2016/10/01 のログ
カリギラ > 睨んでいた男達、恐らく態々着いて来はしないだろう
にしてもあのギラついた眼はほぼ確実に良からぬことを考えていたのだろう
彼女をもう一度見て自分に感謝してくれてもいいのになぁと思う所だ
もし無理矢理行為に及べばなます切りにされていただろうに

「あはは、それは助かります」

素直に感謝をされた様で良かった
妙な勘繰りをされたり意地でも払うと言われるとそれはそれで面倒だ
それにすんなり受け取ってもらった方がお互い気分が良い

「砕華さん…ですか?
やはりシェンヤンの方だったんですね、薬の知識が豊富だなんて素敵じゃないですか。こちらも安心して薬を購入できますよ」

砕華、そう聞いた時には思わず妙な反応をしてしまう所だった
その名前がとある薬と繋がるからだ
でもまだそうと決まった訳ではない、シェンヤンではよくある名前
そう思っていた方が蚤の心臓の自分には都合がいい

「そうでしょうね。ひいてはあなたの評判にも傷がつきますし…顔、ですか?」

売ってもらえないかと思えばそうではないらしい
その顔には睡眠の不足している兆候は見て取れない
なにせ昨日もぐっすりと眠たのだから

「……では、こちらも一つ聞かせてください。
砕華さん…貴女テンジクと言う薬はご存知ですか?」

嘘は往々にしてばれてしまうものだ
まぁそれも仕方ないかと思考を切り替える、睡眠薬は諦めるとしてどうにも気になる事を一つ確かめたい
周囲に音消しの魔法を張るのは忘れずに静かな空間の中より一層声を落として尋ねた

砕華 > (大衆食堂の中は、一部を除いて、非常に騒がしかった。家族連れ、一仕事終えた後の男達。
それらを全部、一纏めにしてしまえば、ここまで騒がしくなるのは、納得のいくことだろう。
広さは、十分に確保されているものの、肘を張れば誰かにぶつかりそうな距離。
砕華は、席に着くまでのしばらくの間、キモノの袖で口を追い、出来る限り空気を吸わないようにしていた。
空気が汚いとか、そんな潔癖症じみたことをいうつもりはないが、あまり気分のいいものではなかった。
比較的静かな席で、サービスとして出された水で喉を潤すと、ようやく一息つける)

「はい、片田舎の貧しい農村で生まれ育ったので、何かに秀でていないと、明日の食事もままならなかったもので。」

(身の上話を聞かせるのは、相手の信頼を得るためには、どうしても不可欠なものだった。
相手の同情を誘う、親身になって話を聴く、親しみを込めて友人のように振舞う、など多種多様にも及ぶ。
砕華は、その中の一つ「相手の同情を誘う」事によって、カリギラの信用を得ようと、試みたのだった。

その、カリギラが砕華の名前を聞き、少しだけ反応がおかしかった。
商売人として、客を見る眼を肥やしてきた砕華にとって、その「少しだけ」が非常に気になるところだった。
そのまま聞き流して、一礼をするだけだったら、砕華も更なる疑問を抱かずには済んだだろう。)

「ええ、客商売は信頼が第一、信頼なくては店が潰れてしまいますからね…。
残念ですが、信用足らない人物には、睡眠薬などの、悪用される恐れのあるものは、作らないようにしております。」

(顔を見せてもらったのは訳がある。カリギラの眼の下に、隈が出来ているかどうかを確かめたかった。
睡眠不足に陥っている人間には、必ず隠さない限り、眼の下に隈ができる。
細工しているにしろ、必ずそこにあるはずのものがあれば、薬を作ることも、条件付で許可したが、それがない。
なら、睡眠薬は自分が使う用のものではない、という事ならば、売るわけにはいかなかった。
頭を下げ、申し訳ないが薬は作れない、と断ろうと口を開く、その刹那だった――――。

テンジク。

この名前を出した途端、瞬きよりは長く、息をするには短い時間。
砕華の肩が、ぴくり、と痙攣したかのように動いた。一目見れば、動揺による痙攣だとすぐに理解できる。
ゆっくりと、顔を上げる砕華の表情は――――変わらず、開いているか開いていないかのような細眼で、微笑んでいた。)

