2023/01/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にサマエルさんが現れました。
■サマエル > 平民地区の通りにその少年は歩いていた。
ブランドの癖っ毛は風に揺られて柔らかな匂いを出している。
幼さもあるが、元々の顔がどちらかというと女性的である彼が歩けば振り返る人は多い。
その端正な顔は、常に目が閉じられている。
しかし不思議と彼はしっかりと歩いていた。
「どうしようかな…」
子どもらしい変声期も来ていない高い声で少年は呟く。
今日は学校が休みの日だから、図書館に行っていた。
そこで魔法について勉強していたが、外を見れば雲行きが怪しくなっていた。
早めに帰ろうと図書館を出たがすでに軽く降り始めていて。
どこかに雨宿りを取れる場所がないか少年は探していた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にサマエルさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からサマエルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリサさんが現れました。
■リサ > 王都にやって来て宿を見つけギルドに登録しようやく始まった生活。
早速何か依頼を受けてみようと冒険者ギルドへと足を運ぶ。
しかし登録したところの新人に受ける事の出来る依頼など本当に少し。
街中でのお使いや近場での採取依頼が受けれる精々の物であり。
「それでも私には十分すぎるのですけど…」
ただ受けるにあたって問題はこの街や周辺の地形を把握していない事。
なので受けるのは難しく、薬草の種類ならばまだ判るので採取依頼が何とか受けれるかなと言ったもの。
もし自分と同じような新人でも居れば声をかけてお願いするのもいいかもしれない。
そんな事を考えながらも依頼とギルド内を交互に眺めて。
■リサ > 「すみません、他に依頼はないですか?」
しばらく依頼に悩み、自分のように依頼に迷う新人らしい冒険者でも現れないか止まっては見た。
しかしそんな人影はなく、仕方なく受付に向かえば他にもう少し、他所から来たものでも受けやすい依頼がないかと問いかける。
しかし帰ってきた答えは今出ているのが全部という事。
ただどの依頼も必要ならば地図を用意してくれると言われ。
「地図があるなら…少し考えてみますね」
そういえば受付を離れてもう一度依頼の掲示板の前にと戻って。
■リサ > そうしていればやっと新人に見える冒険者を見つけ。
思い切って声をかけ、共に依頼に出る事となって。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリサさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にサマエルさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴェルニールさんが現れました。
■ヴェルニール > 宵の帳も落ちきらぬ頃合いの街中。
酒場――謂わば宿屋も食事処も、何であれば旅回りの楽隊などの舞台も兼ねているといった手合いの、よくある大箱の施設の一角。
昼間にカフェとして混み合う事は稀だが、新年の祝いで露店を冷やかしに出る者、一般公開されているという王城に物見遊山で出かける者などでそれなりに通りは賑やか。
…尤も、昼夜問わずに飲んでいる一部なども存在はするが。
そんな混沌としながらも、変わらぬ様相を見せる通りを、窓越しに見遣り。
ランプの明かりが灯り始めた室内の陰りに、傾き始めた日が差す奥まったテーブルで、広げたカードを一枚、指先で捲り。
手遊びのように繰りながら、ふと、持ち上げた指先に一枚を挟んで。
「―――…あら。
今年は、珍しい出逢いでもあるのかしら…」
どんな結果が出たのか、唇の端を持ち上げ。
傍らに置いた濃紅色が沈むグラスを手元へと引き寄せ、口元へと傾けて。
■サマエル > 酒場の入口を、一人の少年が横切る。
その喧騒のある通りにいるにはあまりにも似つかわしくないほど幼い。
成人前で酒を飲むぐらいはまぁ、ままあることではある。
そしてこのぐらいの年齢の少年ならこういう祭りのような場所に惹かれるのもわかる。
