2016/01/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 裏通り」にセツさんが現れました。
■セツ > 最後の客が帰ってしまえば、黒髪の女は手に持った楽器を大切そうに仕舞いこんで、グラスに残っていた琥珀色の液体を水のように煽る。
平民地区の裏通りにある、寂れた酒場。彼女のお気に入りの店。
金払いがいい訳でも、客が多いわけでも無い。
只々、馬鹿のように強い酒を置いていて、マスターが細かいことに口出ししない。
それだけで心地の良い空間だった。
「マスター、今宵の払いはここにおいておくよ。
あと、今宵の酒はいい酒だったから、また多めに買わせてもらうよ。」
しっとりとした声で笑うのは、黒髪で長身の女。
吟遊詩人として街を渡り歩き、愛を歌い、夢を奏で、酒を愛する風来坊。
■セツ > 「後、彼女を家まで送っていくことにするよ。
この地区といえども、夜は危ないからね。」
最後まで洗い物をしていたウェイトレスにウィンクを一つすれば、小さく笑う。
酒の匂いはかなり強いものの、足取りに全く揺らぎはない。
ゆるり、と立ち上がって酒場を後にすれば、人気の無い暗い路地を穏やかに歩む。
ウェイトレスの女性の家は、すぐそこだ。
旅先で出会った、人の言葉を話す馬の話をしていれば、すぐにたどり着いてしまうわけで。
■セツ > 「それじゃあ、おやすみ。
夜は危ないから、しっかり扉を閉めて鍵をかっておくんだよ。」
同じ女性とはいえ、彼女は長身であり。
ほとんど年頃は変わらないであろうウェイトレスの女性の頭をあやすように撫でて、額に唇をふわりと当てる。
お酒くさい、という声にはくすくすと笑って謝って。
それじゃあね、ともう一度囁き合いながら、扉が閉められる。
「………さあて、どうするかな。」
何も考えていなかった。
彼女に今宵の宿を、と乞うつもりだったけれども、どうにも格好をつけすぎてしまった。
どこぞに泊まる部屋の一つでも空いているかしら、などと考えながらその場を離れ、ふらふらと歩き始める。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 裏通り」にティネさんが現れました。
■ティネ > ふいに、目の前にぼんやりとした靄のようなものが立ち込める。
それは集まって形を成し、実体のない白い固まりとなる。
頭頂部に三つのウロが出来て、どうやら人の顔をかたどっているらしいことがわかる。
『こんな夜更けに、娘っ子が一人で歩いているとは感心しないなぁ~。
食ってしまうぞぉ~?』
白いお化けの口と思しきものが動いてそんな声が響く。
しかしその声というのは期待しているであろう演出効果に比べやたら高い。おそらくは少女のものだ。
……それでいてがんばっておどろおどろしくしているというのが伝わってくる。
加えて言えば声はこのお化けからは響いていなかった。
少し勘が働けば、このお化けのようなものは害のない稚拙な幻だということがわかるだろう。
■セツ > 「おや。」
小さく言葉を漏らせば、ふらりと足を止める。
靄々とした霧が口を開いて、浴びせかけられる言葉は物騒なものだ。
………相手の言葉に、少しだけ瞳を細めて………
「まずその1。
僕を娘っ子だと言ってもらえて嬉しいね。
僕の知る限り、こんなにお酒の匂いをさせて一人でふらふら歩く女を娘っ子とは言わないさ。
そしてその2。
食べるはいいけれど、僕は骨の髄までお酒が染みこんでいるようなもの。
味も悪けりゃ消化も悪い。
それでいいなら一口どうぞ?