「………さあ、私はそのような薬を聴いたことはありませんね。その薬が、何か?」

(ひそひそと、声を落として尋ねるカリギラへ、さして顔を変えないまま。砕華はかくん、と首を横に倒した。)

カリギラ > 「それはなんとまぁ、生きる為と言われるとこちらは何も言えませんよ」

慰めも驚きも、何を言っても正解とは言えないので何も言わない
生きる為に学ぶのは悪いことではない、生まれの運が悪いのなら自力で覆す
実に結構な事で立派だと言える。思わず同情してしまいそうだ

「ですねぇ、知り合いも同じような事をぼやいていましたよ。
確かに悪用の恐れがある薬を売れないのは道理ですね。」

扱く全うで正論だ
何の反論もできないほど正しい、だから自分も一瞬で諦めがつく
薬師と客の関係では何も得られないのだから

確かに、彼女はテンジクの言葉に反応した
常人ならば何のことかわからないだろうが、自分は彼女よりも先に警戒していたおかげで気付けたと言っていい

「嘘がお上手、でもやはりいきなりあの薬の名前を出されるのは予想外でしたか?
砕華、この名前結構有名ですよ。例の薬の製作者として。あと普通に話す分には周りに声が漏れないようにしています」

さてどうしたものかと考える
目の前に居るのは薬師の露天商ではなくテンジクの製作者、もしくはその関係者と言う線もある
どちらにしても厄介な人物だ、目の前の食事、水さえも今となっては手が出せない
流石にマスクまでするのは礼儀知らずなのでそのままに

砕華 > (いつも使っている方法だ、此れで同情をもらえなかったら、そのときはそのときと切り替える。
がちゃり、と商売道具が入っている塊を、足元に置き両手を自由にすると、注文した料理が届くのを待つ。
簡単なもので、腹が満たされるものならば、好き嫌いのない砕華は、それだけで満足する。
食事を取らない日だってあるし、そのときにあったものを食べるようにする。それが、生きるための努力だった。

正論を言い、それを諦めてくれるのは、とても助かる。
此方とて、悪名高い薬屋、などというレッテルを貼られて、商売に水を差したくはなかった。

しかし、砕華のなかで、カリギラの評価は一気に3段階下がる。変わりに、警戒レベルが5段階ほど引き上げられた。
何の警戒もなかった、ただの客だという評価から一変して、カリギラは注意人物へとクラスチェンジする。

テンジクの名前が、こんなにも早く出ることは予想していた、といえば嘘になる。
そもそも、その名前がこの国で出るとは、正直思って居なかったのだ。

毒蛾と呼ばれている、とある女がいる。その原因が、「皇麻」と言う、シェンヤンでも有名な麻薬だ。
それと双極を成す危険な麻薬、「テンジク」――。字に直せば「天竺」。とある神話に出てくる、極楽の名前を名乗らせた。
その名の通り、極楽へ誘われるというほどに、幸福感を感じられる薬、と言う触れ込み。
だが、その実は――――強烈な依存性と、禁断症状による苦しみによる、永続的な服用。
全ては、とある偉大なる恩方のために――。

その名前を出した、という事は――何か用事がある、と砕華は予感した。
そうでなければ、声が漏れないような細工をするはずがない、そうでなければ、ここから逃げ出す算段もするべきだ。
大勢の人々が行きかう、大衆食堂を選んだのは好都合だった。木を隠すなら森の中、が使える。)

「………ふぅ、嘘は苦手なの。」

(砕華の表情が変わった。目の細さは変わらないものの、うっすらと開いているその奥には、じんわりと狂気が宿っていた。)

「テンジクを知っている、という事は…祖国の密偵の人か?
それとも、まさかテンジクを欲している、なんていう冗談は…なしでお願いするよ?
嗚呼、安心してくれて構わない、私は毒蛾のように、めったやたらに薬をふりまわることはないよ。」

