2016/03/05 のログ
■ヘンリエッタ > 彼女の考えたとおり、自由な造形を可能とするものの…コントロールする実力が高くないと、細かなところで雑な部分が出てしまう。
自身もまだ鍛錬の最中というのもあって、試しに見せていく造形はあまり小さすぎず、細かすぎない程度のものが多い。
それが良い物に見えるように配置や大きさなどで整えて小細工を重ねていた。
サンプルを見せていく間も、やはり好奇の視線と、ヒソヒソとした蔑んだ響きが重なっていく。
真面目に対応する自分も同類なのではと何処からか聞こえると、ぞわりと悪寒を覚えてしまう。
「…い、いえ…そうでは、なくて」
それ以前の話だとぼそりと呟きながら突っ込み返すものの、隣の姉ちゃんも物好きな奴だと隣の店主のつぶやきが耳に入ると少しだけかちんと来てしまう。
そもそも、こんな格好して何で事実を隠すのやらと変な怒りもまじると、雰囲気も態度も変えずにケープの裏から小瓶をいくつか取り出すと、乳鉢へと決まった配分で開けていく。
「少しだけサービス、しましょうか」
混ぜあわせた薬物が反応を起こし、甘い香りとともに気化する。
吸い込んでも毒素も危険な成分も何もない甘い香りだが、金属には大きな変化をもたらす。
「普段の格好のほうが…すごかったり、ですか?」
不意に普段の戦装束について問いかける、彼女が言葉でどう答えようとも関係なく、金属は気化した薬物を経由して微弱な脳の電気の影響を受ける。
凄いと思えば円を描き、凄くないと思えば棒を交差させたバツを描く。
いうであれば一切の隠し事が出来ないうそ発見器のようなものである。
■マルティナ > 「すごいかどうかは分かりませんけど、お仕事中よりは薄着ですよ」
露出に関しては五十歩百歩というものだが、単純に肌の露出面積で見ればグローブやブーツで手足が隠れている分普段の格好の方が露出は低いといえる。
とはいえ肝心なところが隠れていないという点では大差ない。
特に隠すことなく、その辺りは正直に答えた。
■ヘンリエッタ > 「……」
手の上にある金属は工程を示す円を描いたものの…こんなにあっさりと言われてしまうと、敢えて意志を暴こうとした意味がなくなってしまう。
予想外のストレートさに閉口してしまいながら一間開けると、乳鉢から漂わせた香りは別の薬品を混ぜて消していく。
「…率直にいうのですけど、この雰囲気、とか…気づいてますか?」
未だに周りや通り過ぎる人々から、過ぎ去るような罵りの囀りが僅かに聞こえる。
巻き込まれつつある自分に聞こえているのだから、彼女に聞こえないはずもないだろうと思うと、じっと見上げる。
■マルティナ > 「それはまあ、いつもの事ですよ。その内みんな慣れますって」
本当に慣れてくれればいいのだが、大体はそうなって欲しいという自分の願望である。
目立った声の方に振り向きながら軽く手を振ってみたりと動じていないアピールをするが恥ずかしさを感じていない訳ではない。
むしろものすごく恥ずかしい。
「それよりも、これってお値段はどのぐらいですか?」
商品が気になって見に来たのも事実。
色々と言いたそうなのは分かるが強引に話題を切り上げて商品の話しをしようとし。
■ヘンリエッタ > 「…いや、慣れない、ですよ?」
目の前にいる彼女という光景も、それを取り巻く周囲の状態も、まるで慣れようのない世界。
手を振られた方は、嫌な顔をして立ち去るのもいれば、ニヤニヤしながら手を振り返すものがいたりと、反応も様々。
その傍らで同類にされそうになっているこちらは、ずんと空気が重たく暗くなってしまうけれど。
「…ペンダントやブローチとかなら、70ゴルドですね。 ピアスとか指輪とか、細かなものなら…100ゴルドです」
強引に話題を値段へと引っ張られれば、それぞれの加工ごとの値段を答えていく。
変化に使っている金属の代金を差し引くと、手元に残るのはそれほど多くない。
その格好でどこに飾りをつけるのだろうかと、逆に気になるところではあるが、値段を答えると大人しく、視線という針の筵のなかで縮こまりながら答えを待つ。
