2023/06/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にカーティスさんが現れました。
■カーティス > 日の高い昼間の平民地区。
大通りには多くの人々が行き交い、それを狙い露店などが店舗の合間合間に並び。
そして酒場では昼間から客引きの声が聞こえ賑やかなもの。
当然それだけ人が居ればよからぬことを考える者も一定数はいるもので。
「もう人の財布スったりするなよ。ほら、さっさと行けよ。
こんなしょうもない事で掴まりたくないだろ」
そんなよからぬことを考える者を捕まえては被害者からスられた財布を取り返して解き放つ。
掴まったスリは納得いかないという顔をするが、早くいけと手を振れば逃げていく。
それを見送れば被害者に財布を返し。
「あんたも次は気をつけろよ?俺みたいな善良な見回りはいないんだ」
まさか財布が返ってくると思っていなかった被害者はぽかんとした後礼を口にして去っていく。
それを見送れば大通りを見回りという名の散歩に戻り。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からカーティスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエリノアさんが現れました。
■エリノア > 週末であるせいか、今日はやけに、客が多かったと思う。
商売が繁盛するのは嬉しいことだが、おかげで仕込んであった料理を出し切り、
素材の在庫が明日の営業に差し障る程となっては、手放しで喜んでもいられない。
明日の朝、早くに起きて市場へ行くことも考えたが、今日のうちに仕込みを始めたいものもある。
そんなわけで、早仕舞いをした店を後に、普段着に着替えて街へ出た。
この時間でも営業している食料品店へ向かい、無事、肩に掛けた布鞄に一杯、
それから大きな紙袋にも、たっぷりの食材を詰め込んで抱え持ち、
足早に来た道を戻り始めたが―――――
何処からか聞こえてくる怒号、恐らくは酔漢同士の揉め事か。
少し離れたところに人だかりが出来て、野次馬たちが囃し立てている。
そんな騒ぎを前にして、女はきゅっと、心臓が縮み上がるのを覚えた。
ガラにもなく、少しばかり顔が蒼くなっているかも知れない。
「……喧嘩は、嫌だねぇ」
呟く声まで震えているようで、全くだらしない、と思うけれど。
かつて、ああした騒ぎに巻き込まれて、呆気なく命を落とした男を知っている。
その記憶が今も、女の身を竦ませるのだ。
関わりにならないよう、直ぐに立ち去ろうにも、足が凍りついたようになっていた。
抱えた紙袋を、落とさずに居るのが、今は精一杯である。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴァーゲストさんが現れました。
■ヴァーゲスト > 今夜は妙に今は抉れてなくなった筈の左眼が疼く。
理由なんざわからないが、稀にある事で気にはしない。
無いものが痛むのは気持ちよいわけなんてないし、気持ち悪いんで抉り出そうと思っても既に抉られた痕だ。
富裕地区で気に食わないボンボンのガキに稽古をつけた帰り道、直ぐに宿に戻って寝てもいいが、疼いた左眼の痕を誤魔化す為に酒でも買って帰ろうと思い、舌打ならして歩いていたところに、見知った後姿を見た気がして、そちらの方に歩く。
いや正直言うと見知った後姿かもしれないが、ってくらいだが、もし本人ならもう片手じゃ納まらない月日が経過している、具体的には15年以上は前の記憶であるが、あの尻の形は間違いないという確信もある、が矢張り十年以上も前の尻なんざ尻間違いって事もある。
「そうかぁ?喧嘩ってのは男には遊びみたいなもんだが。
それに巻き込まれてくたばるバカもいるし、一概にはそうでもないか……。」
酒に悪い酔いしたバカ同士の喧嘩は此処では良くある事だ。
まあ『嫌だ』というのは否定はしない、巻き込まれたら俺だって『嫌だ』と思うからだ。
と、差し当たりのない言葉を苦味のある笑みの形に歪めた口で吐き出しながら、少々震えたような声色だった女の隣に立つ、立ってそれと無くその憶えのある尻をした女の顔を覗こうと隻眼で唯一残った右眼を向けてみた。
人間に紛れて生活して長い。
無論人間の女なんて幾らでも抱いた。
その中の抱き損ねたか、買ったかした女の尻にそっくりな、いや少し美味そうに肉がついているか、まあどちらにせよ顔見知りならちょっと遊んでやろうと思ったし、昔の冒険者の仲間の絡みだったら、そこを突いてやろうかと。
さて何れになるか、今夜の出会いはどうなるか。
