2023/02/06 のログ
クィンス > 「ん~………」

おなかのあたりをさすりながら、クィンスは少しばかり困り顔。
小腹がすいた感じがする、しかもこの感じは―――…。

「いや、確かに別にそこまでそっちは必要はないんやけど…。」

まあ、やはりどこか悶々としてしまう感じはしてしまうもので。
とりあえずいつも以上にご飯を食べ、紛らわせてはいるものの、
そろそろ一人くらい、御馳走になってもいいかななんて思ってしまっている。

しかし、そんな危ない考えをこの王都でさらけ出そうものなら、
あっという間に騎士団のお世話になってしまうことは請け合いだろう。
なんといっても、自分は―――。

「………おや?」

なんて、考え事をしているさなかに足元に転がってくるミカン。
それを拾い上げて、皮に着いた砂利を振袖で払い落とす。

「はて……、どこのどなたさんが落としたんでっしゃろか…?」

アタリを見渡しながら、その落とし主を視線で探してみる。

マヨリカ > 「わぁぁ…待って下さいオレンジさん…!」

ぼんやりと歩いていたせいで転がる橙色の果実。
幸いにも、皮が固めの種類のそれは、煉瓦の小道に落ちてべしゃ、と潰れて悲惨な画になることはなかったけれど。
ころころ転がっていくそれを追いかけようとして、あわや人にぶつかりそうになり。
ぺこぺこと頭を下げて見送ったりと、そんな事をしている内にオレンジは遥か彼方…いや、3メートル先にあった。

「ひゃぁ…拾ってくださって…ありがとうございます…っ。」

黒髪が艶やかな女性が持っているのは、鮮やかな陽の色。
慌ててそちらへと駆け寄って。

クィンス > 拾い上げた、美しい橙色をした果実。
この時期はちょうど、これがよく出回るので商店などに行けば程よく見つかるだろう。
甘い匂いがするそれを手にアタリを見渡していたクィンスは、それの持ち主らしき人物を発見する。

「ん、かまへんよ。…そないに慌てんでも、別に盗ったりせえへんって」

なんて苦笑しながら、駆け寄ってくるマヨリカを待とうか。
さすがに人ごみの中で待つわけにもいかないので、少しだけ
人通りの少なそうな路地のほうに移動してから、オレンジを渡そうか。

「よかったわ、そないに転がらんで。
うちの足に当たったおかげやね。」

もしかしたら、オレンジに惚れられたんだろうか。
そんな冗談でも話しながら、オレンジを紙袋の中に押し込んであげようか。

マヨリカ > 橙色の果実の表面はつるりと磨かれたように。
暮れゆく夕陽に溶ける緋色の空と馴染んで、逢う魔が時――などといわれる頃合いの、うっすらと忍び寄る闇色に浮かび上がる。
仄かに甘い匂いのする果実を拾い上げた彼女へと近づけば、お辞儀して。
頭を下げた勢いで髪がふわりと広がって落ちる。

「盗るだなんてそんな…!
おねえさんが転んだりしなくて、よかったです。」

通り過ぎる人の波の中では邪魔になってしまうだろうか…
というのは、彼女が先に気づいてくれていたらしい。
薄暗がりの路地近く、差し出されたオレンジを受け取って。

「えっ…惚れ…っ、え…。
んん…おねえさんは、お蜜柑にもお持てになるんですね…」

冗談にぱちくりと瞳を見開いては彼女の瞳を見て。
しどろもどろになりつつも、彼女なら…と納得してしまった。

クィンス > 随分と手入れが行き届いている髪だ、と言うのは率直な感想だった。
風になびいたり、動かすたびに舞い上がるキメの細かい髪を
少しだけ羨ましそうに見て、笑みを浮かべながら、
オレンジを手渡したクィンスは喉を鳴らして、笑った。

「いやいや…、冗談やさかいに、本気にされたらちょっと困るわ。
それに、こないな格好しとるんやし、それは惚れたというよりも
珍しいから近寄ってきただけちゃうんかな?」


マグメールでは、あまり見かけることのない着物姿。
防寒として肩からストールを巻いているものの、それでも傍から見れば
寒そうな、という印象のある服装に見えるだろう。
それに、口調もこのあたりでは訛りがきつく、
イントネーションも少しおかしな感じになっているだろう。

「それとも…、惚れたのはお嬢ちゃんの方なんかな?
あかんよ、こないな妖しい女に惚れてしもうたら…。」

どないな目に会うか、分からんよ?

