2023/06/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」にユーゴさんが現れました。
■ユーゴ > 冒険者として魔物を狩る時とも、街歩きをする時とも異なるラフな格好で入り込むのは、数ある酒場の内の一つ。
冒険者ギルドが近くにあるからか、外から戻って来たのだろう一団が賑やかに酒盛りしているのを横目に、屋内へと足を進めた。
「――――一人なんだけど、大丈夫かな?」
半ば程まで足を進めた所で、店員なのだろう女性から「いらっしゃいませ!」と声がかかる。
人好きのする、穏やかな愛想の良い笑顔で問いかければ、明るい笑顔と同意の言葉が返り、奥のテーブル席へと案内された。
大きな酒樽の上に乗せられた丸い天板に、木製の簡素な椅子。
「混んで来たら相席になるかも。」だなんて告げられたが、人見知りをする性質でもない。
「問題ないよ。 とりあえず、エールと簡単につまめるものをお願い。」
席へと腰を落ち着けながら注文をすれば、また朗らかな声を上げて離れていくのを見送り。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」にレムニンさんが現れました。
■レムニン > いくらか経って、店へと入ったのは、魔術師用だろう杖を背負ったローブ姿の一人の少年。
子供に見えるが、冒険者などを生業としている年少の客は、多いというほどでもないが珍しいというわけでもない。
落ち着いた様子で堂々と入店し、長耳の青年と同じテーブルへと案内される。
「邪魔する」
簡潔に一言。
目が合えば、気だるそうに手を小さく挙げて、挨拶の代わりにするだろう。
酒を注文し、それが届くまでの間、頬杖をついて長耳を興味深げに眺める。
「エルフもこんなところで酒を飲むんだね」
■ユーゴ > 暫くもすれば運ばれてくる、木製のジョッキに並々注がれた冷えたエール。
それと、小皿に盛られたソーセージとくし切りになった皮付きのフライドポテト。
持って来てくれた店員から二つを受け取り、礼を告げて再び見送れば、鼻腔を擽る揚げ物の匂いと冷えた酒精の香りに頬が緩んでしまう。
短い食前の祈りを口にすれば、空腹を訴える胃に導かれる儘食べ始めた。
再び店員に声をかけられる頃には、酒も小皿も半分程減ってしまっているだろうか。
後にと並ぶ小柄な少年――に、見える相手と店員とを見遣って、問題ない、とばかり頷いた。
相手が席に座ったのを確認して、再び食べ始め――紡がれた台詞に、キョトン、とばかり双眸が開く。
それから、どこか愉快そうに表情を笑みに崩した。
「――――なんと、肉も食べる。」
嘯いて、フォークで刺した食べかけのソーセージへと噛り付いてみせよう。
口の中の物を飲み込めば、緩い挙動で視線が相手の上から下へと滑り。
「そう言う君は何を食べに来たのかな。」
■レムニン > 「エルフというものは菜食主義者だと思っていたが、違うのだね。
勉強になった」
さしたる感情も相貌に浮かべず。
ハーフエルフとエルフの区別はどうやらついていないらしい。
ユーゴの問いに応えるようなタイミングで、注文した酒──エールと、
少しばかりの野菜が浮かんだスープがやってくる。
相手とは対照に固形物が少ない。
「よく食べるな。おいしいか」
かすれた声で短く感想を言って、スープを一口啜る。
喉や唇の筋力も極力使いたくないと言った風情だった。
食べることすらも億劫なのかもしれない。
■ユーゴ > 「森で暮らすエルフなら、菜食主義のひとも多いと思うんだけどねえ。」
どうだろうか、とは、心の内に。
己自身、人間が多く住まう王都で生まれ育っているものだから、純然としたエルフと己のようなハーフエルフとの区別は曖昧だ。
丁度運ばれてくる、相手が頼んだのであろう食事を見れば、相槌めく頷きが一度落ちる。
「ソーセージもポテトも美味しいよ。
君の方は――――……それで足りそう?」
笑み面で答えた次の瞬間には、ほんのりと眉尻の下がった、何処となく心配気な顔へと変わっていた。
エールを頼んでいるのだから、それが飲める年齢なのだろうとは分かるが、己よりも随分と幼く見える相手。
育ち盛り、食べ盛り、と言うものではないのだろうか、などと要らぬ世話を利かせていた。
■レムニン > 「俗なんだね。色々ある、というわけだ。
僕はあまり人里には出ないので、街のエルフにはそう詳しくない。
ある意味では君よりもエルフらしいと言えるのかもしれない」
冗談で言っているのかもしれないが、にこりともしない。
足りそうか? と訊かれれば、皿ではなく──青年のほうを見た。
