2023/06/28 のログ
ケストレル > 「………はぁ~」

久々に盛大な溜息を吐いたケストレルだった
悪戯にも無抵抗で飛び起きる気配もなし、それどころか艶っぽい声まで添えての寝言まで口にされて
豪胆と言えば聞こえは良いが、彼女の場合は浅慮とかの方が近いだろうと勝手に結論付けて

「……やっぱアイツの手前、知らんやつらに慰み者にされるってのはな」

酒の所為とはまた別の原因から頭痛を覚えつつ、ケストレルは酔い潰れた少女戦士の腕を取るとその背に背負おうとする
抵抗なく背負われたならば、そのまま会計へと向かい部屋のある近場の宿まで運んでいく事だろう

ティカ > 青年の懊悩など知らぬげに、チビは呑気に寝こけたまま。
背負おうとする動きにも若干むずがるような声音を漏らすばかりでされるがまま。
ちなみにチビは驚くほどに軽く、柔らかく、生意気にも良い匂いがした。
オスを惑わす食べ頃娘の甘い匂いが。

見るだにお持ち帰りといった格好となる青年ではあったが、それまでのやり取りをそれと無く見て居たのだろう女給は『ご苦労様』という意味合いの滲む苦笑と共に会計を行い見送ってくれたのだとか。

そうしてよっぱらいはギルドの酒場を後にして、知り合ったばかりの青年冒険者と共に見知らぬ宿の一室へと運ばれていくことに―――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区:冒険者ギルド兼酒場」からケストレルさんが去りました。
ティカ > 【部屋を移動します。】
ご案内:「王都マグメール 平民地区:冒険者ギルド兼酒場」からティカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエンさんが現れました。
エン >  
冒険者ギルド併設の酒場・飯処。
くたびれて踏むたび軋む木の床に年季が入って黒ずむ木の壁。
壁のあちらこちらに張り出された黄ばんだ紙は献立・価格表。
一際大柄な者がどかっ! と腰掛けたら、ばきっ! と音立てて壊れそうな椅子と丸い机が雑多に立ち並ぶ。冒険者、他、依頼を出しにきた者や近隣の者も利用する其処は飯時となれば雑多に並んだ椅子に丸い机に空きがないほど人気も飯も並ぶものだが飯時過ぎれば疎らなもの。

そこの一角の隅の隅に腰掛けてぐったりしている異国の装束を纏った男。
レンズがすっかり曇って外してみれば手入れを始めるが、瞳は閉じた侭。

「ふー……」

厨房から持ち出してきた炭酸水を瓶のまんま口を付けて煽れば、
ごくり、ごくり、ごくり、ごくり、ごくり……
一息で半分以上も飲み干せば長い長い一息を零す。
給仕はいるが料理人が足りない、
と伝手で聞いたもので一つ手伝おうと思ったのだが手伝ってみればまぁ忙しいの何の。
一昔前は冒険者ばかりでそれはそれで忙しないのは知ってはいたが近隣の者まで呼び込むようになってからは戦場もかくやという忙しさとは恐れ入った。二度とやらん、とは文句を零しながら、一服中。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシホさんが現れました。
シホ > 冒険者ギルドで幾つか手続きを済ませたのは長期に渡った依頼がつい先日片付いたからで、
その報告や報酬を受け取りに来たからだった
朝のうちからギルドに顔出しするつもりがついつい定宿を出るのが遅くなり、
折り悪く冒険者達がごった返す時間にかち合ってしまい、待たされる事、数時間…
ようやく先程、全てを済ませて一段落ついた所であった
長期の依頼を共にした仲間たちも今頃は各々、身体を休めていたり、
或いは、新たな冒険へと旅立つべく情報収集でもしているのだろう
自分はある程度、纏まった報酬が手に入ったからしばらくはそちらは休みにし、
消耗品の補充や装備の点検、修繕などをしてしばらくは過ごすつもりでいる
………にしても、予定は大幅に狂ってしまい、正直、今日はもう何かをするつもりにはなれなくて
ついつい、いつもの調子で酒場へと続く扉を潜ったが、そこで有象無象の男たちの視線を集めてしまい、
しまったなあ…と、思ったものである。逞しい冒険者が管を巻いているような時刻…
そこへ冒険者とはいえ、普段着の女が入ってくればそうもなろうというもので

