2023/07/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区の大衆酒場」にコルボさんが現れました。
コルボ > ■(待ち合わせ待機中の導入記述中)
コルボ > 異様な酷暑が和らぎ出した頃、男は普段行きつけの食事処やギルド併設の酒場ではなく、
大衆酒場に足を運び、エールをちびりと煽っていて。
今日は良い酒が入ったという噂を聞いたが、とうの昔に干上がったらしく、
男はいつも通りのエールを味わって。

ごろっとした肉団子の入ったパスタに蒸し鶏を注文して更にぶち込み混ぜ込んで、
焼けて蕩けたチーズをのせたパンにソースが絡んだ蒸し鶏を乗せてかぶりつく。

ここのトマトソースは絶品で、パスタだけで食べるにはちょっと惜しくてこういう食べ方もするのだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区の大衆酒場」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > 「くっそ、汗でベタつきやがる。」
日が落ちてもまだムシムシした不快が残る気候にぶつくさと文句を言いながらも、大衆酒場に入ってくるのは、榛色の目と髪をした隻腕の中年…と呼ぶには、いまだ艶のある風貌。
ポタンを一つ二つ外したシャツでぱたぱたと仰ぐように空気を入れ替えようとする様は、見るものが見れば、目の毒ではあるだろう。

歌わせてもらって小遣いでも稼ぐか…いや、その前に何か飲もうなぞと思いながら周囲を見渡したところで…見覚えのある後ろ姿が目に入った瞬間、一瞬表情消してツカツカと背後から近寄っていき。
数瞬、蹴りから入るか悩んだが目の前の食べ物が無駄になる可能性を考えて却下、その頭頂部を思い切り鷲掴みしてやろうとする。
まぁ、人並みの力があるかないか、程度の握力なので、そもそも鍛えている彼にとって痛いかはわからないが。

「…わーるーいカーラスを~ みぃ~つ~けた~ぁ。」
バンシーやアルラウネの絶叫すら真似て見せる七色の声で、低くおどろおどろしい声を演出しながら…怨敵見つけたりといった言葉を、投げかけよう。

コルボ > 一口かぶりついて伸びるチーズを口の中に引き込む行儀の悪い仕草と共に、
口の中に広がるソースとチーズと蒸し鶏の香りと触感を楽しみながら、
背後に圧を感じる。

(……どこのチンピラだ? クソ三流が)

こんな酒場の中で殺気とも呼べない圧を感じて、どうせこんな酒場で暴れることもないだろうと放置していたが、
その圧の持ち主の足音が近づき、あろうことか頭を掴む。
威嚇するにも弱い手遣い。なんというか繊細ささえ感じる。

……繊細さ?

「……ヒュッ」

飯が台無しになるのも面倒だ。さてどうしようかと思った矢先に聞こえる声。
聞き覚えのある声。
こきり、こきりと首が回りに、パンを持った手が微動だにしないまま
口元を震わせて半笑い。

「ひ、ひひひひひひひひ、姫? ど、どうしたのかなぁー?
 怖いよー? うん、マジで怖い。ヴェル姫にそんな顔と声、
 いやこええわ、なんで殺気ないのにそんな声出せんだよマジで!」

 苦笑い半笑い愛想笑いあらゆる笑みを総動員して相席にどうぞどうぞと腰が低く。
 相手は男、とはいえ姫。歌姫。
 機嫌を損ねることが怖いのではない、そうしたならば貧民平民の流儀で非礼を詫びるのが筋というものだ。

ヴェルソート > そりゃあ殺気はないだろう、実際は文句を言いに来ただけなのだから。
そうでなければ、最初から後頭部に蹴りか、宿の入り口からコルボだけを狙って面白呪歌の一つでも放っていたかもしれない。
一応、あくまで彼は家族の恩人であるから。

「んむ、こんばんわコルボくんや。」
正直、へらへら笑いながら振り向くと思っていたら思ったよりビックリしたようで、元の声色に戻してにっこりと笑みを浮かべ、許可も取らずに彼の向かいに座るつもりだったが、先んじて相席を進められて、その誘導に従い、見た目とは裏腹に綺麗な所作でストンと座れば、空っぽの袖やコートの裾がひらりと揺れて、シャン…と袖や裾につけられた楕円の金属が微かに音を鳴らす。