最後にその3。
女性を口説くのに、いきなり食べるって云うのは些かストレートに過ぎるんじゃないかな。
どっちの意味だとしてもさ。」
怯えた気配が、全く見えない。
むしろ、その霧に対して軽く片目を閉じて微笑んで見せる。
……気がついているから余裕なのか、それとも根っこから性根の座り方がおかしいのかは、微妙なところ。
■ティネ > 『えっ、えっ、あの』
戸惑うような甲高い声が響く。
お化けの靄は動揺を示すかのようにぐにゃぐにゃと歪んだ。
ちょっとぐらいは驚くか怯えるかしてくれるかと期待していたのだ。
コーヒーに溶かされるミルクのように形を幾度か変えた後、ついには薄れて消えてしまった。
もしお化けの声の出処を探してみるなら、
路地の片隅、ゴミ箱の影でなにか小さな人形のようなものが動いているのが見えるだろう。
そのまま通り過ぎ去るというのなら、それ以上の干渉はしまい。
■セツ > 「………酔っぱらいというのは厄介なものでね。
怖いものがなくなってしまう人もいるんだ。
人によっては酔っていなくても、怖がる感覚を忘れてしまった人もいる。
僕のように、怖がっていてもそう見えないって言われる人もいる。
僕は怖がりだから、何かおかしなことがないか、とっても気になってしまうんだよね。」
みーつけた、と小さく囁くような声を出しながら、ゴミ箱の影を覗き込む女。
音の出処を掴むことくらいは、魔法で細工をされていないのなら容易いこと。
「食べてくれるのかな?」
そっとしゃがみ込んで、しっとりとした声をかけて涼やかに笑う。
■ティネ > 「ひょえ」
覗きこまれて、その小さな影はすくみあがった。
その声質はお化けに扮していたものと同じ。
蝶羽根を持つ、蝶を思わせる大きさの、しかし蝶ではない、人間の少女の見た目だった。
妖精と呼ばれる存在について想起するかもしれない。
「いえその……デキゴコロ、というか冗談というか。
食べるとか……無理ですし?」
見上げる手乗りサイズの少女は緊張に固まった様子の表情を見せる。
蛇に睨まれた蛙のように、逃げようとする気配もない。
■セツ > 「女性を口説いて冗談で済ますなんて、酷いなあ。
傷ついてしまうよ?」
なんて言いながら、声量を抑えてそっとその場に座り込む。
地べたにお尻を下ろすのに躊躇は無い。 まだそれでも見上げることにはなるだろうけれど……彼女は長身だからか、小さな相手と会話する時にはできるだけ視線を合わせようとする癖があった。
「つまりは、悪戯をしてバレてしまった、というわけかな。
どうしようか。 僕は取って食うような人間ではないのだけれど。」
くす、くすと微笑みながら顎に手を当て思案顔。
「……ああ、僕はセツ。
旅の吟遊詩人をしている、何のこともない普通の娘っ子さ。」
■ティネ > 「いや……口説くとか……そういうのじゃなくて……」
もごもごとした声。
どうにもこの女性はどこまで本気なのか、つかみどころがない。
尻を下ろして座るのを見れば恐縮したように、羽ばたいて浮かび上がろうとして……
緊張のせいか失敗してよろめくだけに終わった。
「そ、そんなところです……ハイ。
ボクはティネ……まあ、なんだろ。妖精ってやつかな」
娘っ子という言葉を使われて苦笑いして気まずそうに顔を反らす様子は、
一般に小妖精の持つ幻想的なイメージとは反して人間臭い。
「でっでもさー……。
おねえさん美人じゃない。
ボクがこう……ちゃんとした? アレだったら、
食べてた……食べてた? かもよ? みたいな?」
口をとがらせてのその言葉は後半になるに従ってどんどんあやふやな感じになっていくが、
それに関してだけは言わずにはいられなかったのだろう。
■セツ > 「妖精ね。話には聞くし見たこともあるけれど、話すのは初めてかもしれないな。
夜の街で出会ったのは、比喩ではなく本物の妖精だった。
………事実は小説よりと言ったところかな。」
涼やかに穏やかに。
感情の昂ぶりを感じさせない滔々とした語り口。
ティネが視線をそらせば、僅かに微笑みを浮かべて。
その上で、ゆったりと言葉を選ぶように、囁く。
「いいかい、ティネ。
もしも僕が相手を食べようと考えるのなら、まず間違いなく、後ろから一息に行くと思うんだ。
足を片方でも食ってやれば、もう逃げられないんだから、後はゆっくり食えばいい。
もしも僕が相手を襲って欲望をぶちまけようと思ったとしても、………後ろから一撃は食らわすんじゃないかな。
反応が見たいなら、動けなくしてからゆっくりと脅せばいい。
目の前に表れて、襲ってしまうぞ、なんて言う相手は………きっと、そんなつもりが無いのさ。
本当に悪いヤツっていうのは、もっと悪いんだ。
……僕のようにね?」
なんて、片目を閉じて微笑んだ。
■ティネ > セツと名乗る女性の含蓄の感じられる言葉に、
ほへえ、と間抜けに口を開けて聴き入る。
素直に感心してしまったが……ハッと気づいたように首をぶんぶんと横に振る。
「ボ、ボクの言いたかったことはそういうのじゃないし……もう。
でもさ。セツって……悪い人なの? どんな悪いことしたの? ……もしくはするの?」
見せられた微笑みは涼やかで、なぜかドキリとする。
目の前の彼女に悪人を自称されても、ティネにはピンとは来なかった。
何しろ自分はまだ後ろから一撃を入れられていないのだから。
見上げる視線は純粋に、興味深げなもの。
■セツ > 「………僕が悪い人かどうかかい?
