2016/09/06 のログ
ご案内:「王都マグメール平民地区 とある路地」にメイリンさんが現れました。
メイリン > 夕暮れ時、賑わう街の喧騒から一区画分ほど離れた、
昼でも薄暗い、細く入り組んだひと気の無い裏路地。

お仕着せのメイド服に黒い地味なショールを羽織った女と、
やはり地味なフード付きの外套を纏った男とが、至近距離に顔を寄せて。

―――艶めいた逢瀬、では無い証左に、僅かに垣間見える何方の表情も、
気難しげに引き締まっている。
低くひそめた声でなされる遣り取りは、ひとくちで言えば情報交換。
―――とは言っても、女―――つまり己の方には、然したる情報も無かったが。

「……未だ、雇われたばかりだもの。
 あまり、目立った動きは出来ないわ…、」

この前も、失敗したばかりなのだ、とは、流石に言えない。
フードの下から気遣わしげな眼差しを寄越す相手に、そっと頭を振って。

「……大丈夫よ。私は、平気…、
 父上に、宜しくお伝えして頂戴。」

心得た、と首肯を残して、やはり未だ心配そうなまま。
宵闇に紛れるようにして立ち去って行く男の背を見送る己の手は、
無意識に心細さを誤魔化すためか、ショールの胸元を両手で掻き合わせる。
俯いて、溜め息をひとつ。―――軽い、ホームシックかも知れなかった。

メイリン > ―――どれだけの時間、其処に佇んでいただろうか。

そろそろ戻らなければ、折角潜り込んだ職場を失ってしまう。
失わないまでも、怪しまれては元も子も無い、というもの。

もうひとつ、そっと溜め息を吐いて頭を振ると、
ひと時の感傷を其の場へ打ち捨てて、城を目指して歩き始める。

―――忙しく立ち働く同僚たちの中に、何とか紛れ込んでしまえば。
暫し、新米メイドとしての、在り来たりな日常に埋没することに―――。

ご案内:「王都マグメール平民地区 とある路地」からメイリンさんが去りました。