しかしそこそこ仕立てのいい服に身を包んだその少年が来るにはあまりにも似つかわしくない。
とはいっても、新年の無礼講な日でありそんなこともあるだろうと他の者らは考えるか無視する。
子供にかまっているよりも、今はこのバカ騒ぎを楽しむ方が大事なのだろう。
そんな少年が、一つの施設へと真っすぐに向かって、足を止める。
意を決したように少年はその施設の扉を叩き。
「失礼します」
と、その中へと緊張した面持ちで入る。
■ヴェルニール > 片翼の白い翼持つ乙女が天球儀に腰を下ろし、弦の切れた竪琴を爪弾くカードを指先でくるくると弄び。
…他にも開かれたカードは幾つかあるようだが。
妙に気にかかるのか、或いは何かの何かの予兆か予感か。
グラスを置いたところで、店の扉が開かれる気配に視線だけを動かして。
この店に訪れるには少々浮いた視線を投げかけられもするだろうが、店主も慣れたもので気にしていないらしい。
緊張を孕んだ面持ちと鈴のような声が愛らしく響くのを拾う。
果てどこぞの貴族のお嬢様のお忍びか、或いは表立って来る態々の用向きでもあるのだろうか――と、目を細めてみて。
■サマエル > こつこつ、と少年の靴の音がその中に響き渡る。
見られた。そう少年は不思議と感じて、店の奥へと向かう。
恐れている、というよりはこうい場所に慣れていないのだろう。
目を閉じたまま、何度も周囲をきょろきょろと見渡している。
その奥にいる店主にようやく気づいて、少し離れた場所で立ったまま。
「あ、あの、占いをしているというお話を聞いてここに来ました。
新年に占うという文化があると聞いたので、ここでしてもらおうと……」
ゆっくりとその変声期を迎えていない。見た目相応の高い声がその中に響く。
細められたその目に、少年はドキリと不思議な感覚を覚えた。
■ヴェルニール > 初めは単なる酒場への興味か、とも思ったものの。
足取りは意外に確りとしているようで。
不躾にならない程度には相手を観察したまま、彼の歩が此方へと向くのに気づけば、顎の下に絡めた両手を敷いて肘をついたまま、笑みを形作り。
「あら、お可愛らしいお嬢さ――…失礼、小さな紳士どの。
雅な宴の場ではありませんけれど、如何様にされましたのかしら。
等と、単刀直入に訊くのも野暮なものですわね。
…ふふ?あたくしを訪ねてきて下さったのかしら。それはまた酔狂な。」
どうぞ、とテーブルの向かい、ではなく角を挟んで斜め横の位置の椅子を勧めて。
意図してなのか、偶々その席がそうなのか、テーブルの向かいは窓のある壁なので、あいている席はそこしかない。
カードをひとまとめに重ねながらゆるりと首を傾け。
「洋の東西を問わず、卜占、祈祷の類は年明けて、とよく云いますけれど…
気にかかる事でも?
或いは、貴方の望みに触れられれば良いのですけれど。」
■サマエル > 少年は促されたその席へと歩みを進めて、座る。
大人用の椅子には少年は少々高いようで、ふらふらと地面につかない足が揺れていた。
そんな可愛らしい少年の姿を見せつつも少年は口を開いて。
「そうですね……。仕事運、恋愛運、あるいは強者運……と言いますか。
とにかく、こういう占いをしてもらうのは初めてだからよくわからないんです。
でも、景気づけとか縁起にはいいという話を聞いて、せっかくだからとこうして来たんです」
そう説明しながら、少年は目を閉じたまま彼女へと顔を向ける。
その顔と声には半信半疑と、興味や好奇心が混ざっているといったところだろうか。
「正直、最初はだれでもよかったんですけど。いくつかその場所と人を聞いて。
不思議とここに惹かれてしまったんですよね。まぁ、なのでお願いします。
……僕が、ちゃんと目的に向かって歩き続けられているかどうか。それを知りたいんです」
そう少年は伝えて、真っ直ぐな視線を閉じた瞼から向ける。
■ヴェルニール > 酒場の椅子は基本的には成人程度の背丈の者を想定しているのだろう。
少年には少々高かったのか、爪先立ちするような形になるようで。
丈の短い衣服の裾から覗く白いすべらかな太腿が腰を下ろせば、ゆらゆらと足が揺れる。
ぱちり、とヴェールの影越しに瞳を瞬いた仕草はしかし、彼から見えたのかどうか。
「ふふ…ええ。
あたくしが言うのも何ですけれど、占いなど、結果に拘るものではありませんわ。