咄嗟に室内を見渡してむさ苦しい男たちの中にあって身なりは小綺麗…に見える彼を視線に捉えれば、
他の男達の視線を感じつつ、つかつか、と彼が座っているテーブルに近づいていき、
なんの遠慮もなしに腰を下ろしてしまった

「―――済まないね、待たせてしまったかな?
 ………と言っても、君にはなんの事やらさっぱりだろうけど」

前半をよく通る声で。後半部分を声量を抑えた囁き声で伝えれば、
通りがかった給仕に彼と同じものを2つ、と注文し、再び彼の方へと顔を向ければニッコリと笑みを浮かべた

エン > 混雑時に比べれば大人しい喧騒。混雑時に比べれば、だが。
筋肉ではち切れんばかりの二の腕晒した大男に熊か何かと間違えそうな髭と面の男にエトセトラ、
冒険者という稼業でございと全身で訴えている者が多いもので身体もでかけりゃ声もまた大きい。
彼等が騒ぎ立てる声に、うるせ、何て面しながら手入れした黒眼鏡をかけ直してまた煽る。

そこへ、こういうところへと足を踏み入れるには小柄な足音、
そして、彼等が騒ぎ立てる声が少し収まった事に耳を傾けて。

「……」

カタギにしては、小柄なだけにしては、随分靭やかに軽い足音。
……手練かなあ多分なあ……
何て思っていたらそれがこつこつと近づき自分の真向かいに座ったことに片眉が上がる。さらに、聞き覚えのない声がいかにも親しげに声を掛けてくるのだからもう片方の眉は逆に下がる。ものの、後々に続く小さな言葉と、あちらこちらから突き刺さる視線に溜息一つと共に肩を竦めて見せた。

「いーや。こっちもよーやっと抜けたとこ。待たせないで済んで良かったよ。
 ……ご馳走様。いや同業が申し訳ないな」

前半は、周りに聞こえるように少しばかり声量上げて、後半は小さく囁くような声で。
炭酸の注文にゆらりと手を持ち上げては感謝と謝辞どちらの意味合いも込めて胸の前で立てる。

シホ > 無遠慮に席に腰を下ろした時、彼の眉が器用に上げ下げするものだから、
給仕を呼び止めた声に笑いが混じってしまって、それを見た給仕に変な顔をされてしまった
給仕には笑われてしまったけれど、声をかけた彼は何となくこちらの意図が伝わったようで安心する
冒険している時、同行者たちとこうして意思の疎通ができるとささやかなながら幸せを感じてしまう質である

彼とのやり取りに向けられた視線がなんだ、男連れかよという冷めた気配と共に離れていく
彼の掛けたグラスの向こう側にある瞳に見えているかは定かではないけれど、
一先ずはニコニコと笑顔を浮かべておけば、次第に冒険者たちの意識も離れていくだろう

「…いや、すまなかったね。助かったよ、こんな成りでギルドに顔を出すのは私の不注意だった
 装備のたぐいは点検したり日干しにしたりしてあったから…ああ、来た来た、ありがとう………
 ってこれ、無酒精なの…?昼間っから飲むにはパンチにかけるなあ…」

彼のものと同じ炭酸水が運ばれてくると給仕に2つ分の代金をどこからか取り出し、支払いを済ませ
口をつけてくい、っと一口飲めば、てっきり酒精のは言っているものだと思っていたから驚いた顔をして
彼の方へもどうぞ、と炭酸水の入った瓶を勧めるようにしては手に取るには少々不便な位置に押しやる
何となく彼の反応や周囲への意識の配り方が『見えていない人』のそれのように思えたから、
それを確かめるべくちょっとした悪戯心であった

エン > 薄暗い赤色のレンズがぼんやりとした輪郭で彼女のニコニコ顔を写している。
首を傾げれば眼鏡と顔の位置がほんの少し逸れると耳が傾いた。
興味を無くした声が幾つかに下世話な話が少しと何れ他の話題に向かうのを聞き届けて、
まったくほんっとしゃーねぇーなあいつ等……
と、喉から出掛かっているし顔にはしっかり書かれてあるものの、
ぐっと飲み込むと改めて彼女へと顔を戻して礼には首を横に振る。

