2023/06/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクレイドルさんが現れました。
クレイドル > 平民地区にある酒場。
来客の密度は並べられた席に疎ら。
テーブルと厨房間を行き交う店員達がずっとサボタージュは出来ない程度。
時刻的には夕方と夜の境目であり、暗がりを払拭する為に店内にはランタンの灯りが灯っている。
そして、このような場所には不釣り合いな装いの客が一人、その席の一つについていた。

「お酒はお好き?わたくしは大好きですわ~!命の水とは良く言ったものですわよね~!」

恵比寿顔のスマイルを愛想良く振り撒く、シスターの恰好をした女が。
座椅子に沈み込んだ座高は然程高くなく、体つきを調整して張り出す巨乳は、テーブルを乳載せ扱いに休ませる。
そのテーブルには紺色の衣装生地に包まれた乳袋以外に、飲み干した酒杯が沢山並んでいた。

酒の飲み比べ勝負に興じている。
もしも酔い潰れた場合は何をされても文句は言わない、という条件付きで。
目の前には何人か勝負を挑んで、そのまま負けた挑戦者達が突っ伏している。

「でも、お酒の方は、飲む人の事を好きとは決して限りませんのね。くふふ…」

クレイドル > 「わたくしは昔から慣れ親しんでおりますので、この程度の酒量ならば水の如きでしてよ…さあ。他に挑戦者の方は居られない?」

見回すテーブル周囲には物見遊山で見物に来ている客人たちが何人か遠巻きに見ているだけ。
飲み干して渇きはてている杯の一つを手に取り、ことん、ことん、と、挑発めかして底を卓上に打って鳴らす。
そのついでに余った手は、既にリタイアしている自信家の挑戦者達の懐を探り出し、鼻歌交じりに没収した財布の塔を積み上げていた。

「今なら奇特なシスター以外に、賞金までついて来ましてよ。酒と女と金…人生の三本柱が揃い踏みですわね♡そろそろわたくしも陥落かも知れませんわよ…?もう随分と飲み続けておりますもの」

薄らと眦が火照るように赤らみ始め、滑らかな饒舌を弾ませる。
ウィスキー、ブランデー、ラム、ビール、様々な酒がちゃんぽんでちゃぷちゃぷ言っている自分の胃の辺りを手で撫でさすり。
そして様子を窺いがちに周囲を見ている。自らに任じられた存在としての役割を果たすに値する誰かを探して。

クレイドル > 「ふむ……そろそろ、潮時ですわね」

気付けば波が退くように周囲からの人気は薄くなっている。
最初は物珍しさに絡んで来た者達も飽ひて別の関心にへと心を寄せ出したのだろう。
椅子からがたんと静かに立ち上がる。口元をハンケチで拭いた後に周囲にへと軽く一礼に頭を下げ。

「では、お暇致しましょう。皆様ごきげんよう、良い夜をお過ごし下さいまし。お会計の方をお願いしますわ~!」

そして粛々と場を辞して歩き出す、酔いを微塵も感じさせない矍鑠とした足取りで。
ちゃっかりと回収してきた財布の中身を支払いに利用して。
後には死屍累々と潰れ切った強者たちが夢の跡。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクレイドルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に影時さんが現れました。
影時 > ――夕刻を過ぎると、何処の酒場も騒がしくなる。

この平民地区に存在する冒険者ギルドに隣接した酒場もまた、きっと例外ではない。
然程実入りがなかったことのヤケ酒、死した仲間への鎮魂の酒、独り身をかみしめる悔し酒等々。
呑み方は十人十色。多種多様。
だが、今日はきっと珍しい祝杯、喜びの酒であるらしい。
王都近郊に偶然、大挙するように現れた魔物の群れを総出で討ち払ったことに対する、祝勝のそれだ。
魔物の群れにたまたま巻き込まれ、遭遇してしまった隊商が支払った謝礼金がほぼ費やされているのは、嗚呼。
云わぬが花であろう。ともあれ、駆け出しやら熟練やら、居合わせた者たちを労う気持ちはあるらしい。

『皆の生還を祝ってェェ、乾杯ィィ……!』

   『乾杯いー!!!』

……と。これで何度目の乾杯であろう。音頭をとる若手の一人の声を聴きつつ、思う姿が席の一つにある。
テーブル席の一つに幾つかの料理を置き、空にした幾つもの酒瓶を整然と並べた男の姿だ。
今は大振りのジョッキに満たした冷たいエールを片手に、串焼き肉を齧っては喧噪を眺める。

視線を落とせば、お腹一杯になったのだろうか?
山盛りのナッツの椀の傍で、満腹になったお腹を上にして二匹の齧歯類がすーや、すーやと寝息を立てている。
その姿に可愛いだの、触っても良い?などと尋ねる声もあれば、見るだけな?と釘差して、メニューを眺めるのだ。

次は何を頼むか。呑むか。
テーブルの端に立てかけた刀を使って、少なからず討伐のスコアを上げたのだ。
調子に乗って頼むと、後々請求されかねないなら。高すぎる酒でなければ、きっと文句は云われまい。

影時 > 「若ぇなァ。……ったく。あれでもう少し落ち着きがありゃ大成するか?」

手にしたものを食べ終えた後に残るは、木串である。
それを皿の上に放りつつ、よく冷えたエールを満たした木のジョッキを呷り、遠く目を遣る。
カウンター席近くに見える人だかりは、最近有望と囁かれている若手たちを中心にできたものだ。
数人の男女が集えばおのずと姦しくなり、輪とも群れともなる。
調和がとれていれば長く続くし、不和が生じてしまえば、何らかの終わりを見せるだろう。

後腐れのない、徒党の解散であれば一番いい。
蓄財や資産の換金や配分で揉め、取っ組み合いや訴訟沙汰になるというのも、決して珍しくもないか。

だが、其れでも楽しげにやっている姿とは、眺めている分については微笑ましくもある。
そう思いつつ、寝転がった栗鼠とモモンガのコンビに空いた指を伸ばす。
もう食べられない、と言わんばかりにむにゃむにゃ鳴く二匹の頭や顎をくすぐっていれば、尻尾もぱたぱた揺れる。
これは明日の食事は軽くか、配分を考えなければならないだろう。

そう思いつつ、ジョッキを呷ると――、あ。

「……悪ィ。エール、とりあえずもう一杯くれ」

空になった酒杯を掲げ、声をかけようか。