「いやな?コルボくんのおかげでうちのジーゴが帰ってきたから、一言お礼位は言いたいなーとは思ってたんだけどな…。
 帰ってきたジーゴが、開口一番『ひめ!』って笑い転げるわ、紹介してもらったグランツさんからも姫呼びされてな?
 話聞いてみたらコルボくんが他所でも姫姫言ってるって聞いて…な?
 声については、なんでできるかなんて、俺に聞くのは野暮ってもんだろ?」
彼が自分を姫と呼ぶのは揶揄だとばっかり思っている男は、自分に対していうのはハイハイと聞き流すような心持ちで何も言わなかったのだ。
事実自分は呪歌使いとしては文字通り「歌姫(ディーヴァ)」の位階までいった、という自負はある故。
ただ、ただ……初対面の人間や家族から「姫」と呼ばれたら、こっぱずかしくて仕方ないのだ、わかれカラス。
それよりも、だ……。

「お前さん…そのお姫様扱い、おふざけだと思ってたんだけども…?」
某貴族から聞いた話では、大層真面目に褒めちぎりながらそう呼んでたとの事なので…とりあえず、話を聞いてやろうじゃないかという気になったそう。それこそおふざけとわかる様子だったら最初の一撃は後頭部に踵でも入っていただろう。
途中で通りかかった店員に、「なんかつまめるものと、レモネードと蜂蜜酒ちょーだい。」と、注文を投げるのを忘れずに。

コルボ > 振り返り、声色と顔を見れば乗せられたのだと気づけばため息一つ。
今度はこちらが苦い顔。

「元よりジーゴはダチだ。なんかありゃ手が届くなら助けるさ。
 それに、情報を掴んだのは俺よりあそこのクソメイド共が先だよ。

 俺は使い走りに走って筋通しただけ。例ならグランツの旦那にも言ったんだろ?」

 礼を言われるほどのことじゃねえよと、その所作を脳裏に焼き付けつつ。
 一通りマナーを、貴族や王族相手にも引けを取らぬ振舞いを身に着けているつもりだが、
 こういう”本物”の所作には劣ると自覚しているからこそ、その瞬間を目に焼き付けて
 今後の己の滋養として。

「ヴェルさんの歌と評判、能力を評価すれば正しく評するなら歌姫だろ?」

 何言ってんだ今更という、それこそ揶揄も侮蔑もない、男であるのに姫である、そこに何の忌憚もなく、それどころか眉を顰めてまでして。

「呪歌(ガルドル)の使い手として姫が一線級なのは知ってる。
下手な神官、施術師も裸足で逃げ出すような戦況を握るその能力もな?」

 言葉を切って自己流チーズチキントーストをかじりながら、きちんと咀嚼して呑み込む。

「そも、ヴェル姫は姫って立ち位置、王侯貴族に必要なもの、持つべきものってなんだと思う?」

 おふざけか否か、見定める貴方に対して、質問を質問で返す。
はぐらかしているというより、話すうえでの前置きらしく。

ヴェルソート > 溜息を吐いた彼に、己も孕んでいた怒気を霧散させて、いや実際顔真っ赤にさせられたのだから、もう少し怒っていてもよかったかもしれないが、本題は一応「礼」なのだ。

「それでも、だよ。家族が世話になったんだ、あれやこれやと食わせてもらってるみたいだし。
 まぁ、礼といっても、奢り返すか何かしらに手を貸すかくらいしか思い浮かんでねぇんだけど。
 とにもかくにも…ジーゴを助けてくれて、ありがとう、恩に着る。」
なんか、会うたび飯おごってもらった話を聞くので、主としては礼の一つもしなければ、とは思っていたらしい。
とはいっても、お互い金くれ金、なんて宣うような間柄でもなく、結局は無難なところに礼は落ち着くわけなのだけど。
それでも、まずは礼を告げずにいるのは不義理だと、彼に頭を下げた。