「どういたしまして。たしかにちょい可愛らし過ぎるかもしらんが良いんじゃない?
 可愛いらしい人が可愛い服を着て悪いこたぁない。」

ワンピース。長丈の。腰の擦れる音は……短剣。声の位置的に……云々。
耳に入ってくる情報から幾らかの実像を脳内で結び上げながらも、
何の事はないと言葉にも仕草にも気にした素振り一つもなく。

「酒に強そうな面してるだろう? 実は下戸なんだな、これが。一杯飲むともうべろんべろん……
 ッハハ。ああ、ご明察、見えていない。おおよそのことは聞いて解るけど目は使い物にならん」

ふらふら、と酔っ払ったように頭を揺らしながら笑って。ぷは、と可笑しそうにまた笑気を吹き上げたのは瓶が置かれた位置の事。
見えていないと推察に一つ頷くものの見えているように手を伸ばしては、掴み損ねる事なく掴み取る。
瓶の口を開けては自分の口に着けるときもう一度感謝を述べては、一口煽り。
ふとサングラスに手を伸ばしてずらせば閉じたままの瞳をちらりと見せた。

シホ > グラスのレンズにはぼんやりと自分の笑顔が写っている
下世話な冒険者たちの囁き声も隠匿した耳にはしっかり聞こえているから、
内心、男は何歳になっても男の子だなあ…なんて思ったりもする
冒険者達に何か言いたげな気配にふふっ、と僅かにばかりに笑い声を漏らしては、
彼らに比べれば少しは大人かな?なんてやっぱり内心思ったりして

意地悪く押しやった瓶を事も無げに掴み取る様子を手にした炭酸水の瓶を傾けて、
こくりと喉を鳴らしながら眺めていたけれど、そっとテーブルに置き直し、
サングラスがずらされた彼の顔をマジマジと、好奇心の灯る黒い瞳で見つめる

「君は不思議なことを言うね?
君は見えていないと言うけれど、私が意地悪く置いた瓶も簡単に手にとってしまうし、
 その口ぶりからすると私の着ている…身につけている衣服まで判っているらしい…
 おまけに私を可愛らしいって…?私の顔は自慢ではないけれど瓶より余程、複雑な造形だよ?
 …聞くだけで大凡の事が判ってしまうなら、誰も彼も眼なんてとっくに退化してしまっているはずじゃないか?」

―――本当に見えていないのかな?
そう言葉にするとテーブルから身を乗り出すようにして、さらにマジマジと閉じられている、
彼の瞳を覗き込もうとした………夢中になっているからなのか、それとも意識してなのか、
ワンピースの胸元がふわりと緩みとその中で下着に包まれた豊かな双丘が撓んだ

エン > 興味深そうにも面白そうにも悪戯っ気もたっぷり乗った声に、
くつくつと喉も肩も揺れてるし瞼は降りているが目尻も撓む。
サングラスはズラしたまま、人差し指を持ち上げれば瞼を引っ張る仕草。
ぐい、ぐいと引っ張っても持ち上がらず『見えてませんよ』アピール。
……動作がいちいち態とらしく見えるから疑われるか?
とは、一瞬思ったものの。

「見えなくなって大分経つ。見えてた頃から重ねた訓練の賜物ってやつさ、後は慣れが少し。
 大凡程度で可愛いって解るのはそりゃあお嬢さんが可愛らし過ぎるからだよ、
 声からして聴き心地がいいもんだからそりゃあ顔もいいものだろうってね?」

まあその気になれば造形だって大体解るが。
とは、付け加えつつ、初対面の女性の何もかもをじっくり聞き入るのは……
何度かそれで失敗して大変な目にあったのでそれほど深く聞き入ることはない。