エールを一口含んで、考える素振り。
「足りていないかもしれないな」
食事を分けろ。とでも言いたげに、椅子を相手の方に寄せてくる。
■ユーゴ > 「なるほど? それじゃあ、街の外のエルフについてご教授願おうかな。」
双眸を瞬かせるも、吐息交じりの笑い声を逃がしては軽口を続けた。
相手の表情に変化は余り見えないが、相手なりの冗談なのだろうと思えば、だ。
続けられた言葉には、おや、と小さな声が一つ。
「それは良くない。 ちゃんと食べないと。」
寄せられる椅子にも嫌な顔は一つも見せない。
そもそも、己が言い出した事なのだから、嫌がる方がおかしいのだが。
相手が距離を縮めれば、小皿の上のソーセージとポテトが取りやすいよう、互いの間へと皿を寄せ。
■レムニン > 「ああ。森のエルフには会ったことがある。
気難しい連中だ。
会話できるようになるまでには酷く苦労したが、
出会ってからは僕の魔法を大きく育てる助けになってくれた……」
ちゃんと食べないと、という言に小さく頷くと。
「そうか。分けてくれるのだね」
小さな手で、皿の上の料理ではなく、青年の手を掴む。
ごく自然な動きにすぎて、周囲の客も不審には感じないほど。
あんと口を開いて、指を食む。
舌が、指の輪郭を確かめるように這う。
「ん……」
すぐに振り払うことができなければ。
“拒んではいけない、分けてやらねばならない”という意識が、どんどん強くなっていくだろう。
それが、この少年の魔法の力だった。
■ユーゴ > 気難しい、と評され、己の母親の事が脳裡に過る。
元、森のエルフであるらしい自身の母親ではあるが、気難しさのき”き”の字もない。
その性質の所為で、森深くでの暮らしに適応できなかったのかもしれないが――なるほど、色々ある、とはよく言ったものである。
――魔法を大きく育てる。
その言葉に、ほんの少しばかり引っ掛かりを覚えはするものの、先ずは胃を満たす事からか。
思考に引っ張られ、次いで己の口から出たのは「もちろん」だなんて言葉だった。
「よく食べて大きく――」
冗句めかした言葉が紡げたのはそこまでで。
取られた手が、相手の口許へ。
そのまま、指を食まれて呆気に取られたように淡い青色が見開かれる。
はつ、はつり。
瞳が幾度か瞬いて、困ったような表情へと変わった。
「……ええと。 あのね、俺の手を食べても、大きくはなれないと思うんだが――……。」
問答無用で引き抜いてしまえば良いものを、何故か手を引き抜けないでいる。
常日頃、丁寧にと心がけて口にする一人称すら忘れて、うっかり素になる衝撃、と言うのもあるのだろうが。
■レムニン > 「別に、大きくなりたいとは思わない」
たしなめる言葉にも口の動きを止める気配はない。
むしろより執拗に、腕を抱きしめて、熱い舌が指の間を舐り、硬い歯がなでつける。
ちゅ、ちゅ、と吸う。
何かをこそげ落とそう、とでも言うかのような動き。
「やはり、悪くないな。エルフの魔力は……」
精気や魔力が、唾液に溶けて少しずつ奪われているのが、わかるかもしれない。
これが続くならば、“拒んではいけない”という意識は、
気づかないうちに徐々に“もっと与えてあげたい”という意識に変わっていく。
そして、次第に“奪われることが気持ちよく”なる。
それは、性的な欲求、快楽として顕れるだろう。
「君がいい人でうれしい……」
一度それを半端に中断して、糸を引いて口を離す。
青年の傍、上目で見上げた。その表情は、やはり動かないまま。
■ユーゴ > 皮膚の上を滑る、ざらつく濡れた熱の感触も、擽るようになぞり上げる硬質な感触も、
未だ理解に至らぬ心地でいる。
それなのに、薄い皮膚ごと吸い立てられ、頭の奥を揺さ振られた気がした。
「魔力、って――……いや、ご飯を食べるんじゃ、」
意識も思考もはっきりしているはずなのに、何処か覚束ないような――徐々に、刮がれるような。
常時であれば、その台詞もあって、己の魔力が奪われている、と言うのにも気付けたのだろうが、
既に酒精が入り始め、気を抜いている時分だ。
そこに、相手の見目に油断していた、と言うのもあれば、意識の隙間も出来てしまう。
――これで、問題無いのでは。
そんな思考が過る程度には、意識の支配権、なんてものを相手に奪われつつあるのだろう。
濡れた熱の感触が離れるのを、何処か惜しみながら、相手の唇と己の指先との間に伝う銀糸を、
何処かぼんやりと眺め、
「……そう、……? ――――……もっと、食べる?」
ほんのりと、熱に浮かされたような声音で問い掛けては、濡れた指先が相手の唇を柔く撫で擦ろうと。