なんらかの騒ぎが外で起きていたような気がする……が
詳しい内容まではツァリエルが知る由もない。

「え、本当ですか?ありがとうございます、ぜひ教えてください。
 ええっとここまでは……案内所の看板を見て来ました。
 ほら、あそこに立っている看板とか……案内所までは迷わないで来れたのです」

そう言ってちょっと離れた通りに立っている小汚い矢印の看板を指差して示した。

ティエンファ > 「はは、当たった って、王城から貧民街までって結構遠いお使いだな
 あんな場所うろついてたら危ないぜ、神官さんみたいな綺麗な顔じゃア、尻尾振って襲い掛かるやつらもいるんだから」

はじめて会った相手を心配しつつ、工事で、という言葉に納得したように頷く。
正に自分も今、その工事のせいでルートに頭を悩ませていた所だったのだ。

「なー、やっぱあの橋が無いと色々不便だよなー
 うん、こっからなら迂回してもそんな距離離れる訳じゃあないし、んじゃあ、行こうか」

善は急げ、と言うように地図に背を向けて歩き出す。
通り過ぎながら看板を眺めれば、

「時々、貧民街の方にあの矢印を向けなおして、つられてきた奴を襲う奴等もいるから、あんまり信用し過ぎないようにな」

そんな怖い事を言った。
夜の街は人通り多く、しかし、人波の中でも、少年の持つ棒は人の頭の上をひょこひょこと揺れている。
見失いはしないだろう。

「貧民街に神官さんのお使いって言うと、ミサでもあったか、って言っても今日は週初めだしなあ…
 お届け物かい?」

時々振り返って、ツァリエルを待つ。 人ごみになれた足取り。

ツァリエル > 「でも、救いの手が差し伸べられるべき場所も多くは貧民街です。
 危険だから行かないなどとは神の使いであるものにしてはならない行為です」

相手の心配する気持ちを受け入れつつきっぱりと言い放つ。
どうやら相手も工事で道が塞がれていることに対して困っていたようだ。
先導をしてくれる相手に小走りについていきながら
看板の矢印の話にぞっとする。
今回はたまたま運が良かっただけなのかもしれないが油断しないように気をつけようと心に誓った。
こちらも懸命に人混みを避け、ティエンファのあとを追う。

「ええっと、はい。奉仕の仕事のお手伝いとそのお手伝いのための物資を届けていました。
 それであなたはえーと……」

ここまで話しておいて相手の名前も素性も聞いていないことに気づいた。

ティエンファ > 「神様の代行なんてできない俺としては、その考え方は凄いし尊いとは思うけど、
 そう言う殊勝な奴に試練を与える趣味なのも神様だって聞くぜ? あんま危ない所に近寄るなよ」

見るからに堅気じゃない刺青男なのに、心から心配するようにツァリエルに忠告を向ける。
しかし、意志が固いのを見れば、『神官ってのは偉いもんだ』と感心と呆れ半分に肩をすくめる。

「ティエンファ 最近街に来た冒険者さ 護衛や用心棒が大体の仕事
 だから、こうやってか弱い神官さんを案内するのも、慣れてるのさ」

言いながら振り返り、片手を差し出す。
一生懸命に人ごみをかき分けるツァリエルに笑いかけて、

「今日の報酬は神官さんの名前だけで良いぜ、王城まで守ってやるよ」

ツァリエル > 「存じております……ですがその試練もまた何らかの意義があるもの。
 あえて受け入れ乗り越えるべしと神が定めたものなのかもしれません」

ティエンファの心からの心配に相手の心の清さに感嘆する。
これもまた神が与えてくださったご縁かもしれないとにっこりとティエンファに笑いかけた。

「ティエンファさん……冒険者なのですね。
 僕はツァリエルと申します、ええと今は……王城の修道士見習いです。
 よろしくお願いしますね、ティエンファさん」

差し出された手に自分の手を重ねこちらも笑顔で応じる。
出会えたのが彼のような良心的な冒険者で本当に良かったと安堵した。
それぐらい相手の笑みが暖かなものだったからだ。

ティエンファ > 「試練は乗り越える物、ねえ はは、良いね、細っこいと思ってたけど、意外と気骨が太いじゃん
 乗り越えるなんて言わず、叩っ壊して進むくらいまで気合入れていこうぜ」

呵々と楽しげに笑う少年。 王族とは違う、無頼の底抜けに明るい笑い声。
微笑みを返すツァリエルの手を握る手は、武芸者らしく硬く、大きい。

「ツァリエル、エルって天使の名前に着く音だったよな?
 成程、似合ってる こちらこそよろしくだよ、ツァリエル」

手を握っただけで、不思議と格段にツァリエルは歩きやすくなるだろう。
器用に道を分けていく少年の動きに合わせれば、まるで魚が泳ぐように人波を進んでいく。

工事中の橋の前を通り過ぎ、大通りを外れて裏道を行くが、
堂々とした少年の足取りは、後ろ暗い事は無いという様子で路地裏を行く。
…段々と大通りの喧騒が離れていき、静かで暗い裏町に入り込んでいく。
ガラの悪い男たちがたむろする近くを通り抜け、薄布を纏った女が客を呼ぶ中を行く。