「あー。これはその。なんだ。いやそう言っといて何だが。あれだ。気遣い、そう気遣い、決してやましい意味では……」

だが、途端に言い訳がましく辿々しくなる口調。
口元に持ってきていた瓶を横ばいに揺らしては端っこの方だが端の端でもない絶妙な位置に置く。
丁度、おっ? とばかり此方を向く、いや正確には彼女の撓む胸元に向いた冒険者共の視線が、
遠近の関係で瓶で遮られた。
たゆん、とか、ぽよん、とか、オノマトペでも出てきそうなぐらい柔らかそうに撓む乳房が下着に擦れる音だって聞こえている。
と、言っているようなものなので非常にバツが悪い。
乗り出してきた彼女に対して僅かばかり顔を引き背を背もたれに預けて身を引いて、
目が開いていたら目線はあっちこっちに泳いでいるだろうとでもいった具合の有様に。

シホ > くいくい、と彼のアピールに本当に?と訝しげな様子で首を傾げる
無論の事、彼にぐいと顔を寄せては視線を向けたままで。そんな様子を、
外野の冒険者達に見咎められたか少々ざわつくようであったが、それすらあまり気にしていない様子
興味本位での質問に彼が答えてくれて尚、しばらくはそのまま、顔を覗き込んでいるようでいたが、
ふむ…と何やら納得した様子で頬にかかった一筋の黒髪を指先で耳にかけ直すと、
ようやく彼の顔から離れて席に座り直した。幾分か温くなってしまった炭酸水を一口し

「重ね重ねになるがすまなかったね
 前から気になっていたんだ、稀にいるだろう?君のように見えていない人…
 それでもあまり不便をしていないようであったから前々から聞いてみたかったのさ」

吟遊詩人や時には冒険者…長い、長い旅路で盲た人間を幾人か見てきたがずっと不思議であった
見えていないはずなのに見えているような振る舞いをする人々

「ただ、そういった人達にはどこか悲壮感みたいな物を感じてね…あれこれと聞くのはちょっとね………
 ―――その点、君にはそういう悲壮感が無かったからね、ついつい無遠慮になってしまった
 気に触ったなら心から謝罪するよ、すまなかったね」

ふぅ、と聞きたい事を全て聞いたとどことなく満足げな表情を浮かべる
あっ、と小さく声を漏らしてそろり、と彼から視線を外し明後日の方へ向ける

「ただ、そうか…君にはあらかたの事が見えるように、手にとるように聞こえてしまっているのだなあ…
 それには血の滲むような研鑽があったればこそ、なのかもしれないね―――
 ただ、それじゃあ、君の前に立った私は幾重にも防壁を張り巡らせた装備を身につけていたとしても、
 裸も同然じゃあないか…」

ちらりと見せた胸元は無意識であったか意図していたか
明らかに彼が身を引く様子に女の勘でも働いたのか、彼にだけ聞こえる声でそう告げると、
ひどく楽しげにクスクスと笑い始めた

エン > 本当に。何て頷き一つ。
首を傾げる仕草とて見ているように頷いてしまうから、
盲の振りをしていると余計疑われる事もあるのだが。

どうにも得心のいったような声。さらりと頬や耳を擦れていく髪の音に、長いなぁ……と眼鏡が髪へと向いたが、とかく納得して貰えた様で、なによりやましい意味と誤解させずに済んだ様子に色々な意味でほっと一息。力が抜けたように肩が落ちてなんとなく乾いた喉を潤すために炭酸水をまた一口含む。

「その気持ちはよく解る。こうなるまで、何でだろ? つって首傾げてた側だから俺も。
 まあ、たしかに、失った事について落ち込んだ時期もあったがねぇ……」

現状は生活に支障がない水準にまで聴覚で賄える段階になった事もあるが一番は慣れか。
今は別にどーとも、と、
好奇心はあるが良心が咎めたらしい様子には何の事もなく気軽に笑って見せる。

「不便がないとは言わんが。不便といえば少し鍛えすぎたかなぁ……いやなぁうん。申し訳ない……。
 いや本当にそんなまじまじ視姦してやろうっていう気はないんだけども、うん」

これが、魔術由来で何がしかの術式を以て疑似視覚を形成しているならオン・オフもできるのだろうが、
生憎と、感覚機能を長い長い練磨の末に磨いて実像を結び付けているだけなのでオフにも限度がある。
彼女言う所の、裸同然、正にあんまり注意深すぎるとそうなる故、
彼女が身を戻したところで己も背を正したものだが……
申し訳無さそうにも気恥ずかしそうにも眉根は寄りがち口元も歪みがちに頬を掻いた。

