2016/02/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にモニカさんが現れました。
モニカ > 冒険者の御仕事。と一口に言ってもその内容は様々で魔物退治から逃げたペットの捜索までと多岐に渡る。
言わば何でも屋に近い御仕事で、荒事が然して得意でも無い私がそう困らずに冒険者を名乗れるのも実情に因る所。

「人間も魔族も貴族って身分がくっついちゃうと大して変わんないのかなあ……ま、ちゃんと報酬出るならいいんだけど。」

所々整備不良を思わせる石畳の夜道を歩きながら、私は貨幣の詰った袋を手にして眺め嘆息を落とした。
自分が選ばれた側で、己が全ての基準であると何の根拠も無く信じている人種。
今回、ペットの白猫が逃げたとかで捜索依頼を出した貴族はまさにそんな奴。

「あーあ、私がもっとこう……お兄様やお姉さまのよーにちゃんとしてたら、アンリ様に冒険者なんてさせないんだけど……」

愚痴が白く宙に混ざるけれど、その実吸血鬼として十全に力が奮えたとしてもそれはそれで面倒事を招きもする訳で、
結局の所世の中の万事は良し悪しね。と項垂れた。案外、猫の飼主のナントカさんも苦労があるのかもしれない。猫に好かれないとか。

モニカ > 大通りに立ち止まり、何とはなしに周囲を観れば色々な人が居た。
富裕地区には一目で上等と判る装備を纏った衛兵であるとか、
お供を連れた上流階級と顔に書いてあるような人達が目立ったし
貧民地区には亜人――ミレーと呼ばれる人達や、どうみても賞金首としか思えないのが目立った。

それじゃあ平民地区はどうなのか?と言うと、取り立てて述べる所の無い普通に映る。
日暮れ時なのもあってか子供の姿は殆ど無くて、開店準備に追われる酒場の店員や、
閉店準備をし始める露天の店主が些か印象的であるのかも。

「……と、いけないいけない。何か食べ物くらい買って帰らないと。
私は兎も角アンリ様は兎も角じゃないのだから。」

ぼうっとしていると後ろから知らない誰かに追突されて、邪魔だと言われて我に返る。
そのまま転び出るように食料品を扱う屋台群へと足が動いて、暫し彼方此方眺めだすのでした。

モニカ > 「……あ、いえお気持ちだけで。美味しそうだけどすいません苦手なので……。」

干した果物の類を扱っている屋台を覗いていると、気さくそうな店主に味見を勧められて困ってしまった。
血と水以外は駄目なんです――なんて言える訳も無く、紅い瞳を柔和に細めて断りを入れ、
次は何やら水音のする方へ。

「……食べるの?これ。」

桶には元気良く動く亀のような生き物が沢山入っていた。
禿頭にヒゲを蓄えた店主が山賊みたいな声で応じてくれる。
曰く食べると元気が出るそうで、成程有り得そうだと彼の事をジロジロと視ていたら、
生き血が殊更に良いとかで小さな杯に入れて渡してくれた。

きっと、私が怯むと思っての脅かしだったのだろう。
勧められるままに杯を傾けて、べろりと舌なめずりをして頷く様子に店主の方が目を丸くしていた。

「ふぅん、面白いかも。何匹か頂ける?ええ、捌いて……血は瓶に。」

きっと肉の味も良いだろうと期待を込めてお買い上げ。
皮袋に包まれた肉と、瓶に満たされた血を受け取り代金を支払う。
屋台の品物にしては高価な方に思えた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアンリさんが現れました。
アンリ > ふんふん、と鼻歌交じりに雑踏にやってくるのは、濃い青の髪をした女。
魔法使いのローブに身を包みながらも、豊満なボディラインをはっきりさせた衣服を身に纏い。
そして禍々しい形の杖を持つ。
あまりにはっきりとした魔法使いの格好。

くさっても元魔王、冒険者として生活をしている魔法使いアンリである。
今日は一人、なかなか帰ってこない従者のお迎えである。
どこかなー、なんて考えながら、ぺったぺた雑踏を歩いて。

「……おや?」

珍しく、出店で買い物をしている見知った後ろ姿を見つければ、こっそりこっそり近づいて。

「……だーれだ?」

ぱふ、っと後ろからくっついて手で目を隠してやる。ふっふっふ、恐れおののくがよい。

モニカ > 「お肉は調理場に持ち込んで料理して貰えば済むとして……後はお弁当?
アンリ様って街の外だと食事とかどうされているのやら。」

アンリ様は魔法が達者である。
そも魔の王なのだから当然と言えば当然なのだけど十把一絡げの魔術師とは比べるべくも無い。
当然、大変お強いので街の外に出るような依頼を受ける事も多い。
そうなると食事とかどうしているのやら?と心配になるのは従者の務めでもあるわけで、
頤に指を添えた悩む姿となるのだけど――

