2016/05/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 小さな図書館」にヴェルトさんが現れました。
■ヴェルト > はらり、と羊皮紙の擦れる音が響く。
図書館の営業時間はとうに終わっているはずにも関わらず、そこに座す存在があった。
「なるほど、わからん」
だがその口から零れた言葉は、おおよそ知識を求めるものとは思えないものだ。
解らなければ調べればいい、図書館とはそういうものであるにもかかわらず、解らないと告げた書物をまたはらりとめくるだけなのだ。
黒いローブ姿は、ほとんどの明かりが消えた空間の闇に溶け込むようにも見える。
爛々と燃えるような黒紫の瞳が、妙に闇の中浮かんでいるように見えるかもしれない。
■ヴェルト > 開いているのは魔導書の一種であるらしい。
どこぞかの国のえらいさんが行った偉大な研究結果をまとめたものの写本であるとか。
何故そんな難解なものが一般市民向けの図書館に並んでいるというのか。
――答えは感嘆だ、偉業自慢として、様々なところに出荷したらしい。
まあともあれ、内容的には噛み砕いて解りやすくしてくれてはあるのだが、どうしたってところどころ専門的な話が出てきてしまう。
「これは読み物としては失格だな、うん」
ふーやれやれ。そんな声まで続きそうな様子であるくせに、やっぱりまだページをめくる指の動き。
■ヴェルト > なお、別段図書館に忍び込むにあたって特殊なことをしたわけではない。
ナチュラルに鍵が開いていたのだ。不用心にもほどがある。
――最も忍び込んで不埒なことのために使われているような形跡もある。
そういう意味では鍵をかけぬのはわざとなのかもしれない。
都度開錠されていてはとても手間であるのだ。
はらり、またページがめくられる。もうずいぶんと終わりが近い。
■ヴェルト > 「ふむ」
最後のページをめくりおわると、ぱたんと本が閉じられる。
借りるつもりはもとよりないらしく、閉じた本はそのままにかたりと席を立って
「一体これをどう発展させるべきか、まったくわからん」
左手の上にともる光源。
暗いところで明かりを得るためのものではあるが――それが七色。
派手には見えるが、実用性がいまいちおもいつかないのは青年が凡人たるゆえんか。
――この術についての記載がなされている書物であったのだとか。
知識を『食った』青年は、結局これを収穫とみなすことにしたらしい。
得るものを得たことだし、適当に宿か何かを探すためにと――図書館を後にする
ご案内:「王都マグメール 小さな図書館」からヴェルトさんが去りました。