シホ > 彼の言葉に少々踏み込んであれこれと聞いてしまった事を申し訳なく思う
自分だって光を失えば今まで当たり前だった事を失い気落ちもするだろうと思う
好奇心がムクムクと芽生えてくるとそういった事に気を配れなくなるのは自覚している悪癖であった
それでも彼が色々と聞かせてくれたのは彼の人となりもあるのだろう

「鍛えすぎた、か…視力を失った君がどんな訓練をしてきたのか、全く想像はできないけれど…
 それがとても大変で険しい道程であった事くらいは私でも想像ができるよ
 その点においては、君に敬意を表しても良いくらいにはね」

彼がどんな鍛錬をしてきたか、想像はできないけれど
視覚から得る情報と同等以上のものを得るための訓練をきっと熟してきたのであろう
それに関しては素直に感心してしまう。彼が笑みを浮かべればこちらも笑みで返して

「何構わないさ。男は想像力の生き物だからね…裸を想像されるのも、
 見ずとも聞かれてしまうのも、そんなに変わりないさ…実害があるわけでなし…」

打って変わって申し訳なそうな彼にからりと笑って見せて
そろそろお暇しようかと、腰を上げた所でふと気がついてしまう…いや、しまった

「なるほど不便か…女の身体が判る以上………ああいった類の男達の身体つきも、
 見ずとも聞こえてきてしまうこともある、というわけだね…
 なるほど、不便をしていそうだ」

ちらり、とテーブルを囲んでいる熊のような体躯の、少々薄汚れた身なりの冒険者達に視線を向けて
それから、彼の方へと視線を戻せば、ふふ、と悪戯っぽい笑い声を零して

「それじゃあ、そろそろ失礼するよ
 …っと、いけない、いけない。私はシホ。冒険者のシホ、それ以外は故郷に置いてきた
 気楽にシホ『ちゃん』と呼んでくれ…君の名前を頂いても?」

そうしてやっと自らの名前を彼に告げれば、また会えたら今度はお酒を、と付け加えて
やっぱり冒険者の男達の衆目を集めるようにして去っていくのだった―――

エン >  
「照れるぜ。やめ……
 は、しなくてもいいけれど? はっはっは」

もっと褒めて! などと言えるほど図太くは無いが、取り消して? と言う程謙虚でもない。
彼女にあんまり気に病ませないようにという気遣い半分本音も半分に冗談めかして笑った。

「助かる。いざとなれば土下座も辞さんが、やりたいかっつーと話は別……
 ……。……いやほんとご明察よな。うん、仰る通りだよ」

彼女の推測はいちいちずばりと当たる。
観察力と発想力に感心した様にも、ほーう、と何とも言えぬ吐息……
男のあれこれ云々という言葉には『それはもう』とは言いたくなく、
頬杖付いてあからさまに顔を真横に向けてそっぽを向いた。
どうにも悪戯っ気な笑みにじろりと少し湿った視線、というか物言いたげな顔が直ぐに向けられ、そのあとにはまた可笑しそうに口元は歪み笑気が溢れたが。

「あ。ああ。そういや、名乗り忘れてたな、宜しくシホちやん?
 ユウエンだ。エンと呼んでくれ。」

切欠が、既知のようであって、喋っていても何だか喋りやすいものだからつい失念していた名乗り。
ちゃん、と何だか強調気味な語調に、結構若いのでは? と何となくの顔の造形からして首傾げたものだが。
お互い名乗りを済ませたあとには酒の誘いに、弱いんだって、とまた笑いながらも、彼女を見送るために腰を椅子から持ち上げ、ちょっかい掛けんなよー、なんて、周りを牽制するよう出入り口まで連れ立ち歩いたあとには見送って。
そのあとには、

「さて。俺も上がるかぁ。飯……今日はもう何も作りたくねぇ……」

厨房で腕を振るいすぎて若干だるい腕をぷらぷらと揺らしながら、
己も踵を返して本日の寝床へと歩き始めた――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシホさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエンさんが去りました。