自らの運向きも、進む道も、既に決めていらっしゃる方には不要ですもの。
選ぶものに迷ったとて、背を押すのは当人の心持ちですわ。」
ひとつの山にしたカードを重ね。
一纏めにしては、手の中で合わせて切っていく。
「…名乗り遅れましたわね。
あたくし、ヴェルニール、と申しますの。
流れる旅の気儘に、手慰みに占いなどしております故、
どちらの魚に鰭がついたのかは分かりませんけれど――
ひととき、貴方の時間に重なった事を嬉しく思いますわ。」
細いようでいて、意外に節ばった指先がカードを広げる。
中心を相手に向け、くるり、と半円形、扇のような形に滑らせて。
お好きなものをどうぞ、と目線で促し。
■サマエル > 彼女の視線が自分へと向いている。果たしてそれがどんな意味を持つか。
そして、その瞳を向ける彼女がどういう仕草をしているのか。そこまでを見ることは出来ず。
ただ、不思議な胸の高鳴りを覚えながら、その足先が揺れて。
「結果に拘るものではない、ですか?しかし……。
……すでに決めている者には、不要……」
オウム返しに、その伝えられた言葉について考える。
一番大事なのは自分の心、そして自分自身の道を歩くのを決めるのは、自分自身でもある。
それは他人が決めることでも、他人に決められるものでもない。
すとん、とその言葉が胸に落ちてくるが……。
「あっ……ヴェルニールさん、ですか。素敵な名前ですね……。
僕はサマエルと言います。……は、はい。よろしくお願いします」
丁寧に、そして醸し出すミステリアスな彼女の雰囲気に圧倒される。
そんな彼女が広げた何枚ものカードが、目前に展開されて。
一体どうやればそんなに滑らかに展開できるのだろうかと一瞬、子供らしく顔が輝いた。
驚きと輝きはそのまま、彼女の促しに気付いて、一枚。一番左のカードを抜く。
「……これで、いいですか?」
そう不安そうに言いながら、手に取ったカードをめくることなく彼女に渡す。
いつの間にかまた緊張してしまったのか、少年はごくりと固唾を飲み込み。
彼女のヴェールの下から告げられる結果を待つ。
■ヴェルニール > 「…ふふ。
先程仰いましたでしょう?景気付け――と。
選び取りたいものがあって、心を決めている方はそういう表現をされるものですわ。」
少年の瞳がこちらに向かって開けられることはなかったが。
薄っすらと笑みを向ける度、こちらを意識するような気配が伝わってくるから、目を閉じていても視える種の者なのか、視覚以外の感覚で捉えているのだろう、と。
そう飲み込みつつ、口調は自然と楽し気なものへと。
「まぁ、お上手ですわね。
サマエル――様、と、敬称をお付けした方が宜しいかしら。
非公式で、という事でしたら、ただ、お名前のみでお呼びしますわ。
あたくしの事もご自由にどうぞ。
エル、ナイル…愛称の類は随分とあるものですから。」
貴族の子弟か、いずこのやんごとないご身分か。
仔細を知っている訳ではなさそうだが、態々自らで足を運んでいるのだから無礼にはあたらないだろう、と気負った風でもなく。
一般的には呼び辛いであろう名乗り故、此方もさして気にはならない様子。
カードを繰る指先は手慣れたもので。
しかし、彼の見目相応な表情に、瞼の下の瞳が輝いたかのように錯覚するほどには、驚きをのせた仕草が可愛らしく見えて。
知らず口元を指先で多い、柔らかく笑む。
彼が選んだカードを表側へと返す前に、視線を動かして。
受け取ると、それを両手の間に挟んで。
「新たな芽吹きの季節の瑞兆は――さて。
ひとの欲する望みは数あれど、心向きが風向きを決めるものですわ。
これを御守りの代わりにどうぞ。」
一枚の御神籤を指の間に絡めて。
祈祷するように両目を閉じれば、彼の片手を取ろうと手をひき。
表を返すことなく、カードを手渡して。
■サマエル > 「ふむふむ……そういうものですか。
じゃあ、もう何を手にしたいか、そうすることを決めている人にとっては……。
あくまで本人にとって、それに関しての補強とか、そういう感覚になるんですかね」
真剣に彼女の話に耳を傾けて、しっかりと考える。
少年はたとえ与太話や冗談でもそれを真面目に受け取ってしまうようであり、彼女の話にもその意味や真意を考える。
例えそれが中身のない話だったとしても、少年は考えてしまうのだろうか。
「サマエルのまま、でいいですよ?
