2022/11/25 のログ
ご案内:「平民地区 遊具の無い簡素な公園」にグラスシエルさんが現れました。
グラスシエル > オイル式の街灯が一つ、3~4人がけのベンチが2つ
あとは赤い煉瓦に囲まれた花壇と植え込み、それに少々の芝生

たったそれだけの公園だ。不良やゴロツキのたまり場になるには少々せまく、何より寒い。
そんな誰もいないはずの公園のベンチに足をガニ股にひらき、背もたれにだらしなく背を預けて空を見上げてる少年がいる。
まだ若い。硬く分厚そうな外套と軍服のせいで体格まではわからないが、顔立ちもやや鋭い。
なにより外套の下にうつされる瞳はぎらりと光るような人相の悪さだ。

――別ににらみつけてるわけではないが目付きがわるい、というより怖いと良くいわれた事もある。
天使の仲間や上官にも"いわれのない言いかがり"をつけられた時にはその相手の評価通りに殴りつけてやった。
天使とはいえムカつくものはムカつくし、天使がきれいであるべきというならばそのような言葉を吐かないだろう。

とはいえそんな目つきだけであれこれいう奴なんか実際はそんなに多くない。多くなかろうが年に1回だろうがそれは相手を怒らせるものだが、ともかく

「…降りろよ」

少年の膝を座布団にして丸まっている茶色の野良猫のように、暖が取れれば顔も目つきもその声も気にしないのもいるのだ。少年からしたら投げ飛ばしたいが。
ただ、この公園の住民である野良猫は知っている。
この少年は追い払わないしじっとしていて無駄に触らないし、てからは与えなくてもこのベンチの下にそっと魚の切身や肉のこまぎれをおいてくれてるのだ。
猫を無駄に構わず安全な相手にはとことん図太くするのが野良猫の正しい生き方だ。

「…どけよ。重いんだよデブ猫」

野良猫は耳も向けずにグルグルグルとごきげんそうに喉を鳴らしている。結構うるさい。
こんなに小さな猫のどこからこんな音が鳴るのか、と首の後ろをつまむ。耳のうしろをカリカリかいてやって

「重いんだよデブ猫。ここで寝るんだからどっかいけよ」

グラスシエル > 「そこは俺の膝でお前の寝るとこじゃねえんだ。 皮剥いで魚の餌にしちまうぞ。」

座ったまま膝に乗られてるとベンチに横にもなれない。抱きかかえて地面に下ろせばいいだけ――なのだが、なんだかんだで魔族や堕天使以外にはそこそこに甘いのだ。 もちろんここに命の危険があればこの猫を見殺しにもしようが、ここは平和な王国の公園。

ともなれば――当然少年はこの無礼な野良猫を膝の上に放置するしかない。外套を正面からかけ背もたれにこれでもかとよりかかる。 野良猫からしたら座布団どころか安全な掛け布団つきだ。さぞかし居心地は良いだろう。 安心しきったように丸まり、眠る準備をしている。

「っち、クソが。こいつらすぐに温かい場所みつけやがる。」

食ってやろか、と硬い外套の上からもにゅもにゅと揉む。野良猫は軽くズボンに爪を立てその場を維持。
少年は諦めて星空を見上げる。うざったいぐらいに星だらけだ

グラスシエル > いい加減、星を見るのにも飽きてきた。
器用に膝をくっつけまま持ち上げる。野良猫は一瞬飛び降りようとして…しかしゆっくりベンチに両足がおりて落ち着くとわかればその足の主など無視するように丸まり直して眠って
外套にほんのすこしだけ暖房の魔法をかけてやり、少年はそれに顔を隠して眠る

ご案内:「平民地区 遊具の無い簡素な公園」からグラスシエルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン > 場所は王都マグメールの平民地区。種々雑多な店構えが通りの左右には並び建っている。雑貨食糧工務建設家具修理、配達鍛冶武器に薬品化粧古書に魔法葬式何でも御座れ。片田舎の農村などに比較するならばその豊かなバリエーションたるや、お金を落とさず物見遊山に眺め回っているだけでも一日二日は悠々と時間を潰せるだろう。
…今回スポットが当てられるのは、その中の一つである服飾店だ。高価なオーダーメイドだけではなく、潤沢な人的資材を酷使…活用して大量に作った量産品の衣類が主に販売されている。トルソーや掛物を用いて展示されている衣類は少し背伸びをした中流層、あるいは上流階級向けの紳士服や普段着のドレスなどが大半を占めており、しかしそのお値段も量産品故にかリーズナブル。
それ故に薄暗い宵の刻を迎えているこんな時間帯でも、店の中には来店客が若干疎らながらも行き交い、それに対応する従業員達が忙しなくしていた。一見すれば平穏無実な日常風景の1ページにも見えるかも知れないが……思わぬ所に落とし穴は存在する。

店の拓けている目立った場所にトルソーが一つ在ると想像して欲しい。そこには一着のドレスがかけられていた。双肩を露出させるローブ・デコルテ、色は目の覚めるようなエメラルドグリーンで縁部分にはレース編みで丁寧に設えられた薄赤色の薔薇の意匠が散りばめられている。肌に吸い付くようなマーメイドラインの仕立ても含めて縫製は非常に丁寧な造りだ。
余り普段使いするような印象ではなく、寧ろフォーマルな場に出て行く時に用いるような他所行きのドレスと言えるだろう。特筆すべきはその値段であり、縫い付けられた値札には周囲の衣の半額以下の数字が記載されている。
店で良く使う、特売品で客の関心を釣り上げる事により、店に足を運ばせるという手段。相当にお買い得であるとも思えるかも知れない。
…もしもそれが本物ならば、だが。本物はとうに売れてしまっており、そこにあるのはただのイミテーション(贋物)。それも街中に潜伏している怪物が擬態化して化身しているだけの。

ドラゴン・ジーン > 多忙極まる店の流れと、労働時間の区切りに従業員が入れ替わった所為で、店内の変化にはまだ誰も気づいていない。売れた筈のものがそこに残っているという違和感に。
幸いながらはまだその生きた地雷が、眺めて行く客の視線を浴びるだけで購入に誰も踏み切っていないという事。
この店の売りの一つでもある衣類を試着出来る、というサービスもある意味には状況の悪化に拍車をかけるものだ。実際に今もカーテンや姿見の付属している狭い個室状の試着室は頻繁に利用されており、次々に男女が出入りを行っていた。

風景に紛れ込んで待ち伏せるという手段の有効性の確認だ。物品に変化する事によって油断を誘えるというのは既に実証済でこそあるが。しかし形態を維持し続けるのは中々骨が折れる。呼吸や脈動の必要性は必要不可欠な内臓器官が元々存在せず、適時に作るだけで事足りる為に身動き一つもせずに何時間でも待てるが。見目麗しく完璧に織り上げられたドレスの染料塗は、少しでも気を抜いていると黒い斑模様がそこに浮いて出てしまう。
現状においては周囲にはまだ気づかれていない。幸運にも。あるいは周囲を主観とするならば不幸にもだ。