納得してしまったマヨリカに対していう言葉。
耳元で囁くその言葉は、別に警戒させようと思ってしたわけではない。
ただ、ちょっとだけ…からかうようなしぐさで近寄って、
そんな言葉を、少しだけ艶っぽく言ってみただけだ。

マヨリカ > 服装自体は高価なものでもなく、化粧っ気も最低限…
なのだが。
最近ちょっと懐事情に冬の北風が吹雪いているにしても、髪の手入れは頑張っているのは年頃の乙女心なのか、はたまた別の理由があるのか。
受け取りがてら、紙袋の頂点に押し込まれたオレンジと、艶やかに笑みを浮かべる彼女とを交互に見遣って。

「冗談…でしたか…。
そういえば、おねえさんの恰好、この辺りでは珍しい…んですよね…」

王都ではあまり見かけない着物だが、物珍しい視線でちらちらと見る事がなかったのは。
ぼんやりとした当人の気質故ではなく、逆に懐かしさを覚えるものだったから…と、気づいてから改めて、やや異質な装いへ心持ち重みのかった視線を投げ掛けなおして。
彼女にしてみれば物珍しさ故に見詰められたり眺められる事あれど、この類の意識を向けられることはそれこそ珍しいのではなかろうか。

「……ひゃんっ…!
わ、わ…惚れてなんてっ…いませ…ん…よ…」

首を角度を斜め上に少し持ち上げて丁度良い視線になる顔へと、近づいてくる影に気づいたのは間近に迫ってから。
耳元にかかる吐息に跳ね上がるほど肩を揺らして、髪までまたぶわり、と跳ね上がり。
折角拾ってくれたオレンジが朱色の顔してまた逃げていく前に紙袋をぎゅ、と…心臓と一緒に握りしめ。
顔は俯いているけれど、耳元はうっすら春の桜色。

クィンス > 「………ん?」

珍しさなどではない視線を感じるのは、さすがに気になってしまった。
この地方では珍しい服なので、そういった視線は慣れているけれども、
このように、どこか憂いを感じるような視線を向けられたことはほとんどない。

それゆえに、気になってしまった。

「どないしたん?
うちの格好、もしかしてお嬢ちゃん、見たことあるん?」

さっきの艶やかな笑みとは打って変わって、不思議そうな顔。
覗き込むように尋ねてみるものの、それが余計に
顔を近づけることになってしまう。

うつむき加減ではあれども、その耳は朱色に染まり。
からかいがいのある娘は好きだ、とばかりに笑みを深め、
カラカラと軽く笑って見せた。

「うちは別に惚れてもろてもええんやけどね?」

そんなひところは果たして、冗談なのかそれとも…。

「なあ、ところで嬢ちゃん…お名前は?
うちはクィンス、しがない旅人っちゅうやつやよ。」

マヨリカ > 「ぇぇと……はい。
あんまり、信じてもらえないかも…ですけれど。
わたし、結構遠いところから、風で飛ばされてきたみたいなので…。」

見たことがあるか、と言われれれば。
彼女の装いと全く同じものではないが、非常に似ているものには馴染みがあり。
漆のように艶やかで、ある処では射干玉と称される黒髪もまた、一種懐かしさを覚えるもの。
不思議そうな表情に、困ったようにしどろもどろで説明らしきものを。