(口調が変わるのは、警戒すべき相手への気持ちからだった。
もしも、テンジクがほしいなんていうなら、その理由しだいでは、ここから逃げ出すつもりでいる。)

カリギラ > 先程まで手をつけていた料理を眺める
美味しかった…そう残念に思いながら
食べてもいいが相手は正体不明の薬師、無いとは思っても何か盛られては笑えない
砕華はこちらをどう思うのか
ここで始末…なんて考えないとは思うが可能性はある
頼むからその刀を使わないで欲しい…普段信じない神に祈る

「おや、区長が砕けて親しみを感じますね」

どうやら神はまだ自分を見捨てていなかった
砕華が話の通じる相手であったのにも助けららた、問答無用の輩が一番面倒だ

「密偵ではないですよ、今日は本当に休日を楽しんでいまして。
砕華さんの実演に興味が湧き…あわよくば出所不明の薬がいくつか欲しかったんです。
テンジクについては確認の意味も含めて尋ねた次第です。」

薬を使わないと言われまた食事に手をつける
信用したわけではないがこちらからも歩み寄らないと話はできない
腹を割って話す…だったか?その表現が一番合うだろう

「テンジクなんて仕事でも使った事がないですね。まぁ使ってる人を見た事は有りますが…あぁはなりたくないですね。」

幸福な毒、テンジクを言い表すに最も相応しい言葉だろう
一度飲めば依存は確定。手に入らなければ平気で人を殺せる代物だ
誰がそんなの使うと言うのか…実際使う輩が居るのは間違いないが

砕華 > (カリギラが食べていた食事、このあたりでは一般的なのだろう。魚を焼いただけの、質素なもののように見える。
同じものを頼み、それを食事として愉しみながら、砕華は頭の中で、いろいろな思考を巡らせていた。
テンジクを知っているのは、一部の裏取引で、老師が出会ったもの数人。確か、この国の上流階級だった。
聴いた話では、それを使うのは、自分達に反逆しようとした者の尋問、と銘打たれていた。
薬を作った本人としては、その先を知ることに、さして興味があるわけではなかった。

ただ、薬を作って、それを売り、金を受け取り、皇帝様へと献上する。
その一連の流れが、テンジクの製作者としての、ごくごく普通のことであるべきだと、砕華はそう「思っている」。)

「私はカリギラに対して、あまりいい感情を持つことは出来ないね。」

(正体を知られてしまった、そのことは砕華にとって、非常に、そう、非常に拙いことだった。
カリギラの様子を見る限り、自分が何故この国にいるのか、という事には至っていないと、砕華は予測する。
いや、砕華ともあろうものが、「そうであってほしい」と、願わずに入られなかった。
正体を死って、目的まで知られているなら、皇帝様になんとお詫びしていいだろうか。
首を差し出して許されるならいい、だがもし、それでも許されないとしたら、なんと詫びれば。
表情は、微笑んでいるような細目を貼り付けているが、背中には冷や汗を、此れでもかと滝のように流していた。
腹を割って話す、そんなことをしたら、砕華はいっそ、ここで陵辱して殺されることを望む。
辱められ、殺されれば、少しは皇帝様に報いることが出来る、そう「確信」していた。)

「其れで、睡眠薬がほしいと、私に依頼したわけ……ですか。」

(少しずつ、冷静を取り戻してきた。その証拠に、口調が元に戻る。
砕華ともあろうものが、この程度で動揺させられていた。突然のことだったので、無理もないといえば、そうなのかもしれない。
再び、食事に手をつけながら、うっすらと開いていた眼を再び閉じ、水で食事を流し込んで、微笑んでいるような表情を作る。)

「…解りました、悪用することがないようにしていただければ、お造りしましょう。
ただし、テンジクのことは他言無用にてお願いします。…もし、口を滑らせたら、翌日、貴方がそのなりたくないものに、成り下がることになること、肝に銘じておいてください。」