「…いや、うん…歌に関しては『おうよ!』って自信満々で肯定するとこなんだけどな。」
そのコルボの話を聞いたグランツさんの評価までも何やらこう、こっちが恥ずかしくなるくらい褒めちぎってくるもんで、思い出すだけでむず痒くなる。
存外に食べこぼすわけでもなくチキントーストを綺麗に食べる彼の仕草を眺めながら、やってきたサンドイッチとレモネードと蜂蜜酒、それを一口ずつ、豪快さのかけらもなく鳥がついばむように食べて咀嚼するのは、大きい欠片を飲み込むことへの無駄な喉への負担を嫌って。
レモネードをチェイサー代わりに交互にちびちびと、彼がエールを開ける速度の半分程度の速さで減らしていく。
最終的にコルボに出された質問に…グラス片手に少し考える仕草

「…………血筋?」
順当に、思い浮かんだのはそれ、王侯貴族がもっとも大事にするもの…というイメージがある、血統。

コルボ > 「飯もありゃあれだ、出世払い当て込んでんのもあんだよ。
 あいつは戦い方を知らない。ただそれだけだ。
 あいつ戦いになれば攻め一辺倒に思えて、多分もう受けは出来てるよ。
 その由来が奴隷扱いなのはいただけないが、

 それが出来てなかったら、あいつはもうとっくに何回も捕まってるうちに死んでる。
 アイツの前じゃ言わないけど、あいつはマジモンのオオカミだよ。」

 大衆酒場の喧騒の中、聞き耳を立てるものがいないと分かれば、
 歯に布着せず、友への評価を口にして。
 普段からイヌコロと馬鹿にして煽り立てるのも、嫉妬半分があるのも自覚していて。

 ……あれで、首輪で封じられている程度で魔力を使っていないというのだからすさまじいとさえ思っている。

「だから、恩に着る、ってなら、今度ジーゴと一緒にギルドの依頼受けていいか?
 一通り冒険者としての立ち回り方仕込むし、俺が後見人になれば
 ギルドで上前跳ねられることもないだろ。

 ……あいつが冒険者になるのは姫の、家族の為だからな。
 そう言う奴が報われねえのはつまんねえんだよ」

 礼、と言われれば丁度よかったとばかりに提案して。
 ジーゴが家族から冒険者としての装備を一式プレゼントされたのは知っているが、
 それも奴隷商人に捕まった時に失われていて、それも併せて買うつもりなのだと。

「な? じゃあ歌姫じゃん。」

 問いに応えられればそうだろう? と同意に同意が帰ってきて頷いて。
 チキントーストを平られば、フォークで肉団子を突きさして頬張りつつ。
 対して喉をどこまでも気を遣うメニュー、食べ方。
 根っこから歌い手である所作に目を細めて。

「この国でそんなもん意味ねえよ。
 ああいや、王族は意味があるのか?

 必要なのは、民を救う事、守ること、道を示すこと。
 高貴なる者の義務、ってな」

 それは貴方の思い描く通り、だが所詮は貴族側の思考なのだと。

「ヴェル姫をヴェル姫って呼んでるのは、俺が最初じゃねーんだよ。
 ヴェルさんが通ってる娼館街。そこの娼婦達だ。

 立ちんぼ、所属持ち、上客向け。
 娼婦としての立ち位置実入りは違っても、好きで入って来なきゃ、
 どいつもこいつも、割り切ってるようで自分の今を暗く重く受け止めてる」