不意に、ツァリエルの脳裏に、誰でもない今手を引いている少年自身が言った言葉が思い出される。
『あんな場所うろついてたら危ないぜ、神官さんみたいな綺麗な顔じゃア、尻尾振って襲い掛かるやつらもいるんだから』

…見るからに治安の悪い所に、ぐいぐいと少年を連れて行っている。
このまま、進んで良いのか、この初対面の少年を、無頼を信じて良いのか…。

ツァリエル > 自分とは違う、無骨で鍛えられた大きな手に小さく細い褐色の手を重ねれば
その温もりにぐっと心が温まった。
しばらく王城で暮らしている中ではあまりに少ない屈託のない笑みや態度に心に響くものがあった。

「ツァリ、とお呼びください。親しい人はみなそう呼んでくださいます」

ティエンファに手を引かれているだけで人混みが歩きやすくなって
不思議な魔法にでもかかったのかと錯覚するが
よく見れば相手の動きが隙のない、武芸者のその動きなのだろう。
真に鍛えられた人間がこれほど効率よく動けるのかというのもツァリエルにとっては驚きだった。

だが彼の行道がだんだんと人気の少ないものになれば少しだけ不安が心にもたげてくる。
もしかして、と思わないこともなかったし、ツァリエル自身ひどい目にあったのは一度や二度ではないのだが……

だが、それよりも彼の笑みと人柄を信じたいと願う心が先にあって
たぶん先程彼自身が口にした自分を『守る』といった言葉を信じたくて、
悪漢や客引きの娼婦たちとは目を合わせないように小走りで通り抜けながら
自分の先をゆくティエンファの手をぎゅっと握りしめて必死に後を追った。

ティエンファ > 自分とは違う細くて頼りない手。 だからこそ、壊さないように大事に握る。
少年の笑みに感じ入るツァリエルにちょっと首を傾げながらも、

「ツァリ、呼びやすいな …へへ、今日会ったばっかりなのに、親しくして良いって事か? ありがとよ、ツァリ」

嬉しそうに目を細める。 きつい印象の釣り目が、それだけで柔らかくなる。
神官見習い(?)の少年を連れたまま、ひょいひょいと肩と腕で少しずつ人ごみの流れを変えて、通り道を抜ける。
時々視線をツァリに向けて、難儀していないかを気遣う様子。
それと裏腹に治安の悪い場所へ踏み込む少年の足だが…ツァリの足取りも鈍らない。
少年を信じて小走りについて行くツァリ、その目の前、二人の前に、しかしツァリが信じた心を打ち砕くように立ちふさがる巨漢が2人。

にたにたと笑い、ティエンファの名前を馴れ馴れしく男たちは呼ぶ。
そして、その後ろに着くツァリエルに無遠慮に手を伸ばし、細腕を掴もうとする。
…ならず者の住まう裏街の中に誘い込まれた美麗の王族は、こうしてまた裏切られ…

…る、前に、巨漢の一人が吹き飛んだ。
ツァリの細腕を掴もうとした男はそのまま壁に叩き付けられ、ぐうも音も出ず、崩れ落ちる。
吹き飛ばしたのは、少年の拳。 二回りもでかいチンピラを、ツァリエルが気付くよりも先に一撃で殴り飛ばしたのだ。

「俺のダチだ 手ェ出すな」

その声は低く、武芸者よりも尚濃い無頼のドス。
無事な巨漢が慌てて避ける道の真ん中を、少年とツァリエルは堂々と進んだ。
そのまま暫く進めば、ツァリエルの予想よりもずっと早く、王城が見える大通りに出る。
そこで振り返った少年は、ちょっと申し訳なさそうな顔で。

「…怖かったろ、ごめんな」

ツァリエル > 自分の心を信じた結果、ティエンファに連れられて入った裏路地で
見るからにガラの悪い巨漢に絡まれる二人。
だがその巨漢が自分の腕を掴む前に、ティエンファが目にも留まらぬ素早さで
その片方を叩きのめしてしまったのだ。
あっけにとられて驚きにぽかんと口を開けるツァリエル。
そうしてティエンファが見せた恐ろしいドスを効かせた顔もどちらかと言えば
恐ろしいとか怖いとか言うよりも、なんて強い人なのだろうというほうが先に感想として出てきたのだ。

あっという間に通り抜けて出てきた先は王城の見える大通りで。
申し訳なさそうに謝るティエンファに対してツァリエルは慌てて首を横にぶんぶんと振った。

「そ、そんなことないです……!ちょっとびっくりしちゃったけど
 ティエンファさんがとっても強くて驚いちゃったというか……!」

そう言って、今まで自分を導いてくれたティエンファの手を両手でとると
ぶんぶんと強く感謝の意を込めて上下に振って握手した。

「ありがとうございました、おかげで無事に王城まで戻れました……!
 あの、何もお礼は出来ませんがもし王城にお越しの際はぜひ顔を見せてください……」

そう言ってこの強い武芸者へにっこりと笑みを向けた。