(完全に冷静を取り戻し、砕華は先ほどの、睡眠薬の話を了承することにした。
その見返りは、砕華が提示するには少々部が悪い。テンジクのことを盾にされたら、どんな要求でも呑まなければいけなくなる。
ここは、カリギラの良心に賭ける、という博打に打って出た。少しでも有利になるように、少々の脅しを添えて。)

カリギラ > とても正直に嫌われてしまった
確かにそうなってもおかしくない言動をとったのだから当然だろう
話しぶりを見るに明確に拒絶されていないのがまだ救いだろうか

「構いませんよ、万人に好かれるような者でもないと自覚していますので」

少し寂しいとは感るが仕方のない事
これだけは生まれついてものなので治そうと思っても治らない
他人を演じ切る事の出来ない自分の才能無さを恨むしかないのだ

「えぇ、飛び切り強力な物をお願いしたいですね」

ここで薬の話に戻ってくる
口調が変わったという事は彼女の中である程度整理が終えたのだろう
それがこちらにとって良いものであると助かるのだが…

「ふむ、やはりそうなりますか。
早速の脅し、恐れ入りますが…何か勘違いしているご様子。」

また一口、魚を口に入れ水を飲む
カードは握った。あとはどう切るか…

「肝に銘じておくのは貴女ですね。首元を握られてるのはそちらでは?
……ですがご安心を、貴女がここに居る事をばらしたりテンジクについても胸にしまっておきましょう。
ですが、それは全て私の匙加減次第と覚えていてください。騒ぎになるのは貴女も嫌でしょう?」

薄く笑いかける
脅しをかけられて引き下がるようではこれまでやってこれなかった
悪い事に使うな?冗談を言いなさる。自分が使わない睡眠薬など使い方はたかが知れる
自分の優位性をこれでもかと示し楔を打ち込む

砕華 > (質素な魚料理だが、味のほうは良くも悪くも、庶民的という感想だった。
程よい感じで、白身の魚に火を通し、この地方で使われている調味料で、味を調えている。
シェンヤンでは見ない料理だが、こうして異国の地にて、異国のものを味わうのも、なかなか悪くはなかった。
目の前で、首に刃物を突きつけている、この青年がいなければ、もっと美味しく感じられたかもしれない。
彼の話に、耳を貸すべきではなかったのかもしれない。後悔先に立たずとは、このことだ。)

「あら、もったいない…。よい顔をしているのですから、もう少し人当たりよくしてみてはいかがでしょう。
女は、強く、気高く、そしてなにより慈悲深い、端倪すべからざるお方に、眼を奪われるのですよ?」

(理想としている恩方、それが砕華の全てであり、生きる意味であり、この世に存在できる理由だった。
くすくすと、笑みを零しながら、最後に残った魚の一切れを口に運び、咀嚼して飲み込む。
最後に、口の中に残った油を、水で流し込んで、使っていた箸を、皿の上にそっと置いた。
両手を合わせ、軽くお辞儀のように頭を下げると、にこりと口元に笑みを浮かべた。)

「飛び切り、ですか…。何に使うのかは、あえて何も申し上げません。
ですが、そこまでの薬を作るには、それなりに時間がかかるというもの…。
時間を下さるのは、構いませんね?」

(カリギラが求める、「飛び切り強い」睡眠薬を作るための肯定、薬草を採取し、乾燥させて、水に溶かすものにするのか、錠剤にするのか。
そのあたりも、綿密に打ち合わせをするべきだ。砕華は、自分が作った薬で誰が不幸になろうと、知ったことではない。
だが、自分が作る薬に関しては、一切の妥協を許さない。

脅しというカードを切った直度に、そのカードを衝き返してくる…。
忌々しい、率直にそう言葉が口に出そうになったものの、それを飲み込んで笑みを造る。
今、このカードを切られると、確かに砕華にとって、不利に働くことは明白だった。
だからこそ、砕華はおとなしく、ここは青年の言いなりになることにしたようだった…。
忌々しい、まったく忌々しいと、心の中で青年に呪詛を吐きかけながら。)

「……条件を。睡眠薬だけで、満足することはないのでしょう?」

(優位性は、間違いなくカリギラにあった。その思惑は、間違いなく、カリギラの勝利だ。)

