2015/12/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/往来」にティネさんが現れました。
ティネ > 「うぉーっとっとっと……」

ある宿屋の二階の表通りへと通じる窓の隙間から、
ひとつの小さな影が飛び出してきた。
小妖精の姿をしたティネである。

なぜ慌てたように飛び出てきたかというと、
空室なのをいいことに宿の部屋で寝っ転がっていたところ、
目が覚めたら二人の男女が組んず解れつしていたからである。
もちろん彼らは小さなティネに気づく様子もなかったが、
そんな部屋でおちおち休めるはずもない。

「まったくもぉ……」

おもわず甲高い声で文句を上げてしまう。
とは言っても無断で借用していたティネに苦情など言えようはずもないのだが。

現在はというと窓の近くに腰掛けて、下界の様子を眺めていた。

ティネ > 「…………いい気になっちゃってさあ」

部屋の様子からは視線をそむけていたが、
やはり情交の様子が気になるのか、顔を赤らめながらも
ちらちらと窓から中の様子を伺っては遠ざかってしまう。
このティネを見ていたものがいればなんとも滑稽な仕草に映るだろう。

ごく普通の人間同士の情交を覗くのは、もちろんその……興奮する。
しかしそれと同時になんとも言えない悲しみが胸のうちをよぎってしまうのだ。
一般的な性対象から外れてしまった身となっては。

「……」

小さくため息を吐く。
下界――窓から見下ろす通りではそんなティネの気持ちを知る由もなく、
いつもどおりに人が通っては過ぎていった。

ティネ > たとえば、金で春を買うとか……
それは可能かもしれない。けれどティネの身で財産を持つことは難しい。
何しろ金貨を一枚持てるかどうかと言った塩梅なのだ。
たとえば、誰かと恋仲になる。……恋人?
ペットと飼い主の間違いではないのだろうか。

……何かしていないと、こういう気分が暗くなるようなことばかり思いつく。
だから遊んでくれる人というのはティネはとても好きなのだ。
そういうことを忘れさせてくれるから。

ティネ > 「……やめやめ」

悶々としていてもどうにもならない。
遊んでくれる相手がいないなら、何か自分で面白いことを見つけにいかなければいけない。
首をぶんぶんと振ると、窓際を飛び立ってどこかへと飛んでいった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2/往来」からティネさんが去りました。