■マルティナ > 「そんなに高くはないんですね。それなら一つぐらいお願いしちゃいましょうか……」
特別安いという訳ではないが無理せず買える程度の価格。
しかしオーダーとなるとデザインの面で少々悩んでしまう。
「チョーカーやブレスレットなんかはおいくらでしょう?デザインは……、そうですねえ、花びらをワンポイントであしらう感じで」
一応思いついた要望を店主へと告げる。
しかし言ってみたもののあまり明確なイメージは固まっていないのだが、このぐらいでも作れるものなのだろうか。
■ヘンリエッタ > それなら買おうかと何時もなら嬉しい言葉だけれど、この状況ではそう喜べるとは言いづらく。
それでも ありがとうございます と御礼の言葉はしっかりと返していく。
「それなら…70ゴルドで…花弁ですか」
大雑把なデザインのオーダーを受けると、暫し思案顔で考え込むと、掌の金属を変化させ始めた。
うねうねと変化するそれは、プレート状の金属になれば、その表面にデザインを浮かび上がらせていく。
季節柄、東洋から来たという桜の蕾が開くのが近い。
それを思わせる花と、風にのって散っていく花弁が一つの絵のように金属面に凹凸で描かれていく。
ゆっくりとペンで描き出すように金属を変化させていけば、自分で描いた思い通りのデザインが完成し、すっと板が収まった掌を彼女の方へと差し出す。
「このデザインで、どうでしょうか…?」
これならご要望に叶うだろうかと、確かめるように問いかけた。
■マルティナ > 「わぁ、すごいすごい。いいですよこれ」
流石は本職というべきだろうか。
漠然としたイメージを形にされると何だかとてもしっくりと来る気がしてきた。
「派手すぎないですし可愛らしくていい感じです。では、これでチョーカーを一つお願いできますか?」
少し迷ったがチョーカーなら仕事着でも身につけられるかなと考えるとブレスレットより良い気がする。
他も色々と見てから買う予定ではあったがこれで決めてしまってもいいだろう。
■ヘンリエッタ > 声が弾む様子に、どうやらお眼鏡にかなった様で少しだけ口角が上がっていく。
チョーカーをとお願いされれば、桜の花が散るそのデザインを、金属のプレートの上へ描いたままクンと金属板を反らせていく。
彼女の首にぴったりと合うように、視線は彼女の首と自身の手元の間を何度も行き来を繰り返した。
そうして細く緩いカーブの掛かったチョーカーの飾り部分を仕上げると、黒い革紐を準備する。
末端の切口を薬品で崩れないように仕上げると、平たい紐の上に、桜の花と花弁が金属板から打ち抜かれる様に並べられていく。
小さな穴を紐につけて固定の芯を貫通させていけば、平らな黒い革紐に、銀色の桜花と風に流れて散っていく花弁が横並びに飾られたチョーカーが完成していく。
首の後で繋がるのに使う金具も嵌め終えれば、すっと掌を彼女へと差し出し、完成したチョーカーを手渡そうとするだろう。
「これで、どうでしょうか…?」
気に入ってくれたデザインをそのままに、小さなチャームとして繰り抜かれて飾られたチョーカーを差し出したまま、答えを求めて彼女を見つめる。
■マルティナ > 「わっ……、ありがとうございます」
言いながら、受け取ったチョーカーを早速身につけてみる。
「ん……、ぴったりで、つけてて殆ど違和感もないですね。これで70ゴルドで本当にいいんですか……?」
一応代金を渡すものの本当にこんな値段でいいものかと考えてしまう。
アクセサリの相場は知らないが、材料費などもある以上随分と安値なのではないだろうか。
安物の素っ気ないデザインのものと違い要望通りに仕立ててもらってこれでは安すぎて悪いような気までしてきてしまう。
■ヘンリエッタ > 早速とそれを首へと飾り立てていけば、丁度いいタイトな密着で首元を飾っていく。
「赤字…とは言わないですけど、儲けはちょっとだけですね」
金属自体は材料をまとめて入手しておけば多少なり値段は抑えられるものの、だからといって原材料費は少々高め。
彼女の予想通り、この価格にしてはかなり安い方と素直に白状しながらお題を受け取っていく。
「とはいえ、あまり高いと…買ってもらえないですから」
