2016/07/11 のログ
イニフィ > 「……………。」

アレから、三日―――いや、四日くらいだろうか。
イニフィはいつもと変わらない服装で、マグメールのメインストリートを歩いていた。

あの日、貴族の館を明け渡す現場に居合わせたいニフィは、そのままとある淫魔を捕まえた。
貪られていく同族を、嘲笑しながら見下ろし―――ついにその魔力を奪われていった同族。
そのときの顔が、あまりにも滑稽で―――。

「……困ったわねぇ…。」

そう、困っていた。
無償に誰かを―――苛めたくて―――。
久々に、加虐心に火がついてしまって。
だけど、それを発散する手立てがなくて。だから困っていた。

イニフィ > 別に困ることでもないのかもしれない。
元々、淫魔であるイニフィはサディストだ。
その辺りにいる小娘を魅了して、そのまま連れ込んでたっぷりと遊んでやればいい。
だが―――そのまま心を掌握してしまうと、少し拙い。

「…さすがに、これ以上造るのは…ねぇ。」

はぁ、と少しだけため息をついた。
指折り数えるだけでも、既にいくつもの魂を掌握した。
これ以上増やして管理できないと、そのものの魂が砕けてしまう。
そうなったら―――迎えるのはイニフィが最も嫌う『死』だ。

「どうしましょうかねぇ……。」

適度な知り合いでも現れてくれればなあ、とは思う。
まあ、そんな知り合いが通るなんて結構低い確率だとは思うけれども。

イニフィ > そんな都合よく現れてはくれないか、とイニフィは苦笑した。
広い台地で、一握りしかいない知り合いに出会う確率もそこそこ低い。
軽く肩をすくめながら、大通りの端をゆっくりと歩いていく。
両手を組み、後頭部を支えるようにしながら。

「んー、せっかくだし、飲み物でも買って帰りましょうかね?」

いま、イニフィは富豪地区のとある館に住んでいる。
別に自由を阻害されているわけでもないし、気楽にやらせてもらっているので文句はなかった。

逸れに、腐った貴族を内側から見れる、というのもなかなかいい経験だ。

ご案内:「王都マグメール 大通り」にリィンさんが現れました。
リィン > リィンはこれまでのように救世姫としての旅を続けていた。
たとえ、それが自らの体を汚し続けるものであり、その真実を知っていたとしても、やめることはできなかった。
これまでも散々な目に遭いながらも、旅を続けてきた。
だが、冒険者として名を挙げるなどということは全然であった。
そのため、ギルドから回される依頼も大した事のないものばかり。
いつになれば、邪神を斃すことのできる力が手に入るのか……そんなことを考えつつ、とぼとぼと大通りを歩いていた。
いつものように白い法衣を身に着けている。その法衣の下のスカートはなかなかに短いものだ。
首元は、マフラーのようなもので隠している。
そんな時であった。

「……ッ、あ、あなた、は……」

大通りでとある人物と遭遇した。
一見すればただの町娘だが――実際には淫魔の、イニフィだった。
以前に陵辱された記憶が蘇り、思わず身構える。

イニフィ > 「えーっと、確かこのあたりに合ったはずなのよね…。」

イニフィは、頭の中でこのあたりに美味しいジュースを露天売りしている店があると記憶していた。
その場所が、大通りの確かこのあたりだったはずだし、と。
せっかくだ、それでも買って、住まわせて貰っている家でクッキーでも食べながら楽しもう。

なにか本でも買うのもいいなぁ、と思っている。
別に、読書が趣味というわけではない。
ただ単に気が向いたから、という理由だった。

さて、目的のそれはどこかなと目を凝らしていると、不意に目の前から少女のようなものが近づいてきた。
白い法衣はなかなかに清潔なイメージを沸かせるのには効果的だ。
だけど、その下半身を覆うスカートの異様なほどに短かった。
まるで、見てくれといわんばかりのそれである。

イニフィは、そんな服装をしている少女を―――一人、覚えていた。

「ん?……あら、お久しぶり。」

マグメールにいるとは、正直思っていなかった。
神に『呪われ』、全ての絶望を背負い込んでしまった哀れな少女。
イニフィは、笑みを―――妖艶な笑みを浮かべながら、少女へと向き直った。
以前、徹底的に陵辱しても壊れず、心すら折らなかった少女へ―――。

