2023/04/17 のログ
セリカ > 言葉の選び方、発声の仕方、立ち姿、表情。
相手を『客』として捉え、品定めをする眼に、正直、さほど自信は無かった。
けれど、少なくとも―――――酒を過ごした様子は無く、この場で無理強いする気配も無く、
ならば、そう、それなりに。
金払いにも、恐らく、期待出来るだろう、などとも。
そんなことをこっそり考えながら、その思考を悟られぬよう、
女はごく微か、儀礼的な笑みを浮かべてみせ、

「おんなが、明け透けな物言いをするのを好まれる方も、
 いらっしゃるのでしょうけれど…… ここは、月が明るいですし。
 慎みは、忘れたくございませんもの、―――――… 」

けれど、目深にしていたフードを落とせば、マントの襟元は幾らかはだけ、
細い首筋、白い喉、鎖骨の窪みまでが露わに。
掻き合わせていた手を外したために、女が僅かに身じろげば、
それだけで袷の部分から、まろやかな谷間さえ覗く。

ぞくり、不意に肌が粟立つのを感じて、女は小さく息を詰めた。
それは男が明確に、女を、我が身を、夢の道連れと認めたことを、女の方でも悟ったために。
差し出された硬貨を前に、ゆっくりと一度瞬いてから、
女は桜色の口唇をそろりとひらき、

「どうぞ、お気遣いは無用に願います、ファルス様。
 夢の導き手は、数多取り揃えておりますから……選ばれるのは、そちらをじっくり吟味なさってからに。
 もし、それでも私をお選び下さるなら、………お代は、そのとき頂戴致します。
 私の名も、そのときのお楽しみに」

もちろん、硬貨一枚では済まないけれども。
右掌を相手の方へ向け、す、と差し出して固辞し。
それから身体の向きを変え、留めていた一歩を踏み出した。

向かう先は女の働く館、女たちが春を鬻ぐ場所。
男がそこでどの花を愛でるかは、男の心、ひとつである。
いずれにしても客を同伴した女には、幾許かの稼ぎが生じる筈で―――――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からセリカさんが去りました。
ファルスィーク > 己が身を吟味する視線には慣れている。
好奇、信頼、嫌悪、畏怖と様々に感情を含んだものを経験し、そのいずれもがちょっとした楽しみでもあった。
それは、どのような意味合いであれ己に感心を抱いたという証でもある為。

言葉遣いも粗野ではなく、教養を窺わせる選び方は、女性の性格などを物語るもの。
不意に醸し出す色気は、計算した物であるのか、そうでないのか…どちらにしても、女性の案内する娼館に滞在する事になるのは間違いなく。

「では、そのようにさせて頂こう。
どうやら、上質の娼館ではあるようだから、愉しみ方も期待は出来そうだ」

そんな言葉を返し案内されつままに赴いた先。
夢の導き手として選ぶのは、先程の指名した通りの女性であり…共にした分の報酬とは別に、個人的な上乗せを直に女性に手渡す事になりそうだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からファルスィークさんが去りました。