2023/01/17 のログ
ご案内:「冒険者ギルド 真昼の訓練場」にクロナさんが現れました。
クロナ > 年明けのお祭り騒ぎも過ぎ去って、街人達が新たな日常へと戻りはじめたそんなある日の午後、冒険者ギルドの訓練所には常と異なる雰囲気―――戸惑いにも似た空気が漂っていた。

その中心に佇むのはモノトーンの小躯。

冬風にさらさらと遊ばせる長髪は艶やかな黒。
透明感のある肌は、まだ誰にも踏み荒らされていない新雪の如き白。
細身の肢体は大の大人の胸元くらいしかない背丈が示す通り未成熟で、ケープの襟から覗く華奢な鎖骨や、抱きしめれば折れてしまいそうな程に細い腰、肉感には乏しくとも繊細な美しさを感じさせる脚線美などは妖精めいて儚げな印象を見る者に与えていた。
そんな少女の顔立ちが、その幼さを加味してなお近寄りがたいまでに整っているというのも、場違いなちびっ子が場違いなままに放置されている理由の一端なのだろう。

しかし、一番の理由としては、切れ長の双眸が灯す真紅の輝きや、黒艶髪の側頭から伸び出でて天を衝く暗褐色の捻れ角、そして小さなお尻をふんわり覆うキャミドレスの裾からにょろんと伸びた悪魔尾といった禍々しいパーツが、少女の美をアヤカシめいて危険なナニかへと変じさせているからではなかろうか。

――――あと、なんか寝起きめいてぼーーーっとしていて何考えてるかさっぱり分からない表情も、迂闊な声掛けを阻害している要因の一つだと思う。

クロナ > そんなチビが不意に動いた。
じゃり…と訓練場の土を踏む細脚の先が肩幅くらいの間隔で足を踏み出し構えを取る。
甲を上にして緩く開いた前手は腰の辺りに、後手は顎のあたりに据えたカンフースタイルだ。
ちびっ子のごっこ遊びめいて失笑を誘う格好付けのスタンスなれど、目の肥えた者程驚きを覚える事となるだろう。
何故ならば、体幹に崩れの無い、程よく緩んだその構えは、どの様な攻撃にも即応し、反撃する事が叶うだけの拳理があったからだ。

一部からは微笑ましげな、一部からは馬鹿にした、そして一部からは驚愕の滲んだ視線を向けられる中

「――――ほっ、とや、たぁあ」

非常に愛らしい声音が裂帛とは程遠い、何とも気の抜ける声と共に蹴りを放った。
ローキックから蹴り足を戻さぬままに膝下を跳ね上げ放つ上段回し。
振り抜いた蹴り足の勢いを乗せてくるりと旋転し、軸足を入れ替えての後ろ回し蹴り。
美しいフォルムだった。
力の入りと抜きにも文句のつけようが無い。
気の練りこそまだまだ甘いものの、そもそもがこの年にして練気にまで到達しているというのがとんでもない話である。

―――が、ギャラリーの目のほとんどは、晒す事をなんとも思っていない、どころか、むしろ見せびらかしに来たのではないかと思えるくらいに堂々たるパンチラに奪われていた。
ちょっと風に吹かれればあっさりとパンツを晒してしまいそうなミニスカ丈は、ローキックでさえ危うげなのだから、己が頭部よりも更に高い位置を蹴るハイキックなど放ってしまえば不自然な陽光などに遮られぬ限りパンチラ必至である。
その上、晒されたのが年相応の子供パンツなどではなく、オーガンジーのレースも淫靡なTバック紐パンなのだから、ロリコンの気など持ち合わせていないはずの男達ですら思わず『うぉ…っ!?』とか言ってしまうのもむべなるかな。

クロナ > 蹴り足はまだ降ろさない。
ペタ胸に蹴り足の膝をくっつけるように折りたたみ、軸足をじゃっと滑らせ半歩進めば

「ややややややや…っ」

ぱぱぱぱぱぱぱっと怒涛の連続横蹴り。
鳩尾、膝、股間、顎、眉間、肩、脇腹。
いくつもの死線を潜り抜けたベテラン冒険者ならいざ知らず、そこいらのチンピラでは防御すらままならぬだろうキックスピードが10に近い蹴撃を放った後

「―――――……秘技」

くぉぉぉお…っ!
ちびっ子の足先に闇が渦巻く闇が集中する。

「深闇連閃・天翔脚」

どっ、ぶぉっ、ばっ、しゅばばばっ、どっぱぁぁああん……!
ぎゅっと縮こまらせた小躯を跳ねさせつつの蹴り上げを起点とし、上段回し、後ろ回しを2セットぎゅるんぎゅるん回りながら中空で竜巻の如く放った後、足先に纏わせた闇を砲撃の如く天に蹴り放つソバットをキメ――――着地。
『おぉ…っ? おおぉぉおぉお……っ!』
思わずといった感じで拍手が上がる。
受けるクロナは涼しい顔―――というか、相変わらず何を考えているかさっぱり分からない茫洋たる表情のまま構えを解く。
一粒浮いた汗をぐいっと長手袋の甲で拭ってやり遂げた感のある吐息を零し―――――チビは帰った。

クロナと同じくらいのタイミングで訓練所入りしたルーキーの準備運動すらまだ終わっていない10分足らずの出来事なので、ギャラリー的には『あいつ、何しに来たんだ……』といった感覚なのだけども、館に戻った夕食時、妹に対してドヤ顔(無表情)で語るクロナは『今日はむちゃくちゃくんれんした』と言ってのけたのだとか。

ご案内:「冒険者ギルド 真昼の訓練場」からクロナさんが去りました。