まず、本当に悪い人なら、自分が悪い人だとは言わないかな。
後は………そんな言葉を使って不安にさせようとする、悪戯のお返しをしようとする意地の悪いところは、悪い人だと言えるかもしれないね。」
そんなことを言いながら、片目を閉じて微笑みかける。
お酒の匂いは濃いものの………どうやら、冗談の様子。
「昔はシーフをやっていて、趣味で始めた楽器で吟遊詩人なんかをやっているのだから、元々は悪かった、というのもあながち間違ってはいないんだけれども。」
■ティネ > 「…………まあ、意地が悪いのは、わかったよ」
微妙に辟易した様子でため息。
なんだか煙に巻かれてしまった気がする。
最初に幻の靄を使ったのはこっちだというのに。
蝶の羽を動かしてぴょいと飛ぶと、ゴミ箱の蓋の上へと着地する。
そうすると目線は上になるかもしれない。
シーフ。盗賊。その技術を持つもの。
確かに市井の人間よりは悪人と呼べるかもしれない。
……とはいえ、この背徳はびこる都で、それがどうした、という気もする。
「ボクだって盗みはしたことあるよ。
……もっと悪いことだって。
実はもとは人間だったんだけど、そのせいで呪われて、
ムスメッコなんて食べられない、今みたいな姿にされちゃったんだ。……なんてね」
冗談めかした言葉。与太話として受け取ってもらえるだろうという思惑があった。
■セツ > くすくすと微笑みながら、相手の戸惑ったような声を聴く。
「そういうこともある。
悪いことをしたことは、お互いにあるようだね。
元々は人間であるなら良かった。
こうやってお話をして、安心したところをぱくりといかれたらどうしようかと思っていたからね。」
流石に……。 そこを読み取る事はできなかったらしい。
相手の言葉に小さく笑いながら、少し立ち上がり。
「さあ、て。僕は宿を探さないといけないんだ。
どこか泊まる場所の一つでも知っていないかな?」
なんて、今一番困っていることをストレートに聞いてみる。
来る?なんて手を僅かに差し出すも、怯えるなら引っ込めよう。
■ティネ > 「そうだね。人間はそんなに怖くない」
合わせたような笑い。
差し出す手には、怯えることもなく裸足で飛び移る。
どこか正体のつかめないところはあったが……悪人とは思えなかった。
仮に悪人であるとしても構いはしなかった。
「セツみたいな美人を伴う名誉をいただけるのかい?」
ニヤリ、と手の上で笑ってみせる。精一杯の気取った所作で礼をしてみせた。
……なんて言っても、彼女以上に宿の知識があるかは微妙なところだったが。
いくつか近隣でやっている宿の場所を告げて案内するが……それからのことは天運次第。
■セツ > 「そう思ってもらえるなら良かった。
……余りほめられると照れてしまうよ。調子に乗ってしまうかもしれない。」
手の上で笑う妖精に微笑みかけて、優しく肩の上に案内する。
その途中、小さな小さなその手を指で持ち上げれば、唇をそっと触れさせて。
「……僕のような女でよろしければ。」
そう言って、少しだけ艶っぽく笑うのだ。
宿を求めて二人揃ってふらふらり。
宿に泊まれるかどうかは分からないけれど、夜の通りはかくも不思議なことが起こるもの。
■ティネ > 「あ……」
手に唇が触れれば、その感触に頬を赤くさせる。
乗せられた肩の上、俯いて身を縮めさせた。
照れているようにはあまり見えないセツとは反対に、
ティネはあまりにもわかりやすく情動を顕した。
いまひとつあやふやなティネの案内のもとしばらく歩けば、
ようやくこじんまりとした質素な造りの宿が見つかる。
どうやら部屋は空いているようだった。
宿の主人は、セツの肩に乗る妙なものを気に留める気配はない。あるいは見えていないのかもしれない。
肩の上で揺られて少し疲れたのか、案内した当人は首筋によりかかるような姿勢になっていた。
■セツ > 飄々と。
赤くなることもせず、ゆるりと歩みを進めて。
まるで怯えることもなく、ごく自然に宿の主人に事情を説明し。
部屋に入り込んで、扉を閉める。
「……疲れてしまったね。
ひとまず休んで、………また目が覚めてからかな。」
そんなことを囁きながら、コートをゆったりとかけ、衣服をさらりと落とし。
寒さを感じないのか、下着姿のまま白いシーツにごろり、と横になる。
紺色の下着と白い肌はくっきりと際立って………妖艶なのか大雑把なのか、分からなくなるよう。
もちろん、脱ぐまでの間にボトルに入った酒を煽って、であるし。
「……じゃあ、寝よう?
寒かったらいつでもおいで。ただ、潰れないようにしておくれよ。」
囁きかける。
宿につくのも遅くなってしまったし。 それじゃあ、おやすみ。
妖精に語りかけて瞳を閉じる女からは、やっぱり酒の匂い。
■ティネ > 「うわわ」
部屋に入り込んで速やかに、堂々と肌を曝け出す様子にまどろみも一瞬吹き飛ぶ。
思わず目をそらすこちらのほうがおかしいのではと思ってしまうぐらいだ。
「だいじょぶ。そんなヘマはしないよ。
……おやすみ」
脱衣されたからといって、特にいかがわしいことも起こらない。
無防備に横たわる彼女にふわふわと飛んで、遠慮無く胸元に着地。
甘えるように肌をすり寄せて、そこに寝てしまう。
たまたま今宵顔を合わせた彼女の酒気も体熱も、好ましく感じられるものだった。
やがて安らかな小さい寝息。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 裏通り」からセツさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 裏通り」からティネさんが去りました。