 貧民地区、平民地区の娼館街。
 抱く相手を求める者達が集まる中にあって、金を払えば自分は客だと横柄に振舞う者の方が多い。

 ……逆に一人の女として抱く、相場や要求以上を払う、体調が悪ければ気遣う、
 なんなら逆に金を払ってでも愚痴を聞く。

 目の前の腐れガラスの娼館街での評判を貴方も耳にしているだろうか。

「……そんな娼婦にとって、姫が客待ちしてる間、気まぐれに歌う歌は、
 何よりも救いなのさ。

 金なんてありゃしない。娯楽なんてありゃしない。救うものもありゃしない。
 そんな中で、聞こえてくる歌は、どんな娼婦にだって、少しでも指す光なんだよ」

 ぽつり、ぽつりと、影に堕ちる一面を呟いて、エールを煽って給仕にお代わりを頼んで。

「そんな、俺の相手をしてくれて気持ちよくしてくれる沢山のいい女達が、
 ヴェルさんの歌を以てして、どんだけ稼いだ女でも、地位を譲って”姫”って呼ぶんだ。

 だったら俺も、ヴェルさんのことをヴェル姫だって、すげえ人なんだぞって言うに決まってんだろ」

ヴェルソート > 「まぁ、体術は軽く仕込んでる最中だしなぁ。といっても護身術程度だけど。
 あー、そういえば…受け身とかは最初からやたら上手だったな…なるほど、ぶっ飛ばされ慣れてたのか。」
そういわれると合点がいくが…面白くない、と顔をぐんにゃりさせてむすっとする。
彼を買ったときに会った商人、ちょっといやがらせでもすれば良かっただろうか。

「ふはっ、ジーゴが聞いたら絶対調子乗るから、とっておきの時まで言わないであげておくれな。
 俺としては、座学もそれなりに頑張ってほしいんだけどなぁ。」
文字と四則演算くらいちゃんとできてくれれば、それでいいから、あとは妖魔語とか覚えたら冒険の時役に立つんだが…彼に覚える気があるかどうか。

魔力に関しては、外したら周りの物に軽く火が付きだしたので、現在制御の練習中だ、といっても精神統一の類をじっくりしているだけだ、落ち着きが無くていまいちうまくいかないが。
既存の魔術を歌に解いて扱うのは得意だが、魔術そのものはさして得意ではない、知識だけはそこそこあるので指導できている、といったところ。

「ん?…あぁ、そりゃ助かる。俺じゃどうしても歌以外のところは悪くて三流、良くても二流止まりになるからな、面倒見てくれるなら俺もありがたい。
 一応、俺も冒険者ギルドに登録してるけど、あくまで副業だからなぁ…。道具についても、アンタの方がよっぽど良い伝手あるだろうし…お金なら、今度ジーゴに持たせておこうか?」
彼もそれが本業というわけではないだろうが、自分より腰を入れて活動している彼が後見してくれるなら、それこそ渡りに船だ。
自分では教えられない事も、彼ならいろいろ知っているだろう。

「……まぁ、そういわれると……ぬ、ぅ。」
早々に丸め込まれかけている男。いや、歌という一点を引き合いに出されると、謙遜という言葉を破いて捨てるのに、自分そのものが出てくると引っ込みがちになる…という面倒くさい性分のせいだが。

そうしてようやっとレモネードと蜂蜜酒のグラスの中身が半分ほどになれば、レモネードを蜂蜜酒のグラスに注ぎ入れて軽くグラスを揺らしてかき混ぜて…酒精の混ざったレモネードをまたちびりちびりと、飲み始める。
そんな合間にコルボの主張を聞くのだ…血筋じゃない、行いだと言われたそれ…確かに、自分はそこかしこを歩きながら、または仕事の待ち時間、気が向いたら歌を垂れ流している。
たまに楽しく、時折緩やかに…怪我人や病人を見かけたら癒しの旋律を…道すがらなら声だけの、酒場なら盛大に…。
子供が居れば踊って見せて、大人が居れば踊って魅せて。

そういえば、娼婦の姐さん方も時折、会話の流れで「はいはいお姫様」なんて言う時が、なくもなかった気がする。

「………ぉ……おぉぅ……。」
真正面からの賛辞に、酒気ではなく、顔を真っ赤にして突っ伏した。
そんな正面からなんて、娼婦の姐さん達ですらまともに言ったことねぇぞ、っていうか…それ…。

「なぁそれ…おれ、初耳なんだけど……娼婦の姐さん方、バラしたって怒られる奴なんじゃねぇ、の…?」
ちょっと今、顔をまともに見れなくて…隻腕で顔を覆いながらも、思い当たってしまった疑問を、投げかける。