屈みこまれる視線はより顔の位置を近くして。
間近に聞こえる声に、心臓の音が聞こえてしまいそうなのを心配してか。
更に胸の前に腕を抱き込むように。

「…む…むぅん…。違います、ってば…」

恥ずかし気に頬を染めつつ、からかわれている事だけは分かるのか必死に言い募る。

「―――あ、はい。
わたし、マヨリカ、っていいます。
クィンスさんは旅の途中なんですね…」

彼女の旅程が少し気になりながらも、名乗りを返して改めて再度お辞儀をひとつ。

「とと…。
そうでした、今日は急いで帰らないと、足の速い貴重な食材が逃げてしまいます…」

思い出して慌てるものの、それでは、と歩き出すには少し後ろ髪引かれるような気持で振り返り。
少しの逡巡ののち、オレンジのお礼に、お夕飯、いかがですか…?などと声がかけられる。
彼女の返事次第では、或いは岐路に並ぶ影法師がふたつになった…かも知れないが。
どちらにせよ、その後の事を知るのは当人たちのみ。

クィンス > 風で飛ばされてきたというセリフには、一瞬だけ顔が???という感じになったが、
恩師に教えてもらったことがある、この世界では不思議なことは
決して怒らないことはないのだ、と。

「そうなんや…、それはまた、えらい難儀なことになったな…。」

しかも、その話しぶりからして、帰ろうにも帰れないのだろう。
自身の故郷というわけではないにしろ、帰れないのはつらかろう。

「ほんまに…?」

くすくす、と笑いながら覗き込むようなしぐさから体を起こす。
顔を赤くするマヨリカから少しだけ身体を離して、一歩下がる。

しかし、急いで帰らないとという理由にはすぐに納得した。
確かに、足の速いものが腐って、ご飯が美味しくなくなってしまうのは
いただけない。
食べる事とはつまり、生きることと同じなのだから。

「そらあかんわ、はよ帰らなあかんね。
…ン、うち、一緒にご飯食べてもええの?」

ただ、尋ねられたその質問に対しては、ほぼ二つ返事でイエスと返す。
袖で口元を隠し、にこやかに笑って見せたその陰二つ、おそらく街中へと
消えていくのだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマヨリカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクィンスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にセレシャさんが現れました。
セレシャ > 【PL:昨夜ロールプレイ途中で、此方のミスで色々とログを汚してしまいましたことを、お詫びいたします、PC名簿で調べるとわかるとおもいますが、アルノイドも当方PCです、ログへのおかしな挙動は此方の操作ミスが原因です、申し訳ありませんでした。】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からセレシャさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にレベリオさんが現れました。
レベリオ > 風も季節にしては少し暖かい、月の綺麗な夜だった。
昼間はこの時期に相応しく華やいだ雰囲気だった広場も
こんな時間ともなれば屋台の跡など残して静かなものだ。
残念ながら、祝い事を本来の意味で楽しむ縁もなければ、趣味もない。
けれど、この季節は、色々と――嫌いじゃない。

白髪の男は、広場のベンチに腰を下ろしていた。
右手には火のついた細い葉巻。好みは分かれるが、咆哮漂わせるそれ。
時折口元に運ぶ紫煙をつまみに、右側に置いたのは陶器のグラス。
ここに来る途中で購入した香辛料を効かせたホットワインだ。

「佳い夜だね…もう少し暖かければ言うことないんだが。」

誰かに語り掛けるような口調だが、独り言。
知己の下級貴族のささやかな催し物の帰りだ。
残念ながら食指を動かされるようなこともなく、彼の自慢話を延々と聞かされるだけの会合だったが。
高い酒でも、一緒に飲む者によっては安酒にも劣る。
だからここで、一人、ささやかに飲み直している。
わざわざ、人通りの途絶えた場所で、こんな場違いなことをしている理由は
そんな風に言語化することができるだろう。

レベリオ > そんな些細な深夜の酒盛り。
乾杯、と差し出したグラス。それを飲み干せば
再び夜の闇の中に姿は消えていって――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からレベリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にランバルディアさんが現れました。
ランバルディア > 香ばしい焼き菓子やパンの匂いが鼻を擽る通り。
活気良く呼び込みする店も多い。
片腕にはもうパンパンの紙袋を抱えているのだが、その男はまだ買い足すつもりのようで。

「……んー、此方も美味そうだな」

口元に手を当て悩む姿と白衣を合わせ見ると深刻な病のカルテでも見ているようだが。
目の前にあるのは、菓子類のショーウィンドウである。

少し身を屈めたところ、紙袋から甘く香る菓子パンが零れ落ちそうになって――。