リィン > 「……相変わらず、普通に町を歩いている、なんて。王都でも活動をしているのですか」

普段は無意識でこのような丈のスカートを履いているのだが、彼女を目の前にすればそれを指摘された事を思い出し、顔を赤くして片手で裾を抑える。
かつての陵辱の記憶は未だ頭と体に残っており、小さく身を震わせていく。
警戒の色を隠さず、彼女を軽く睨む。
相手の妖艶な笑みを向けられれば、背筋が凍る思いを抱いた。

相手を睨むものの、リィンもここで相手と戦うというわけにもいかなかった。
人気もある大通りである。さらには、リィンは反逆者とされた王族の娘である。
何か騒ぎを起こして、それがバレてしまえば困るというものもあった。
相手の力が強大で、自分では敵わないというのも理解している。

イニフィ > 「あら……その言い方はちょっとないんじゃない?
か弱い一般市民が、普通に町の中を歩いてちゃいけないのかしら?」

妖艶な笑みで、まるで鼻にかかる様な甘い声でイニフィは笑った。
無意識に―――救世姫と呼ばれている彼女は人の目をたばからずに、露出の激しい服を着る。
その下半身を覆っているミニスカートがその証だった。
まるで気にしているかのように方裾を押さえながら、睨まれてもイニフィはそ知らぬ顔で、笑みを浮かべるのみだった。

さて―――どうしようか。
この子は弱らせてしまえば、好きにしてもどうという事はない。
いや、むしろ力で抑え込んでしまえば、絶対に壊れない最高の玩具の顔を持っている。
そして――いまイニフィはとっても誰かを苛めたい。
そこに現れたリィンは、正に格好の獲物というところだった。

「……其れで、アレから世界を救うって言う目的はどうなのかしら?
あ、もしかして私を斃せるだけの力を得たから、とうとう討伐にきたって訳?」

イニフィはあくまで笑みを浮かべたまま、そう尋ねる。
自分を斃せるだけの力があるとは―――到底思えない。
眉唾物の救世姫など、本当にあるのかどうかすら怪しい。
なにより、その伝説が本当ならば今頃、魔族は誰一人として残っていないはずだ。

リィン > 「クッ……!! な、何が一般市民、ですか……!!」

往来する人々は、さして二人を気にしているようではない。
単に会話しているようにしか思えないだろう。
リィンも、出会ったならばすぐに逃げるべきであった。もしくは、最初から声をかけるべきでもなかった。
相手がいくら魔族であるとはいえ、この往来で派手なことはできないはずである。
それでも、リィンが彼女と相対しているのは、救世姫として、魔族を見過ごすことができないため。

むしろ――ここから、“陵辱”されてしまうという未来を呼びこむためかもしれない。
勿論、リィンの意志ではない。しかし、救世姫という存在はそういうものなのだ。
短いスカートも、魔族や男などに狙われやすくするものだ。それをイニフィにかつて看過されている。
それでもなおこの姿のままということは、よほど救世姫を規制する力は強いらしい。
この格好のために、淫乱だのなんだのと呼ばれ、あれ以降もいろんな者に弄ばれてきた。

「……ッ、そ、それ、は……」

笑顔で、救世について尋ねられる。
その質問に、思わず身を震わせ、俯いてしまう。正直な反応を示してしまった。
ここで、そうだと嘘の一つでも言えればよかった。だが、リィンはそれを言えない。
犯され、辱められる日々は送っていても、魔族を斃す力などは未だ得ていないのだった。
今のままでは、以前言われたように世界の家畜、奴隷に過ぎない。

「……そ、そんなことは貴女にいう必要はありません。
 私も、ここで騒ぎを起こすつもり無い、ですから……お、王都から、出ていって、ください」

と、そんなことを言った。苦し紛れにすぎる返答である。

イニフィ > ―――本当、面白い反応をする娘だ。
少しから買うような口調だったのに、あんなふうに大声を出すなんて思わなかった。
まあ、イニフィも確かに周りからしてみたらただの一般市民でしかない。
ただし、表面上は――のおまけがつくけれども。

「あら……そう見えない?おっかしいわねぇ……。
ん~、やっぱり服装はもうちょっと凝ったやつのほうがいい?
あっそうだ!今度からは農村の格好でもしてみようかしら?」

そっちのほうが、より一般人らしく見えるわよねといわんばかりの、小娘のような無垢な顔をリィンに見せる。
リィンの性格と、そして救世姫の呪われた運命。
その相乗効果とでも言うべきなのだろう。
表情をみれば分かる、いまだに自分を倒せるほどの力なんかない、という事を。

