2015/10/07 のログ
ご案内:「酒場『黒猫のあくび亭』」にティネさんが現れました。
ティネ > 夕過ぎともなると酒場は人で賑わう。
仕事帰りの市民や冒険者などといったあらくれが集うのだ。
そういう頃合いになると、ティネも酒場に姿を見せる。
といっても客としてではない。

背丈が手のひらを広げたよりも小さい妖精もどきが、
酒場の扉の隙間から入り込む。
それに気づくものは、少なくとも今この酒場内にはいないようだった。

経験則上、妖精然としたものが人の多いところで目立つとろくなことがない。
まともに酒や食い物を注文できるはずはない。
だから、文字通り、『おこぼれ』を狙うのだ。
そういうふうにしてティネは日々を生きていた。

ティネ > こそこそと丸テーブルの下、客らの足元を潜り抜けていく。
妖精というのは体躯の小ささの上に、どうやら『見えにくい』存在なので、
多くの人間で猥雑とした場所ではそう簡単に見つかることはない。
散漫な客相手なら、テーブルの上に登ったって気付かれないこともある。

これは、と見当をつけた丸テーブルの脚の根へと居所を落ち着ける。
そこでこぼれてくるパンの欠片とかを両手で拾い上げて食べるのだ。

「うーん、まるっきりネズミだなー」

パンくずを頬張っている今の姿はまさしく小動物である。
妖精といえば虫の翅だが、今は飛ぶ必要はないし、しまっている。
飛ぶのは結構疲れるのだ。『ほんとうの妖精』であったならそんなこともなかったかもしれない。

食うのはこれでかまわないのだが、最近ひとと会話らしい会話をしていない。
会話こそが人を人たらしめるとかそんな話も聞く。人ではないが。

「でも見つかったら大概ひどい目にあわされるからなー」

誰も聴いていないことをいいことにもそもそと独り言を連ねた。