「……アンリ様でしょう。私めにそのよーな事をなさるのは。」

悩むだけ損かもしれない。そう思わせる声と所作と、後ろから当る暴力的な柔らかさに嘆息が落ちた。

「というかどうされたんですか?宿に何か不備でも?確かに騒々しい酒場が併設された安宿でしたけど、
今日の部屋はちゃんと鍵もかかる所を選んだ筈ですけれど……。」

そのままくるりと振り向き、眉根の寄った渋面を向けた。懸念の通りであるなら今からの宿替えは面倒でもあったから。

アンリ > 「やるわね、流石モニモニ。私のことを分かるのは貴方だけね。」

こんなことをする人が一人しかいない、ということでもあるのだけれど、どこまでもポジティブ。
領土と居城から追い出され、はるか彼方に飛ばされて、未だ帰れない魔王とは思えない。
ちなみに食事は取っても取らなくてもそこそこ大丈夫なタイプである。超頑丈。

「………んー? ああ、いや、帰ってくるのが遅いのと、人攫いっていうか、悪い人がいるらしいからさ。
せっかくなら二人で帰ったほうがいいじゃない?

…ん? 私はあのくらいの酒場の方が好きかな。
適当に話してても気にならないし、気に入らなければ実力に訴えればいいしさ。」

からからと豪快に笑う。 相変わらずの魔王っぷりであった。

モニカ > 「……あ"ー……いえ。そもそも私にそういう事をする人物。がアンリ様しか居ないというか。
勿論無論で他に居たとしても判りますし解りますけれど、知己を増やすには些か……。」

身の上が身の上ですし、と声を潜めて苦笑とし、面前の自信に溢れた人物からの言葉には危うくずっこけそうになった。
拍子で隣を歩いていた老婆にぶつかりそうになって、慌てて頭を下げる。

「いやあのアンリ様……お気持ちは有り難いのですが、流石にこのモニカ。人攫い風情に遅れは取らない……と思うのですが。」

往来の妨げにならないよう歩き出し、肩を竦めて見せながらも語調は何処か理路整然と迷う様。

「ともあれ宿に不満が無いのでしたら重畳と云うもので……酒場がお好みなら尚の事。ただ騒動はお控え下さいね。
余り目立って良い国とは思えませんし、どうも憲兵にも不届き者が多いそうですから。」

金次第でどうとでもなる荒れた国。
そうであるから私達のような存在だって混ざれるのだけど。

アンリ > 「まあ、そうねー。よっぽど変な人しかいないんじゃない?
私達に近づこうとする奴なんてさ。」

あっさりと笑いながら、隣に並んで歩き始める。
首をちょいと傾げて、くつくつと笑って。

「そりゃ分かってるけど。………一人とは限らないしさ、何より人かどうかもわかんないじゃん?
私が思うに、人じゃない気がしてさ。」

のんびりと歩きながら杖を揺らし、自分の考えを述べる。
根拠は、カンでしかないけれど。

「あー、まあね。折角上手いこと入り込めたんだし、流石に国の中ではおとなしくしてるって。
人助けとかもしなきゃーね。」

ふふん、と笑う姿は自分に対しての皮肉のようなものだけれど、暗さは全く無い。

モニカ > 「見目に惹かれてアンリ様に声をかけるようなのは居るでしょうけど……
駄目ですよ。身形がきちんとしていようが殿方のお誘いに乗ったりしては。
それこそ人じゃないかもしれませんし。」

揚げ足をとるようにして鼻を鳴らすも、生憎と私もアンリ様も人ではないのだから事も無し。

「まあ……相手が、例えばこの世界の魔王であるとか、それ程までなら良いのかもしれませんが。」

語調がブレるのは言ってる傍から私が笑ってしまうから。
まるでこれじゃあ小姑ですもの。いけないいけないと頬をぺちんと叩きまして。

「……あ、それならこれをどうぞ。先程購った亀?の肉なのですが元気が出るそうですよ。
人助けをするなら体力勝負。ですよね?」

肉の入った革袋を差し出し、握らせた所で折り良く辿る宿の前。
すっかりと日も落ちた中で明りは眩く喧騒も一入。
血の満ちた瓶は御部屋まで確と握って離さずに、アンリ様の背を押して宿入りと参りましょう。

アンリ > 「ふっふん、まっかせなさーい! ………まー、そのために一人旅なんだけどさ。
本気出したら、仲間までふっ飛ばしちゃうから仕方ないんだけど。」

そういえばずっと一人旅だった。苦笑を浮かべながら手を広げて軽く片目を閉じてみせる。
例えるなら、なみなみと溢れんばかりに注がれた水のよう。
どれだけコントロールしようとしても、どこかに溢れてしまう。

「…………亀の肉? 元気が出る? ………ふぅん、じゃ、今晩はそれにしてみましょっか。
この宿はいいんだけど、ちょっとばかり風呂が狭いのよねえ。
………次は遠くてもいいからさ、ちょっと大きなとこ探してよ。」

んっふふ、と自由なことを言って下を困らせるのも、上に立つものの役割、らしい。
堂々とそんなことを言いながら、二人して宿へと入って。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からモニカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアンリさんが去りました。