そればっかりは魔族だってわかりはしない。
ただ面白い事になる予感はしていて、苦味を含めた笑みもどこか緩みかけている。
――…退屈には魔族だって敵わないのだ。
■エリノア > 不意に、すぐ傍らから声がした。
ただの声ならば気にもしないが、無視するにはあまりに近過ぎ、
その上どうやらこちらの独り言に、反応したものであるようだった。
更に言うなら、その内容が―――――女の心に残る傷を、無遠慮に穿り出すものであったから。
「遊びで命落とすなんて、単なる馬鹿じゃ済まないよ。
あんなもんを遊びだって言えるってのは、やっぱり、男ってのはみんな、大馬鹿だね」
アタマに来たから顔なんか、わざわざ見上げてやらない。
正面に顔を向けたまま、返す言葉にチクチクと棘が混じるのは、致し方のないところ。
それで怒るというのなら、その程度の器の相手と笑ってやるだけだ。
しかし、それにしても。
こちらを覗き込んでくる視線は、なんとも煩わしいもので。
暫し、相手の視線が、あるいは興味が、どこか他所へは向くまいかと、
無関心を貫く風情で間をあけてみたのだが。
どうやら相手がこちらを見続けているのなら、仕方ない、溜め息交じりにそちらを振り返り、
幾分高い位置にある、男の顔を睨み据えてやろう。
「……というか、なんだい、あんた。
アタシの顔に、なんかついてるってのかい?」
不機嫌なのを隠そうともしない、投げやりな声の調子。
振り仰ぐひっつめ髪の女は、果たして、男のどんな記憶を蘇らせるか。
20年かそこら前、港町の娼館で一夜を買った、あどけなさの残る娼婦との記憶か。
それとも10年以上前、金髪碧眼の北方系の男に寄り添い、その男にだけ良く笑う、若い女冒険者の記憶か。
あるいはその、どちらでもない―――――もっと不穏で剣呑な記憶を、
見交わす視線が互いの頭に蘇らせてしまうのか、どうか。
■ヴァーゲスト > 「そんなバカに跨って腰振って稼ぐバカな女ってのもいるがね。」
売り言葉に買い言葉……とまではいかないが、それでも可愛くも無い刺々しい言葉で返されたら、それなりの言葉を喉奥で堪えるような笑い声と共に返してから、改めて相手の顔を拝んで見たくなったところで、お相手はこちらを振り向いてくれたようで、隻眼の無事残った方の右目を細めてじぃっと相手の顔をしっかりと拝もうか。
見知りもしない男の冗談にコレだけ気丈なお返しの棘ある言葉を返してくれる女だ、さぞ面白い顔をしているのだろうと、或いは記憶にある尻の持ち主かもしれない、などと苦笑いが一転してニヤニヤと品の欠けた笑みを浮かべ、隻眼の視線も無遠慮に相手を値踏みするような眼差しを……だ。
「そりゃついているさ。
目だろ?鼻だろ?吸い付きたくなる唇だろ?
ああ、しゃぶらせたくなる?の間違いか……。」
不機嫌そうな様子は大いに結構。
言葉を吐くだけ吐いた後に喉奥でクツクツとまた笑って、小さく一声「ああ思い出した……。」とわざとらしく声にしようか。
そう、思い出した。
コイツは娼婦なんかじゃねぇ。
10年以上も前にPTを組んだ事がある『あの女』だ。
金髪碧眼の北方系の男と一緒に組んだ『あの女』だ。
オレが魔族だから、は関係ないだろうが、折角いい尻と乳をしているから依頼中に何度か抱いてやろうか、それとも買ってやろうか?ああ飼ってやろうかまでいったはず。
――なのに拒絶した挙句に、古傷のひとつを土産にくれた『あの女』だ。
抉れた左眼じゃないが首に今も疼く傷を残してくれたあの女、懐かしくも恨めしく、記憶が甦れば今此処で首を圧し折ってやりたくなる程に忘れられない女。
首まで覆い包むシャツを着ているのはその古傷を隠す為。
無意識に自分の首の辺りを擦りながら、あの時の深くを思いだす度に、首を擦るたびに湧きあがる殺気を押さえ込みながら、会いたかったあの女に返事をせねばと、笑みは再び苦笑いに似た笑みへと戻す。
「ああ、エリ……そうだエリノアだ。
あの金髪碧眼の男にいっつも尻ふってたエリノアだ。
なつかしいなぁー…アンタには土産も貰ってるしなぁ
会いたかったぜ?」
ダメだ無理だ笑ってしまう。
片手を親しい人間にするように、ポンッと女の肩にのせて。
――自分でも笑ってしまう程に低く冷たい声で、名前を呼び、答え合わせを。
憶えているだろうか。
冒険者としてパーティーを組み、執拗にその若い身体に手を出そうとして、その度に別の冒険者に阻まれ、それが積み重なった結果依頼を中断するトラブルになった男の事を。
そしてその時に致命傷に近しい傷を負わせた男の顔を。
そうその時の依頼は当然中断。
