2023/02/23 のログ
■影時 > 「……食えるか? 無理なら無理くり食わなくてもいいからな?」
肉の一切れ、一かけらを食べるのか、食べないのか。
食べないならばそれはそれでいい。次第によっては人を呼んで、どうするかを考えよう。
そう思いつつ、猫の顔をジーっと見る。
これが美女少女であれば多少は絵にもなっただろう。
だが、哀しいかな。ここにいるのは、髭剃りが面倒でうっすらと無精髭が目立ち始めた男である。
地面に落とす――というのも、勿体ない。口をつけるか否かまでは見届けようか。そう思っていれば。
「ぉ。」
猫は問題ないと判断したらしく、さっと駆け寄っては一口で肉を飲み込み、すぐに離れてゆく。
せめて足にすり寄ったりなどすれば可愛げもあったが、そうもしないのは成程。猫だからであろう。
あの生き物はああいう生き物である。そうと分かっていれば、仕方ねぇなあと肩を竦めるだけで済む。
噛みついてきたり、引っ掻いたりなかっただけ僥倖と云えるものである。
「やっぱり飼い猫臭ぇよなぁ、お前。飼い主が居るなら宜しくとでも伝えておいてくれ」
それで小腹が満たされたのか。
長い尻尾をくねらせ背を向ける小さな影が途中足を止め、己の方を向いて、小さく鳴く。
挨拶かお礼のつもりであろうか? 否、どうだろうか。
猫の気はそれこそ猫くらいにしか知れぬものだ。肩を竦め、投げかける声を聴いたかどうかはわからない。
軽やかに走り去ってゆく影を見送れば、手にしたものを思い出したように齧る。
……ちょっと薄味だったかもしれない。
猫も食べるわけだ、と。そんな感慨が脳裏に過る。
■影時 > 「……出先まで香辛料持ち合わせる奴の気が多少は知れたかもしれねぇ、が」
これは食い足りなかったら、ギルドに隣接している食堂兼酒場を使ってネという言外の何か、だろうか。
そう思いつつ口を動かし、瓶をらっぱ飲みして流し込む。
物自体はそう多くはない。食べ終えてしまえば残る包み紙を丸め、最初に入っていた袋に放り込む。
そのうえで瓶を片手にしつつ、立ち上がろう。
事実、確かに食い足りない。追加で何か食べてから帰路につくくらいがちょうどいいだろう。
そう思いつつ、訓練場を後にする。とりあえず、もう少し味がついた肉を食いたい。そう思いながら――。
ご案内:「平民地区・冒険者ギルド」から影時さんが去りました。