「………それは?」

俯き、そして言葉が出ないのがその証拠だろう。
彼女のことだ、いままで散々犯されて来たに違いない。
男に、あるいは魔族に。はたまたもっと別のなにかにも襲われたかもしれない。
だけど、それでも旅を辞めようと思わなかったのは、ある意味敬意を表する。
だけど―――それは結局、ただの世界の玩具でしかなかった。
体を売り、陵辱され、そして―――壊れていく。
その一端を、イニフィは加担したい―――いや。
むしろ、今思っているのはこうだ。

『この壊れない玩具を、本気で壊したい―――』

「え~、それは困るわ…。せっかく新居まで出来たって言うのに…。
…あっ、そうだわ!リィンちゃん…だっけ?貴女、うちに来なさいよ。
どうせ、今日も宿がないんでしょ?…んふ、泊めてあげるわ。」

――――永遠にね、と淫魔が笑った。

リィン > 「……ふ、ふざけないで、ください。わ、私はそんなことを、言ってるんじゃ……!!」
農村の娘の格好云々などと言われれば、顔を赤くして彼女を睨む。
救世姫としての使命、魔族のこの国からの一掃。
相手の巫山戯たような態度に憤る。相手が魔族だとわかっているのだからなおさらだ。
魔族がこの国を汚し、作り変えようとしていることへの怒りは大きい。
イニフィ自身がどう思っているかはわからないが、魔族というだけで、戦うには十分な理由ではある。

イニフィに持っている杖を向ける。
とはいえ、実際に術を行使するわけではない。
相手を退けようとしてのことだが、全くの無意味である。

「な、なっ……!? 何を、言って……!!」

すると、突然相手が自分の新居に来ないか、などと誘いをかけてきた。
あまりのことにリィンは目を見開く。思わず術を行使しようとしたが、できない。
せっかく、陵辱されて穢を溜められる機会を、救世姫の体は逃しはしないのだ。
陵辱の気配に、子宮の上の皮膚に救世姫としての証の神の印が浮かび上がり、光を放つ。
それは薄い衣服を通して光る。リィンはそれを手で抑える。神の印というより、今は淫紋だ。
彼女の家になど行くはずがない。どのような目に遭うかもわからない。しかし―ー

「……わ、わかり、ました……話は、話はそこで、つけます、から……」

などと、答えてしまった。王都で目立つわけには行かないこと、周囲の人間を巻き込みたくないということ、理由は色いろある。
ただ、結局は、彼女に陵辱されるであろうことを、体が選んでしまっただけである。

イニフィ > 「んー、別にふざけてるわけじゃないわよ?……前に言わなかったかしら?
私は人間として、この国にいるの。…んふ、だからちゃんと一般市民よ?」

理解してくれたかしら、とイニフィは首をかしげた。
農村の格好をするのも別に悪くはないけど、あの服装はどこかちょっと好かない。
今の格好とどこが違うんだ、と突っ込まれたら困るけれども、とにかくちょっと色合いが好まない。
アレをカスタマイズして明るい色にすればいいのだけれども―――まあ、今はそれが出来ない。
やっぱり服装にもこだわりを持つべきなのかな、とは思っているしだいだが。

少し、茶化すような態度を取っていると杖がその手に構えられていた。
嗚呼、そういえば彼女は魔法を扱うようなことを言っていたか。
だけど、それを見たことがない。そもそも―――何故発動させない?
周囲に人がいるから、巻き込みたくないだけなのだろうか?
少しだけ、その疑問が浮かび上がった。

「………んふふふ。」

リィンの体は、とても正直であった。
布地の薄い服装では、その光が透けて見える。
それを隠したとしても、イニフィはまるで面白いものを見たとでも言うように、笑みを零していた。

「ん、話?………話があるなら、ここで聞いてあげてもいいわよ?
一般人が気になるなら――――はいっ」

イニフィは、ぱぁんと大きな音が出るように手を打ち鳴らした。
ふわり、とその周囲に桃色の薄い幕が浮かび上がり、二人を取り囲んでいく。
そして、イニフィはその中央で―――普段の、淫魔の姿を晒した。