僕は、少なくとも今は何もしていないですし、成し遂げる事も出来ていませんから。
だから今はただのサマエル。そう呼んでくださればと思います。
……はい、じゃあそうですね……ヴェルニールさん、ですから……。
じゃあ、ヴェルさんと呼ばせてください」
果たして彼女の名前にどんな意味が込められているのか。
あるいは、その名前は本名なのかどうかも少年には判断がつかない。
ただ、本人は名前を呼ばれるのを嫌っている様子もないのなら、それでいいのだろう。
その彼女が、自分について考えているなどと、少年は欠片も思っていなかった。
「……」
じっ、と彼女のヴェールの下の唇から紡がれた結果を聞いて。
相変わらず目は閉じているというのに、少年はしっかりと彼女を見据えているように感じる。
真剣な顔で、語られた言葉について考えようとしていたら。
「んっ……」
片手を彼女に取られれば、少し驚いたような少年の吐息が聞こえただろうか。
その手に触れた瞬間、少年はまた胸がどきり、と高鳴った気がした。
少年の手は小さく、そして柔らかい。子供らしいすべらかで白い手指だ。
彼女の綺麗な手に触れて、握らされたカードと御神籤を、しっかりと掴む。
「あ、ありがとう、ございます。……大事にさせていただきますね」
握ったそれを、自らの胸に置いて、祈るように俯いて。
少しすれば、少年は笑みを浮かべて顔を上げる。
「あの、お代とかはいくらですか?もちろん、ちゃんと支払いますから教えてください!」
■ヴェルニール > 「占いにしろ、祈祷にしろ。
それは手段であって、目的は人それぞれでございましょう?
得るものがあるのでしたら、どういった趣でも構わないと思っておりますの。」
果たして占いというよりは、正確には人読みであったり、言祝ぎの類に近いのだろうけれど。
煙に巻くつもりで言っていると受け取られるのかは、人によりけり。
目の前の純朴そうに映る少年は、きっと深読みしてくれるのだろう、と思っているようで。
「…では、サマエル。
貴方の心を決めるのに、今の結果では足りなかったかしら?
遥か遠い東国の新年の占いなどでは、未だ分からず…などと云った結果も混ぜられているようでしてよ。
大きな望みほど遥か遠くに見える山のように聳えましょうけれど。
存外にひとの一歩では近づくほどに山が見えづらくなるものですわ。」
彼によって新たな呼び名を付けられれば、擽ったそうに肩を揺らして。
くすくすと笑みつつ、ヴェールの端を持ち上げる。
彼が拾ったカードの表面の絵柄は、見えずとも知っているのか、知らないままに告げているのか。
もしも表を返せば、満天の星空の下、湖に水瓶を傾ける白い兎が描かれているのだが。
「お代は…そうですわねぇ…
それでは、サマエルの時間を一刻ほど、分けて頂こうかしら。
貴方の望みには届かなくとも、ささやかな…
小さく灯った欲を見てみたいものですわ。」
触れた少年の手は、見た目に違わず柔らかく、ふっくらとした厚みがあり。
その温かな手に滑らされる指先は、ひとにしては少々低めの体温。
ひやりとした質感で、指の関節を絡めるようにして薄い皮膚が触れ合う心地を楽しむように。
指を離してからも、開かれていない瞼のその下を見詰めるように、緑色の水面が揺らぎ。
果たして彼がどう受け取るのだろうか、と楽しむような心持ちで、また彼へと指先を伸ばしては、顎を掬うように持ち上げようと。
■サマエル > 「確かに、そうですね……。どれも、それそのものを目的にしているわけではないですし。
ただ、その結果を見てどうするかを決める材料の一つにするだけにすぎませんからね。
そう考えれば納得です」
うんうんと頷きながら彼女の言葉に少年は納得する様子を見せる。
何をするにしても、しないにしても判断を委ねるというのも、それまでを考えたが故。
なら結局のところ、こういう占いも何かの迷いを消し去る為でしかないのかもしれない。
「いえ、大丈夫です。最初はただの縁起のつもりでしたが、これで今年も頑張れる気がします。
まぁ、元から頑張るのは決めていたのですが……ヴェルさんのおかげで決心が強くなったと思います。