致命傷に近い傷を押えながら不愉快にもその場から逃げることしか出来なかった中々に愉快な思い出は今だって古傷を他者の目から隠すくらいに、心にも不名誉な古傷として残っているのだった。
■エリノア > 「そんな女に入れあげて、せっかくの稼ぎを素寒貧にする、男の方が馬鹿だって考え方もあるよ?」
何処まで行っても堂々巡りの、くだらない憎まれ口の応酬だ。
きっと振り仰いで睨み据えた男の顔は、―――――ああ、品が無い。
けれど冒険者だとか名乗る連中の中には、割りとよくあるタイプの顔だ。
隻眼だって珍しくもない、女を怒らせたいとしか思えない物言いも、この手の男には挨拶代わりみたいなものだろう。
だから女の方の記憶は、すぐには蘇らなかった、のだが。
「あんたが馬鹿な女に腰振らせて、稼ぎを溶かすタイプの男だってのは、
その台詞で充分わかったよ。
それならそれで構いやしないさ、娼館ならそこの角を曲がっ、て、―――…」
そこでふつりと言葉を切り、思い出した、なぞと洩らす男を前に、怪訝そうに眉を寄せて。
けれどもその男の口から、紛れもない、自身の名が零れ落ちれば。
流石に女の眼差しにも、男を探るような色が滲み始める。
この眼、この顔、この、笑いかた。
こちらの神経をいちいちざらつかせるような言い回し、背筋が粟立つような声。
そうだ、そう、この男には確かに会ったことがある。
会っただけではない、言葉を交わして、―――――違う、交わしたものは、もっと鋭い、
「――――――――――――― っ !」
思い出した。
その瞬間、男が肩に載せた手を振り解くべく、思い切り身を捩らせていた。
勢いのままに一歩、二歩、後退るように距離を取れれば更に良い。
首尾よく振り解けたとしても、上手くいかなかったとしても。
女の声は低く掠れ、眼差しはかつて、男の首に刃を突き立てた時と同じ、
冷ややかな怒りに暗く輝いていただろう。
「アタシは、あんたに会いたくなんかなかったね。
会うわけないと思ってたくらいだ、あの傷で、まさか永らえてるとは思わないじゃないか。
なんにしても、……あんたとアタシは、懐かしいね、なんていう間柄じゃないだろう。
それとも今度こそ、引導渡されたいのかい?」
大荷物を抱えている分、敏捷性という点でも圧倒的に不利だ。
けれどいざとなれば、荷物なんかぶちまけてしまっても構わない。
このあたりの店に、知り合いだって居るのだし―――――挑発はするけれど、まともにやり合う気は無かった。
■ヴァーゲスト > ああ、やっぱり『あの女』だ。
くだらない言葉の応酬なんぞより面白い事があるじゃないか。
稼ぎを溶かす?娼館?どうでもいい、そんな事よりも……だ。
笑って見せた、数秒前までの喉奥で堪えるような笑い方ではなく、――…ケラケラケラとそれはそれは愉快そうに、冷ややかな怒りの眼差しを向ける女を笑って見せたのだ。
「………イイ、凄くイイな、その眼だ。
オレの首にアンタのことを忘れないように深く深く思い出を刻んでくれた時のその眼だ。」
肩に乗せた筈の手は容易く女が身を捩じらせて外された。
掴んで握って砕いてやろうかと思ったのに外された。
いい、それがいい、容易く壊れてくれるなよと、思わずまた笑う。
通りであろうと、誰かに聞かれようと構わない。
こんな素晴らしい再会に昂ぶり逸る気持ちを感情を隠すのは失礼にあたる。
ガリ、ガリ、ガリ、と布の上から首を掻き毟る。
思い出すと古傷が熱くなる、あの時を思い出してまた疼く。
「そんな悲しい事をいうなよエリノア!
オレとアンタの仲はそんなに軽いものじゃないだろう。
此処にはあの男もいない、ああ、若しかしてゴブリンにでも刺されてくたばったか?
なあ仲良くしようじゃないか、一緒に酒でも飲もう。」
払いのけられて、女と己との距離が1歩2歩分は開いたか。
だからなんだ?この数年に比べたら小さい小さい。
笑みは愉悦に満ちた本当に嬉しそうな笑みになる。
笑い声も弾んでいる、弾んでいるが――女に向ける隻眼は女が向ける冷ややかで怒りに暗く輝いた瞳と同じように、冷たく暗く……獲物を前にした獣が如くギラギラと輝かせる。
そして踏み出した。
言葉を終えて直ぐに、一歩、そして次の刹那には空いた距離を詰めるように地面を蹴り、同時に腰のサイドの鞘に入れた小ぶりのナイフを引き抜き、その白刃を降り注ぐ月明りにヌラリと輝かせながら、女と肉薄すると同時にあの時刻んでくれた傷跡のように、女の首筋にその刃を当てようと。
女が抱える荷物がある為にうまい具合に当てるには少し難しいものがあったが……。
当然のことながら刃を滑らせるつもりは無い。
折角の出会い、折角の再開、夜だって長い。
たっぷりと昔話に花を咲かせるためにご同行願う為。
――場所はドコだって構わない。