コルボ > 「元から言わねえよ。あいつの根っこは餓えだ。
 飯は食わすが精神的な餓えは何よりあいつを伸ばす。

 座学は、ミレー族である以上は出来ると思われない方がいいよ。
 小生意気だって棒で殴りに来るバカを増やすだけだ。」

 ジーゴをミレー族と知って友と呼ぶことと、世間の目を理解しないのは別物で。
 いっそ覚えるだけの頭を別のことに使った方がいいと

「二流とかよく言うぜ。姫が一人いれば相手が倍でも楽に仕留められるってのに。
 金なら、ジーゴが稼いでる範囲で、ジーゴの金持たせてやってくれよ。
 そうすればその分買ったものにも愛着が湧くし、掛け値なしに姫の為に頑張ったってやりがいがジーゴにも湧くからさ」

 貴方自身からもお金を持たせるようなニュアンスにはかぶりを振ってから、
 ニヤっと笑って『値切りなら任せとけよ』と言う有様で

「魔力込めようが何しようが、それは姫の強みだからな。
 だから持ち上げもしねえしおとしもしねえよこっちは。

 逆に姫は自分安売りし過ぎなんだよ。……ま、自分を過小評価するのは分からないでもないけどな」

 過去に魔族に囚われたという経緯を思い返せば、警戒し過ぎるということはないだろうと
 それ以上は無理に言うこともなく。

 そして貴方が己の言葉に、過去を思い返し、己の行動を思い出し、やがて思い至り、
 突っ伏す様を面白おかしく酒の肴にすることもなく。

「姐さん方は一目置いてるから言わねーだけだよ。
 ……つかマジで気づいてなかったのな。

 別に言ってもかまやしねえよ。みんな思ってる事実を答え合わせしてるだけだし、
 みんないつか救われてたんだってそのうち言うだろうよ」

 なんか飲む? とレモネードが空になった頃に突っ伏した後頭部に声をかけて。

「だから、そこら辺のパーティにかまけてる王族よりかは、姫はこの街じゃ姫なんだよ。」

ヴェルソート > 「…なんか、コルボのがジーゴの事良く見てるなぁ。ちぃとばかり悔しいやも。
 う…でも、買い物の時とか……いや、それもむしろ生意気だって言う奴増やすのかね。」
えぇいめんどくさい…と愚痴りながらも、少しばかり教える内容を考え直した方が良いかもしれない、確かに…別に覚えた方が良いことも沢山あるのだ。

「言ったろ、歌以外は…って、音楽が絡むならは俺は超一流!…の、つもりだ。
あー…別に金取り上げてるつもりはねぇんだけどなぁ…でもそうだな、お使い以外でもお金の使い方ちゃんと覚えねぇとだよなぁ。」
自分で金の計算できるようになるまでは、と先延ばししすぎたかもしれない…そう考えれば良い機会か、とコルボの提案に頷いた。
ニヤリと笑って言う彼に、こちらは無い肩を竦めて苦笑いを浮かべ、しかし了承する。

そして半ば衝撃の事実に…真っ赤になって突っ伏して少しの間うごうごして……口元を覆いながら顔をようやく上げたのだ。

「言われもしねぇのに気付くわけねぇだろ……
 なんか今俺すっげぇ恥ずかしいんだけど、姐さん方に今後どんな顔すりゃいいんだよぉ…。」
そうして再び突っ伏して、ごろごろとテーブルの上を左右にわずかに転がり悶え…注文を聞かれればピタリと止まり……ボソリと。