例えそれが曖昧な結果だったとしても僕はこの結論に変わらなかったかもしれません。
それでも、不安を少しでも消し去りたかったのが本音でしたから」
ちょっと恥ずかしそうに、目前の彼女の顔を見上げて。
ヴェールの端から僅かに見えた彼女の素顔に、思わず気恥ずかしさから俯く。
彼には、カードの内側は捲らない限りは見えない。しかし今捲る気にはなれなかった。
お守りとして大事に、常に身に付けておこうと。そう軽く握って。
「僕の時間を……ですか?それでいいなら、構いませんが……」
そこまで話したところで、俯いていた少年の顎に彼女の指先が当たって。
そのまま、彼女の指の力に従うように少年の顔が、彼女の目に向けられる。
ナイルグリーンの細く開かれた目が、まるで自身の内面すら覗こうとしているように感じられて。
女顔ながらも不思議と色気すらあるような少年の顔は恥ずかしそうに赤くなり始めている。
何を話そうか、話すべきかもわからないほど今の状態は少年にとっては衝撃的で。
もごもご、と少年は口を動かしてなんとか言葉を紡ぎ出す。
「……じゃあ、その……お夕飯でも一緒に……お酒も一緒に飲みながら、どうですか?」
■ヴェルニール > 彼が色々思惑を巡らせる様子も、見ていて楽しいのか。
眩しいような微笑ましいような面持ちが次第に、どこかねっとりと絡みつくように少年の滑らかな白肌を舐めて。
その視線に妙な心地を覚える頃には、また何でもないような顔をして笑みを浮かべ直すのだろうけれど。
「ふふ…それは良うございましたわ。
あたくしがお力添えできる事は限られておりましょうけれど。
言葉以外に要り用があれば、喜んで参りますわ。
こうしてお会いしたのも何かの縁ですもの。」
それこそ、彼が初めに胸の内に抱いていたような、少しの興味と、好奇心。
何か心を惹かれるものがあったのか、気紛れか。
心の内に揺れる漣を感じつつ、この場以外でも縁が続く事を望むような言葉を口にして。
「ええ、美味しいお酒でも頂きながら、是非。
先日、口当たりがとても甘やかな果実酒を頂きましたのよ。
きっと気に入ると思いますわ。」
伸ばした指先が避けられる事なく、顎を掬い取れば。
その先で動揺も、面映さも映した佇まいの少年が頬を染めているのが見え。
小動物のように身動ぎしながら言葉を紡ぐ様に、お酒よりも美味しそうなものを見る目線を注ぎつつ。
カードを一纏めにして胸元に仕舞い、立ち上がれば、片手を差し出して彼が椅子から降りるのを待ち。
上階に取っているらしい部屋へ誘うように――
■サマエル > 自身の肌に、一瞬蛇が這っているのではないかという感覚が走った気がした。
しかしそれはすぐに勘違いだと自分に言い聞かせて、彼女の笑みを見る。
「いえいえ、僕にとっては十分ですよ。
本当に、僅かなことかもしれませんが僕には十分すぎますから。
……はい、また何か御用とか、相談があればよろしくお願いしますね」
にこにこと、そう素直な気持ちを彼女に伝える。
こうして何らかの、決断の形を教えてくれただけで少年には十分だった。
しかし彼女が今後とも自分との縁を大事にしてくれているつもりなのだろう言葉には嬉しそうにはにかむ。
初対面でこうして親切にしてもらえるとは思わなかったがゆえに。
「果実酒ですか?いいですね!甘いお酒なら僕も少しは飲めますよ。
ちょっと、辛口のお酒とか、ビールはまだ苦手なんですが……」
彼女の視線からじっとりとしたものを少年は感じたが、すぐに誘いを受けてくれて気をよくする。
カードを胸元にしまうという仕草に一瞬少年は目を奪われたが。
すぐに自身へと手を伸ばされたのを見て、机に手を置いて足を床につけたあと
その手を少年は迷いなく握る。―――どうして、食事や酒を摂るのに
彼女の部屋に誘われるのかを、考えることもなく。ただこれからの楽しみに想いを馳せて……。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴェルニールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からサマエルさんが去りました。