もう1ランクほどお値段を上げてしまえば、苦しい財政状態も少しは改善されそうだけれど、今度は中々買い手がつかない。
貴族の娘でも回ってくれば話は別…だとか、色々と試行錯誤した日々が脳裏をよぎっていく中、困った様に眉をひそめて苦笑いを浮かべていく。
■マルティナ > 「やっぱり苦労されてるんですね……。あ、あの、またお金に余裕が出来たら買いにきますのでっ」
大したツテも資本もない自分では特に力になれる事はない。
折角良い腕をしているのに勿体無いと思いながらまた訪れる事を約束した。
「とりあえず、今日はありがとうございました。あっ、私マルティナっていいます。いつもこの辺りで露店をしているんですか?」
今更な自己紹介を済ませ、念の為に商売場所の確認もとろうと。
■ヘンリエッタ > 「それでも…最近はお金のめぐりも、よくなりましたから」
一時期は肩書を捨てて娼婦でもしないといけないかもしれないとすら思うほど追い込まれたが、今はそこまでの危機はなく、相変わらずに苦笑いを浮かべる。
「それは嬉しい…ですけど、できれば普通の恰好とか、駄目なら…もう、お店の方に来てくださいね?」
こうも好奇の視線の中で仕事をするのは、いつもの倍増に集中力を使ってしまう。
その厭らしい姿には、もう呆れたとも観念したとも言えるような小さな吐息をこぼして、そんな提案を告げる。
「いえいえ…。マルティナさん…私は、ヘンリエッタです。ここの近くに古いお店が有るんですが、何時もはそこにいますね」
こちらも名を答えると、仕事場についてはあっちと、通りに面した商店の並びを指差す。
ここからでは商店並びの入り口ぐらいしか見えないが、その中のどこかが、彼女のお店なのだろう。
「このマークを探してもらえれば…直ぐ見つかります」
スカートの裾あたりを指差すと、そこには花の下で二匹の蛇が絡みあうような刺繍飾りが。
お店にもそれと同じロゴが掛かっているので、後ほど探すにも苦労はしないだろう。
■マルティナ > 「近くにお店もあるんですね。分かりましたありがとうございます」
示されたマークをしっかりと覚えてこくこくと頷く。
よく似たまぎらわしいマークが並んでいたら自信がなくなるが、割りと特徴的なので覚えておけば大丈夫であろう。
「今日は本当にありがとうございました。なるべく近いうちにまたお会い出来るよう、こちらもお仕事頑張ります」
何度目かのお礼を言いながら、立ち去る前に握手のために手を差し出した。
■ヘンリエッタ > 確認の言葉に小さく頷く。
気づいての通り、特徴のある刺繍のデザインというのもあって予想通り問題はないだろう。
「ふふっ…何だか気に入ってもらえて良かったです」
存外こういうところは普通とか思いながらも、差し出された掌に求められうがまま掌を重ねていく。
周囲も普通の商売話をする二人に飽きたのか、ひっそりとした嫌なさえずりは超えなかった。
■マルティナ > しっかりと握手を交わすとちょっと安心。
こんな格好でも振る舞い次第ではちゃんと人と交流できていける。
「では私はこれで。またお会いできる日を楽しみにしています」
礼をして、ヘンリエッタの露店に背を向けて立ち去っていく。
その背中も殆ど何も身につけていないので、背中はもちろんお尻も丸出しだが何も気にしていないという風に歩みを進めて、雑踏の中へと消えていく。
■ヘンリエッタ > 「はい…では、また…」
握手の後、踵を返して歩き出す後ろ姿の激しさに、あい宅地がふさがらなくなる。
多分、彼女の思う通り交流は出来るかもしれないけれど…それを全て受け入れるには、中々に難しいかもしれない。
後ろ姿が見えなくなると、未だに隣りにいた露店の店主が声を駆けてくる。
よく話が出来たもんだと。
「もう…よくわからないです」
軽く肩をすくめて答えると、もうしばらくここでの仕事が続くのだろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヘンリエッタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマルティナさんが去りました。