2016/12/26 のログ
ラフェル > 祈るように両手を組んだまま、目を閉じる。
その唇が、誰にも聞かれる事のないだろう呟きを紡ぐ。

「生き方に違いは色々とあれど、誰しもが幸せになれる可能性を秘めている。
今、この時、私に出来る事は、小さな…本当に小さな幸せを祈り願う事だけ。
きっと、貴方達はそれを大きな幸せとする事が出来る…ただ、私はそれを願います」

言葉を終えれば、目を開き、再び見える光景を眺めた。
まだまだ宴は終わらない、その賑わいを見詰めながら、この幸せそうな思いがいつまでも続きますように、と。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からラフェルさんが去りました。
ご案内:「平民地区 大通り」にヘルミーナさんが現れました。
ヘルミーナ > ガラス越しに見えたぬいぐるみやアクセサリー、シンプルだが品のある家具などが気になって。
今、彼女は雑貨屋の中にいる。

必要なものは、店内にないかも知れない。
でも、「欲しい」と感じるものは、あるかも知れない。

合理的であるより、感情を優先した結果。
今、彼女はここにいる。

ヘルミーナ > かれこれ、20分くらいは店内をうろついている。
たまに立ち止まっては、気になるものを手に取ったり、値札を見ては敬遠したりしている。

「うーん」

彼女が遠目で見ているのは、大きめな黒猫のぬいぐるみだ。
正確には、抱き枕用のぬいぐるみだ。店の出入り口に、目立つように置かれている。
なんだか、近くに寄って見るのがはばかられて、少し離れた商品棚の近くから見ているのだ。

ヘルミーナ > 「抱いて寝れば暖かそう。……でも」

小さく、頭を横に振る。
自分が手を出すには、少し幼いアイテムのような気もして。
値段は手頃だし、紙袋に詰めてもらえば、中身を見られないまま持ち帰ることはできるだろうけど。
 

ヘルミーナ > 悩む。しかし、ずっと同じ場所にいては不審がられるし、ほかの客の邪魔になりかねない。
いったん、ぬいぐるみから視線を外せば、再び、適当に店内をうろつき始める。
そして、小物雑貨が載っているテーブルの前で物思いに耽る。表面上は卓上の商品に視線を走らせ、「どれにしようか」と決めあぐねている振りをしながら。

(恋人がいたら。……こんなもの、そもそも欲しがらなかったのかしら)

ヘルミーナ > 人肌恋しい季節ではあるけれど、ひとりでベッドに寝る時、「隣に誰かいてくれたら……」と想像したことがある。
もちろん、同衾するような相手なのだから、想像が現実になった場合、自分の隣で寝るのは恋人なのだろう。

(――私、恋人の代わりにと、この子を欲しがったのかしら)

何かを思い出した風を装って、面を上げれば。
ちらり。出入り口付近へと視線を向ける。視線の先は、もちろん、先ほどの黒猫ぬいぐるみ。

とたん、彼女から苦笑が漏れた。

(ひとり暮らしに慣れてきたと思っていたけど。本音は私、さみしいのかしら。)

ヘルミーナ > ぬいぐるみを買えば、内心の吐露を肯定することになるだろう。
かといって、買わなくても、それはそれで強がることになりそうだ。

どうやら、あのぬいぐるみは店内にひとつだけのようだ。ぬいぐるみそのものに気を取られて気づくのが遅れたが。よく見たら、「残り1点のみ」と紙が貼られていた。

「誰か買って帰ってくれたら。……ちょうどいい、言い訳になるのにな」

ぼそり。小声で。

ヘルミーナ > 店内の壁時計に目をやれば、気まずそうな顔をする。
思ったより長居をしてしまったことに。

何も買わずにずっといれば、冷やかしと大差ない気がする。
気まずい思いが、よりいっそう濃くなる。

「……猫ちゃん、またね?」

誰にも聞き取られないよう、努めて小声で呟くと。
彼女は店を後にした。

ご案内:「平民地区 大通り」からヘルミーナさんが去りました。