だけど、以前見たであろうその姿とは少し違う。
羊を模したような角、そして派手にイニフィの肌を露出させているレオタードのような服装は変わらない。
問題は、その背中に生えている羽。
蝙蝠のような羽は変わらないけど―――それが、2対四枚に増えている。
そんな姿を晒しているのに―――一般人は見向きもしなかった。

リィン > 「……わけが、わかりません。魔族なら、魔族の国に、いればいい、んです……」

人間としてこの国にいる。それが理解できない、と言った。
たとえ、どれだけ相手にその理由があったとしても、救世姫として定められたリィンは、それを受け入れられないのである。
無論、そのような態度を魔族にとり続ければ、陵辱されていく可能性は増える。
リィンは意識してはいないものの、そういうことなのである。

淫紋の輝きを見られて、ひどく羞恥に悶える表情を浮かべる。
以前は、神の加護の証だと思ってはいたものの、イニフィに弄ばれてからはそうは思えなくなってきていた。
当然、救世姫について、疑問などを抱いているわけではない。そもそも、抱けないのである。

「……な、何を言って! こんな所で、そんな……! 私は、目立つわけ、には……!
 ッ、これは……!? 認識変化の、魔術……?
 その、姿、は……!」

話はここで聞く、などと言われ、リィンは焦燥の色を浮かべる。
魔族がどう、救世姫がどう、などの話をここでできるはずもない。
更には、目立つわけにはいかないなどの特殊な事情についても口を滑らせた。
だが、それが外に漏れる心配についてはなくなったらしい。
相手が手を叩けば、不思議な気配と色が満ちて、イニフィが正体を現した。

しかし、周囲の人間は何事もないかのように通り過ぎる。
いくら王都に魔族が多く潜んでいるとはいえ、こんな往来で正体を現せば騒ぎになる。
それが、全く認識されていない。つまりは、見えなくされたということだろう。
さらには、相手の羽の数が増えていた。リィンはそれに息を呑む。
その翼の数は、魔族の位階や力の証であると知っているからだ。

「……ッ!! 神の御稜威を以て、魔を今こそ、祓わん――!!
 ……そん、な、どうし、て……」

リィンはこの状況を利用し、杖を向け、詠唱を行った。
神聖な魔術である。だが、何が起きるわけでもない。
リィンは魔術の知識も一般人よりある。イニフィの技についても、すぐに理解はできた。
そして今、それを使おうとしたのだが――発動しない。この状況を覆すことを、救世姫の体は望んでいないのだ。
そんなことまで、彼女の前で明かしてしまった。ほとんど無防備だと言っていい。
連れ去るもどうするも、思うままということだ。

イニフィ > 「嗚呼、それはちょっと出来ない相談ね…?魔族だからとか、そういう考えはナンセンスよ?
私は人間が大好きだから、だから一番近くで人間を見たいの。」

理由なんかたかが知れていた。
イニフィは元々そういう性格だ。好きだから―――自由だから。
そんな簡単な理由で、人間界へと遊びに来ているのだ。だから、リィンの言葉はただ、嘲笑して受け流すのみである。

以前―――陵辱してあげる前はそのもんは神の印だとかのたまっていた。
だけど、それをむしろ恥ずかしく思えてくるならば、どうやら彼女もだんだん理解し始めているのだろう。
自分の運命、そしてその意味を。

「だから、目立たないようにしてあげたんでしょ?
この中にいる間は、私たちは回りには見られないわ。
んふふふ……すごいでしょ?私ね…アレからものすごーく強くなっちゃったの。」

驚くのも無理はないだろう。
以前のイニフィは、確かに羽は生えていたけれど、それは一対二枚であった。

しかし、今は違う。
沢山の人間の魂、そして―――決して抱かれてはいけないもの。『想い』とも称されるそれ。
それらを捧げられて、格段に魔力を挙げていた。
いまや―――そう、魔王と肩を並べられるほどに。

「さーてと、救世姫…あ、違うわね?淫乱姫はどれだけ力をあげたのか、見せてもらいましょうか?」

勿論、彼女が大して変わっていないのは知っている。
術式が発動しないのは、彼女がそれだけ陵辱を本能で望んでしまっていることでしかない。
ぺろ、と指先を舐めながら、イニフィは一歩、彼女へと近づく。
これから始める陵辱劇を、本当に本当に―――楽しみにしながら。

その運命を受け入れるしかない、リィンはどうなるのかは―――少し先の未来で、明らかになるだろう。

ご案内:「王都マグメール 大通り」からイニフィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 大通り」からリィンさんが去りました。