「……冷たくて甘いものがいぃ…今日は俺が払うから……。」

コルボ > 「俺は誰でも全部見てるよ。情報に貴賎はねーんだから。だから単なる職業病だよ。

 まー、んだな。とりあえず、空気を慣らさないと。俺の連れだって流れも出来れば、
 少しはまし、になるといいんだがなあ。」

 抗う、真正面から相手に付き合う必要もないのだと。逆にこちらが場の空気を握ればいいのだと。

「姫のは取り上げてんじゃなくてきちんと管理してくれてんだよ。
 それはジーゴも分かってるから不満をぶーたれたりしねーだろ。

 姫は話が早くて助かるよ。つーか、ミレー族を見受けしたら、まっとうな生活させてやるにゃ一人じゃ限界があらーな」

 謂れもしなければ、と言われれば肩を竦めて。

「そこは姫の悪いところで、自分のこと過小評価してっから人の好意に気が付かねーだけだよ。

 今まで通りで良いに決まってんだろ? 姫は姐さん達に助けられたように、
 姐さん達も姫に助けられてんだ。

 お互い持ちつ持たれつ、それでいいじゃねえか」

 払う、と言われれば、あ? と声を荒げて。

「ヴェル姫の機嫌を曲がりなりにもちったぁ損ねたんだ。
 ここは俺が払うのが筋だろうがよ。ジーゴのこと頼むって言いながら人の顔潰すのが姫の流儀かよ」

ヴェルソート > 「それができる時点ですげぇけどな、ある意味俺達(娼婦)もそういう職業病は患ってるはずなんだけども。
 そーだなぁ、俺もちょっとジーゴと一緒にギルド訪ねる頻度増やすかぁ、あんまり構いすぎるのもあれかと思って、様子見程度に同伴してたんだけども。」
まだそういう段階ですらなかったかなぁ…と、小さく息を漏らし。
もうちょっと俺って気が利くと思ってたのに…なかなかうまくいかないものだ。

「まぁそりゃ、ジーゴが稼いだ分は全部取ってあるけども。
 ほんとにな…本人から聞いた限りは、いろんなところでアレコレかわいがられてるみたいだから、ちょっと楽観的になってたかもしんない。」
いくらなんでも少年が自分で稼いだ分を自分が使うようなマネはプライドが許さない。
っていうかそんなクソ親父ムーブ死んでもしたくない。

「ちーがーいーまーすー。おもにお前さんが過大評価なんですぅ~。
 ベッドの上のリップサービスじゃねぇんだからよー、もー…!」
誉めくれるのは嬉しい、嬉しいが…それ以上に羞恥が勝ってさっきから突っ伏しっぱなしである。
今まで通りでいいと言われれば…ほんとに?といわんばかりに、チラッとコルボを突っ伏したまま見上げたとか。
そしてこちらが払うと言っているのになぜか機嫌を撒けたコルボの言葉…。

「…じゃあ、それで……コルボくん、たまに男前よな。ジーゴも『たまにカッコよくて腹立つ』って言ってたけど。」
面子を潰れるとまで言われれば、そこを押して自分が払う、と主張するほど固持するつもりもなければ、そっと財布をポケットの奥に押し込み直した。

コルボ > 「逆だよ。最初のうちは甘やかすぐらいでも頻度を増やす。
 奴隷でも後見人がいる、飼い主がいる。

 ……それを怠って、ミレー族ていう背景を良く受け入れたから、
 そこにつけ込まれて奴隷商人にもってかれんだよ」

 ミレー族単体であれば容易く連れ去りもしよう。
 飼い主が、主がいるなら話は別だが、それが放任であるとみなされれば漬け込みようもある、と。

 貴方が優しく家族を想うのは確かだが、ミレーという種の世間への悪意は存外強いのだと。

「ジーゴも、姫に気ぃ使ってる、は違うな、姫のこと大好きで大事だから、
 なんなら自分の稼いだ金を姫に使ってほしいまであるんだろうよ。

 ……お互い大事な家族だから、却って話せてないんじゃないか?」

 パスタを頬張りよく咀嚼して呑み込み、次のエールが届けばそれで流し込む。

「姫の評価に関しては過不足ねえよ。重ねて言うがあんたが自分を過小評価してるだけだ。
 自分の価値を認めねえのは勝手だが、それを認めてる奴の顔に泥塗るってことも忘れんなよ」

 あえて行儀悪くパスタを口にした後のフォークで貴方を指さして。
 それは難しいことかも知れないけど、それは今の貴方には必要なことなのだと。

「たまにじゃなくて俺はいつだって男前ですー。
 ……ま、俺がカッコいいのは当たり前だけど、その立ち方は、
 ジーゴに助けられてるところもあるんだよ」

 ぽつりと、そんなことを呟いて

ヴェルソート > 「う……はい、ごめんなさい。」
ビシバシと、叩きつけられる正論。むしろ自分が奴隷という立場だったからその風当たりを理解していないといけないのに、傍からビシバシ叩きつけられた現実にうぐぅ…と羞恥以外で丸くなって突っ伏し、搾りだすように謝罪が口をついて出る。