カリギラ > この味、慣れるとどうしてかかなりおいしく感じてしまう
大衆食堂がいつになってもなくならないのはこういう味のお陰だろう
今日もこのままうまくいけば食事が更においしくなるかもしれない

「強く気高く慈悲深いってどこの物語の人物です?
人は分相応が一番ですよ偽り過ぎた外面だけを見ていると目元が曇りますよ。そんな方がいればあってみたいですけどね?」

好きな人でもいるのかと思える口ぶりに興味が引かれる
そんな人物がいるなら見てみたい
食事を終え水を飲む、満足いく食事ができて今日も感謝

「それは当然でしょうね。明日までに持って来いなんて無茶は言わないので安心してください」

薬は武器と同じ、一朝一夕で出来上がるものではない
薬師である彼女が必要と言うのならその日数が必要なのだろう

彼女から強い悪意を感じる
これが好意であれば心地いいが…いや、悪意でも問題は無いだろう
こちらをどう思っていても彼女は理性的に判断を下す事ができる
となれば自分に都合のいい返事に笑みを返し

「もちろん。これからよろしくお願いしますね、良き隣人として」

彼女に対して油断はできないがこの場だけは自分の勝利だろう
悪魔の薬テンジクに関わる薬師、彼女の価値は自分にとっては天井知らずだ

「今日は私が奢りますよ。なので帰って疲れを癒してください?
お気持ちは分かりますが可愛らしい顔が台無しですよ?」

彼女の表情は崩れていない、だが殺気立っているのは分かる
爆発寸前の火樽と言った所か

砕華 > (しばらくは、この青年似注意を払うべきだろう。砕華はそう判断する。
もし、砕華の計画――いや、「シェンヤン帝国」の害になると、そう判断したら、彼を殺す。
容赦なく、この屈辱を何倍にも返す方法で、惨たらしく殺す。砕華は、心の中で決意した。

大衆食堂も、夜中ともなればその人はまばらになる。既に、客らしい客は、カリギラと砕華以外にいなくなっていた。
随分と長い間、仕事の話をしていたらしい。周りの店員も、そろそろ帰ってくれといわんばかりの表情で、2人を睨んでいた。
食事らしい食事をとっていた、とは言い難い。更に、有意義な話し合いだった、などとお世辞にも言いたくない。
完全に、弱みを握られた砕華の機嫌は、最悪に近かった。)

「そんな無茶を言われたら、さすがにお断りするところでしたよ。
私は超人でもないし、この国で言う「マホウ」と言う物の心得もありませんからね。」

(一長一短で出来るならば、苦労は本当にしない。いや、むしろ苦労せずに薬が出来るなら、それは完全な駄作。
日数がかかるからこそ、いいものが出来るし、愛着も沸く。だから、砕華は薬を作り続ける。

強い、強い悪意。さっきを放っているのは、本当に無意識のこと。
周りの店員ですら怯えるような、そんなさっきを押し隠そうともせずに、砕華は無言で席を立った。
良き隣人など、白々しいと思いつつ、最後まであそこでしらを切らなかった、そこが砕華の敗北した理由だろう。
だが、カリギラの言葉を、一応信じるなら、他言はしないのだろう。
何かあれば砕華を頼る、いや利用するつもりなのは明白だが、いまの砕華に、彼をどうこうする手立てはない。
いまは、薬屋「紅一朝」の店主として、この地でしっかりと根を張る作業を、遂行しておこう。)

「……そうさせていただきますね、1週間後、薬を採りに来ていただければ。
代金は、ここの食事代で差し引きとさせていただきます。」

(かかった時間や、手間を考えると、かなり安く設定した。
そのくらい、彼に握られた秘密は、大きな意味を持つ。だからこそ、事を荒らげるわけにはいかなかった。
そのまま、荷物を手に振り向くと、一礼だけして、食堂から立ち去った。
宿へ帰ると、すぐさまふかふかのベッドに倒れこみ、思い切り怒りをぶちまける声が、夜な夜な響いたという。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」から砕華さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカリギラさんが去りました。