2017/01/01 のログ
■ヴァルファルニフル > 「ユゥ」
自分のいつもの声じゃないようなやさしい声になっている。そっと、肩にあてた手をすべらしていくと腕にはあまり筋肉のようなものがついていないような感触。本当に鑑賞用ね。きれいな腕。そっと手の先まで滑らせるとわたしはすこしだけ力を入れて手のひらを合わせて貝殻のギザギザにぎちぎちと口を閉じているように指の間に指を入れていき。がちりと握る。なんだかあたしが男になってしまうようなそんな錯覚を覚える。
「ユゥ、あなたって天使みたい」
あたしは一度天を仰いで、星空の美しさを確認して、そのまま彼の顔を抱きしめる。片手は手を繋いだまま。もう一振りの腕を彼のか細い肩に回して背中からぎゅっと抱きしめる。あたしの胸の谷間が顔に押し付けるような格好になりながら、男に対して思ったことのないような湧き出てくる感情をあまり頭のよくないあたしは体で反応していく。
「このままぎゅってしてていいかな」
彼を胸の内に抱きかかえて、あの美しい顔があたしの乳房の中に埋まっていると思うと。なんだか体の中まできれいになっていくようで。気持ちが落ち着いてくる彼のあの澄んだ声で名前を呼んでもらいたい
「ユゥ、やさしく、ヴァルって呼んで」
■ユークリッド > 「な、なんでしょう?」
そのまま手で撫でられると、くすぐったさが際立ってしまう。
彼女の手が触れる部分、そのすべてが何となく熱を持ってしまう。
手を握られるそれだけで、どきりとしてしまいながら
「そ、そんな、すごい人じゃない、ですけど、えっと……」
顔は真っ赤。心臓は早鐘。
まるで女の子だが、彼女が男らしいからふさわしいような気がしてくる。
抱きしめられ、柔らかな胸元に顔が埋まると、もがもがとしながら。
「か、かまいませんが、あぅ、あぅあぅ……!」
しどろもどろの照れっぱなし。
しかし彼女の要望があると、こくりとわずかにうなずいて。
「……ヴァル?」
小さな声で、呼びかける
■ヴァルファルニフル > 「……」
彼の声が体に染み込んでいくよう。あんなに優しいヴァルっていう発音を生まれて初めて聞いた。騎士団の男子の輩は叫ぶようにしかあたしの名前を呼ばない。後輩たちはもっと固めの尊敬の念が籠っている。そういうのが一切ない、優しい気持ちにさせられる声に包まれるなんて
彼の顔をあたしの二つの乳房の両方で左右に挟み込んでリズムよく押し付ける。きれいなユゥの顔をあたしの胸がもみくちゃにしてるって思うとあたしはなんだか興奮してきそう。だけど、背中に感じるものがあって、じっとその気配に気を配っている。
片手でユゥの顔を胸に抱え込んで片手で太もものあたりに忍ばせている短剣二本に手を伸ばす。ユゥの体を背中に回して完全にあたしの体を盾にしながら、振り向きざまに短剣を連射で手首だけで投げる。この子だけは危険に晒しちゃダメ。唇を噛みしめながら、まっすぐに視線を強くしていく。短剣の突き刺さった常緑の木の幹の周りに黒い瘴気のような影まとわりつきながら、そのまま薄く消えていった。魔族はこんなところにまで
「ユゥ、危ない目に合わせてごめんなさい」
騎士団に所属しているだけで、常に魔族との接触は一般人よりも頻繁にある。それも凶悪な部類の魔族。華奢なこの子を危ない目に合わせてしまったということを後悔して、あたしは彼から少し離れていく。悲しい気持ちになってしまう。だけど、いつもの生活に戻るだけ。夢のような時間をもらえたのだと思い直す。表情にはださないまま、無表情でただ口の端だけ笑顔にしたが、よく言われる。お前の笑い顔は怖いんだよという言葉がよみがえる。
岩場から立ち上がっていくと流れていくお湯を滴らせながら、ユゥに背中を向けている。まだ、このままここにいたい。その気持ちが強くて、足を踏み出せないでいる
■ユークリッド > 「……えっと、どう、でした?」
彼女は、己の呼びかけで満足してくれたのだろうか。
少女じみた甘い声が、ふわりと空気に蕩けて消える。
余韻を残しながら、拡散して、そして薄れて。
柔らかな感触に満たされた少年は、下腹部に疼きが溜まるのを感じ、身悶える。
刹那、彼女の体が閃いた。
風呂場であっても警戒を忘れない、彼女の鋭敏な感覚が何かをとらえたのだろう。
一瞬を切り開くように投げつけられた銀色が、何かを穿ち、木を抉る。
邪な気配が一瞬で霧散し、風すら凪いだ夜が戻った。
何があったのか少年には全く分からないが、彼女の謝意には抱きしめ返すことで答える。
背中側から、ぎゅ、と。
「いえ、ボクは無事ですし、大丈夫、です」
そのまま、少しだけ無言で過ごす。
彼女が、心安らいでくれればと思いながら。
■ヴァルファルニフル > 「ありがとう、ユゥ、また会えるといいわ」
振り返ると、また抱きしめたくなりそうで、だけど、そうなると、あたしの時間は止まってしまう。永劫の夢の中にはまり込むわけにはいかないのは先ほどの魔族の気配で実感した。
まだ体からは湯気が上がっていて、ユゥの視線を背中に受けていると思うとあたしは、なんだかぞくぞくした気持ちがおなかの下から胸の先にかけて湧きあがりながら対流をおこしたようにぐるぐると体の中を駆け巡て行く。お尻にぎゅっと力をいれて一歩、やっと踏み出すことができた。そして、ゆっくりと一歩踏み出す。胸の内でヴァルって呼んでくれたユゥの声をリフレインさせていく。
角を曲がって湯船が見えなくなって、いつもの地味なコートと編み上げブーツを身に着けると。見えないのがわかっていて、はじめて振り向く。小さくささやくように
「ユゥ」
■ユークリッド > 「……ん、それなら、うん。また、会えたらいいですね
――星の位置を見るに、年も明けてしまったみたいですし。
これから良い一年が、ヴァル酸に廻ってきますように」
彼女が離れていくその一歩を引き留めず、代わりに祈りの言葉を告げて。
聞こえないささやきは聞こえたような気がして、微笑みを向けることで答えよう。
あとは再び湯殿の中、しっかり体を温めて、そうして、自室に戻っていく。
凛とした彼女との出会いを胸に秘めながら――。
■ヴァルファルニフル >
ご案内:「九頭竜の水浴び場 混浴露天風呂」からヴァルファルニフルさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 混浴露天風呂」からユークリッドさんが去りました。