「…そういや、自分を買うのに使った金、絶対返すから、って意気込んでたな…。」
もしかして返済してる腹積もりだったらどうしよう、ただ預かってるだけのつもりだったのだけど……いやまぁ、その辺も含めて、話し合え、というのがコルボの主張だろう。
まっとうな言葉がいちいち刺さる…文句言うつもりで来たのに、むしろ説教されてる現状にしおれてしまいそうな気分にすらなっていた。

「……んぎぃ…そういわれると…コルボよりむしろ姐さん方が怖い。」
おや、アタシ達の顔に泥パック塗ってくれるのかい?と仁王立ちするお姉様方が脳裏に浮かんでブルリと身震い。
コルボの話を真面目に取るなら、それこそ娼婦の姐さん方が譲ったことに泥を塗る羽目になるというのと同義なのだから。
ビシッと差されたフォークの先に、反論の余地なくうなだれる歌姫の姿があった。

ただし、男前を主張する姿にはジト目を向けて。
「はい、はい。イイ男。すごいすごい。いっつも男前で、えらいえらい……ん?ジーゴがどうしたって?」
知らずに彼がどこかで聞いたような言葉を返したとか、ただ、そこに付け加えられた家族の名前を彼が呟いた気がして…聞き返す。。

コルボ > 「ま、そこが姫の良いところだから強くは言わんけどな。
 この腐った国にあって、姫はどこか他人にとって眩しいんだよ、そういうとこ」

 差別されるべきと誰もが疑わぬミレー族を迎えて、家族として共に暮らして、
 対等に接して。
 それは正しいことだ、きっとミレー族を人でないと扱う事のほうが間違っているのだろう。

 けれど、世相はそうではない。もしかしたら未来でミレー族も人となるのかもしれない。
 それは少なくとも今ではないから、家族を守るために必要な立ち回りがあるのだと。

「あいつそんなこと言ってたの? ……義理堅いよなあいつ。
 自分のことをオオカミって言うだけあるよ。プライドが折れねえんだからよ。」

 しおれてる貴方をよそに、ジーゴが見受けした金について言及していたのであれば、
 苦笑交じりに、しかしどこか自慢げに。

「だろー? おもちゃにされて濃いめのメイクされたくなければちったぁ自分が”姫”だって自覚もちなよ。」

 なんのかんの、受け入れてないだけで見ているのだろうと貴方に問いかけて、
 項垂れればケラケラ笑って。

「グランツの旦那に抱かれてよがってそうな姫にそこまでぞんざいに扱われてるのなんか腹立つ。

 ん。ジーゴに、俺が救われてるって話」

 ぽつりとそう呟いて。

「……あいつは何があっても折れねえからさ。
 アイツにとってはそれが当たり前なのかもしれないけど、
 普通はミレー族は打ちのめされれば今の境遇を享受しちまう。
 他の奴隷もそうだ。けど、あいつは違う。

 いくら打ちのめされても、鎖に繋がれても、それを良しとしない。
 良いことを良いというし、返すべき恩も仇もきっちり返す。

 ……あいつは獣ぶってるけど、背筋はしっかり伸ばしてる。
 あいつの、その背中を見てると、たまに自分が悩んでる時、

 ああ、負けてらんねえなって立てる時があるんだよ」

 誰にも言えず、終わりのない暗闇を歩む。
 妄執、復讐、憎悪、絶望。未だそれに囚われて。
 それが正しかったのか、今でも己に問いかける。

 もう己は人ではないのでないかと、贖う資格さえないのではないかと。

 そんな時に出会った友は、どんな境遇にも負けることなく、主のところに帰ってきて。

「だから、この間奴隷として捕まってたのが許せなかった。
 あいつの財産を、姫からもらったものも奪った奴等を許せなかった。

 ……だから二度と立ち直れないように商人同士で同士討ちさせてやった。」

 今はまだ何も知らなくても、いずれ大きなことを成し得る男。
 ともすればよくわからぬ神を掲げるミレー族の過激派などよりも、
 よほどミレー族の未来を切り開く一条の光になりかねない、雄々しい者を、
 鎖に繋いだことを思い返す男の瞳には

 間違いなく、憤怒が宿っていて。